血は流れる。とめどなく。
失った指から魂と、痛覚が漏れていく。
「……驚いたぜ。小指イッたのに、まだゲロらねえなんてな」
“……”
血が床に滴るたびに、存在しないはずの小指が、痺れる。
それは、次は俺か?と言う、薬指の訴えだった。
血を吸ったドスが、生ぬるい温度を伝える。
「ええで、次は薬指や」
“……“
夜は、もう終わらない。
「さて…ここら辺かな」
「…うん、ウタハさんいわくこの劇場らしいよ」
廃墟と化し、かつて、客の感性と煌めきで満ちた劇場は、
落書きと、ゴミが散乱する掃き溜めと成り下がっていた。
「自動ドアを閉めろー!!」
「拷問の手を止めさせるな!なんならアイツらも捕まえろ!行け、下っ端ども!!」
入口のドアが物々しいモーター音を立て、閉まっていく。
それをベースに、粗雑な足音のドラムが響く。
「……またカイザー絡みかよ…」
「それよりも!!閉まってるってば!」
「わーってるよ」
轟くエンジン音が、三流バンドのノイズみたいな怒号をかき消す。
そのエンジンに呼応するように__
__小型ミサイルが一発、後を追った。
ミサイルは、彼女たちをピュアに追いかける。
そしてすぐ背後に着弾し、爆音とともにアスファルトを抉った。
「ねえミユキ!もう無理だってば!」
ドアの隙間は、わずか1センチほど。
このまま突っ込めば、間違い無く壁のシミになる。
「まあ、見とけって」
ミユキはそう言うと、ホルスターから拳銃を抜き_
__弾丸を放つ。
「無駄だよ!壁もドアもな!!お前らが思う以上に頑丈に__」
放たれた弾丸は、ドアの隙間を針に糸を通すように舞った。
そして、ドアは信じられないほど滑らかに開かれる。
「ば、バカな__」
唸りを上げたバイクが、反応の遅れた一人の顔面を容赦ゼロで踏み潰した。
「さて…アミューズと行こうか!」
バイクを飛び降りながら、ライフルを構えた一体に
「死ねっ!このクズメスブタがっ!!」
同時に放たれたお互いの弾丸は空中で交錯する。
普通なら、ライフル弾が勝つ。
しかしその相手はバケモノ。
ライフル弾は弾き飛ばされ、護れなかったご主人様はただの鉄屑へと化す。
「なんや…コイツは…」
「狼狽えるなぁ!撃て!撃てー!!」
ミユキは肩にストックを当て、引き金を引き続ける、ポンプアクションを捌き続ける。
常識では考えられない速度。
少なくとも、銃が壊れるのが目に見えるほど。
彼女は狂った速さでラビットファイアを繰り返す。
ガチャ。
その数コンマ後、銃声。
そして、敵の頭部が弾け飛ぶ。
暴力では無かった。
引き金を引く痛みも無く、駆除を続けた。
それだけだった。
無傷で立っていたのは、2人の少女と、2人の持つ銃。
それと……走り足りないと不満げなバイク。
「ねえミユキぃ、どうやって開けたの?」
「あぁ〜、センサーに弾を感知させて、誤作動を起こしただけだ。
…しっかし、利便性追求しすぎて結果こうなったんだからな……お笑いだったな」