ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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4のお話

 

 

 

 

 

(よし、着いたな。

 このギルドの場所は覚えた。)

ライナと別れた後の黒四円は、再びギルドに訪れていた。

目的は、新たに依頼を受ける為である。

 

 

 

ギルドの扉を開け、中に入る黒四円。

すると彼をジロジロと見る、嫌な視線が彼の気を引き締め直す。

(気は常に張ってはいるが…もう少し警戒しておくか…。)

周りに気は配り、警戒するが見回す所作などはしない。

視線を動かし、気配や自分の感覚で拾える情報を拾える様にする。

 

その気構えのまま依頼が張り出されている、掲示板の前に立ち、依頼書を見る。

(さてと、依頼だがやはり受けるのは…。)

彼の中で受ける依頼は決まっており、その依頼を掲示板からはがし、受付に持っていく。

 

 

受付にはさっきの受付嬢が頬杖をつきながら仏頂面で座っていたが、黒四円は気にせずに依頼書をその子に見せた。

「手続きを頼む。」

「はぁ…はいはい…。」

溜め息をこぼしながらも依頼書の下の欄に承諾と書かれた緑色の判子を押し、依頼書を再び黒四円に渡す受付嬢。

 

「ああ、すまんな。

 ちなみに聞きたいんだが、しけつ…じゃなく、このライフハーブの採取依頼はこの1件で終わりか?」

「はぁ?」

質問内容に疑問を持った、受付嬢は彼の横を向いて体を黒四円の方へと向き直す。

 

「ライフハーブの採取依頼なんて何百束も依頼書が出来るほどあるけど〜。

 なに? まだ、受けるの?」

「ああ。

 日が落ちるまでに後、何件かやろうと。」

「あっそ、地味な上にしょっぱいのによくやるわ。

 でも、残念ね。

 依頼の掛け持ちはランク4以上で出来るようになるの。」

「そうか。」

「ええ、アンタみたいな1ランクの作業者なんて、信用無いのよ。

 依頼を受けるだけ受けて、結局1件もされなかったら迷惑極まりないもの。」

小馬鹿にしたような失笑で受付嬢は黒四円にそう言う。

 

「まあ、ライフハーブの採取依頼が無くなることなんてまず無いと思うけどね。

 外傷薬の主原料。

 癒しと安全カンパニーっていう超大手会社がこの大陸のギルド全部にライフハーブの採取を依頼を出してるし。

 それに小さな村の薬売りの店だって依頼を出すし。」

「ほう…。

 つまり、このライフハーブ採取の依頼は常にどこのギルドにあると思ってもいいんだな?」

「ええ、そうゆうことね。

 まあ、精々地道にがんばればいいんじゃない?

 汚ったないアンタにはお似合いの…。」

「それじゃあ行ってくる。」

「ちょ…アタシ、まだ…。」

「ああ、ギルド備品のカゴ、また借りていくぞ。」

嫌味を言おうとした受付嬢だったが、黒四円は急いで依頼をこなしたかったからだろうか、必要なことを聞いたらさっさっとカゴを背中(しょ)いギルドから出て行った。

 

 

作業者の中には性格が悪い人たちも当然おり、クワール街のギルドなら尚更である。

もっと割のいい仕事はないのかと文句だけを言ってきたり、依頼未達成のくせにあれこれ理由をつけ、なんとか少しでも報酬を貰おうとするグズ。

 

そんな客でもギルド側は丁重に応対しようとするのが理想であるが、クワール街のギルド職員も皆、問題を起こし、このギルドに左遷させられた、言わば厄介者が大半であり、今、黒四円と話していた受付嬢・エリエもその1人である。

彼女の口の悪さと態度の悪さに目に余るものもあり、口論になろうものなら彼女は平然と作業者を笑い、罵倒し返しているのだ。

 

「何よアイツ…。

 地味できったない身なりしてるくせに気取っちゃって…。」

なので彼女からしてみたら少々以外だったのである。

言い返しもせず、スッとその場を立ち去る相手は。

 

(くそっ…腹立つわね…!

 まあ、いいわ。

 採取依頼ばかりしようとしてるんだから、どうせ、実力もないただの雑魚よ。

 無口そうだったから口も上手くなさそうだし…。

 そんな奴、この街じゃ何もかも奪われて終わり。

 とっとと、くたばればいいのよ。)

心の中で毒づきながらエリエは別の作業を適当に済ませていく。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

「依頼完了だ。

 報酬と次の依頼書も持ってきたから、受けさせてくれ。」

「…はい?」

受付所で書類整理をしていたエリエの目の前に黒四円が立っていたのだ。

おおよそさっき依頼を受けた、30分後辺りに…。

 

「なんだ、はやくしてくれないか。」

「いやいや、はやすぎでしょあんた!?

 さっき、受けて出て行ったばかりじゃない!?」

「そうか?」

「そうよ!

 ちょっと依頼品のチェックをするわ!

 その辺の雑草集めてきても、報酬なんてわたせないんだからね!」

「失敬な。」

 

不服そうな顔をしながらも黒四円は言われた通りにカゴを下ろし、エリエに渡す。

 

「時間かかるのか?」

「はあ?ライフハーブでしょ?

 そんなもんアタシでも鑑定出来るわよ。」

「じゃあ、さっさとしてくれ。」

(こいつ…。)

煩わしそうにする黒四円に腹を立てるエリエだったが、さっきの事といい、一々反応するのも癪なのか、何も言い返さずにカゴの中を改める。

そして、カゴの中に入っているのはしっかりと全部ライフハーブであった。

 

(全部ライフハーブ…マジ…!?)

通常ライフハーブ事態、そこまで難しく選定する薬草ではない。

特徴を理解していれば子供にでも判別できる植物である。

 

しかし、エリエが驚いていたのは黒四円の依頼品調達までの速さである。

彼が出て行ったときに時計の針が指していた時間は丁度、14:30…。

そして、今彼がこの場で戻り、指している時計の針は15:00…。

わずか、30分前後で彼はライフハーブをカゴ一杯にまで満たし、ギルドに戻ってきたのである。

 

(このギルドから街に出るだけで10分ぐらいかかりそうなのにどうやって…?)

「おい、まだなのか?」

「え?

 ああ、問題ないわよ…。

 ちょっと、待ってなさい…。」

考え込んでいたエリエだったが、黒四円からしたら知った事じゃなく、エリエを急かす。

 

「ほら、報酬とまた持ってきた依頼書よ。

 承諾のハンコは押しといたから。」

「ああ、すまない。

 む? 報酬が少し多い気がするが…。」

「依頼量よりも多く持ってきてるんだから当たり前じゃない。

 備考欄見てなかったの?」

「そういえば…よく見てなかったな。」

 

黒四円はよく見ていなかったがさっきの依頼書は大企業が出した依頼であり、備考欄には依頼量よりも多く採集してくれた場合、追加で200Yの報酬を出すとのことだった。

ライナと一緒に受けた依頼は個人で頼んできた為だったか、備考欄には特別何も書かれておらず、報酬も達成分しかもらえなかった。

黒四円は同じ依頼で一定の報酬しかもらえないんだろうと思い込んでしまっていた。

 

「同じ仕事内容でも羽振りの良い依頼人なら報酬も多く出してくれるわよ。」

「そうなのか、わかった。

 助言感謝する。」

「べ・別にそんなつもりじゃ…!」

「じゃあ、さきに承諾してくれた依頼もさっさとやってくる。」

「え?

 あっちょっと!?」

なにか言おうとするエリエだったが黒四円は気にする様子もなく、ギルドから出ていった。

 

「なによ…あの男…。

 調子狂うわ…。」

エリエは黒四円が出て行った扉を見ながら、そう呟いた。

 

(この街の外にライフハーブの群生地であったのかしら?

 いや、それならそんなぼろい金稼ぎ、金にがめついこの街の作業者どもが黙っていない…。

 群生地とまでは言わないけど、たまたま多く生えてる所があったのかしら。

 まあ、なんにしても次はそんなに早く帰ってこないでしょ。)

イスに座り、頬杖をつくエリエ。

 

(でも、いつ以来だっけ…?

 素直に仕事関係で感謝されたのって…。)

 

彼女は初めて仕事に就き、張り切って仕事していた昔の事を思い出す。

 

(こんな…クソみたいな街に左遷されなきゃアタシだってもう少しは…。

 あーやめやめ!

 後、もうちょいで終業だし…余計な事考えないようにしよ。)

過去の嫌な出来事は忘れ、机に突っ伏して何も考えないようにするエリエだった。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

「おう、終わったぞ。

 報酬と次の承諾を頼む。」

「え…?」

突っ伏した顔を上げると黒四円が立っており、カゴ一杯のライフハーブと次の採取依頼をエリエに差し出していた。

エリエは時間を見る。

15:30頃だった。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

「おい、終わった。

 次頼む。」

「ええ、はい。」

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

「終わったぞ、次だ」

「…はい。」

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

「次だ頼む。」

「ん…。」

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

「次だ。」

「…。」スッ

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

「終わったぞ。

 次の依頼を…。」

「しぃーーーるぅーーーかぁーーー!!!」

ライナと共にやったライフハーブ採取の依頼と合わせ、通算7度目の採取依頼が完了。

8度目を受けようとした黒四円だったが、その時、エリエの大声がギルド内を響かせた。

 

「なんだ?

 急にでかい声出しやがって…?」

「急にじゃないわよ!!!

 何度も何度も大量にライフハーブ持ってきて!!!

 何回選定しなきゃなんないのよ!?

 まだ、アンタが持ってきたハーブの選定と届け先の手続きだって終わってないのよ!?

 しかも、帰ってくんのちょっとずつ早くなってってるし!

 なに!? 嫌がらせ!?」

「それがそっちの仕事だろう?」

「ッ―――。

 とにかく! もう、アタシ、今日の業務時間は終わったから!

 まだ、草集めしたいんなら、遅番の職員に頼みなさい!!!」

 

怒鳴りながら、エリエは職員関係者しか入れない奥の扉へと行ってしまった。

「何故、俺は怒られたのだ…?」

首を傾げながら、疑問に思う黒四円。

 

(あの女、大声出しやがって…。

 変に目立ちたくないというのに。)

顔を下に向けながら、黒四円は1つしか開いていない別の受付に行き、2人ほど並んでいる後ろへと行くのであった。

 

 

ーーー

 

 

「ったく!

 あの野郎!」

 

ギルドの女子更衣室で着替えをしようとするエリエ。

私物の入っている、ロッカーを荒々しく開ける。

 

「なに~?

 どったのエリちん~?」

「あぁ? なんだ、モモか…。」

気の抜けるような声にエリエは振り返ってみるとそこには、モモが笑いながら立っていた。

 

 

モモ・フアンクワリは、エリエとギルドで共に働く職場の人間であり、同年代だからかよく喋る間柄である。

ピンク髪のマッシュヘアで背丈はエリエと同じ160センチ前後であり、エリエのスレンダーな体つきとは逆の安産体型。

右頬に小さなタトゥーが彫られており、デザインはハートが3つ。

下から上にかけて少しずつハートが大きくなり、一番上のハートの中には下に俯くように咲いている白い花が繊細に描かれていた。

 

 

「ピリピリしてるね~。

 エッチ豚な上司さんに無許可でおさわりでもされたの~?」

「そんなんしてきたらアイツのモノ、潰すわよ。」

「あはは~、まあいいかもね~。

 あの人横幅は大きいのにアッチは小さかったんだよね~…。」

「うげっ…アンタ、あの豚ともしヤッてんの?

 ないわ~…。」

彼女達の口から次々と娼婦のような話題が上がる。

 

 

2人はギルドとは別のやり方で金を稼いだりもしている。

それは自分の身を男性にその時限り売る、平たく言えば売春である。

エリエはお金の為にモモは単純に行為で得られる快楽が欲しくてやっている。

 

 

「しようと思ったけど~。

 デカくしてもモモの人差し指ぐらいしかなくって~。

 それで冷めちゃったから、すぐに終わらせちゃった〜…

 はやかったな〜…。」

「へぇ~見た目も性格もダメでアッチもダメとか、もう死んで生まれ変わるしかないわね、あのエロ豚…。

 って、そうじゃなくて…!」

 

話がいつの間にかすり替わってるのに気づき、元の話題に戻すエリエ。

 

「あの陰険草野郎のことよ!」

「なにそれ~面白~い。」

「何も面白くないわよ!

 アイツの終わった依頼の片づけも終わってないのに次だ次だ次だ…。

 おまけに正論パンチでイラつかせてくるわ、散々よ…!」

「あはは~。

 正論ならしょうがないじゃ~ん。」

「この街でギルド始める様なヤツにまともな事いう資格なんてないのよ!」

 

バンッとロッカーを叩き、大声で怒鳴るエリエ。

 

「こわいねぇ~。

 ちなみにその人、どんな人だった~?」

「はぁ…?

 別にどんなって…暗そうな服装して、貧乏そうで…。」

「かっこよかった~?」

「さあ、知らない。

 小汚くて見てなかったし…。」

「そっか~。

 カッコよくて気持ちよくしてくれそうなら味見してみたいな~。」

「この色欲魔。」

「ウフフ…どうだろね~?

 まあ、エリちんのお金持ってるかどうかの審査眼の的中率スゴイし、お金出来るまでは保留かな~。

 モモも流石に無料(タダ)でしてあげるほど安くないし~。」

モモはそう言い終えると私服からギルドの制服に着替え終えていた。

 

「じゃあね~エリちん~。

 おつかれ~。」

「はいはい、お疲れさん。

 ガンバ~。」

手を振って仕事に行くモモに気の抜けるような労いの言葉をかけるエリエ。

 

(アタシもさっさと着替えよ。

 ()探しは…腹立って野郎の顔なんて見たくないから今夜はいいや…。)

 

帰った後に何をするか考えながら、着替え終わるエリエ。

そのまま更衣室を後にする。

 

 

 

ーーー

 

 

 

(ん?

 あ、アイツ…。)

着替え終わったエリエ。

ギルド職員用の裏口から出て、正面に回るとそこに黒四円がいた。

彼も丁度、出入口から出ていき、今から採取に向かおうとしてる所だった。

 

(はあ、何あんなのを気にしてるんだかアタシは…。

 心底どうでもいいじゃない、あんな奴の事なん…。 

 あれ…?)

エリエが自分の目を疑った。

彼女が3,4秒間目を離した内に出入口の扉の前にいた、黒四円は一瞬のうちにいなくなっていたのだ。

 

(嘘…!? どこ行ったのよアイツ。)

辺りを見回すエリエだったが黒四円を見つけることは出来なかったのであった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

(今日はもう、この仕事を片付けたら終わりにしよう。)

そう考えながら黒四円は走っていた。

 

彼が通っているのはこの街の建物の屋根などである。

不安定な場でも颯爽と駈け抜け、建物と建物の間に跳び移って行き、みるみるうちにクワール街を守る、ボロボロな巨大防壁が目の前まで来る。

高さにして約20m近くはあるのだろうか。

 

(ライナと一緒に薬草採取に行ったのが幸いだったな。

 この街の東の方に良い群生地を発見できた。)

 

高い防壁を跳び越え、そのまま街の外へと跳び去る。

 

忍時代に培った、馬と同様に駆け抜けれる瞬足と十里は休まずに走れる心肺機能。

そして高い壁をも超える豪脚が彼の速過ぎる仕事終わりの理由である。

 

(しかし、長旅と相まってか少々くたびれたな…。

 金も今日分ぐらいは十二分に蓄えれたし、さっさと終わらせて、床につこう。)

 

森の木に着地し、山猿のように森を駆け抜けていく黒四円。

彼の抜けて行った道の草木や枝の葉ががユラユラと揺れ動くのであった。

 

 

 

 

 

 

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