ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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41のお話

 

 

 

ークワール街・ギルド役所ー

 

 

 

「受けた依頼、全部の対象物だ。」

「はいはい。」

ギルドに戻った黒四円(こくしまる)

3つの仕事の依頼品を受付にスッと渡した。

 

ゴブリン達の一部位・落とし物・カゴに入れたキノコ類。

彼の顔を見たエリエは露骨に顔をしかめたが、次々と依頼品を裏へと持っていってくれる。

 

(少し待ちだな。)

彼は、腕を組み、大人しく待つ。

 

 

「どうぞ、報酬です。」

「うむ、ありがとう。」

隣では、先に着いたフレイヤが依頼達成の報酬を受け取っていた。

 

オーク退治の高額報酬。

そして並行して、別の依頼も進めてたのか、かなり分厚い封筒が彼女に渡されていた。

 

「ん?」

そして、フレイヤが次の依頼書を提出していたのだが、その枚数を見て、黒四円は疑問が出た。

 

「おい?」

「なんだ?」

「まだそんなに仕事するのか?」

彼女が提出した依頼書はなんと6枚。

 

時刻は明るいとはいえ、15時を過ぎている。

いくら簡単な内容の依頼でさえ、今から6件の仕事をこなしていたら日も暮れるだろう。

 

「どれだけ金が要るのか知らんが、今日はそれで十分じゃないのか?」

「うるさい。」

「いや、しかし…。」

「私にはお金が必要なの。

 貴方は関係ないんだから、口出ししてこないで。」

「うーむ…。」

まるで相手にしないフレイヤ。

もう少し説得を試みようとする黒四円だったのだが。

 

「コクシさ~ん!♡♡♡」

「!?」

突如、片腕に抱きついてくる女性。

ギルドの受付嬢の1人、モモ・フアンクワリである。

 

エリエの騒動の後、黒四円と共に一夜過ごした。

彼女曰く、初めて自分をフワフワな世界に連れていかれたと言い、あれ以降すっかり彼に懐いている。

 

「あ・ああ、君か…。」

「も~う、モモですって! いい加減おぼえてくださいよ~?」スリスリ

 

このスキンシップに黒四円は、毎度困惑する。

迷惑という訳ではないが、いかんせんどう対応すれば良いのか、彼はよくわかっていないのだ。

 

例えると経験もマニュアルもないのにこの機械を動かしてと急に言われるようなもの…。

毎度、黒四円は彼女の事になると言葉が詰まる。

 

 

「ああ、すまない。」

「それよりもお金出来たんですか~? だったら、今夜どうですか~?♡」

「いや…今回は少し入りようで…。」

「え~!?いいじゃないですかー! お安くしときますから―!!!」

「お・おい…。」

「汚らわしい…。」

グイグイと来るモモに困っている黒四円の横から不意に侮蔑の言葉が聞こえてくる。

それを発したのはフレイヤであり、彼女の方を見ると両者を軽蔑しきった目で見ていた。

 

「先ほどギルドでも貴方の噂は聞いていると話したわよね?

 日陰者に気取り屋、馬鹿真面目など…。

 この街の人間の言う事なんて大して信用してなかったけど、時には本当の噂もあるみたいね。」

「?」

「貴方が女好きの(けだもの)だったって噂…本当に最低…。」

「むう…。」

バツが悪くなり、頭を掻く黒四円。

 

「しかも、そのギルド嬢、有名な色欲魔だろう?

 そんな相手とも…その…///。

 情事を…するなぞ…///。」

「どうした? 顔赤いぞ?」

「や・やかましい!

 ともかく、そんな相手ともそのような行為をするなぞ、不潔だ。」

「むぅ~。

 この街の人達の噂は信じないんじゃなかったんですか~?」

「君のそういう現場は私の目にも入ったことがあるのだ!」

「え~?覗いたんですか~?♡」

「偶々、目に入ったのだ!!!」

「おい、声でかいぞ?」

ハッと我に返ったフレイヤは、咳払いをする。

 

「ともかく、貴方は女性を金で買う、下衆共と同じということだ。」

「…否定は出来ないな。」

「ふん、開き直ったか。

 私にはそんな無駄金を使っている余裕はない。

 だから、私の働き方に口を出してくるな。」

そのまま黒四円に背を向け、フレイヤはギルドから出て行くのであった。

 

 

 

「トゲトゲしちゃって~。 処女の癖に~。」

「関係あるのか?」

「ないわよアホ。 ってか騒ぐなら出てけ。」

黒四円の依頼の処理を終えたエリエが戻ってきた。

呆れた様な目をしながらも彼の報酬を受付台に投げ置く。

 

「ああ、すまない。」

「はいはい。

 …なに? アンタ、【堅物・陽緋(ひひ)女】と知り合い?」

「なんだそりゃ?」

「あの女の事よ。

 陰で同業者達にそう言われてるの。」

半笑いに呆れながら説明するエリエ。

 

 

黒四円がここに来る前から真面目にギルド作業者の仕事をし続けているフレイヤ。

勤務態度に対する姿勢もそうだが、彼女はこの街での悪行を目撃したら、偶にそれを止めたりなどもしてたことがあるらしい。

 

「そんな素行と陽ノ本人(ひのもとじん)の陽と緋色の髪してるから、そう言われてんの。」

「あはは~くだらな~い。」

 

「そういう意味か。

 狒々(ひひ)なんていうから、あの顔で猿に見られているのかと大いに疑問が出たぞ。」

「美人さんですよね~。 この街で娼婦やってたら、人気出て、更に稼げると思うけどな~?」

「あんな鉄の様な女が娼婦なんて、考えられないわよ。

 エッチは結婚するまで絶対しないとか心の中で決めてそう。」

「あははは~! 何それウケる~!」

 

モモがエリエの冗談で笑っているよそに黒四円がフレイヤが去った方を見つめる。

 

「あの娘、陽ノ本人なんだよな?

 何処から来たとか知ってるか?」

「はあ?何アンタ?

 次のお相手はあの堅物女にしようとしてるの?

 ほんっっっとに、色欲変態下衆野郎ねっ!」

「え~~~!? 溜まってるならモモとしましょうよ! コクシさん!!

 フワッフワにしてあげますから!♡♡♡」

罵倒とお誘いにため息が出てしまう黒四円。

 

「違う。

 口で上手く言えないが…気になるんだ…。

 会ったことも無いが…他人じゃない、そんな気がする…。」

「はあ? 何それ?」

「わからん。」

俯き考えるが一向にピンっとこない。

 

見たことあるが名前が中々出てこず、モヤモヤし続ける、そんなうろ覚えのものを思い出そうとする感覚。

 

 

「んなこと言われても、フルネームと性別ぐらいしかハッキリとしないわよ。

 作業者になるのなんて、簡単だし…。」

エリエが面倒くさそうにしながら、先程、フレイヤが達成したオーク討伐の依頼書を見る。

 

依頼の納品物や討伐対象の部位、作業報告書などを渡された際に依頼書と作業者のギルドカードも共に預かる。

その時にギルド員は、依頼書の達成か未達成かの判の押印。

そして、本人のサインと報酬を渡したかの有無、そして誰が達成したのかを明確にする為に作業者ナンバーを裏面に記載する。

 

オーク討伐の依頼書の裏側に彼女の簡素なサインとギルド作業者のナンバーが書いている。

エリエはナンバーを見て、現在ギルド作業者として登録されているリストを持ってきて、彼女の登録情報のページを開いた。

 

 

「ああ、あったわ。

 登録者名は、HUREIYA・R・ASAHIBANA。

 見た通りの女性で作業者ランクは63ね。」

「へぇ~、なかなかのベテランさんだね~。」

「登録日が5年前だから、作業者としては長続きね。

 あんな性格だし、クソ真面目にやってるから、ランクも早い事、上がってってるんでしょうよ。

 そんで、知りたいことは知れ………ん?」

 

モモとエリエがフレイヤについて簡単に話し合った後、エリエは黒四円の方を見て質問しようとしたが彼の表情を見て、言葉が途切れた。

 

普段と変わらず、表情は乏しい彼。

だが、目が少し見開き、驚いている様子なのはエリエ達にはわかった。

 

 

「なあ…`ASAHIBANA`って言うのは、どういう字だ?」

「はあ?」

「その名前は陽ノ本の人間の姓だ、おそらく…。

 ウエストの字じゃなく、陽ノ本の字だとどう書く?」

「わ・わかんないわよ…陽ノ本の事なんて、あんま興味ないし。」

声を荒げたり、近づいてきている訳でないのだが、何故か詰めて聞かれているように感じてしまい、エリエは少し戸惑った。

 

「そうか、悪いな。」

報酬を手に取り、邪魔したなと一言。

急く様にギルドを後にした。

 

 

 

 

「なんなのよアイツ?」

「急に雰囲気変わっちゃったね~。

 ちぇー、気持ちよくしてもらいたかったのにな~。」

「アンタは、今から仕事でしょ?

 さっさと制服、着替えてきなさいよ。」

「むぅー…エリちゃん、少し真面目になってない?」

「うっさいわねー。

 アンタが受付やらないとアタシ上がれないでしょうが?

 ほら、さっさと行く!」

「は~い。」

「ったく。」

モモは不満そうにしながら、ギルド役所の奥へと引っ込んでいった。

 

頬杖を付きながら、交代まで待機するエリエ。

その間、出入り口の方を見て、物思いにふける。

 

(アイツ…深く首ツッコまないと良いけど…。

 他人に構っても、ろくな事にならないんだから。)

 

様子の変わった黒四円。

それがあの女性・フレイヤと関係があると察し、彼の事を心配するのだが、なんで自分がそんな事を考える必要があるのかと思いなおし、モモが来るまで、それなりに業務をこなしていくのであった。

 

 

 

 

 

 







◇ちょい記載 設定のお話
依頼達成の条件は仕事によって様々であるが、基本的なルールはある。
今回はその一部を紹介。

討伐依頼[魔物] ーーー 討伐した魔物の各部位の一箇所を剥ぎ取る。 
(ゴブリンなら片耳や指一本・ワイルドベアなら爪や牙などである。)

討伐依頼[対人] ーーー 盗賊や犯罪者の身柄の確保、もしくは遺体の回収。
 ※確保・回収が状況により難しい場合、その人物を特定する物品を渡し、状況報告書を提出する。
 (盗賊団やギャングなどの壊滅が条件の場合、ギルドの調査によって達成の有無を確認。 後日、報酬を渡すものとする。)

納品依頼 ーーー 対象物の納品。
 ※明らかに品質の悪い採取物や模倣品。 それらの納品は無効、返却される。

探索依頼 ーーー 未開の地や洞窟、遺跡の調査。
 達成内容は、マッピングや発見した場所、建造物、生物などの報告。

住人依頼 ーーー 街の住人がギルド役所の依頼掲示板に依頼書を貼ってもらい、個人的に作業者に依頼する仕事。
 例:屋根の修理や旅路の護衛、落とし物の捜索など様々。
 *ギルドに払う仲介手数料が掛かってしまうが、ギルド役所が間に入ることにより、依頼内容の達成と作業者側の報酬が約束がされる。





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