ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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25のお話

 

 

 

 

 

(ちっ…!面倒そうなのが来やがったな。)

強盗団・ラピテリオのリーダー、デミゴは黒四円(こくしまる)が仲間の1人を殴り倒した際、さっさとこの場から逃れようとしていた。

 

 

戦う前から負けると思う程、今の戦況を理解出来てない訳でないが黒四円は狙える状況になれば必ず自分を狙ってくる。

組織相手に喧嘩をすれば、リーダー格や指揮を取る者を真っ先に潰そうとするのは定法。

 

(相手は2人でこちらは大勢いるがこいつらが下手こいて、あの男が俺の方に来たら…。)

個の力では、絶対に勝てないと踏んでいるデミゴ。

所詮、彼はただの小物の盗人。

 

勝てばライナや彼等の金をいただけるが、顔を歪まされるリスクを考えたら取るに足らないと考える。

 

 

 

「っざけやがって…! おい、クワイトぉ!

 確かアイツに金盗られたって言ってたよな!?

 一番にお前の得物(えもの)を突き立ててやれぇ!!!」

 

クワイトに先陣をきらせれば、周りの奴らも勢いで行ってくれる。

その間に自分は逃げようと画策するデミゴ。

 

 

「腰が引けてるぞ? やめとけ。」

「っ! うるせえぇーーー!!!」

(よーし…今のうちに…。)

突っ込んだクワイトを確認し、背を向けたデミゴ。

 

その時、目の前に…。

「はっ…?」

激しい勢いで回転しながら迫りくる大型の手裏剣…。

 

彼は自分に何が向かって来ているのか、どう行動すればいいかを考えようとしたが必要はなかった。

 

何故ならそんな暇もなく、先にその手裏剣がデミゴをバラバラの肉塊へと変えてしまったのだから…。

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

(…?)

「無事か?」

「ふぇ? クロまる君?」

 

黒四円は、ライナを抱いて、木の生えている場まで跳び、木の枝へと移っていた。

 

黒四円の声を聞き、目を開けたライナ。

抱きかかえられ、彼との距離が近く赤面してしまう。

 

「あわわ!///」

「おい、暴れるな、落ちるぞ。」

「ぁう/// ごめんなさい…///。

 でも…何がどうなって…。」

ライナは恥ずかしさを無くす為に辺りを見回してみた。

 

「ひっ………!?」

赤面が一変し、顔が蒼白。

先程のラピテリオの強盗達の死骸や重症者が至る所にあったからである。

 

デミゴのように人の原型をとどめていない者もあれば、体の上下がなきわかれた者。

そして、この場合、運が悪かったのか、腕や脚、片腹を切り裂かれ苦しんでいる者。

今は生きているが尋常じゃない程の出血であるため、彼等は幾分の苦しみを感じてしまいながら、この世を去る。

 

「あ…ああ…。」

「きついなら見るな。」

黒四円はライナを寄せるとライナも目を閉じて、彼の体を壁にするようにして目を背けた。

 

 

 

 

「避けたか…大した戦感(いくさかん)と身のこなし…わいの思った通り。」

方言を含んだ声の方を見つめる黒四円。

そこには大型手裏剣にも引けを取らないほどの大男。

深い紅色の装束を身に纏い、上には胴当て、両手に籠手、両足に脛当て、口元に鬼を連想させる黒い面頬を付けている。

 

「何奴。」

「人に名ぁ聞くんなら、先に名乗るんが礼じゃなか?」

「不意打ちしてくるような奴がほざくな。」

言い返したら、大男は笑う。

 

(陽ノ本・南方辺りでの訛り…数夜の奴らにも何人かいたな…。)

抜け忍の黒四円は、自分がいた数夜忍衆(すうやしのびしゅう)の残党。

その辺りが里抜けした自分に報復をしに来たかと考える。

 

大男は笑い終えると彼等と向き合い、口を開ける。

「そうじゃな、わいの名は大盤堕(おおばんだ) 猿血代(さるちよ)

 陽ノ本(ひのもと)緋摩ノ国(ひまのくに)の出の忍じゃあ。」

「その格好と図体で忍?

 傾奇者の間違いじゃないのか?」

「戦忍じゃい。」

木から降りた黒四円はライナも地面に下ろしてあげる。

 

本来の忍は戦ごとで主に戦ったりなどをする役割ではないが、腕の立つ忍ならば戦場に出張り合戦を行ったりする者も多く、そうして一国の将にまで登り詰めた忍もいた。

そうした戦働きを率先して行う忍を戦忍(いくさしのび)と忍界では囁かれている。

 

「そうかい。

 それで? 抜け忍の俺を始末するように生き残りの奴らから頼まれたとかか?」

「? いんや、違う。

 そうか、お前さんは抜け忍か…。」

「何?」

訝しげな表情をし、大盤堕を見る黒四円。

掟破りで始末しにきた訳じゃないのならば、なぜこの男は自分を狙ってきたのかがわからなかった。

 

「わいも忍やっちゃったが上の(もん)にはめられてのー。

 其奴らに報復してやったんやが、流石に捕まって流刑よ。」

「流刑? この島までよく小船がもったな。」

「奴隷船に拾われたんじゃ。

 流刑言うとるが、簡素な筏に括り付けられるだけで死罪と同じ…ほんまこつ運が良かった。」

 

流刑とは本来、見知らぬ土地に行きつき、強制労働の奴隷になるよう仕向けらえる刑罰。

 

しかし、大盤堕が始末した中には緋摩ノ国の名のある武将や忍衆の上の者達がいた。

そんな者達を殺したとなっては死罪になるのは当然であり、その流刑は見せしめに近い形で行われ、彼が流され、見えなくなるまで多くの人間達に嘲笑われ、貶されながら流されて行ったのである。

 

 

「それで、奴隷船から抜け出て、今はこの大陸で悠々自適に暮らしちょる。」

「悠々自適に…ねえ…。」

黒四円は大盤堕のその発言を怪しむ。

 

血の臭いである。

アイゼンが黒四円に指摘されていたが、大盤堕の体からも人の血の臭いが酷く濃く臭ってくる。

彼が奴隷船を抜け出たと言っていたが十中八九、血が流れたであろう。

 

そんな人間が悠々自適などという言葉を使うのが酷く滑稽に黒四円は思った。

 

 

「それで? 俺に何の用だったんだ?

 一見、争う訳なんかなさそうだが?」

「ああ、なーに…。

 いっぺん其処もとと死合(しおー)て見たいんよ。」

「は?」

「死合よ死合。

 (わけ)ー其処元と戦ってみたい。」

大盤堕の真顔と真剣な目付きを見て、黒四円は本気だと察した。

 

 

(緋摩の武士は戦狂いが多いと聞くが戦忍も同じ類か…。)

「なに…それ…?」

「おん…?」

「ライナ?」

震える、か細い声でライナが口を出していた。

 

「そんな理由でクロまる君に攻撃してきたの?

 そんな物当たったら死んじゃうかもしれないのに…?」

「…。」

「それに、今ここにいる人達が死んだのってなんなの?

 いくらここにいる人達が悪い人達だったとしても貴方が殺して良い理由があるの?

 しかも、殺られた経緯がただの巻き添えなんて…!」

 

(ライナ…。)

「貴方のやったことはおかしい! 凄く罪深いことだよ!?」

 

「言いたいことはそれだけで良かか? 若い嬢ちゃん?」

「っ!?」

「戦争が終わり平和になった…ましてや異国の女子なんかにはわからん事たい。」

「そんなの絶対関係ない!!!

 ついでに人殺しするような行為なんか、どの国に行ったって絶対に非難されるに決まっているよ!」

 

「なんならこう考えい、人の形をしたごみをわいは掃除したとよ。

 真面目な人んなら落ちてたごみを拾って捨てるやろ? それと同じやと。」

「っ…! 貴方は!」

「ライナ。」

ライナが熱くなり前に行ってるのを肩に手を置き、静止する黒四円。

このままではやかましいという理由だけで大盤堕に殺されかねない。

 

「戦に関わっていくと人の生き死の事になんか希薄になっていく…ああいう人間になっていくんだ。

 君は見慣れていないんだろうがこういう人間もいるって事だ。」

「そんな…でも!」

「遠くに身を屈めて下がってろ。」

ライナはまだ何か言いたげだったが黒四円は強引に下がらせる。

 

「すまない…。」

「えっ…?」

そして、小さな謝罪の呟きを彼は発し、ライナは不思議に思う。

 

(何でクロまる君が謝るの?)

大盤堕が自分と同じ陽ノ本人だからそれに代わって謝ったのか?

それとも別の理由があり、謝ったのか?

或いはその両方か?

 

どちらにしても彼の今の謝罪の声はとても辛く、悲しそうな感情で自分に言ったような気がライナにはした。

まるで過去の過ちを教会で懺悔するかのように…。

 

何で君が謝るのとライナは聞きたかったが彼はどんどんと前に行き、大盤堕の前に対峙しに行ってしまう。

 

 

 

 

 

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