ブルーアーカイブ外伝『バウンサー』   作:綴師

21 / 28
祭前

「で…要は、移動する為に足が欲しいと…」

 

腕を組んだウタハ呆れたように問いかける。

まるで女王。もうコイツ許さぬ、と言う圧が漂っていた。

 

「おなしゃす…」

 

夕陽が金属を輝かせ、複雑な影のアートを写す。

自然と機械の見事なアートの中に不純物が混じる。

 

恥も外見もかなぐり捨て、黄金長方形をその身で体現する、美しい土下座。

もはや一種の芸術の域に入っている。

 

ミユキ、お前は人間がその域に達するには20年はかかる物を___

 

「駄目だね」

「うわああああぁぁああん!」

 

たった一言。

その乞いは無慈悲に切り捨てられた。

 

 

 

「正直なところ、君に物を渡すと二、三回で壊すからね」

 

「別にいいじゃねーかよ! ツケ払うのがちょっと遅れるだけだしさぁ!」

 

「二、三回だけで、まともなデータが取れるとでも?…それに、先生に肩代わりして貰ってる人間の言うことかい…?」

 

「やだなーの!欲しい〜!」

 

子供の様に駄々をこねくり回す。

その姿に誇りは無かった。

 

「うっわ… ヒモじゃん、恋人にしたくないタイプだわ〜」

 

翔亜が心底うんざりしたように肩をすくめ、他人のフリをすると言う、なんとも無駄な抵抗した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひび割れたコンクリートの隙間から差し込む光が変わる。

夕陽はすでに沈み、代わりに街のネオンが、闇を照らしはじめる。

 

“もうこんな時間か“

 

思案にふけた脳が快楽を寄越せと催促する。

“たまには吸っちゃうか“

 

左手で胸のポケットからケースを取り出す。

一振り、一本取り出す合間に右手でライターを点火し、顔を傾け、火をつけ、左手でケースを仕舞う。

 

紫煙が汚らしい灯りの中へ溶けていった。

 

 

 

“…お腹減ったし出前でも頼むか“

 

スラムに近い街並みだが、まだ外郭の方にある。

意外と警察も来るし、最悪なんとかなるだろう。

 

“もしもし…ピザを一つ。マルゲリータ、オリーブ多めで頼みます……約15分後…分かりました〜“

 

 

 

 

「電波傍受……位置特定……商品到着十五分」

「了」

 

 

 

キッチリ15分後。

チャイム音が鳴らされる。

 

“はいは〜い”

 

軽い調子で扉を開け、宅配便からピザを受け取ろうとする。

 

 

だが、ピザの箱からは出てきたのは、ご注文のピザでは無かった。

 

月光に晒されて黒く光る拳銃の先端だった。

 

 

「よぉ先生…火薬のいい匂いが嗅ぎたけりゃ直接鼻にぶち込んでやるよ」

 

“……口コミで文句つけなきゃな……もちろん、てめえらの雇い主にだよ!!“

 

刹那、風を裂く勢いで扉が閉まり、わずかな隙間から伸びた腕がロボ兵士の首を引き寄せる。

次の瞬間、ドアに挟まれた首が、無様な音を響かせ、兵士はその場に崩れ落ちる。

 

 

 

それとほぼ同時に力強い声が空気を震わせる。

「ターゲット抵抗!制圧にかかれ!」

 

“近所迷惑って知らねえのかよ“

そう言うや否や、ベランダを突き破って外へ逃げる。

浮遊感の後、ゴミ箱のクッションの中へ着地した。

 

 

奴らはベランダの柵を越え、飛び降りようとしている。

“あー…今日燃えないゴミの日っぽいけどなぁ〜“

 

そう言って、火のついたライターをゴミ箱に近づける。

ぽんっ、と軽快な音を立てて、ゴミが燃え上がった。

 

それと同時に奴らは降りてしまった。

必死に足をバタつかせて抵抗を試みるも、あぁ…哀れ。

 

 

しかし悠長にはしてられない。

 

 

愛用のタブレットを手に、銃声と怒号が渦巻く夜の街へ飛び込んだ。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。