ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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2のお話

 

 

 

 

 

「はあ、久しぶりにハーブ採取したけど…やっぱり大変だったよ~。

腰が痛いねぇ~…。」

「何、婆さんみたいなこと言ってんだ?

 絶対俺より若いだろ。」

「えぇ~そうかな~?

 わたし今年で20歳だけど、クロまる君は?」

「…同い年だったとはな。」

 

彼女の明るい振る舞いが黒四円(こくしまる)には幼い印象に移っていたからか、同年代という事実に少なからず驚いてしまった黒四円。

 

 

 

先ほど受けたライフハーブ採取依頼。

黒四円達は採取を終え、クワールの街へと戻ってきていた。

 

ギルドが貸し出していたカゴの中には達成量以上のライフハーブが入っている。

後はこれを納品、今回の依頼者はギルドなのでさっきの受付に持っていけばそれで今回の依頼は完了である。

 

 

「しかし、聞きなれない名称だったからどんな植物なのかと思えば、こりゃあ止血草だな。」

「ああ、教えてあげた時にそう言ってたね、陽ノ本(ひのもと)ではそういう言い方なんだ。」

 

 

 

ライフハーブ。

各国で言い方は違えど、どの国にでも生息している薬草。

心形の裏表ともザラザラとした手触りなのが唯一の特徴である。

 

絞ればぬるっとした液体が出て塗り薬に、乾燥し煎じて飲めば痛み止めにもなる。

 

病などには効かないがどこの薬屋にでも売っている定番の薬草である。

 

どの地域にも生え、繁殖数が多い事からある国の医者は、万能薬の欠片とまで言われるほどの薬草である。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

「依頼完了!

 お疲れ様、クロまる君。」

「ああ。」

依頼物のライフハーブを納品し、報酬を確認する黒四円。

封筒を渡され、中身を確認すると紙幣が4枚。

上と下の端の方に100Y(ユーラ)と書かれており、真ん中には星と植物の冠が描かれている。

 

「それがこの国のお金だよ。」

「これが金なのか?

 紙が通貨とはな…。」

Y(ユーラ)って単位で呼んでて、それは100Y紙幣だよ。」

「それが4枚だから400Yってことか…。

 ちなみにこの金でどれくらい生活できる?」

「えーっと…正直に言わせてもらうと1日分ぐらいしか…。

 しかも、切り詰めて…。」

「そうか。」

 

厳しい現実をバツが悪そうに伝えるライナだったが、黒四円自身はそんなに気にしてない様子。

そして…。

 

「ほら。」

「え?」

200Yを彼女に手渡そうとする。

 

「ちょっとちょっと!?」

「ん? どうかした?」

「どうしたって良いの!? 報酬半分も渡しちゃって!?」

ライナは心底驚いた。

彼女は手伝うつもりしか無く、報酬は彼に全額渡すつもりでいた。

 

「何言ってる?

 二人でやった仕事だから当然だろ?」

それを聞きライナは茫然とした。

 

 

先立つものがあり、これからの事で何も心配がなければ、それは案外普通の行動なのかもしれない。

しかし、黒四円は明日食べられる物も買えるかわからない程に貧しい状況の筈である。

だが、彼は自分の利よりも物事の道理と助けられた礼節を優先させ、ライナに報酬を半分渡したのだ。

 

 

彼女は少しそのお金を見て、そして笑顔で彼に話しかける。

「じゃあ、何か食べに行こっか?

 このお金で奢るよ?」

「なに? お前だって旅してるんだろ?

 なら、金は大事にした方が良いぞ。」

「いいの!

 わたしが稼いだお金なんだからわたしの好きに使わせてもらいます!」

「あ・ああ。」

ライナの急な上機嫌になぜかわからない黒四円だったが勢いに逆らえず、彼女の後に続く。

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

「着いた着いた! ここだよ、クロまる君!」

「ここは…?」

 

着いた店の看板にはCafé mokuと書かれていた。

その店は2人がクワール街へと入ってきた東門の近くにある。

門から入って少し真っ直ぐ進み、左手にある建物と建物の間にある路地を進めば見えてくる。

ログハウス調の2階建ての店舗であり、壁も屋根も看板も見事に黒くコーティングされていた。

 

「旅先で聞いた話なんだけど、多分ここ、わたしが知ってる人がやってる店だと思うんだ。」

「ほう…。

 まあ、違ってもいいんじゃないか?

 真面にやってそうな店なんてそんなに見かけなかったしな。」

「昼間なのにね~。」

如何わしい店は夜に営業しているというのが相場なのか、どの店舗もほぼやってなさそうなのを2人は歩きながら観察し、察した。

 

 

 

「こんにちは~。」

ライナが店のドアを開けると内側についているドアベルが鳴り響きその先にはカウンター。

向こう側には色黒でガタイの良いスキンヘッドの男が無言でこちらを見ていた。

 

「…。」

(おいおい…Caféって茶屋みたいなもんだったよな…?

 とてもじゃないがもてなしてくれそうには見えんな…。)

黒四円はいらっしゃいのひと言もないその主人らしき男の顔を見て疑問がわいてくる。

 

ガタイが良いとは生まれついての部分もあるだろうがそれだけで済まない。

明らかに戦いの中で鍛え抜かれた身体をしていた。

腕なんか岩石の様に頑丈そうに見て取れる。

 

そして顔。

右目が潰れており、その原因であるかのような大きな爪痕がその男の顔に刻まれていた。

 

 

 

「やっぱり、アイゼンさんだ!

 お久しぶりです!!!」

「…。

 ライナか…。」

開口一番、ライナは弾んだ声でその強面な店主の名を呼ぶ。

するとお客が入ってきてもダンマリだった店主が彼女の名を呼ぶ。

 

「5年ぶりですね!

 奥さんが亡くなってすぐにパーネットちゃんと一緒に祖国に帰ったって聞いて寂しかったですよ!」

「…。」

その時の不満をぶつけるライナだったが店主アイゼンはすぐに彼女らと違う方へと歩く。

 

(無視かよ…。)

不満そうにする黒四円だったがアイゼンはカウンター出て、テーブル席にメニューとおしぼりを置いた。

 

「ありがとう、アイゼンさん!

 クロまる君、そこ座ろ。」

「え?」

そう言われ、黒四円はライナを見て、再びアイゼンを見る。

カウンターに戻った彼はコーヒーカップを磨いており、こちらに見向きもしない。

 

「アイゼンさんってあんまり喋らないけど、面倒見の良くて行動で答えてくれる人だよ。

 ダメならあんな風にメニューとおしぼり置いてくれないもん。」

「そ・そうなのか…。」

ライナは嬉しそうに席へと向かい、黒四円も続くがチラッとアイゼンの方をもう一度見る。

 

「…。」

(いや、わからん…。

 なんでこの仕事してるんだ?)

2度見てもこちらに見向きもしない店主アイゼン。

本当に接客をしてくれるのかと疑問に思う黒四円。

 

 

 

「うーん…何にしようかな~?

 クロまる君、メニュー。」

「ああ、すまない。」

Café Mokuの席につく二人。

ライナが黒四円にもメニューを手渡す。

 

「うーん…まあ、そんなにお金稼いだわけじゃないし…わたしはサンドイッチと果汁入りミルクにしよっと。

注文するものが決まり、メニューを閉じるライナだったが、黒四円の方は…。

「…。」

考え込みながらメニューを凝視している。

 

「ど・どうしたの…?」

「ん? いや…字は読めるんだが…。

 知らない料理名ばかりでな…。」

「え? そうなの?」

「ああ、陽ノ本(ひのもと)では麦米や川魚なんかを食ってたんだがな…。

 ここに書いてあるものは何も知らんな。」

黒四円はライナにも見える様にメニューを広げ、テーブルに置いた。

 

「何にすればいいか、少し助言してくれないか?

 ライナ。」

「うーんそうだね~…。

 奢るって言ったけど1人50Yあたりだから…クロまる君もサンドイッチかな?

 パンって食べ物なら知ってるかな?」

「ああ、それなら知っている。

 食ったことはないがな。」

「そっか、お魚が良いならこのサーモンサンドが良いと思うよ。

 後は飲み物だけど…。」

 

メニューのページをめくりドリンク欄を見せる。

 

「甘いものとか温かいものとか希望ある?」

「うーむ…そうだな…。

 じゃあ、温かいものがいいな…。

 味は…今は甘くないものの方がいいな。」

「そっか、じゃあ、紅茶っていうお茶もあるんだけど…折角だしコーヒー飲んでみる?」

そう言うとライナはMokuブレンドと書かれたものを指をさす。

 

「なんだそれは?」

「加熱乾燥させて、煎ったコーヒー豆っていうものを砕いて、お湯で抽出した飲み物。

 この国で愛されてる飲み物の1つだよ。」

「そうなのか…まあ、折角だ、頂いてみよう。」

「はーい!

 じゃあ、アイゼンさん! 注文お願いしまーす!」

「…。」

ライナは手を挙げ、アイゼンを呼ぶと彼は無言で彼女らの座っている席に向かう。

 

ライナは自分と黒四円の注文し、そして、数十分後、注文したものがテーブルに置かれた。

「きたきた!

 ありがとう、アイゼンさん!」

「・・・。」ペコリ

「ほーう…。」

配膳されたことを感謝し、食べ始めようとするライナを他所に見たこともない料理をまじまじと見つめる黒四円。

(これがサンドイッチとコーヒーというやつか…。

 このコーヒーというもの…黒いな…黒い飲み物…。

 しかし、良い香りだ…。)

「どうしたの? 食べないの?」モグモグ

「ん?ああ、そうだな。」

 

手を合わせ、少しお辞儀をする黒四円。

「いただきます。」

「何、その挨拶?」

「ん?食事前に言うんだよ。

 食べ物になった生物に感謝の意を込めた言葉と行為だ。」

「へぇー! 良い文化だね!」

自分の知らない土地の文化を知り関心したライナ。

そして、一旦食べていたサンドイッチを皿に置き、彼女も手を合わせいただきますといい、また食べ始める。

 

それを見て少し笑った黒四円もサンドイッチを手に取る。

(このパンというもの柔らかいが餅のようにべたついてる訳ではないな…。)

手触りを確かめつつ、口に運ぶ黒四円。

(美味い…! この魚の味…確か鮭だな…。

 海の方に行った時に食べたのを覚えているが…この口の中に広がる芳醇な香りは知らないな。)

ハーブバターで焼かれた鮭の味。

彼の記憶の中では味わったことのなく、想像も出来そうにない異国の料理の味。

それでも美味さを知り、2口、3口目と食を進める。

 

「どう? この国の料理は?」

「ん? ああ、美味いよ。

 このパンという食べ物も良いな。

 何にでも合いそうだ。」

「そっか、良かった♪

 西の方にある国ではパンが主食の国もあるんだよ。」

「そうか。

 陽ノ本でいう米みたいなものか。」

食事を進めながら他愛もない話をする両者。

 

そして、黒四円はコーヒーの入ったカップを手に取る。

「しかし、まあ、美味いは美味いがパンというのは口の中が乾くな。」

「あっ…ミルク…。」

ライナがミルクピッチャーを手に取り、入れるように促すそうとするが遅く、カップの中のコーヒーを一飲みする黒四円。

 

ゴクっ

 

「…っ!?

 苦っ…!」

口の中に広がる強烈な苦味に驚く黒四円。

吐き出しはしなかったものの、口を押さえる。

 

「あーあ…そんな勢いよく飲むから。」

「いや、飲んだ事ないと言ったろう!?

 しかし、なんだこれは…?」

「それがコーヒーだよ。

 その苦味がクセになるオシャレな大人の飲み物♪

 まあ、わたしもブラックでなんて飲めないからミルクは絶対入れるんだけどねー。」

「先に言えよ…。

 いや、しかし…。」

再びカップを持ち、香りを嗅ぐ。

そして、もうひと口飲んでみる黒四円。

 

ゴクっ

 

「ん…!

 いけるな、これ。」

「えっ? 美味しいの?」

「ああ。

 苦いのは苦いが…香りも良くてスッとするし…さっき言ってた通りクセになる、気に入った。」

「ほへぇ…大人舌だ…。」

 

この国のコーヒーの特徴は苦味が強く、コクがあり、かなりクセがある。

Mokuブレンドもその特徴は押さえてあり、基本的にはケーキなどの甘い物と一緒に食べ、甘ったるくなった口の中を直すのが一般的な食べ方である。

 

そんなコーヒーをブラックで飲み、気に入ったと言った黒四円にライナは少し驚く。

 

 

(夢中で食べてるな~。)

異国で自分の知らない料理を堪能している黒四円。

自分に運ばれてきた料理を食べながらも彼に目がいく。

 

表情ではわかりにくいが、さっきの料理の感想。

味わって食べており、どうゆうものかと考える。

知らないものを考え、それを知る。

浅かろうが深かろうがそれがあったと知る。

 

ギルドでの仕事のことやハーブの採集中もそうだった。

何か質問した後は自分で何かを考え、それが自分にとって何かの役に立つか?

またはその情報をもとにだからこうなったという意味も探り出せる。

楽しい楽しくない関係なく彼はそういう癖の様なものがあると思った。

 

(なんとなくだけどわかるな。

 その気持ち。)

だから、彼女も旅をしているのである。

知らない人の人生談や性格を聞き、その人を考えて知ろうとする。

そうするとその人だけの生きた物語に出会える。

そうなると彼女の詩の執筆は驚くほどはかどるのだ。

 

(聞いてみたいな~この人の話。)

「どうした?」

その事考えて、彼を見つめていたからか、黒四円は彼女に質問する。

 

「ううん。

 なんでもないよ。」

慌てて、彼から視線を外し、誤魔化すように料理を食べる。

しばらく、彼女を見た後、黒四円は口を開く。

 

「アンタと会ってなかったら、この美味いコーヒーも飲めなかったな…。」

「えっ…?」

「いや、そもそも今日中に金を稼げる方法もわからなかった…。

 本当に感謝してるよ。」

「ど・どうしたの? 突然?」

「素直に感謝してるんだよ…おかしいか?」

「いや…別に…。」

おかしいようなそうでもないようなという矛盾した感覚にライナは曖昧な返事しか出来なかった。

 

「借りっぱなしなのも気に入らんのだが…生憎、何も返せそうにない…。」

「そんな、お礼はいいって…。

 あっ!」

何か思いつき少しニヤッと悪戯っぽく笑うライナ。

疑問で首をかしげながら、どうしたと黒四円は聞いた。

 

「じゃあじゃあ、クロまる君の事を聞かせてくださいな!」

「俺の事?」

「そうそう!

 馬車の中で言ってたでしょ?

 人の人生を聞いて歌に作り変えてるって!」

「ああ。

 それを聞くのが好きとも言っていたな。 

 それが礼になるのか?」

「なるなる! だから、聞かせてほしいな~って。」

手を合わせて、おねだりするライナだったが、黒四円は顎に手をやり、神妙に考え込む。

 

「…。」

(あれ? もしかして、触れちゃダメなタイプだったかな? クロまる君の…。)

しまったと思い、怖くなるライナ。

 

 

 

人生そう明るく楽しいものばかりではなく辛く悲しいものもある。

そして、そういう辛く悲しい人生というものの方が根強く人の心に残るものである。

 

彼女の聞いた物語にはこんな話もある。

 

ろくでなしの息子がくだらない事で母親に強く当たり、その後、母親は事故で亡くなった。

息子は母親の葬儀が終わってもやつれた姿だったがその後どうなったか、ライナは知らない。

 

後味の悪い話であるがライナは負の感情が溢れる人生も見て聞き、しっかり覚えている。

こうゆう過ちを他の人にも起こしてほしくなく、彼女は悲しい詩も作り、そして歌う。

 

 

 

「あの…クロまる君…もし、話したくないならいいよ?

 ごめんね…無神経に聞いちゃって…。」

しかし、好奇心よりも罪悪感が彼女の中で勝ることはなく彼女はすぐに謝罪をする。

 

「ん?

 ああいや、別にいいんだ…。」

彼女に遠慮させてしまったことを申し訳なく思い、頭を掻く黒四円。

そして、ゆっくりと口を開く。

 

 

「俺が陽ノ本から来たのはもう、馬車で知っているな。

 俺はそこで忍をしていた。」

「忍? なにそれ?」

「ああ、それはな…。」

黒四円は忍を知らないライナに説明し始める。

 

 

 

忍とは国が召し抱えている影の存在。

敵対している相手の諜報活動が主な仕事であり、情報収集が出来れば、それを自国に報告。

又はお偉方の護衛として裏に潜み、警護など様々な仕事をする。

 

 

 

「へぇー!!!

 スパイみたいな事してたんだね!」

「そうゆう言い方をするのかこの国では?

 陽ノ本はまだ内と内同士で戦なんぞをしている国だからな。

 他国への潜入なんかにはよく言っていたよ…。」

「ほぇ~…なんだか、小説のお話みたい…。」

「そんなに珍しいことなのか?」

「そりゃあそうでしょ!?

 だってだって、言うなら国家絡みのお仕事をしてたって事でしょ!?」

「大袈裟だな…。」

「それでそれで!

 他にはどんなお仕事をしていたこともあるの?」

「うーむ…そうだな…。

 例えば…。」

そこから彼は自分がしてきた任務のことをライナに話した。

 

城下町にとけこみ、情報の収集。

敵の城に潜入など…。

詳細な事は言わないものの淡々とこんなことをしたとライナに話、彼女は興味津々に聞いていた。

 

 

治安最悪と言われたこんな街でも、今、2人のこの時間は非常に穏やかに流れていくのであった。

 

 

 

 

 

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