ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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36のお話[過去]

 

 

 

 

緒有賀ノ国(おうがのくに)

陽ノ本(ひのもと)の島、その中央に位置している、緒有賀家が治めている国である。

 

現在は西側にある帝国(みかどこく)と同盟をしているだけのそこまで広くない領地の国であるのだが、現国主の緒有賀(おうが)総坐之介(そうざのすけ)天信(あまのぶ)の統治が良く、内政や同盟国との関係などを良好に保てている、平穏な国である。

 

 

国主を務めている天信。

少年期には奇矯な行動や奇抜な格好などをし、座学などの学問などは大してやらず、外に出ては馬を乗り回したり、弓での狩りや城下町での喧嘩などと、良い家柄の子供とは思われなく、周りからは阿呆者と軽んじられる人物であった。

 

しかし、転機が訪れたのは天信が二十になった歳である。

彼の理解者であった、父の天善(あまよし)が戦で戦死し、天善の子供6人の中から、四男だった天信が国主を継げという遺言書が届けられた。

その時、国主相続に納得いかなく、反乱する兄弟や家臣等もいたが、それらを速やかに鎮圧。

父・天善が討ち死にした、戦を引き継ぎ、勝ち戦へと納めた。

 

そこから三年の月日が流れ、彼は自国にもっと新しいものを取り入れるべく、不要な関所を取り壊したり、道の整備をさせたりと物の流通を円滑する活動を行うなど、国をより良くすることに力を入れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

四郎(しろう)、お茶と団子は用意出来たかい?」

「どうぞ。」

 

そんな、緒有賀ノ国・緒有賀城の城下町で営まれている一店の茶屋。

四郎と呼ばれた青年が盆の上に椀に入った緑茶と団子を台に起き、おばあさんが客のもとへと運んでいった。

 

「はいはい、お茶に団子二串ですよ、元ちゃん。」

「ああ、婆ちゃん。 あんがとよ!」

注文品を受け取った、捻り鉢巻に藍色の半纏といかにも大工職をしてますと言っている様な気のよさそうな三十・壮年の男。

元さんと呼ばれていたその男はお茶を一口飲み、団子を二本をぺろりと平らげる。

 

「あー美味ぇ!!!

 どんどん腕ぇ上げてんじゃあねえかい、四坊!」

「どうも。」

「けっ、愛想はまだまだかかりそうだねぇー。」

「ほほほ。 手伝ってくれるだけで十分なのよ元さん。」

「あー…葉太郎はどうしてんだい?」

「朝に帰ってきて、まだ寝てるよ。 あの穀潰しは…。」

お婆さんは溜め息を吐いた後、店の外へと出ていった。

 

「ははは…嫌味たっぷり…。 実の息子にぐーたらされてちゃーなあ。」

「…。」

「四坊、おめぇがこの茶屋を手伝ってやってるのは、婆さんは嬉しいと思うぜ?

 ここの爺さんが亡くなった後もばあさんが一人で切り盛りしてたんだからな…。」

「婆様には、感謝してます。 流れ者だった自分に働き口と住む所をくれました。」

「何言ってんだい?」

おばあさんが外から蓬の葉が入った竹ざるを持って戻ってきた。

 

「年明けからもう、三ヶ月前にもなるんだねぇ。

 あたしが荷物を背負って帰ってる時にこの子がそれを持ってくれてねぇ。」

「腰、痛そうにしていたから…。」

「雪も積もってたし…寒いとどうも体を痛めやすいからねぇ。

 あの時は本当に…人の優しさに涙が出そうになっちまってねぇ。」

しみじみとした表情をしながら、思い出すおばあさん。

 

このおばあさんの名は、始葉(はるは)。 周りから(はる)ばあと言われている。

天信が緒有賀の領主になる前から、ここの茶屋を今は亡き夫と営み、今は一人でここを切り盛りしている。

大工の元さんの様な常連がいるように周りからは慕われて、団子も美味しいのだが、お茶を淹れるのを少し苦手。

 

 

四郎と出会う前、始ばあは気落ちしていた。

原因は、彼女の息子の葉太郎(ようたろう)である。

彼に店を継ぐ気はなく、かといって定期的な収入を得られる職に就いているわけでも無い。

日雇いで稼いだなけなしの金を酒や博打などに使う、ぐーたら息子。

 

葉太郎も35になろうとしているのだが現状を変える気はなさそうであり、夫と昔からやってきていたお茶屋の跡継ぎもいない。

新年を迎えたというのにそんな先行きの暗い未来しか見えなくなっていた始ばあさん。

そんな状況で人に優しくされたのだ…彼女が感極まったのも無理はないだろう。

 

 

もっとも、ここにいる二人にはそんな心境だった事を彼女は話してはいないのだが…。

「荷を運んだだけでここまでしてくれたのは、あなたが初めてです。」

「ふふふ、そーかい。 ここで働いている間は少ないだろうけど…お給金を出すから安心おし。

 家守の(すみ)さんも、ちゃんと払って、問題起こさなきゃ、あの長屋に住み続けての良いって言ってるくれてるからねぇ。」

「わかりました。」

「四坊、困ったことがあったら力になるぜ! 緒有賀の奴らは情が厚いのが自慢だからなあ!

 そんじゃあ、ご馳走さん!! 銭置いとくぜ!」

「はいはい。 元さん、ご贔屓にー。」

「毎度です。」

「四郎、あんたも休憩しなさいな? もう、申の刻(15時)…ずっと手伝ってくれてるからねぇ。」

「はい。 じゃあ、少し散歩でもしてきます。」

「はいはい、行ってらっしゃいねぇ。」

四郎は始ばあさんに会釈し、店を後にした。

 

 

「笑わないけど、口は丁寧で働き者だし、良い子だよ。」

「ふぅわぁ〜〜〜………。 お袋〜腹へった〜…なんかねえ?」

四郎が出て行ったすぐ後に店の奥にある寝床から見た目も活力も冴えない男が出てくる。

 

「葉太郎! あんた、今頃起きてきよってからに!」

「あー…寝起きにがみがみと説教はやめてくれよ…。

 それより、腹減ったって。」

「何が腹減っただい! ろくすっぽ働きもしない奴に食わせるものなんて、うちには無いんだよ!」

「えー?そんなこと言うなよ〜お袋〜? 団子一串だけでも良いからさ〜。」

「日銭ぐらい稼いでんだったら、外で食ってきな。」

「そんなん昨日、博打で磨っち…あっ、やべ…。」

余計なことが口から滑り落ち、咄嗟に口に手を当てる葉太郎だったが、時すでに遅し…。

始ばあさん下に俯き、わなわなと震えていた。

 

「こっっっっんの!!! ろくでなしのぐーたらがあああぁぁ!!!!!」

焙烙玉が爆裂するかの如く、大声が周りに響き渡るのであった。

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

そんな、騒ぎが茶屋で起きている最中、四郎は緒有賀ノ国の城下町を歩いていた。

散歩…と彼は言っていたが、辺りを見て回る訳でもなく、あてもない遊歩に興じている様でもない。

むしろ、目的地に向かうように無駄のない歩の進め方であった。

 

城の南側に向かうとそこに宿屋や飲食店などの建物が並んでいる。

その建物の間に入っていき、店の者達が使っている裏口や井戸のある場所へと出てくる。

 

(気配はなし…。)

そして、四郎は懐から何重にも折り畳んだ紙を取り出し、宿屋の二階の一室に投げ入れた。

「よし。」

確認を終え、彼はその場を後にしようとしたその時、投げ入れた一室からも同じような紙が投げられる。

それをさっと拾い上げ、四郎は広げる。

 

 

【夜、深まった刻に町外にある、荒れた墓地へとお越しください。】

 

 

「ふむ…。」

それを通りに出るまでに読み終え、その紙を飲み込む、四郎。

 

 

(呼び出し? また、幻夜(げんや)爺様からの伝言? 

 歌山(かやま)の国盗りも一段落したぐらいの筈だ…。何か急いでいるのか?

 …いや、どうでもいい、命令があればそうするだけ。)

疑問が出るがそれを振り払い、元の茶屋へと戻る四郎…いや…。

 

 

数夜忍衆の一人、黒四円(こくしまる)なのであった。

 

 

 

 

 





◇ちょい記載 設定のお話


陽ノ本の島は大陸に比べればほんの小さな島。
モデルは言わずもがなの日本です!
大陸は、ユーラシア大陸とアフリカ大陸を繋げたイメージだと思っていただければOKです。


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