ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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26のお話

 

 

 

 

「長話じゃったな。

 それで? やるんか?」

「無駄な諍いだが、不意打ちで殺しに来たんだ…そうもいかないんだろう?」

「ああ。」

 

 

クワール街の街外れの森の南方。

その木々が切り拓かれた場所で2人の陽ノ本人(ひのもとじん)が相対していた。

 

 

「むしろ、よく今まで仕掛けてこなかったな?」

「よう言う、隙も何も見せんかった癖に…。」

強盗団・ラピテリオの屍達がある中でお互いがゆったりとそんな会話を交わす。

 

 

大男の忍、大盤堕(おおばんだ)猿血代(さるちよ)は、自身の武器である大盤手裏剣を構える。

鎖を回し始め、繋がれた手裏剣も動き始める。

接合部が回転するように仕掛けをしているからか、大型手裏剣は遠心力を浴びると鎖回しを止めても手裏剣は回ったままである。

 

()くどーーー!!!!」

「っ!」

大盤堕の怒号と共に手裏剣は黒四円に向かって襲ってきた。

 

上から叩きつけるように手裏剣が降り、黒四円は横に飛び躱わす。

しかし、手裏剣はそのまま地を這うように彼に向かって行く。

避けた方向に木があり、それを使って三角跳びを行い、空中に逃れるが木を削り上がり、追うように手裏剣が彼の方に襲いにくる。

 

 

 

(あんな重そうな武器なのに。)

遠くの木の陰に隠れているライナは一連の大盤堕の武器の扱いを見て驚く。

 

彼女の体格と何ら変わりない大きさの武器を軽々と扱う腕力はもちろんの事、ひとつ間違えれば自身に怪我をさせるような凶器をあんなに使いこなしている。

 

旅で色々な人達を見てきたライナ。

大剣やハンマーを扱う、作業者や兵士などは見たことがあるが、あんな大きな長距離武器を扱う人間を見たことはなかった。

 

 

(クロまる君…バイオリンがあれば少しは手伝えるかもしれないのに…。)

ライナは魔法を扱えるが口状詠唱だけでは心許ない威力しか出せないと自覚している。

演奏詠唱で魔法の出力を上げれれば、黒四円を援護できると考えるが…。

 

「…。」

「えっ?」

黒四円がライナを見つめ、首を横に振っていた。

 

 

 

(当たらんけーの…。)

空中に逃れた黒四円に自身の手裏剣が少しでも当たると思った大盤堕であったが、空中で身を捻らせ、あっさりとそれを躱していた。

 

そして、今、大盤堕にとっては取るに足らない女性のライナに向かって彼は、何かを伝えているのが見てとれた。

(大方、あの娘が横槍入れよるんを止めとるんやろーな。

 確かに、邪魔してきちょったら動けんようにはするが…。)

 

 

しかし、大盤堕は面白くなかった。

黒四円が実力者であることは見抜いてはいる。

だからといって、自分の攻撃を容易く避けられ、第三者を庇う余裕すら持たれているとなっては戦忍として立つ瀬がない。

 

(しゃーなか…すぐ終わるかもしれんから、まだ使いとーなかったが、舐められとるとなっては…のー…。)

大盤堕は、空中の一撃の後、手裏剣を手元に戻す。

息を大きく吸って、吐き…再び、鎖を回し、大型の手裏剣に回転を加え始める。

 

それを見た、黒四円は避ける態勢を整え、自身も攻撃を加えていこうと考える。

 

鎖鎌術のような縄状の物を使用した武器攻撃だが、あの大型手裏剣の重さに耐える為に鎖も太く丈夫な物を使用しているために、鎖自体はそこまで長くはない。

恐らく持ち運ぶことも考えてのことだろう。

射程は手裏剣、大盤堕の扱いを合わせ考慮しても、最高で5メートルまでしか届かない。

 

その程度の距離なら隙を見て一気に距離を縮める…もしくは、見切り避けつつしながら近づき仕掛けることは黒四円には可能である。

 

 

「ぅおーーらあーーー!!!」

 

再び、投擲する大盤堕。

真っ直ぐと横向きに手裏剣が迫る。

黒四円は、横に当たらないように避けようとする。

 

「っ!?」

しかし、不意に感じた危険に対する彼の第六感。

(くらえぃ…!)

 

手裏剣をギリギリで避けよう考えていた黒四円だったが、更に後ろへと跳ぶ。

 

「…。」

致命傷は受けず、服と腹の薄皮を1枚切られただけで済んだが1、2秒反応が遅れれば片腹を切り裂かれ、彼は絶命してしまっていたであろう。

 

(断じて刃に触れてはいなかった…。)

先ほどの出来事を思い返し、冷静に考察し始める。

 

距離を詰める為に寸での避けをするつもりだったが危険を感じ、大きく避けた。

刃先どころか小刀1本分の射程からは外れるように避けたと黒四円は自負し、見ていたライナも不思議そうに見ていた。

しかし、事実は腹の薄皮を1枚切られた。

 

食い違う2つの事実だが1つの現象を追加してやれば合点はいく。

 

(術の類…風遁か?)

 

感覚的なモノで理解出来たというのも1つだが腹の切り傷が得物とあっていない。

そして、つながれている鎖の接合部の近くにも擦ったような傷が何箇所もあった。

 

 

(恐らくは自分の得物に風の刃を纏わせ、射程を伸ばしているといった所なのだろうが。)

「どーやら、どうゆう術か気付かれてしもーたかのー?」

含み笑いしながら黒四円を見る、大盤堕。

 

 

「これがわいの忍術、風刃ノ術よ。

 

 なーんも難しくない単純なことよ。

 ただ氣でわいの大盤手裏剣に風を纏わせて、普段通りに扱う…ただそれだけのことよ。」

 

 

「それって魔法付与した武器を使ってるみたいな事なの?」

種明かしをしている大盤堕にライナは呟く。

 

炎や雷を自身の武器に纏わせて攻撃したりする剣の心得を持った魔法・精霊使いや武器生成時に精霊を武器内に住みつかせ、常時属性を発動させる魔法武器なるものがあり、大盤堕のしていることはそういう事だと理解するライナ。

 

 

「そうか、忍術…つまり氣か。

 だったら、射程はまだ伸ばせるな?」

「はっはー! そういうことじゃあ!!!」

 

魔法と氣の違い…それは使用するエネルギーである。

 

魔法は大気に存在する精霊の力を借り、術を発動できる。

そして精霊に力を借りる方法とは詠唱だったり術式だったりと知識によるものが大半であり、それを取り入れれば誰でも使用することは可能である。

 

対して氣術に使用されるのは使用者の生命力。

生命力が枯渇しなければ、術は使用可能なのである。

 

 

「初見で躱したのは見事やが、いつまで避けられる!?」

「クロまる君!!!」

 

そして繰り出される風刃を纏った大盤堕の大盤手裏剣。

1撃、2撃とその得物がまるで生き物のように黒四円に向かっていく。

 

先ほど躱せた距離は、次は致命傷になり得る距離に…。

次は致命傷の距離だったその距離が安全域に…。

自在に射程を変え、相手を惑わそうとする。

 

加えて得物の射程を変えている風というモノは透明。

目を凝らせれば烈風の勢いのようなものが見えなくもないが今は数秒遅れればあの世に行く、死闘の最中…。

悠長で曖昧な目測など誰が出来よう…。

 

 

しかし、6撃目、7撃目…。

慌てふためることもなく、冷静な顔で黒四円は躱していく。

 

「はっ! そうやってわいが術使えんようになるまで躱し続けるつもりか!?

 いつまでもつと思ーちょる!?」

「いや…。」

 

8撃目の上斜めから降ってきた攻撃を横跳びで避け、地面に着地した黒四円。

 

「そこまで待つ気はない。」

着地した瞬間に一気に地面を蹴り、大盤堕に突っ込む。

その速度は彼の姿がブレて見える程の超スピード。

 

(一気に距離詰めるんか…だが…。)

口元を歪めた大盤堕。

そしてそのまま、現在の黒四円の位置から見えない方の手、左手で印を結んだ。

 

(ずたずたになっとけーや…! 風刃ノ術・纏離(まといばなし)!)

 

すると大盤手裏剣に纏っていた風の刃が離れる。

離れた風刃は手裏剣の回転を保ったまま、文字通りの風の速さで黒四円の背後から襲いかかる。

 

「…? っ!? ク…!」

「しまいじゃ!」

ライナが異変に気づく声と大盤堕の勝利の声が同時に出た。

 

 

黒四円が風刃に身を削られる距離が薄布1枚という瞬間だった…。

「っ!? なっ!?」

大盤堕の前から黒四円が残像だけを残して消えてしまった。

「ちぃ!!!」

風刃の射線上に入っていた大盤堕だったが当の本人が放った技である。

 

黒四円が当たった瞬間に避けるつもりであったのだが彼に消えたことに面くらい余裕を持ってなかったが横っ飛び回りで何とか傷1つ付かず避ける。

 

 

「おん…どれ…!」

すぐに顔を上げ、まずは前方の辺りを見て、黒四円を探し始めようとするが…。

 

「おい。」

「っ!」

背後から声が聞こえ、すぐさま、振り向きながらの肘打ちで迎撃をする。

「ぐっ!?」

しかし、空振り。

黒四円はまた、彼の視界から姿を消す。

 

(くっそ!何処じゃ!?)

振り向いた辺りを見回すがその方向にいなく、先程、手裏剣を投げた方向に向き直った、瞬間。

「!?」

視界に一瞬、映る黒四円。

しかし、それは一瞬で見えなくなる。

 

武具屋【(はがね)】で手に入れたククリナイフで大盤堕の両目を横一文字に薙ぐという致命的な負傷を与えた。

 

 

 

 

 

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