ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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31のお話

 

 

 

 

世界の地形を解明した年はLF1000年丁度。

そこから500年余りが経ち、天気の予測や航海術、船の発達などが向上し、この世界の住人達は、広大な海を越え、他国との物のやり取りや交流を実現させた。

 

大陸・南西部にあるイスパル国。

そこから西にある街、クワール街。

治安無き街とも言われ、イスパル国の権力者達も落ちぶれた者達の掃き溜めという名目でこの街の存在を黙認している。

 

多くの人生(物語)を送る1人の只人種。

 

名は黒四円(こくしまる)

こんな街に流れ着いた彼は、今日も今日とてギルドでの依頼をこなし、日銭を稼ぐ日々を過ごしていた。

 

 

 

「ちょ・ちょっと! その袋近づけたらぶっ殺すわよ!!!」

ギルド役所内、夕方。

討伐依頼を終えた、黒四円は受付にいたエリエに布袋を渡そうとしていたのだが、彼女は青い顔をしながら首を横にブンブン振っていた。

 

「何故だ? 討伐対象の証を持ってきたんだが?」

「アンタがさっき受けたのって、ローチ種の討伐だったじゃない! じゃあ、その証って…。」

「ああ、触覚やら脚やらが入っているが?」

「いやあああぁぁぁーーーーーー!!!」

顔を手にやり、不快全開の叫び声が響く。

 

「でかい声を…なんだってんだよ?」

「そんな、気色悪いもん持ってくんじゃないわよ!」

「討伐依頼の達成を証明する為には、その魔物のどこかしらの部位が必要なんだろう?

 だから、ほら。」

「ほらじゃないわよ! 布袋を見せつけんな!

 必要だろうがなんだろうが気色悪いもんは気色悪いもんでしょ!?

 ゴブリンの大量の耳や鼻を持ってきたと思ったら、次はこれなの!?」

「ああ、さっき受けた…。

 最低討伐数には足りてたか?」

「知らないわよ! あんな処理、他の誰かがやってるから。」

「他人任せな…少しは働けよ。 ほれ。」

「ちょっ! だから、袋をこっちにやるな!」

彼にその気はないがまるで嫌がらせのように黒四円はエリエの前にミドルローチの部位が入った布袋を前にやるが彼女は受付台から後ずさっていく。

 

「はいは〜い、預かっちゃうね〜。」

「ん?」

すると後ろからピンク髪で右頬に小さな3つのハート型のタトゥーが入った女の子。

エリエと同年代の職場の同僚、モモ・フアンクワリが黒四円が持っていた布袋をヒョイっと取った。

ギルド職員の制服をまだ、着ていない為、なんだこいつと言いたげな目で黒四円は彼女を見る。

 

「おい、なんだお前は?」

「ここの職員だよ〜。

 ギルドは交代制でわたしは夜勤班だから、今来たんだよ〜ん。」

「なんだ、役所の人間なのか。」

「ですよ〜。

 な〜んか表から入ってきたら、エリエちゃんが揉めてたから、なんだろ〜な〜?って思って。」

「モモ、アンタそれ、ローチの一部がめっちゃ入ってんのよ?」

「ああ〜討伐対象の証か〜、はいは〜い、処理しちゃいますね〜。」

そういうとモモは、袋の中を平然と見始めた。

虫嫌いの人間なら卒倒するような、黒光った虫の一部が多く入っていた。

 

「まあ、大丈夫だね〜。

 ミドルローチを10匹の駆除とかですよね?

 それぐらいか2〜3匹は多そうなんで、達成完了で〜。」

「随分、大雑把だが、いいのか?

 そっちの女に頼んでる時は少し待っていたが。」

「ちょっと、モモ? 流石に確認、雑すぎない?」

「いいじゃ〜ん、重要でもない依頼の確認なんてこんなもんで〜。」

そしてモモは、受付台の奥に入り、依頼書に押印して布袋を奥に持って行き、報酬のY(ユーラ)を持ってきた。

「それにこの人〜、真面目に仕事してるでしょ〜?

 周りがバカにしてるの聞いたんだ〜。」

普通なら褒められることなのだが、この街では真面目な人間の方が少ないから、そういう陰口を叩かれる。

 

「だったら、だいじょぶでしょ〜エリちん?」

「ふん…知んないわそんなの。 今のうちだけでしょーよ。」

「かもな、かたじけない。」

「いえいえ〜。 ………ふ〜ん?♡」

モモは、黒四円を品定めするように見ると手を口にやり、唇を舌で湿らせた。

淫魔の魔物・サキュバスのような…。

 

(ほんっとに誰でもいいのね…淫乱ピンクが…。)

「ん?なんだ?」

「最初にエリちんが暗くて貧乏そうって言ってたけど…。」

「…。」ジロ

ジト目で黒四円はエリエの方を見るが彼女は鼻で笑い、椅子に頬杖をついて座り直したのでもういいやとなった。

 

「でも〜暗いのはクールってことだし〜、顔も割とカッコい♡。

 おにぃさんおにぃさん、依頼完了してお金あるよね〜?」

「ん? まあ、あるっちゃあるが。」

「そっか〜、そ・れ・じゃ・あ、モモを今晩、買いません?♡」

モモは、いやらしい笑みで見つめながら黒四円に提案。

彼は一瞬、頭が?になるがすぐに意味を理解し、一息ついて口を開いた。

「流石にそんなにはないぞ?」

ライナと別れて2日後…ツケで買わせてもらったバスローブの支払いも昨日のうちに終わらした黒四円は、今日の仕事は昨日と比べて少なめに受けていた。

 

どれくらいですか〜?とモモが尋ねると黒四円は懐にある財布を取り出して中を見せる。

「な〜んだ、あるじゃないですか〜。

 それ、全部払ってくれれば、今晩お相手しますよ〜?♡」

「何? 4000近くしかないんだぞ?」

「あはは〜確かにお店行ったり、他の娘買うなら全然足りないけ〜ど〜。 モモは半分以上、好きでやってるからそのくらいでいいの〜。

 それでどうします?♡」

「ふむ……。」

そう言われ、黒四円はモモの容姿などを改めて見る。

可愛く、ゆるゆるそうなその人となりは、愛でられる小動物を彷彿をさせるがどこか掴みどころのなさそうな雰囲気がある。

背丈は小さく155前後…体型は大太りであるわけではないのだが、痩せてスラっとしてるとも言えない…安産体型で、抱きしめ心地が良さそうな体躯である。

こういう事を好きでやってると言ってたことは事実だからか、経験からくる艶かしい色気もあるように黒四円は感じた。

 

 

(かなり上玉の部類に入るよな…? 本当に良いのか…?)

「なーに熟考してんのよド変態。」

彼が考えている横からエリエが軽蔑しきった視線を送りながら、そう言ってきた。

「ん? いや、随分と上手い話が来たけど、大丈夫なのか…と。」

「んも〜、疑わなくてもいいのに〜。」

「はん! 所詮アンタも女遊び欲しさに働いてんでしょ?

 どんだけ真面目ぶろうがカッコつけようがここにいる下衆野郎と生態は同じよね。

 マジで気色わる!」

「そうか。」

「ええそーよ! 前にアタシに偉そうに説教垂れたけど、アンタ見たいのにあんなこと言われても、ウザイだけよ!」

「? 俺、何かお前に言ったか?」

「っっっ!? もういい!!!

 アタシは終わりだから、後はモモにやってもらいな!」

怒りながら言い捨てるとドンドンと聞こえてきそうな足音を鳴らしながら、エリエは奥にある控室へと向かっていった。

 

 

「あいつはいつも不機嫌だな?」

「そだね〜。

 でも、エリちんも身体売ったりしてお小遣い稼いでるから、ああゆう態度も需要あるんですよ〜。」

(俺だといくら積んでも買わせて貰えなさそうだがな。)

呆れ笑っているとモモが結局どうするのかを黒四円に再び聞いてくるのであった。

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

(あの野郎…!マジでふざけんな!)

着替え終わり、ギルドの外へと出たエリエ。

しかし、未だに黒四円のムカつきは治ってはいなかった。

 

 

『まあ、事情や思いはあるんだろうが、今のお前はこの建物の職員なんだ。

 やることもしっかりやらないような奴なんて、何やってもこれから適当に物事進めるような奴になっていくと俺は思うぞ。

 

 少なくとも俺は、やることはやり、ここに流れ着いてきた。』

 

 

6日前に黒四円がエリエに対してはなった言葉である。

「自分で言った事忘れてんじゃないわよ…! 若いのにボケ始めてんの…!?」

 

悪態をつきながら歩き始める。

彼女もこんな事などさっさと忘れたくもあり、普通なら忘れそうなものである。

しかし、あの時、話した事が説教のように思えたエリエはその発言が今日までも耳にこびりついていてしょうがなかった。

黒四円は何気なく言ったつもりの発言がだ。

 

(ああー駄目だ…なんであんな事に何日も気にしてんの…?)

彼女自身もこの事に嫌気がさしてきており、頭を抱えた。

「もーこうなったら飲みにでも行こ!

 明日も仕事だけど、知ったこっちゃないわ!」

気分を晴らすためにそう思いつき、彼女は夜から活動を行い始める、クワール街の欲望集う区画へと向かうのであった。

 

 

 

 

 





◇ちょい記載 設定のお話


ローチ 昆虫種の魔物。

ミドルローチとラージローチに分かれ、体長30センチ以下がミドルでそれ以上がラージ。
この大きさになれば、人に襲いかかってもくるので魔物、害虫扱いに認定されている。

名称されているモノでスモールラージもいるのだが、これは家の台所などで見かけるような大きさであり、脅威ではない。

しかしまあ…大半の者達からは嫌われている悲しき昆虫種である為、見かけられれば駆除されている。
なのでミドルやラージ程に大きくなるのは森や洞窟の人気のない所。
別の魔物からも捕食されず、生き続け、成長した個体の姿である。



モデルは、○all Outのラッド○ーチから


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