「……逃げるぞ、この部屋はもうダメだ」
ミユキの声は冷酷な程冷静に、不要な感情を削ぎ落とした様に聞こえた。
翔亜は小さくうなずく。
「自分の足で歩けるか?」
「……ごめん…足が震えて……でも…」
生まれたての子鹿のようにおぼつかない足取りで立ちあがろうとする翔亜を支える。
「気にすんなって、無理に立つな、運んでやるから」
そう言ってミユキは片手で翔亜を肩に担ぐ。
空いた片手で腰のホルスターに手を伸ばし、拳銃を引き抜いた。
(くそったれ……火力も残弾も足りねぇ…)
残弾も限られている。だが、やるしかない。
「先生、ルートは?」
"…オフィスに隠してある非常脱出通路を下りて、……そこから外へ"
「good、そこまで私が護衛する。先生は翔亜を頼む」
"了解"
先生は頷くと、翔亜を受け取り抱える。
「……怖いか?」
うまく呼吸の出来ない翔亜に語りかける。
「……うん。でも……ミユキと先生がいてくれるから……」
翔亜は0点の下手くそな作り笑いを浮かべて必死に強がって見せる。
「強がるなって、怖え時は泣いとけ。そしたら泣いてるうちに終わってるからさ」
ミユキがそう言った直後、三発目の銃声が、壁を削った。
それと同時にミユキは即座に拳銃を構え、躊躇なく扉を蹴破る。
「出てきたぞ!」
PMCの一人の怒声が夕日の差しこむ廊下に鋭く反響する。
それとほぼ同時に反響した声を掻き消す様な掃射音が全てを掻き消す。
空気が切り裂かれ、幾千の弾丸が掠め、何十発もの弾丸が捉える。
「鬱陶しいんだよ……!」
銃声に紛れて吐き捨て、構えた拳銃が火を噴く。
弾は一発一発、確実にPMCの頭部をブチ砕いていった。
正に『処刑』と言う言葉が相応しかった。
「ッ…!怯むな!打ち込めェ!」
一瞬覇気を失ったPMCは怯えつつも、反射的に一斉にアサルトライフルに備え付けられたグレネードランチャーを撃ち込む。
瞬間、世界がスローモーションに変わる。
音が遠ざかり、動きが鈍る。
飛来する手榴弾、軌道、破片すべてが一本の線になる。
飛んで来た全てが線で繋がれ、どう動くべきか本能が身体に伝える。
脳が命令するよりも遥かに早く足元に横たわる鉄製のドアを拾い上げ、熱風と爆風、そして飛散する破片から身を隠す。
「やったか…?」
煙が舞い上がる中、一人の兵士が呟く。
「縁起の悪い事を…」
次の言葉を紡ぐよりも早く、鉄の塊のタックルが兵士を襲う。
「うぐっ…!?」
鉄製の扉と地面に挟まれ、中の物をばら撒いてしまいそうになる。
苦痛を感じたその瞬間、圧迫感から解放されたと思いきや、容赦ない弾丸の豪雨が顔に集中し、PMCの頭は爆ぜるように飛散した。
「借りるぜ」
周りの兵士が狼狽する中握られていた
金属製の顔面が砕け、ロボは床に崩れ落ちた。