心当たりのある人物、しかも最も関わりたくない男。
今この瞬間まで自らの手で電話をかけることになるとは思ってもなかった。
ワンコール。
もどかしい、無意味だと分かってスマホを指で突っついてしまう。
静粛。音を発さない時間がとても苛立ちを誘う。
ツーコール。
良い加減にしろ。癪に障る、生徒の為だ。抑え___
「クックックご無沙汰ですね…先」“質問に答えろ黒服、『ヘイローのない少女』お前の仕業か?“
「…彼女はこの世界に『堕ちてきた』と言うのが正しいですね」
少なくとも黒服の仕業では無いらしい。
握りしめていた鉄拳を緩め、話を促す。
「ただし、イレギュラー…つまりヘイローを持たないのは謎です。いつかの異能力者達に電妄の歌姫。彼女達はヘイローを発現させた」
“だけどあの子はヘイローを持たない…“
確かにこの世界に来た者としては謎は残る。
だがやる事はたった一つ。
“彼女の元いた世界に返す“
「クックック…まあ当然ですね…言っておく事がありましたね先生」
“はよ言わんかい“
「彼女は『実験対象』として懸賞金を掛けさせて貰ってますので。それでは」
“私の生徒に手を出すつもりか…黒服”
怒りの余りに声が上ずる。何持たざる子、知らぬ子を道具にするのか、ヤツとの忌々しいファーストコンタクトを思い出して心は荒波立っていた。
「クックック…彼女は『生徒』なのですかね…?」
“黙れ“
「あー…悪りぃ、ちょっと外の空気吸ってくる、いいな?」
「わ、分かりました…」
ガキの返事を聞くのも反応を見るのもまどろっこしい、そそくさと外に出た。
阿呆らしい、なんで私があんなガキの面倒なんか…
そう愚痴を溢し、帰路についた。
やってられるかよ。クソッタレ。
「やあ、今日は車じゃなくて歩きかい?」
最も会いたくない人間と遭遇する、今日はとことんついてないらしい。
「ん…?忘れたのかい…ローン共々私の事もね」
ゲッ…頭によぎるのは未払いのローン、支払い、ツケ…ぶっ壊してオジャンにしたガジェットの数々…
そしてのらりくらりと踏み倒した請求の数が背中を伝い、寒気を起こす。
「ウタハ様ぁ…ちょっと待ってくれない…?」
温情を期待してプライド、キャラを放り捨てた、正に命乞い。
「ふむ…先生を交えて『お話』しようか」
「ヤダってんだよ!クソッタレ!」
逃げ出す一歩よりも早くその足元を弾丸が撃ち抜く。
「さて…雷ちゃん相手に逃げれると思ってるのかい?」
ウタハの上がってくボルテージに合わせ、雷ちゃんの機銃が激しく唸った。