ブルーアーカイブ外伝『バウンサー』   作:綴師

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脱出

火薬の匂いが、廊下の空気の中に残っていた。

混じっていたのは、己の身体から漂う血の生々しい鉄の臭いと、物言わぬPMCから流れ出すオイルの香り。

 

ミユキはその空間の中で吐き気を覚えながら立っていた。

それでも、彼女の目の光は力強く灯っていた。

 

 

 

ミユキを先頭に慎重かつ迅速に歩みを進める___

PMCの連中に対して火力も、人数も圧倒的に足りない。

それに対して非戦闘2人に、辛うじて意識を掴んでいる死にかけが1人。

 

壁に背をつけ、廊下の角から奥を窺う。

___誰もいない。足音も、気配も無い。

そして廊下の先にオフィスへの入り口が見える。

ミユキは素早く駆け出し、オフィスの入り口まで辿り着き、中に入ろうと足を踏み出そうとしたが、確かな殺意を感じ、身構えるのと同時に鈍く重厚なショットガン(m1887)の射撃音が反響する。

 

 

「死にたくないんなら、失せろ」

覚悟を決め,目の前のに立ち塞がる兵士に真っ直ぐ歩み寄る。

徐々に距離が狭まる。

数歩目、PMC兵が射程に入ったと判断したのか、速射する。

ミユキはそれを必要最低限の動きで躱した刹那、不意に放たれたスピンコック。

重さと遠心力をまとったそれが、ミユキの顎を鋭く打ち上げた。

 

「…やりやがったな」

フラつきながらもショットガンの銃身をきしむほどの力で掴み、トリガーを引く。

しかし、流れる様なスウェーバックで全て躱されてしまう。

間髪入れず続け様に上段への足刀蹴りを浴びせるも、上半身の動きだけで避けられる。

 

(……コイツはただの雑魚じゃねえな)

目の前のPMC兵は巧みにスピンコックを攻撃のコンビネーションに組み込み、反撃に転じる隙も与えない。

 

PMC兵は繊細かつ細かい牽制の嵐が襲いかかる。

普段ならステップで躱せたが、今に至るまで蓄積したダメージが足を引っ張り、何発も喰らってしまった。

 

視界が滲む。音が遠のいていく。

呼吸がうまくできない。

力が震える。

 

(クソッタレ…)

 

本能が倒れろと警告する。

だが、倒れない。

 

 

(これ以上のやり合いは死ぬな…)

長期戦では確実に負ける。

ジリ貧になる前に何とか短期決戦で済ませたい。

 

だが、相手から距離を詰められ、自分のリズムに持ち込めない。

「どうしたどうした?もう終わりかぁ?」

PMC兵が、口元を歪めて言った。

 

「そう見えるんなら、お前の頭は湧いてんな」

「死にかけの癖に言ってくれるねぇ」

言い終わるなり、PMC兵が銃身のボディーブローを打ち込む。

的確にレバーを撃ち込んでくる。

内臓が収縮し、胃の中身をぶち撒けそうになる。

 

「おいおい、もう終わりかぁ?」

PMC兵はニヤリと笑う。

「そうかもな…」

そう言ってファイティングポーズを解いた。

「じゃあ…死ね」

PMC兵はミユキの眉間にピッタリと銃口を付ける。

油断した隙は決して見逃さなかった。

 

ミユキは素早くタイミングを見計らってPMC兵の胸倉を掴む。

「な、何を___」

言い終わるよりも遥かに早く、そのままの背負い投げの要領で窓に向かって放り投げる。

 

ガラスが砕ける音。

ただ一瞬の静寂の後、雨の音に混じって、下で何かが潰れる音が響いた。

 

 

 

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