ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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5のお話

 

 

 

 

 

「ひい…ふう…みい…。」

出入口から離れた、ギルド役所の壁沿い。

黒四円は、今日仕事して稼いだお金がいくらかを数えていた。

 

時刻は19:00を超え、温かい気候ではあるが日もそろそろ落ちかけている。

 

「これで全額か…。」

金勘定を終えた、黒四円。

単独でこなした、依頼8件分とライナと一緒にこなした依頼の報酬で彼の手元には3400Y(ユーラ)程の紙幣が蓄えられた。

 

(400前後で1日を凌げるとのことだったな。)

なので彼は大体8日間。

使い過ぎなければ、それ以上に食べる事には困らないお金を手にした。

 

(だが、これを丸々すべて食事や宿代にはしてられんな…。)

手を口に当て、様々なことに視野を向けてみる。

 

 

まずはギルドの仕事についてである。

今回こそ採取依頼だけしかしなかったものの、掲示板を見ていた限り、魔物討伐や要人の護衛、洞窟や遺跡の調査など高確率で戦闘が起こる依頼もあった。

 

一瞬、採取依頼ばかりをこなしていけば良いかとも思ったがやはり報酬の桁が1つも2つも違う。

 

(地道にこの街でひっそりと生きていく…。

 忍を抜け、わざわざ異国に来たにしては面白みに欠ける。)

彼はライナに出世などには興味がないといったが、やはりしたいことするには金は重要。

 

高額報酬のために黒四円はある程度はギルドでのランク上げをし、稼げる仕事を受けられるようにはしておこうと思う。

 

 

そして、この街のことである。

ここについて半日程度ではあるが彼がこの街について思ったことはやはり危険だということだ。

 

ライナと街を歩いていた時間、ギルドにいた時間。

すべて、悪意に満ちた視線が自分を刺し続けていた。

 

おまけに依頼をこなす為に彼はこの街の建物の上を跳んでいる最中に目の当たりにしたことがある。

目立たない裏路地ではきな臭さそうな人間が金を貰って、包みを渡していたり、強面の男がボロボロな身なりの人間にナイフを顔に突き付けて、詰め寄ったりなど色々と穏やかとは言えないものを何回も目撃している。

 

(ああいう奴等が武器を持っていても遅れを取るつもりはないが、やはり丸腰なのはな…。)

現状の装備を考え、懸念する。

 

彼もこの国に来る前には自分の武具などを所有していたが、ある事情でそれらをことごとく破損、消耗してしまった。

 

国抜けをしたのも港で大陸行きの異人の船に忍び込むなど突発的なことだったので武具所かなにも所持せずにこの大陸に来てしまったのだ。

 

(割の良い仕事を受けて達成する為…。

 そして、自衛の為にもやはり、武器、道具類の調達は重要だな。)

 

黒四円は報酬で受け取った金を仕舞う。

3000Yはギルドカードに入っていた封筒の中。

余りは、ヘマをして無くしたとき用に足袋の中に忍ばせた。

 

そして彼は、採取行こうとした際に見かけた武器屋や道具屋などの店が集まった場所へと向かった。

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

クワール街にも寂れてはいるが商店街があり、そこには食材や雑貨類など様々な店が看板を掲げて商売している。

しかし、それは太陽がまだ昇っている時の話である。

 

(まあ、そりゃそうだよな…。)

黒四円は辺りを見回すがどの店も閉まっているか閉めようと後片付けしている店ばかりだった。

彼が見ようとしていた武器屋も、看板には閉店時間18:00。

とっくに閉まっている。

 

(しょうがない…明日にでも見に来るか…。)

息を小さく吐き、商店街を去ろうとすると彼が唯一この国で知り合った女性、ライナがいた。

食料品などを買ったカゴを持っているが、それよりも黒四円が気になったのは彼女の左右にいる男達だった。

 

「ねえねえ、君ぃ~?

 今からお家に帰るの?」

「えっと…そうですけど…?」

「そっかそっか~。

 家はどこにあんだい?

 良ければ荷物運んでってあげるよ~?」

「いえ、その…結構です…。」

 

黒四円は会話の内容を聞き、どうしたものか考える。

明らかに知り合いではなく、ライナも困り果てた顔をしている。

性質の悪いナンパなのか。

それかもっと下衆な奴らなのか。

あの下卑た笑い顔を見ればすぐにもっと悪い方と黒四円は察した。

 

(致し方ない。)

黒四円は溜め息をつき、ライナの元へと行く。

 

 

「まあまあ、そう言うなって。

 君、可愛いからさ~。

 君ん家にでも行って、仲良くお喋りしたいのよ~。」

「そうそう! 仲良くしようぜ。

 ほらほら、行こうぜ。」

「あ…いや…。」

ライナの手首を掴まれようとした瞬間。

「おう、すぐに会っちまったな。」

「え? クロまる君?」

気軽な雰囲気で男2人とライナの間を割って入る黒四円。

 

「おい、なんだてめぇ?」

「この子の知り合いだが、お前たちもか?」

「いーんや…。

 だがまあ、これから仲良くやらしてもらおうかと思ってんだよ。」

「ほう…。」

「おら、さっさとどけよてめぇ…。」

一人の男に肩を押される黒四円だったがその手首を掴み、グッと力を入れる。

 

「うぐ!?

 てめえ…!?」

掴まれた男は手に力を入れられたことに危機感を持ち、応戦する姿勢を見せる。

しかし、黒四円は開いたその手に封筒を握らせて、すぐに手を離した。

 

「目立つのも面倒事もごめんだ。

 それだけやるからここは引いてくれないか?」

「てめえ、何言ってやがんだ!!!」

「いや…おい待てよ。」

封筒を握らせた男は怒鳴った男を静止させ、封筒の中を改める。

 

「おいおい!

 金だぜ金ぇ!

 3000Yも入ってやがる。」

「なにぃ!?

 おいおい、じゃあ、さっきの稼ぎと合わせりゃ。」

「おうよ!

 娼婦店エリアの良い店の美人を抱けるってもんだぜ!」

「っしゃあ!!!

 あの稼ぎもそこそこの店で使っちまう予定だったがとんだ臨時でグレードアップだぜ!!!」

2人の男は黒四円の渡した金を見るとハイテンションになった。

 

「おい、もういいか?」

「ああ、兄ちゃん!

 そこの子もいいが俺らはもっとイイ女をいただく用事が出来た!」

「おい、さっさと行くぞ!」

「ああ!」

そしてその男共一目散に娼婦店エリアがあると思われる方向へと走り去っていった。

 

 

(娼婦店エリア?

 あの方向にそんな場があるのか…)

「ねえ…?」

男共の方向を見ている黒四円にライナは話しかける。

振り向く黒四円だったが彼女は申し訳なさそうに彼を見つめていた。

 

「ごめんなさい、わたしのせいで…」

「ん? ああ、金の事か?

 気にするなよ。」

「いや、気にするよ…。

 クロまる君…お金ないのに…。」

「ああ…まあ…そうだな…。

 残り400Yになっちまったな…。」

「ええ!? さっき渡したのほぼ全額じゃん!」

黒四円の手持ちを聞き、驚きを隠せないライナだったが、彼自身はそんなに気にしてない様子だった。

 

「金なんてまた、稼げばいい。

 それよりも大事にもならなくてよかった。」

「うぅ…確かにそうだけど…。」

前向きな事を言う黒四円だが、ライナの心配は消えない。

 

「今晩泊まる所とかどうするの?」

「400Yじゃあ、流石に無理か?」

「うん…流石にそれじゃ…。」

「そうか。

 じゃあ、もう、野宿だな。」

「だ•駄目だよ!

 こんな、危ない街で!」

「金が無いんだ。

 致し方あるまい…。」

「それなら! わたしが宿代出すから!」

「断る。」

「ええ!? どうして!?」

「どうしてもなにも…お前には大分世話になっている。」

「そんな…わたし、別にそんな大したことは…。」

「何を言う、多くの事をしてくれている。」

そう言い、片手の指でライナにしてもらった恩を数える黒四円。

 

この街での同行と案内。

ギルド作業員という職の紹介。

ライフハーブの教授。

採取依頼の手伝い。

昼ご飯、Mokuでの奢り。

 

それら全てを言い終える黒四円。

「俺1人なら、もう少し時間を取られ、手間取った筈なんだ。」

「う…で・でもでも! 3000Yなんて、結構な額だよ!?」

「なら、それで返したって事でいいし、釣り銭が出てるんなら受け取っとけ。

 なんにしても、俺はこれから、しばらく1人で生きていくんだ。

 これ以上、アンタに頼ってられない。

 じゃあな。」

「あっ…。」

黒四円は彼女に背を向け、去ろうとするが…。

 

「ま・待った!!」

「ぅぐえ!?」

勢いよく彼の後ろ襟首を掴み、グイッと引っ張るライナ。

黒四円は首が絞まる、少しえずいて、絞められた首をさする。

 

「あ…ごめん…。」

「な・なんだよ? 一体…。」

「あっえっと…紹介!

 紹介しようと思って!」

「紹介? 何を?」

「宿屋だよ!

 これならお釣りを受け取らなくていいかもだし!」

優しい笑みで提案するライナだがすぐに黒四円は疑問を抱く。

 

「何いってる?

 お前さっき、これっぽっちの金じゃどこも泊まれないって言ってたじゃないか?」

「う・うん…。

 でも、もしかしたら1軒…泊まれる宿屋があるかもしれないんだ。」

「ほう…どこで聞いたんだ?」

「今泊まってる友達にだよ。

 まあ、でも、サービスなんてものはなにもなかったらしいけどね。

 とにかく安かったって言ってたよ。」

「ふむ…400Yで泊まれるものか…?」

「ごめん…いくらかまでは聞いてなかった…。」

「そうか…。

 だがまあ、行ってみるか。

 横になれる場所を選べるなら、屋根の下に方がいいしな。」

「そうだよね!

 じゃあ、案内してあげる!

 えっと、たしか道は…。」

彼女は友達との会話を思い出しながら、その宿屋へと向かおうとする。

 

 

「それにしても、わたしと別れたのって、お昼過ぎぐらいだったよね?」

「まあ、そうだな。」

彼女の後ろを黒四円はついて行く。

「それでこの時間まで働いて、3000Y以上も稼げたんだ?

 そんな高額報酬の依頼を受けれたなんて、ラッキーだったね!

 どんな依頼だったの?」

「うん?

 いや、おまえと一緒にやった依頼と同じだぞ?

 止血草採取の…。」

「ええ? あはは!

 あれで3000Y以上稼ぐなんて、1日ぐらいかかっちゃうよ~。」

「そうなのか?」

「そうだよ~。」

彼が言ったことを冗談と受け取り、思わず笑ってしまうライナ。

黒四円は説明するのも面倒になり、頭を掻く。

 

2人はお昼に分かれた中央広場にまで戻ってくる。

そして商店街から来た道から見て、右斜めの方の道を歩いていく。

 

ちなみにその道を真っ直ぐ行けば北門やギルド、警備隊・本部があるエリアへと向かえる。

 

 

「そういえば、さっきの男達に金を渡した時、えらく浮かれていたな。

 額といえば大した額なのだろうが、あそこまで喜ぶことか?」

「ああーまあ、そうなのかもね。

 あの人たち多分、娼婦店エリアの高級店に行ったんだろうから。」

「ああ、そんなこと言ってたな。」

男達二人がハイテンションでそう口走っていたのを黒四円は思い出す。

 

「娼婦店っていうのはなんの店なんだ?」

「へっ!?

 そ・それは…その…///」

黒四円の質問に驚いたライナは、赤面し言い淀むが続きを話す。

「その…詳しくは知らないけど…。

 え・えっちな事をするお店の事だと思うよ///。」

「ああ、遊郭みたいな場か。

 

 ん?

 通いじゃなきゃ性交までいけない筈だが…こっちではいきなりできるのか?

先の男達の会話を思い出し、陽ノ本と大陸のそうゆう店の違いをライナに尋ねてみる黒四円。

 

「し・知らないよ!!!///」

 もう!///

 あっけらかんとそういう事、聞かないでよ!///。」

「お・おう、すまん。」

しかし、性関係には多感なのかライナは恥ずかし過ぎて冷静になれず、大声で黒四円に文句を言った。

 

「全くもう…。

 

 …なに?

 行ってみたいの…?」

ジト目になりながら、ライナは黒四円に質問する。

 

「ん? そうだな…。

 金に余裕が出来たら、経験としていいかもな。」

「ふ~ん…ふ~~ん!

 そうだね~!

 クロまる君も男の子だもんね~!」

「?

 ああ、まあな。」

「でもでも、お金を払って、女性とそうゆうことするのはなんだかな~って思うな~!

 わたしは!!」

「むう…そうか?

 昔の兄貴分の人がそうゆう店は連綿と続く文化と力説していたから、悪いものではないと思ったんだがな…。」

徐々に口調の勢いが増し、若干怒っているライナ。

黒四円は自分の考えが間違っているのかと疑問を持ち、その事についてもう1度考えてみる。

 

「別に悪いとは思ってないよ。

 娼婦の人達はそれでお金を稼いでるんだもん。

 でも、やっぱりさ…。」

「まあ、気の良いもんでもないか…。」

「うん…。」

「ふ〜む…。」

(うぅ…感じ悪かったかなー?

 クロまる君には助けてもらったのに…。)

ライナは空気が悪くなり、しまったと思う。

 

「ま・まあでも!

 行ってみたいならいいんじゃないかな!?

 さっきもこの国に来て、何しようか悩んでたじゃない?」

「ああ、そうだな。

 1つは食も楽しもうとしてたがもう1つ、遊びの方で何かは決まってなかったな…。」

「そうそう、それ!

 いっそのこと女遊びしていこうとか!」

気まずい雰囲気を流したい一心でライナはそんな提案する。

 

 

(うわー! 何言ってんだろ、わたし!?

 これって女性が提案するような事なのかな!?)

内心、自分の今の発言がおかしいのではと頭の中がぐちゃぐちゃになり目の前もグルグル回ってるように彼女は感じた。

 

「女遊びか…。

 まあ、いいかもな。」

「え? いいの!?」

「ああ。

 まあ…柄じゃないかもしれんが…。

 面白い経験になりそうだしな。」

「そ…そうなんだ…。

 

 何か、わたし…今、とんでもない案、出しちゃったのかな…?」

 

軽い笑みをする黒四円に対し、ライナは間違ったかもしれない提案に小声でぼやき、黒四円を見て、色欲魔にならないか心配になるのであった。

 

 

 

 

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