ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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50のお話

 

 

 

南方面にあるグレイツィアの住まい(アジト)である1軒。

2階にある、ひと部屋でマラリアはソファに座りながら、葉巻を吸っていた。

 

「姐さん、連れてきました。」

フゥ~… 「ああ、入っとくれ。」

ノックの後にフリードの声が聞こえたので、マラリアは入るように促した。

 

 

「来たねぇ、若造。」

部屋に入るとマラリアがいる。

宿屋・ポベロンにいる時と全く同じ服装に雰囲気。

黒四円(こくしまる)の中で知っている彼女の姿がそのまま、このマフィアのアジトの中に居たのだ。

 

「…。」

「色々と聞きたい事があるって顔だねぇー。」

「大体察しはつくが…はっきりはさせておきたいかもな。」

「まあ、座りな。」

 

マラリアに促され、対面のソファに腰掛ける黒四円。

 

「フリード、ルシー、話すから少し…。」

「外しませんよ姐さん? 俺ら2人が監視しておきます。」

「あのねぇ〜アンタら? ボスが仕事頼んでたり、上がり稼いだり…他にやる事あるだろうに?」

「現ボスからの命令はありませんし、上納金の方も十分に達成していますので安心してください。」

「母様、立場を考えて。」

「チッ…洒落臭いねぇ〜。」

 

悪態をつくマラリアを無視し、フリードは黒四円の後ろ、ルシーヴィラはマラリアの横に立つ。

 

「婆さん…あんたは…。」

「ああ、元ボスさね。 このグレイツィアっていう家族のね。」

「そうか。」

「なんだい、やけにあっさり受け入れるね〜。 つまらん…。」

「こんな所に連れてこられたし、そこの二人やさっきの奴らの発言…。

 後は、まあ…初めてあんたの宿を利用した時とかにな…。」

 

なけなしの金を全部払い、お情けで他の客との相部屋で一晩泊まったあの日…。

その客から盗(す)った金を見せ、わざわざ正規の宿泊料を払おうとした黒四円だったが、マラリアは彼が最初から金を隠し持ち、自分を騙そうとしたのかと彼女は思ってしまった。

その時に感じさせた重圧を彼はまだ、覚えている。

 

「あんな圧迫感のある空気…普通の人間には出せない。 只者じゃないとは思っていたよ。」

「当たり前だ、初代ボスから跡を継ぎ…グレイツィア・ファミリーをここまで大きくしてきたのは…他ならぬ姐さんだ。」

「フリード、そういうのは口に出すもんじゃないよ。

 それにアタシだけの力じゃない…。

 亡くなっちまった奴…そんで今、アンタらの様に尽くしてくれている家族のおかげだよ…。」

 

そう言うとフリードとルシーヴィラが感慨深そうな表情を見せた。

 

「元は組織の頭って言ってたな? 今は違うのか?」

「ああ。 今は、ハワードっていうのがこいつらを引っ張っていってるよ。」

「血縁か?」

「違うよ。 長い事ここに居るってだけの事さ。」

「意外だな。 そういうのって身内とかにやらせないのか?」

「生憎、アタシゃー今、独身でね。」

 

「それなら、真に信用している者とかに任せるんじゃ…。」

「ハワ……現ボスが何かしてきても問題ない。

 姐さんやそれに慕う者達の信用を裏切るような行動をすれば…その時はまた姐さんがその席に座るだけのこと…。」

「フリード…口が過ぎるよ?

 あれは、アンタ等よりも長く、仕事もできるんだから。」

「母様の言う通り。 現ボスは今の所、問題ない。」

「すいません…姐さん、気をつけます。」

フリードが頭を下げる。

 

今のやり取りを見るにどうやら、現ボスのハワードと呼ばれる人物。

黒四円は見た事ないので何とも言えないが…ボスをやっていたマラリア程の信頼を得られていないようである。

 

 

 

「悪いね、身内の話をして。

 そんで、アンタをここに呼んだわけなんだが…。」

「…ああ、そうだったな、それを聞きたかった。」

 

マラリア達の言動を見て、グレイツィアの内状を考察していたがその思考を止める黒四円。

そんなものを知った所で彼には一切関係のないことだからだ。

 

「前にポベロンの掃除と修理をしてもらっただろう?」

「ああ…。 確かあの仕事で前に使った寝屋の付け、払い終わった…。」

「馬鹿たれ。 あんなもんで返せたと思うんじゃないよ!」

 

予想が当たってしまい、溜め息が出てしまう。

 

「まあ、高そうな店だったからな。」

「当たり前さね。 アカレンガはうちで取り仕切ってる店の1つだよ。」

「ファミリーの資金源の1つ。 素泊まりだけでも60,000Y。」

 

ルシーヴィラから追加情報を聞き、さらに深い溜め息が出てしまう。

 

「それで、残りはどうするってことか?

 現金で払えっていうなら、今日中にでも依頼こなして持ってくるが…。」

「いや、違うよ。 アンタに頼みたい仕事があってね。」

「仕事?」

「アンタ…殺しはやれるかい?」

「「っ!?」」

「…。」

 

彼女の一言に、そばで監視していた2人も声を失い、驚きをあらわにした。

無論、黒四円も驚いたのだろうが、一瞬だけ目を見開いただけであり、すぐに平静になり、口を開く。

 

「どういうことだ?」

「始末してほしいのは、この街で診療所を開いている奴でねぇ。」

「おい。」

「理由としては、その野郎はウチの許可なく薬(ヤク)をさばいてね。」 フゥー…

「待てって。」

「別に中毒になっちまう薬を売っちゃいかん!…なんて善人みたいな事を言うつもりはないよ?

 アタシらだって売るだけじゃなく、作ったりもしてるんだからねー。」

「…。」

 

話を遮ろうとするが、彼女はお構いなしに仕事内容を話し続け、更には自分たち組織の内情をまで、口にしている。

 

「重要なのは、人様の縄張りで勝手に商売してるのに、何の挨拶もしに来ないって事さ。」

(この婆…もしかして…。)

「ましてや、薬なんてのは、場が大きく荒れる…慎重に取り扱うべき品。

 それを好き勝手にばら撒かれたら…アタシ等の仕切ってるこの街が混乱に陥っちまう。」

 

ギャング組織のアジトの1つを気軽に連れてきた事や組織内の状況を小出しで聞かせてくる。

 

(俺を加入させようとしてるのか…?)

それが、黒四円の推察である。

 

マラリアを見てみるが、葉巻を吸いながら彼の反応を伺い、余裕そうに振る舞う。

色々と思考を巡らす黒四円だが、答えられる人間が目の前にいるのだ。

時間の無駄な考えはやめ、直接本人に問いかけてみる事にした。

 

 

「組織に入れ……って事か?」

「…。」 フゥー…

 

「姐さん…!? 本気ですか!?」

「母様…!?」

 

フリードが驚きながら質問し、ルシーヴィラもそこまでの事だとは思わず、彼女を見る。

灰皿に吸い切った葉巻を押し当てて消し、口を開く。

 

「そいつは、あんたの働き次第だね。 失敗は論外…。

 そして、クズとはいえ相手は一応、この街の住人なんだ。

 足つけば、警備隊の連中に捕まるだろうねえ。

 この街に堕ちてきたクソ役人共とはいえ、一応は国認可の隊だ…。」

「最低でもこの街にはいられなくなるな。」

「ああ。 それに今回の件で仮にアンタが捕まっても、ウチとは一切関係ないで通させてもらうよ?」

「なんだと?」

「現状、アンタはまだウチのファミリーには入っていないんだ。当然だろう?

 簡単に口を割って、見苦しくアタシ等との繋がりを有る事無い事ゲロってみな? ただじゃ済まさないよ…。」

「…。」

 

「都合の良い事ばかり言いやがって…みたいな目するんじゃないよ。

 仕事の依頼なんだから、アンタがウチに入る入らない関係なく、報酬は出すさ。

 ほら。」

 

ドサッ…!

 

「「!?」」

「…。」

 

彼女が懐から取り出し、机に置いたのはこの国の金…Y(ユーラ)。

それも、1枚2枚どころではない。

この国の最高額である1万Yの札が、何十枚も束になって置かれた。

 

「前金で50万Y。 成功で残りの報酬100万Yも払おうじゃないか。」

「姐さん!?」

「普通の殺しじゃなく、暗殺…腕のいる事なら金が掛かるさね。

 それにアタシの見立てでは、この子はそういうのに長けてる…。」

 

(先行投資みたいなもの? 母様はこの男をそんなに引き入れたいの…?)

ルシーヴィラの推察も当たっている。

 

そして、さらにマラリアは彼という人間を試しているのだ。

 

多くの金を約束された仕事。

それでも冷静に物事を見通し、必要な…もしくはそれ以上の目的を達成してくれる玄人なのか?

それとも前金だけ貰って、後は雑に投げ出すろくでなしなのか?

 

(もしくは…。)

 

大金を出されても眉一つ動かさなかったが、その後目を閉じていた黒四円。

少しするとマラリアを見て、口を開く。

 

「断る。」

短くも真っ直ぐな意思が籠められた声でそう言い放った。

 

 

「…なんでだい?」

「…金に困ってないから。」

「取って付けたような理由だねぇ~。」

「駄目か?」

「誠意が無いんじゃないかねぇ?

 こっちはそれなりにアンタを見込んで、良い条件で仕事を頼んでいるってのにさー?」

「…関わりたくないんだよ。 あんた等のような連中と…。」

「っ!」

「なんだと…!?」

 

黒四円の若干、軽蔑を含んだ物言い。

彼の後ろで低い唸り声をあげるフリードにマラリアの横に立っているルシーヴィラが鋭い目で睨む。

 

「はは、随分な言い草じゃないか? アンタも…。」

「わかっている。」

「ん?」

 

「理由を付けては、他者を傷つけ、自身や周りの為の利益にしていく。

 結論だけなら、俺もそうしてた。 忍衆や自国もそれを求めていたからな。」

 

春日ノ国や歌山国を滅ぼすことを命じられた時の事を思い出す、黒四円。

 

「それが間違っていたとでも言うつもりか貴様は…?

 自分にとって大切なモノの為に動く事が?」

「いや…わん公。

 散々手を汚してきたし、他者の汚れた部分も見ているんだ…、そこまで綺麗事を言うつもりはない…。

 ただ…俺は………自分で決めていなかったんだ…。」

「自分で…?」

 

「…。」

「忍衆の頭目だった爺に忍として育てられた俺は、その男から教わった掟や命令が絶対だった。

 命じられれば、年寄りだろうが赤子だろうが殺してきた…。」

「っ…!?」

 

「明らかに意味のない殺しに何度か内で引っかかったこともあったんだが、お役目だからと誤魔化して、そのまま遂行してきたんだ。」

(軽い洗脳って事かい…虫唾が走る話だねぇ…。)

 

「だが…ある人が死ぬ間際にこう言ってくれたんだ。

 『自身の内から出る真の声を聞き…それに従え』って…。」

「…楽器を盗まれた娘っ子を助ける時にも似たような事を言ってたね?

 それを教えてくれた人ってのは、何者だい?」

「もうわからないさ…。 殺したからな…俺が…。」

 

「ふむ…。 そんで、アンタの心の声はなんて言ってんのさ?」

「仕事を受けるな…だな。」

「簡潔だねぇ〜。 それはもう、殺しはしないって事かい?」

「…どうだろうな?

 どれだけ、内の声が叫んでも、やむを得ない状況が来た時…俺は自分を自制出来るか、自信がない。

 だけど、金儲けの為の人殺し…それに関しては自身の内の声に従ってみようと思ったんだ。」

「そうかい。」

 

黒四円なりの一連の回答を聞き終えたマラリアは、一服する為に葉巻を取り出し始める。

 

「だから、婆さん。 俺を見込んでくれたのはありがたいが…この仕事は受けない。」

「ふむ…。」 スゥ…

「そこにある前金も、達成した後の大金もいらない。

 付けの方は、今からでもギルドで依頼をこなして、用意してくるから、少し待っててくれないか?」

「…。」 フゥ~…

 

 

「黙って聞いてやっていたが…感傷に浸って、自分勝手な事言ってんじゃねーぞ?」

「うん?」

「ちょっと…フリード?」

 

マラリアが黙っている中、口を出してきたのは黒四円の横に立っている、フリードであった。

ルシーヴィラが彼の名を呼んだ。

台詞と声色からもイラついた様子が感じ取れたからだ。

 

「貴様の過去がどうだの、自身の内の声を聞くだの…それと俺らファミリーに何の関係があるんだよ?」

「何故、仕事を受けないのか? その理由を嘘偽りなく…誠意を持って説明する。

 それが婆さんが望んでいる事だと思い、話させてもらったんだが?」

「俺が言いたいのは、その思いをこっちが聞き入れた所で俺達が頼みたい仕事が終わってくれないって事だよ。」

「そんな事は知らん。 他の誰かにやらせればいいだろう。」

「貴様…! ツケを報酬で返すと言ってるが、本当に払うかもわからんもんだ!」

「いくら残ってるかわからんが、ちゃんと払う。 信じろ。」

「そうやって、返さない奴をこっちは何回も見てんだよ…!」

 

苛立ちから殺気へと変わっていくフリードの雰囲気を読み取り、背後に意識を向ける黒四円。

 

「どうしてほしいんだ?」

「仕事を受けろ。 達成するまで俺が監視してやるよ。」

「断る。」

 

その一言を放った瞬間にフリードの鋭い爪での横薙ぎが黒四円に襲いかかる。

しかし、座っていたソファの更に下までしゃがみ込み、その攻撃を躱す。

そして、その態勢で座っていたソファをフリードに当てるように蹴り上げた。

 

眼前に迫り来るソファを上体反らしで避け、体勢を戻すが黒四円はいない。

しかし、フリードはすぐに後ろを向く。

 

蹴り上げられたソファが落ち、丁度、それが境目になるように2人が対峙する。

 

 

「ここに連れてこようとした時と言い、血の気の多い忠犬だな…。

 …やるのか?」

「余裕ぶりやがって…ムカつく野郎だ…!

 簡単にこの場を後に出来ると思うなよ? ルシー!」

「フリード…。」

 

名前を呼ばれたルシーヴィラであったが、彼女はまだどこか黒四円と争うことに腑に落ちていないようだ。

だが、仲間に危害が加わりそうなら…と思い直し、警戒態勢をとる。

 

「仮に俺を退けられても、無駄だ。

 騒ぎを聞きつけたら、他の奴らもすぐに来る。」

「だろうな。」

 

「最後にもう1度聞くぞ? 姐さんの仕事を…。」

「断る。」

「「っ…!?」」

 

「断った理由が殺しをしないって言った手前だ…。

 怪我だけで済ませてやるよ…。 あんた等と外にいる連中…。」

「あぁ? 俺達ファミリーが何人いるかわかってんのか!?

 100や200って人数じゃない!

 今でも増え続けて…正確じゃなくても、構成員は700人近くはいるんだぞ!?」

「なら、そいつ等に傷薬でも配っておけ。」

 

指や手首をほぐしながら、間髪入れずに答える。

虚勢やハッタリを取っている態度などでは決してない。

 

只々、覚悟を決めた者がそこに立っているのだ。

何人いようが、何者だろうが…覚悟を決めて、闘おうとする者が…。

 

(この…ガキは………!!!)

そんな姿を見せられ、フリードはある人を思い出してしまう。

苛立ちが限界に達し、彼に襲いかかろうとした時であった…。

 

 

 

「止めなアンタ等!」

「っ…!? 姐さん…。」

 

「…。」

「全く…ふふふ…。 大した啖呵切るじゃないかい、若造?

 アタシ等ファミリー相手に対して……ふふふ…。 あーはっはっはっはっ!」

 

諍いを止めた、マラリアの声に先ほどの威圧感はなかった。

そして、何とも愉快そうな表情で大笑いし始めた。

 

3人が不思議そうにしているが、お構いなしに笑うこと数十秒後…。

笑い涙を手で拭い、マラリアは再び黒四円に話しかける。

 

 

「いや、なーに…、アンタの思いはわかったよ。

 まあ、良いよ、殺しの依頼は…。

 元々、本気で頼もうとは思ってなかったし…。」

「何?」

「はあ!?姐さん!? 良いんですか!?」

 

「別に良いよ? 

 相手は小心者のチンケな売人…その内、他の悪に食われるか、間違いでジャンキーに刺されるか…、近い内に勝手に消えるさね。」

「そ・そう…ですか。」

「ったく、フリード。 アタシ達がギャングだとはいえ、アンタはもう少し落ち着いた対応を身につけな。

 この若造よりも年上だろうに…多分…。」

「す・すんません…。」

 

少しの説教時間…。

叱られた飼い犬のようにシュンと耳を垂らすフリードは、マラリアの後ろへと下っていく。

 

 

「さてと…悪いね話を途切らせて。

 そんで、仕事を頼みたいってのはホントのところなのさ…アウトローなね…。」

「殺しじゃない汚れ仕事ってことか…?」

 

「ああ、さっき言った診療所なんだが…そこにコッソリ入って、ちょーっと物色して欲しくてねー。」

「物盗りかよ…。」

「何も金目の物を盗んでこいってわけじゃないよ?

 アタシが欲しいのは情報さ。」

「どういうことだ?」

 

「さっき、話したと思うけど、その診療所の医者が薬を売ってるって言ったろう? それはマジなんだよ。

 作り方なら知識があればそりゃ出来るが問題は材料の入手先さ。」

「そうなのか? この街じゃ麻薬原料の調達先なんて、いくらでもあるだろう?」

「これも言ったが麻薬をそこらじゅうに捌いちまったら、街全体が狂っちまう。

 だから、クワール街の麻薬関連については、アタシ達ファミリーが目を光らせて、常に情報が入ってくるようにしてんのよ。」

 

「じゃあ、原料を仕入れるなら、婆さんの組織に関わってる所からしか買えんってことか?」

「いいえ。 母様の組織以外にもこの街にはいくつかのギャングチームが存在する。」

「だったら、そこから仕入れてんじゃないのか?」

「この街でギャングとして生きていくなら、母様がボスの時代に作った、連合会に入る必要がある。」

「昔は、場所巡ってぇドンパチやってたもんだよ。」

 

懐かそうに「ははは」と笑う、マラリア。

途中で変わって説明をしてくれてた、ルシーヴィラが話を続ける。

 

「そして、その連合会では、半月に1度の連合集会があって、現ボスと私、フリードでその診療所の薬の件を報告した。」

「ふむ…。 結果、誰も関わってないって事だったのか?」

「そう。」

 

「そいつ等が嘘をついてるって可能性は?」

「あっても1割以下の以下。

 1つの診療所に原料を卸してるだけじゃ、大して儲からないし、仮にその麻薬の利益の何割かを貰うってなっても、たかが知れてる。」

「そうだな。 組織やその集まりとやらに背いてまでやる程、旨みはないな…。

 じゃあ、材料の群生地を見つけたとかはどうだ?

 もしくは、何処かで栽培してるとか…。」

「そーんな場所があったら、アタシ等がとっくに取り仕切ってるさ。

 それにその医者を調べたが、どーしようもないギャンブル狂いの借金男…。 ひん剥いて逆さにして揺すっても、土地なんていう、財産があるようには思えんねぇ〜。」

 

「じゃあ、考えられることは一つか…。」

「ああ、外から来た新参者達が、その医者に原料を卸して作らせてるって所だろうね〜。」

これまでの話を聞き、マラリアは黒四円に何をして欲しいかがわかった。

 

潜り込み、情報を収集する諜報活動。

まさしく、忍に頼むに相応しい仕事であった。

 

「その診療所に潜って、その仕入れ先の手がかりを探してくれ。

 それが今回の依頼さね。 どうだい、受けてくれるかい?」

「うーむ…。」

 

仕事内容は理解した黒四円だったのだが、正直受けるかどうか迷っていた。

確かに暗殺などの殺害に関わることではなくなったのだが、結局はアングラな人達と関係する依頼。

今回のこの仕事を受け、間接的にこちらに何か面倒がくるんじゃないかと黒四円は考えてしまう。

 

「相手は医者ってことだが、ギャングとやらの一員ではないのか?」

「いんや。 確か診療所の医者の名前は…。」

「ミヨーネです、母様。

 見た目通りの気弱な御仁であり、どこの組織にも所属してはいない。」

(気弱な医者?)

 

「あーそうそう、北東方面に診療所がある。」

(北東方面…ミヨーネって名は確か…。)

何処かで聞いたことのある、人物の名前。

 

以前、アイゼンとその名や人物の特徴を口にしていたことを思い出した黒四円は依頼を承諾、マラリア達に詳細を聞き始める。

 

まだ、そうだったという確証はないが、仮にフレイヤが頼っている医者だった場合、そのミヨーネの素性を明らかにしておきたいからであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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