「あはは…今日はおひらき、かな」
「せんせ――って、何すんのミユキ!前!見えないってば!」
「……こりゃ、ひでえな」
胸元で翔亜がもがきながら抗議する声は、耳に届いていたが脳には届かない。
目の前に立つ大人の姿に目を奪われる。
ストレートに言うと、なんで生きてんの?ってくらいに。
はだけた身体には、深い青色の痣の上から乾きかけた血が絵の具のようにべったりと塗られていた。
身体の末端は、もはや形など保っていなかった。
顔を塗るのは、毒々しいほどの厚化粧。
その下に隠れた顔は清々しくニヤけていた。
R指定必須のシーン。
と言ったところだろうか。
いや、むしろ優しいくらいだろうか。
“ん…お見苦しいとこ見せたね、心配要らないから、帰りな“
「オイオイ…死ぬぞアンタ」
“死なないさ…イヤ、死ねないのさ“
「死ぬぞ」
ミユキが冷たく突き放すように吐いた言葉が、空間に静かに反響する。
ギヴォトスの人間でも、こんな状態じゃ普通死ぬ。
だが目の前の大人は立っている。
だとしたら神様が、チョッピリ贔屓したのかもな。
“意外と神にはミーハーでね、モテるんだろうね、私“
「…刺されちまえ、帰るぞ、翔亜」
「…手ェどけてくんないかなぁ?」
「ほんとにいいの?先生ほっといて」
「良いって言ってたじゃん、先生からの接触があるまでほっとけ」
ネオンとヨレた街頭を潜り抜け、帰路へと着く。
「…あのさミユキ」
その先の言葉を紡ごうとした時、敵意を持った銃声がこだまする。
ミラー越しに、PMCの残党…所々の四肢を震わせながら、速度を伴って徐々に__
__確実に大きくなっていく。
「逃がさねぇよ、クソガキども……」
一人の兵士が、亡霊のような執念で、バイクにタックルを仕掛ける。
「銃じゃねえのかよ!?」
「もうヤダァ……!!」
ぶつかった瞬間、密かに何かをくっつけた。
磁力でくっ付いた『それ』は、寄生虫の如く車体の裏側に貼り付いた。
「やりやがったな!この野郎!」
「ばーかばーかー!」
(ふん…気づいては無いな…)
兵士は確かな達成感を覚えたまま、道路に熱いキスをしていた。
そして、兵士には式が上がるだろう…勿論、葬式だ。
「あーもうマジつかれた!おやすみミユキ!!」
家に帰るなり、真っ先にベットに飛び込む。
マジかコイツ。と内心思いながらお互い疲れてるので、ノーコメント。
「おう」
「反応うっす………ふ〜んなるほどね」
「んだよ」
翔亜は、ベッドのシーツを1人分空けて、にやりと言った。
「隣、いいよ♡」
「いいんだな」
ミユキの表情が消えた。
「え?」
夜は更けていく。
「位置情報、確認。盗聴結果、警戒予兆無し」
「…出撃できる最高戦力で向かえ。」
忙しいよぉ…!