スナイパーライフルから放たれた弾丸は、窓ガラスを砕きながら突き抜け、翔亜の頬に赤い線を一本描いた。
銃声がまだ、耳の奥で反響している。
「カーテン閉めろ!先生!」
ミユキが怒鳴るのと同時に、恐怖に凍りつく翔亜を床に伏せさせた。
ミユキはカーテンへ駆け寄り、
中の光景を遮断するようにカーテンを閉める。
間髪入れず、2発目の銃声が響き渡る。
今度は部屋の床に黒い穴を開けた。
微かな硝煙の匂いが、部屋の空気を支配する。
“あはは、懲りないね……PMCの連中は“
「アンタ…連中に何やったんだ?」
“ま、秘密ね”
そんな問いに対して先生は、余裕を持って返せるほど落ち着いていたが、ミユキは冷や汗を流して、浅い呼吸を繰り返す。
「なあ……先生、これ多分だけどさぁ…」
ミユキがぽつりとつぶやく。
声は落ち着き、その瞳は状況を捉えようと思考していた。
「電磁パルス攻撃……じゃね?」
その言葉に、先生の表情が一瞬、引き締まる。
“……多分ね、スマホも電話も全部死んでたし、電気のノイズすら消えてる。下手すれば信号機も止まってる、自動掃除機もでっかいフリスビーだろうね。“
「なんでまたそんな大事になってんだ?……カイザーPMCって、そこまでやる組織だっけ?」
“やるかやらないか、多分もうやらないね、ただ翔亜の『首輪』から漂う甘い魅惑の匂いが奴らを動かしたんだろうね、きっと“
ミユキは視線を震えて丸まっている翔亜へ移す。
「もしかして翔亜に懸賞金が掛かってるって事か…?」
“掛かった『首輪』が宝の山なら…ね。きっと連中もありったけを尽くすさ“
「私のせいで…みんな死ぬの?」
漏れた声は、酷く小さく、虚ろだった。
希望は灯らない。
スマホは無反応。電話も繋がらない。
この小さな部屋の中で、助けなんか来ないと悟った。
それに…きっと囲まれている。
あぁ…結局こうなるのか。
諦め切った感情を抱いてへたり込んでしまった。
「気にすんなよ、別にお前が呼んだわけじゃない。…偶然、狙われちまっただけだ」
「………でも、もしも私がいなかったら、みんなこんな目には……」
「生きて帰りたいんだろ?だったら今は黙って……祈ってな」
冷たく突き放す様だったが、それでもどこか優しさを孕んだ声だった。
「言っとくけどな、私は死なねぇよ。翔亜も死なせねぇし、先生だって…死なない、多分な。」
ガチャンと、マガジンを銃に戻す音がやけに頼もしく部屋に反響した。
「……この部屋は処刑室なんかじゃあない」