機動戦士ガンダムGQuuuuuuX/ARMORED CORE6 スカーフェイス・ウィッチ 作:キサラギ職員
人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀が過ぎていた。地球の周りの巨大な人工都市は人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった。
宇宙世紀0079、地球から最も遠い宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。
宇宙世紀、0079、ジオン公国軍エースパイロットのシャア・アズナブルは、地球連邦軍のモビルスーツ(MS)開発計画を察知し、
黒塗りされた機密資料より抜粋
「僕の願いはたった一つだけ………」
シュウジの言葉に引き込まれるように、シイコはかすかに微笑んだ。だが、その静かな瞬間は長く続かなかった。突然、別の声が彼女の頭に割り込んでくる。
「身構えている時には、死神はこないものだ」
「シイコ」
額に
若い男の穏やかで威厳ある声だった。シイコはその声に懐かしさを感じつつも、誰か分からなかった。
「ペダルを踏め!」
声が鋭く命令し、シイコは反射的にペダルを踏み込んだ。直後、シュウジのビームサーベルが機体をかすめ、火花が散った。もしあの声がなければ、コックピットは直撃されていただろう。
「くそっ……!」
シイコは歯を食いしばり、機体を立て直そうとしたが、ゲルググ・スガイ機は致命的なダメージを受けていた。スラスターが機能を停止し、稼働限界に達する。モニターには「CRITICAL DAMAGE」の文字が浮かび、警告音が鳴り響いた。推進剤に引火する。
爆発の瞬間、彼女の首にかけられたサイコフレームのネックレスが強い光を放ち始める。それは戦友の墓で拾ったT字型の遺物であった。
『なにかしら、これ……』
急に墓参りに行きたくなったので一人で行ってみると、そこには何かが置かれている。
T字型の、金属片のようなもの。
触ると不思議と温かく、懐かしい。
お供え物だろうか。捨ててしまおうか。
等とぼんやりしながらも持ち帰って、ネックレスにしてしまったのだ。自分でもよくはわからなかった。
わかっていた。これは復讐どころでもなんでもない、ただの憂さ晴らしであるなどとは。
クランバトル。コロニーが黙認している、軍人崩れが参加する競技とも言えないただの決闘行為。頭部を破壊されたら負け。それ以外にルールなどというものもないそれは、観客を沸かせるための非合法行為だった。
赤いガンダム。“ジオン独立戦争”において多大な戦果を上げたエース。
あれは、悪魔だ。大勢の命を奪った。私の相棒も、奪われた。反応する間もなかった。遠方から飛んできたビームが次々と味方を飲んでいく。生き残れたのは偶然に過ぎない。
だから殺さなくてはならない。そう決意して、挑んだ。中に乗っているのは所詮軍人崩れか、職を得られなかった難民だ。見た目だけに違いない。そう思って挑んだ。勝てれば、賞金も手に入るではないかと自分に言い聞かせて。
だが違った。精神が交錯する。
あれは、シャア・アズナブルと同類の。
ニュータイプだ。
速やかに殺さなくてはならない。
全力をかけて挑み、しかし届かなかった。シイコのマニューバに機体がついてこられなかったのだ。
光は緑がかった金色に輝いた。
光はコックピットを包み込み、シイコの視界を奪った。彼女は意識の中で体が光に溶けるのを感じ、痛みも恐怖もなかった。ただ、遠くへ引き込まれる感覚だけが残った。ゲルググ・スガイ機が爆発し、コロニーに巨大な光球が広がった。そして、彼女の存在は消え去った。
西暦、2×××年。
人類はその版図を地球から地球圏外の銀河系へと移していた。
増えすぎた人類を宇宙に送るまで、多くの血が流された。国家という旗は失われ、形骸化し、企業が人類を支配していた。
正のエネルギー。
成長と野心と、新しい戦争の時代だ。
辺境の星系にある開発惑星。ナンバーISB2262。ルビコン3。
「…………あ、あ……」
這い出る。分割された巨大兵器が、燃えている。一部は燃えて、一部は無傷に見える。だが最悪だったのはコックピットだ。這い出て来たのは黄色いノーマルスーツ姿の人影。スーツがくすぶっていた。焼かれて、すすけて、灰塗れ。灰被りの、サンドリヨン。
ヘルメットを脱ぐ。端正な顔は歪み、その顔の右半分はほとんど爛れていた。唯一目だけは大粒の涙が守っていたが、皮ふは歪んでいた。
スーツを脱ぎ捨てようとするが、肌に張り付いている。器具を外す。上を脱ぐと、つんと焼けた香りがする。真っ赤に爛れたに二の腕の一部、そして背中。まるで背中側から蝶の焼き鏝でも押したように赤い。
呼吸をする。どこだ、ここは。
果てしない荒野。イズマ・コロニーとは似ても似つかない、大地。空を見上げると巨大構造物が存在し、壁などない。
「地上……?」
意識を保っていられない。
胸からぶら下げたT字型の金属片が温かい光を放っている等露知らず、意識を手放す。
彼女はこうして死ぬしかない定めにあった。
だが、彼女の姿を見つけたものがいた。
大型のヘリが傍らにやってくると、サーチライトをおろす。
そばに着陸した彼女を出迎えたのは、電動式の車椅子に腰かけた、片足がない、老人であった。老人は、彼女をじっと見つめていた。