「いたぞ!」
“サビ残すんのかよ! お前ら揃いも揃って暇なのかよ!?”
休む暇もなく走り続ける。
体力はまだある。ただひたすら全力疾走で駆け抜ける。
“距離は……分かんないなぁ。”
計算してる暇なんて無い。
ただ――距離が引き離せてる。それだけ分かれば充分だ。
大丈夫。大丈夫だ。
そう言い聞かせて、足を動かし続ける。
行き先も、宛てもないまま。
“クソッタレ……”
無情に掲げられた看板。
『工事中!迂回は180度後ろへ!』
目の前には、昔やったヒゲ男のゲームみてえなステージが広がっていた。
「あそこだ!」
「足だ、足を撃て!」
銃声が鳴るより早く、工事現場へと飛び込む。
目指すは、その向こう側――逃げ道だ。
“あはは……ちょっと楽しそうじゃんね⭐︎”
勢いはそのままに、張り巡らされたパイプの下を滑り抜ける。
先の足場が途切れるのが見えた。
脚にもう一段ギアをかけて__
躊躇なく、跳ぶ。
その身体は一瞬だけ、重力に逆らった。
背中から着地。転がりながら受け身をとり、すぐさま再加速。
止まらない。止まれない。止まりたくもない。
勢いが乗った身体は、ただ前へと進む。
背丈ほどの柵が現れる。
近くの壁を蹴って、跳ぶ__
飛び越えた先は、深い闇の底だった。
だが、まるで知っていたかのように落ち着いた受け身で着地し、そのまま駆け出す。
所狭しと並んだ重機の群れを、運転席ギリギリをかすめるようにすり抜けていく。
未完成の迷路を突き進む。
銃声と怒声が背後で飛び交う中、
足場の悪い砂利を蹴り上げ、鉄筋の階段をリズムよく登っていく。
先生だけが、風のようにしなやかに、猫のように速く走り抜けていった。
“もう……巻いただろ?”
限界だった。
息が痛い。空気が喉に絡みつく。
上を向くのにも、力が要る。
刹那。頭上から声が通る。
「お疲れ様でした〜、ゲームオーバーです」
3人。
やれるか……?
“こっちには1UP……あるんだぜ……?”
そう言って、一人の顔面を思いきり殴りつける。
そしてもう一人の腹を、自身もよろけるほどの力で蹴っ飛ばす。
“……んだよ?弱ぇな___
その直後。
一発の銃弾。それは命綱を断つように、タブレットを遠ざける。
まずっ…!
直後、二発の弾丸が腹部を撃ち抜いた。
最後の力を振り絞って、”助けて”と送った。
多分宛先は___
「ほらっ!帰るよ!ミユキ!!」
「ヤダッ!絶対せびってからじゃないと帰らない!!」
「___おや?先生がこんな時間に、珍しいな…!?」
ウタハは液晶に浮かんだメッセージを見て、動揺に揺られる。
そこには先生からのSOS。
【ごめんたすけて】
その時ウタハのスマホから誰でも分かるほど、割れる音が響いた。