ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜 作:モノイクロ
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「っぅおーりゃあああぁぁぁーーー!!!」
「ぅおあ!?」
五年前、
三嶋国との合戦の中、一頭の鹿毛色の馬に跨り、十文字の朱槍を振るう武者、
(ここを通られ…山を超えられてしまえば、春日城は目と鼻の先…易々と通すわけにはいかん!)
妻・ヴェローナと娘・フレイヤが国外に避難して、十日余りが経つ。
家族の船出に立ち会うこともせず、現在、防衛戦の中、槍匡は戦場を駆け、敵軍の足軽達を次々に薙ぎ倒し、そして今、目の前に
(くっそぉー…! 冗談じゃない!
なんで、儂が前線に駆り出されにゃいかんのじゃい!?)
心中で毒吐く参暗刻。
本来、彼の得意分野は忍衆を支持したり、戦略を立てたりする参謀役が適任なのだが、この年に数夜忍衆にやってきた、この男。
新米忍で何が出来るかなど知られてる筈もなく、忍衆を纏めている、
「うおおおぉぉぉーーー!!!」
「「「「「ぎゃああぁぁーーー!!!」」」」」
「うわぁーー!!! 死にとーないわあーーー!!!!!」
兵達と参暗刻に目掛けて、突っ込んでいく槍匡。
「っ!」
「む!?」
しかし、横から鎖に繋がれた苦無が飛んで来たことに勘付いた槍匡は、素早く槍でそれを払い、そちらを見る。
「十文字の朱槍…貴様が槍匡だな。」
防がれた苦無を戻しながら、質問したのは黒四円であった。
「小僧、貴様も
「ああ、あんたは殺れば、春日ノ国獲りもかなり楽になる。」
「はっはっはっ! 敵軍にも買われとる様だな、儂は!」
馬上で槍を回し、自身の力量を黒四円に見せつけるように威嚇する。
(勝てる…とは、言い切れないな。)
黒四円は、自身の得物を構え、後ろにいる参暗刻達に話しかける。
「おい、いつまで面食らってないで戦いに長けてる奴等を呼んでこい。」
(な・なんじゃ、この餓鬼偉そうに…!)
「勝てはしなくても、手傷ぐらいは負わせとく。」
「っ!?」
最初の台詞に苛つきこそした参暗刻だったが、黒四円が捨て身で戦おうとしていることに驚く。
「お・お主…。」
「早く行け。」
「っ…!」
そして、参暗刻と他の者達は一斉にその場を後にした。
「ふっふっふっ…見た所、儂の娘と歳が近そうだな?
小僧! 名乗っておけ!!」
「断る。 俺は武士じゃない。」
「なぬぅ!?」
「何処の国に自分の素性を話す忍がいる?」
「むうぅ……。
では、こうしよう! 儂が勝ったら、小僧、名を教えろ。」
「は?」
黒四円は、思わず間の抜けた声を出してしまう。
(こいつ、自国の状況をわかっていないのか?)
三嶋国と春日ノ国、戦況は三嶋国が圧倒的に優勢。
三嶋の姑息な策略や数夜忍衆の容赦のない、裏工作によるものもある。
しかし、一番の春日ノ国の痛手は、両国が戦に入る前、大規模な台風があり、春日ノ国は土地の復興整備を行なっていたことだ。
人を動かしたので、国が備蓄していた年貢の多大な消費。
水害や風害による土地や人々への影響…。
まさに満身創痍な国勢状況。
この隙を突くように三嶋軍は侵攻をし続け、戦況は三嶋優勢へと傾いていく。
一つの国獲りを成功し、調子づいていた三嶋は二つ目の春日ノ国も勢いのまま獲ろうとしていたのだ。
そして、この強運……天赦日の恩恵であろう。
そして、現在、花中平野での防衛戦を強いられていた春日軍。
ここを通り、奥の山岳地帯を超えられれば、春日ノ国を治める国主がいる城。
春日城が囲まれ、落とされてしまうということは槍匡もわかっているはずだ。
(気を抜かそうとでもしてるのか?)
なのに、今自身の目の前にいるこの槍匡という男は、堂々とした快活な姿で惚けた事を言ってきたのである。
「よぉし!決まりだ!
では、いくぞおおおーーー小僧っ子ぉーーー!!!!!」
「っ!」
そして、槍匡が馬を走らせ、黒四円に向かってくる。
この花中平野で一番の勝負が始まる。
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『…? なんだ…?』
ぼんやりと意識が入り込んでくる。
不思議な空間だった。
上は月が出ているが星が無く、雲が多い朧月夜。
月明かりが指してくれているが周りに何があるかわからないほどの常闇。
立っている地は水面が広がっており、足先までしか浸かっていないのだが、水底が見えない。
黒四円は、水面に自身の過去の出来事を映っており、まるで芝居を観るように、自分の体験したことを客観的に観ている状態だった。
⦅確か、婆さんの宿に泊まり、朝火華の娘やそれに関係する事を思い出していて…。
ということは、これは夢の中か何かか…?⦆
さっきまで宿にいた筈が気づけばこの異様な空間に立っている。
これは夢か何かの世界だと黒四円は結論付けた。
⦅寝台で横になり、目を閉じて、彼女らの事を考えていたが、流石に寝てしまったか…。
しかし、不思議な夢を見るもんだ。⦆
自分が槍匡と戦っている。
馬に乗って、突っ込んでくる槍匡の薙ぎ払いを躱し、追いかける自身。
鎖には苦無と鎌を取り付けていた当時、距離が縮め、苦無部分を彼に目掛けて投げるが、それを掴まれていた。
⦅
その後の戦いのシーンも流れ、第三者目線で見ている彼は改めてそう思う。
『ほっほっほっ。
春日城落とし…その名勝負を思い出しとるようじゃのう~。』
『っ!?』
水面を見ている黒四円は、突如声のしたほうを見て驚愕する。
聞き覚えのある声であり、さっきまで目の前に誰もいなかった筈なのにその声は突如として聞こえてきたのである。
『くっくっくっ…なんじゃ、黒四?』
『幻夜…!?』
目の前には水の上に立つように幻夜がそこにいた。
『面食らっとるのぉ~。』
『あんた…生きてたのか…?』
『あ~ん? な~にを言ってんじゃ?』
呆れたようにそう言い、彼は水面に腰を下ろす。
『寝惚けている夢、幻の世界…何が出て、誰が現れても可笑しくあるまい。』
『…。』
『もっとも、あの時、儂はまだ生きていて、儂が今、術をかけてるのかもしれんがの~?』
含み笑いをしながら、顎を撫でる幻夜。
その様子を見て、黒四円は、答えが出ると思えなくなった。
『まあ、いい。』
『お? あっさり引き下がるの?』
『あんたとの因縁は一先ず俺の中で決している。
今、俺にとっては…。』
『朝火華の娘の事か?』
『…。』
『坊主頭の茶店の主人が言っておったが、随分と苦労しておるようじゃの~?
三嶋や儂、お主のせいで。』
『ああ。』
『あの娘にこの合戦の後の事を言うつもりか? 恨まれるぞ~?』
『ああ。』
『じゃが、言わんとお主の中の罪悪感が日増しに大きくなる…難しい話よの~?』
嘲笑う幻夜。
『相変わらず性根の腐った爺だ。』
『くっくっくっ…まあ、精々悩み苦しむが良い。
それが儂なりの仕返しじゃ…。』
そう言いながら幻夜は霧のように消えていく。
『…。』
それを見届けると彼の視界に靄がかかり始めた。
『ああ…精々観とけ。
俺の…第弐の
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「朝か…。」
開けっ放しにした部屋の窓から、朝日の光が差し込んでいるのが見える。
夢なんてものは、うろ覚えになりがちであるが、先程見ていたことを鮮明に覚えている黒四円。
正直、自分が今、目覚めたのかどうかも曖昧な感覚である。
(まあ、一日や二日寝なくても大丈夫だが、体はいつも通り動くし、ちゃんと休息はとれてる。)
グッと伸びをし、自分の体調を確認し終え、ベットから立ち上がる。
「とりあえず、今日も日銭を稼ぐか。」
部屋を出る、黒四円。
複雑な物語を歩む一人の元忍の青年。
故郷から離れ、異国で苦労しながら生きる武家の娘。
個々の物語が今日も止まらずに動く。
この世の中が絶えず動き続ける限り、彼らの物語も動き続ける。
◇ちょい記載 設定のお話
このお話の段階での三嶋国の国獲りの数は、まだ1ヶ国。
そして、春日ノ国を潰し、2ヶ国。
前のお話で出てきた、
最初に奪い取った国も数夜忍衆の働きの影響が大きく、三嶋