「あ…帰ってきた…」
随分と激しいお散歩だったみたいだ。
身体中至る所が傷だらけ、ボサボサの前髪の下の目は疲労の光を浮かべていた。
破れて汚れたスーツは数年間遭難した人間の様にみずぼらしく、スマホは向こうの景色が見えるよう素敵な改造が施されていた。
“おーい…“
「なんだ」
意識はあるようだ、彼女の返答を聞いて、交渉を早速持ち出す。
“君…ウタハに随分借金してるみたいだね?“
「うっ…」
年齢相応にそっぽを向いて知らんぷりをする。
少し気が引けるが、弱みを握ってるのは私、ここで押し切って見せる。
“依頼を受けてくれるなら…分かるね?“
「っ〜!あー分かったよ!やります!やります!」
“それじゃウタハ、ユウカに口利きしとくから安心してね“
先生の少し腹黒い一面に驚きながらも感謝を述べる。
「それじゃあ先生、私は用はもう無いからね。おいとまするよ。」
「依頼って確か…」
“それなんだけどね、彼女の護衛をする事になったんだけど…勿論、頼めるよね“
面倒な事になりやがった。
狭っ苦しい1LDKの部屋に女二人。
ハッキリ言ってそれだけでも気が滅入る。
だが報酬のために、顔には出さず、努めてあっさりと返答する。
「オッケー、分かった。」
“ところでなんだけど二人の名前はなんなの?“
「…今更か?」
「ホント今更すぎますね…」
ふと頭に浮かんだシンプルな疑問。
シャーレの先生として生徒の名前を知らないのは気が引ける。
片方だけギヴォトスの生徒じゃないのには目を瞑ってくれ。
「あー…私は[真田 ミユキ]だ、よろしく頼む、先生。」
「[天内
「しまった…傘を持って来るべきだったね…」
突然の激しい夕立ちにふられ、足止めされてしまったウタハは中から埃の匂いのする倉庫の入り口で雨宿りをしていた。
(へえ…主にナトリウムが保管されてるのか…)
普段なら気にも留めないことにまで目が向くほど、暇だった。
そのとき__耳に入ってきたのは、足並みの揃った行進音と、複数の軍用車のエンジン音だった。
(PMC…?一体なぜシャーレに…?…まさか!?)
一抹の危険を覚えたウタハは素早く雷ちゃんを展開し不意をつく。
「なんだ!?」
「あそこだ!オートタレットだ!」
バレてしまったが構わない。
なにせ雷ちゃんにはロボ兵士100体分の____
バン!
その瞬間銃声とも爆発音とも異なる衝撃音が響き、雷ちゃんの動きが止まる。
(何が起こった…!?まずい早く修理を…っ!?)
意識が雷ちゃんに向いた瞬間、無数の銃弾を受け、脳味噌の中身が激しくシェイクされる。
「どうします?こいつ」
「放っておけ、目標は例のガキだ」
「しっかし…電磁パルスがこんなに早く使う事になるとは…」
「構わん、半径10km以内ならシャーレのオフィスも入っているからな」
(伝えないと…)
血に染まる視界の中、ウタハは必死に這いずってシャーレへと向かっていた。