人々のざわめきの中心に、スマホのレンズが向く。
その先には火薬と血の匂いが染み付いた4人が立っていた
囲む人々の囁き。カメラのシャッター音。
その喧噪は四人の鼓膜には届かない。
“私たちと病院行く?“
先生はウタハを抱きかかえたまま、ミユキに声をかける。
ミユキは少し余裕そうに答える。
「翔亜の護衛があるしな〜……今回はパス」
口に出さずとも、通じ合う、心配。不安。そして、信頼。
「そっか……」
「それじゃ、帰るわ」
ミユキは翔亜を背負い、そのまま群衆の中に姿を消した。
「ふぅん…これがミユキの家?」
「そうだ」
外灯はない。
代わりに雑居ビルからのネオンだけが毒々しく道に色を付ける。
ゴミと、湿気が混ざった匂いが鼻を刺す。
くたびれたアパートの一室___
そこがミユキの住処だった。
「一応、聞いとくわ…」
翔亜は問いかけた。
いや、『尋問』というべきか。
まるで刑事が自白を促す時の様な、緊張を含んだ声だった。
「…なんだ?」
「ゴキブリは出ないのよね?」
静寂が空気を支配する。
「…」
「もう一度聞くわ……ヤツは!出ないのよねッ!」
沈黙。それは最も雄弁な答えであった。
「ねえ!?何黙ってんの!」
翔亜の金切り声に恐怖が混じりだし、激しく詰め出す。
聞くに耐えない、恐怖混じりの金切り声にミユキの心が折れる。
「寂しくなくていいんじゃない…?」
「やだぁぁあああああ!」
その叫びは空気を震わし、これから起こる地獄へのイントロを奏でた。
「あて身」
「あうっ」
周りのビルに遮られ、朝日の差し込まない朝。
シーツを頭まで被って寝る翔亜に声が飛ぶ。
「___おい、起きろ!」
「ン…分かった…」
首元に響く鈍痛に耐えかねてその上体を起こす。
「グッドモーニング?」
ミユキの手に握られた拳銃の銃口が、こちらを向いていた。
「えぇ、あっつあつの鉛玉がモーニングサービスなんて…バットだわ」
「…これは今日から翔亜のだ。これで身を守れ」
ミユキは手に持っていた拳銃を膝の上に置いた。
爽やかな朝とは言い難い、鉄の匂いがした。
「…どうやって使うの?」
銃に触れたことはあっても、引き金を引いたことはない。
「オートマチックだからすげぇイージー。これが安全装置で…弾倉はここに入れる」
ミユキは生傷の癒えない指で一つずつ示していく。
「さて…分かるよな…?」
選んではいけない、この世界での正答を口にする。
「…敵に向けて撃て。でしょ?」
その回答にミユキは満足そうに笑う。
「ご名答。…早く支度しろよ、朝メシだ」
「すっごいハードボイルドな朝ね…」
翔亜は拳銃を手に取り、ミユキが置いていった弾倉を込める。
「……Bang!」
「…スライド引かなきゃ弾は出ねえぞ……早く服着て来い」
「え…?」