時間はかけず。愛はかける。
イナの整備を表すならこれが正解だった。
M4カービンを組み立て終わると、手術を終えた医師の様に大きくため息を吸い、再び銃達に向き合う。
「うし、こんなもんかな。次」
次に手を取ったのは
「ベネリM3かぁ…」
うなだれるように、シナシナと椅子に腰掛ける。
「どうした?市販品に浮気されたのが悔しいのか?」
ミユキお得意の茶々が即座に飛ぶ。
少し説教されたことも根に持ってんなコイツ。
イナはベネリM3を抱きながら、恋人にメイクを施す前の様に甘く囁く。
「そーじゃなくてさ〜ラピッドファイアできないじゃんこの子……改造して良い?キミ?」
「私じゃねーのかよ、許可とんの」
「ほったらかしてたでしょ、当然ね」
「さっすが同志!ミユキ氏はほんっとガサツで…」
翔亜の一言に水を得た様に反応すると、工具を次々と所狭しと机に広げていく。レンチ、トルクドライバー、オイル………
今まさに、黒魔術が始まらんとしていた。
「ん〜と、まず供給口の拡大、研磨によってスムーズな供給。そしてファイアリングピンを長くして…安全機構取っ払って…あとバレルをもっと強いのにして…もういっそのことおっきくなろっか!ううん…やっぱちっちゃいキミの方が…いや…それなら…あぁ! もう大人しく抱かれろ!」
何故かキレながら作業をイナは机に当たる。
その音は上に置かれた工具たちが飲み込み、鈍い一瞬の音が鳴った。
「…止める?」
「やめとけ…思い出したい事があるなら行け。走馬灯、見えるぜ」
「……おばあちゃんが行けば?」
ギャラリーのざわめきも、知らず顔で恍惚とした身振りで改造を始めた。
「決まったよ……キミは生まれ変わるんだ…そうだなぁ…キミの名前は…」
皮膚が熱で溶けるのも気づけず、知らずに命を吹き込んだ。
『レディメイド』
「わわ…イナの手が…」
痛々しく血を流す手からはエネルギーの溢れを表していた。
「キマッたな」
「ミユキ氏ぃ…レディメイド…可愛がってあげてよ…?」
「もち」
ミユキの言葉を聞くと、満足そうな顔を浮かべ、エネルギーの切れたロボットの様に倒れ込んだ。
「これ…撃ってみても良いか」
「いいよぉ…あっちにターゲットあるからぁ……」
ミユキが構えると【撃て】と何かが無言で促す。
トリガーを引いた刹那、世界が揺れた。
空気が割れ、景色が一瞬だけ白く染まる。
ターゲットは、野犬の群れに食い尽くされた様に穴が空いていた。
レディメイドは妖しげに囁く。
【私を扱えるの?】
そんな問いを投げかけてきた。
「……すぐ果てんなよ…レディ?」