Rebellion Fight of traitors 作:A.K
代表戦からまる1週間が経ったが……未だに一夏の姿はない。
「なぁ……一夏から感じたあの気配って」
「怨念よ……しかも下手したら世界を狂わせるほどの強い怨念ね」
「まさか一夏が器になる存在だったとは……!」
本日の授業を終えた1年1組では、未だに一夏を心配している声がまだ続いていた。
あの時の光景はナインボールたちが記録して、カンパニーの人々の手によって解析された。それによれば一夏は怨念の『器』となり現在確認された単一使用能力《奈落ノ焔粘塊》を使用、精神が崩壊した……これでもかなり危険なことだということが理解できたが……
「問題なのは『複数の平行世界のインフィニット・ストラトスの世界の一夏や他の男性パイロットやISによって運命を歪められたすべての人々を含んだ世界の怨念を全て取り込んでいる』という事だ」
コウマが取り出したのは平行世界の魂……魂の総数値データだった。
「ベルセポネ、ハデス……冥界やあの世……冥王ケイサルエフェスにも確認を急いだんだが、やっぱり1週間前のあの日からこの世界の平行世界の幽霊や魂が激減している。霊夢、幽々子と映姫様からの連絡はどうだった?」
「義兄さんの考えていたとおりよ。魂が地獄からも消えちゃってるわ……輪廻転生が許されないほどの悪霊だった奴や、女尊男卑に強い恨みを持つ魂がすべて消えちゃってる」
「おいおい、輪廻転生のバランスが崩れるぞ!?」
勇儀が狼狽えるのも当然だ。輪廻転生の魂が極端に減れば生物界のバランスが極端に崩れてしまうからだ。
「アマテラス様も困ってたよ〜『このままだと地上が終わるー!』って」
「お空、いつの間にアマテラス様と会ってたの?」
「みんなが寝た後に、ちょっと魂の確認の手伝いに行った時にね」
詳しく話を聞けば1週間前のあの時、お燐たちが夜心配になりながら寝ようとした時に呼ばれたそうだ。アマテラスと八咫烏は太陽に関係する神同士……どちらかが非常時に呼べば行かなければならないのだ。
そんな会話の中でカミナたちは置いてけぼりなメイとセシリアに説明をしていた。
「まあ、神様だな……アマテラスは太陽神でお空が同じ太陽に関係する八咫烏という神様だ」
「神様ってやはりいたのですか……それに今も存在しているのですね?」
「まあな。しかし他の男性パイロットの怨念も取り込んでいるのか……やばいな」
そんなに大変なんですか?とメイ・グリーンフィールドがカミナに視線を向ける。
「ああ、他の男性パイロットは大抵白騎士事件の被害者や一夏と比べられ続けて『存在しなかったことにされた』奴も含んでいる……それかこの世界の一夏みたいに何らかの因子で誕生した新たな織斑の子供が織斑一族やその仲間に復讐する事も珍しくはない。たまに住んでいた街を滅ぼすこともあるけどな。その時に生み出される怨念は人を殺せるほど濃い。それが何十、何百、何千、何万、数億とそれを1人がすべて取り込んでしまった……ここが問題なんだ」
「ちょっと待って下さい、私たち人間や人の形を持つ生物でさえ2本の腕を扱うのに脳が限界を感じているのにそんなに多くの情報を一人で受け止めたら……!」
壊れてしまう……メイはそれを察したのだ。
「だが、一夏は未だに生きている……「一夏が目を覚ましたぞ!」わかった」
アムロからの知らせで一同は保健室に向かった。何らかの悪影響がないか心配していた。
「「「一夏!」」」
勇儀、お空、お燐の3人が同時に入ったがすぐに違和感を感じた。静かすぎる、一夏から感情が感じられないのだ。
「・・・ああ、みんなかどうしたんだ?」
「一夏が倒れたって……心配したから」
「ああ、アレか・・・俺は大切なことを思い出したよ。復讐だよ、俺や束さんから大切な人を奪ったあの街とアイツらへの復讐を……!」
ゆらりと生気を感じさせない動きで顔を向けた。ナニカが無くなっている。一夏が持っていたナニカが。
「一夏、お前……自ら『器』になりやがったな」
「コウマさん、失望しましたか?」
「いや、何時かは平行世界の誰かがなるだろうと思ってたから別になんとも思ってない。まあ表情が作れなくなって感情も壊死したようだが、瞳孔も開きっぱなし……フロンタルより酷いな。生きていても死んでる、正に怨念の塊か」
それを聞いた一夏の姿は一瞬で消えてしまった。
「義兄さん、一夏は何処に?」
「復讐しに行ったんだろうな、生まれた街に」
それを聞いた一同は顔を俯いていた、この後起きる事を理解したからだ。
「コウマさん、俺やっぱり……」
「止めろバナージ、お前が完成された『真のニュータイプ』だとしても今の一夏は文字通りの『器』だ。無駄死にになるだけだ……」
今の一夏は怨念の塊……全てを飲み込む負の可能性。バナージの人の可能性すら飲み込むフロンタルより完成された虚無、そうなるとフロンタルの時でさえ飲み込まれかけたバナージはもう打つ手が無い。
「あと復讐を止めるなんて馬鹿な考えはやめろよ?」
「なんでさ……なんでだめなのさ!?」
「今の一夏を元に戻すには、復讐を成し遂げるしかない……もし止めるというのなら俺を超えて部屋から出てみろ餓鬼共。復讐を止めるなんて言う奴はそいつのことを理解できてなかったという事だからな」
燐は俯いていた……自分たちでは何か出来ないのか頭の中では考えていた。しかしそれは余計な事と遠回しで言ってきたのだ。
「怨みたければ恨めばいい……だがな、
最後の言葉を皮切りにコウマも瞬時に姿を消した。後に残ったメンバーは重々しく口を開いた。
「私は義兄さんが正しいと思うわ、だって他の人が勝手に口出し出来る事だと思う?思わないわ。その人が解決する事を他の人に邪魔されたら誰だって嫌でしょ?」
「私も霊夢と同じよ、復讐を行うなら普通あそこまで言えないわ……本当に恨まれても良いという覚悟がなければ言えないわ」
霊夢と幽香はそう言い出ていった。
「俺も霊夢達の意見に賛成だな、俺も一夏と同じ人生を歩んで早苗が殺されたら復讐しか見えない」
「オレもカカロットを倒すという復讐があった……だから俺もあの意見に賛成だ」
「なら、俺もそうだ無残に殺されたサイヤ人たちの代わりにフリーザを倒すと言う復讐のために生きてきたからな」
「EI-01……パスダー……心臓原種やゾンダーを倒すという為の戦いもある一種の復讐だな」
「俺もアニキが殺された時、復讐する事しか何も考えられなかった……自分の事は自分で解決させるしかないんだよな」
「俺もチミルフ様やアディーネ様の敵討ち……それが人間に対する復讐の理由にしていた事がある。一夏の事はよくわかるな」
そう言いながらシモンたちも出ていった。彼らも元の世界では復讐とも言える戦いに身を投じていたから一夏のことを理解できるのだろう。
「ねぇアムロ……私たち間違ってるの?復讐するのはいい事なの?それを止めるのは悪いことなの?」
「空、それは人が決めることは出来ない……俺も……皆も、目の前で大切な人を殺されたら……同じことをするかもしれないからな」
「・・・鬼は一度あって終わったら気にしないけど……私も大切な人や仲間を失ったら復讐しちまうかもね。カミナ、アンタはどうなんだい?」
カミナは少し考えたがすぐに結論を出した。
「・・・俺はわかんねえよ、復讐だとかそういう事は何もわかんねえ……けど一夏が決めたんなら最後まで筋は通させるさ。お前達はどうするんだ?簪の嬢ちゃんはもう行ってるようだけどよ?」
カミナは簪が一夏のことを聞いて落ち着けてないことを理解していた。その為コウマの所へ向かうだろうと直感で感じ取っていた。
「・・・ありがとうカミナ、私やっぱり行かなくちゃ……一夏の所に!」
「約束したからね、私も鬼として……いや一人の女として一夏と共に行くさ」
「あたいも行くさ……このままじゃ一夏が壊れちゃうしね」
「そうか……じゃあ行ってこい!」
保健室から見える外の景色は今にも雷雨になりそうなほど曇っていた。だが……赤い夕日はまだ強く決心した彼女達の心を表したかのように紅く輝いていた。
所変わって、嘗て一夏が絶望をした街では季節外れの雷雨の中で、悲鳴と断末魔と爆発が響いていた。
その中心にいるのは粘液に覆われたどす黒い鬼武者だった。それは一夏の専用機《破黒》が単一能力の粘液を纏い変異した姿である。武装を全く装備しない機体のためにその全身を補強したのだろう。
『GRRRRRAAAAAA!!!!』
その腕は一瞬まで逃げ惑っていた生物を弾き、その脚はヒステリックに叫んでいた女を擂り潰しながら歩みを進めていた。
『殺せ……殺せ……因果応報という言葉をお前達に教えてやる……!お前達が……皆をウバッタヨウニ……俺も全てを奪ってやる……!』
この時既にこの街の8割が壊滅していた。耐震対策の1つとしてライフラインの完全共通化が進んだ為に、電線は地中に通され、電柱が無くなった為に見通しが良くなったとも言われている。
しかし盲点とも言えたのが一夏が手に入れていた《 構造を組み替える程度の能力》だ。
既に空き家となっていた家の電線を見つけ出し、電線を「特定の感応波の干渉により電線が暴走し過負荷により地中の部分が誘爆する」という構造に組み替え単一能力の粘液を全ての地中の電線内に潜り込ませ、感応波……一夏の脳波によって起爆させ街の殆どを吹き飛ばしたのだ。
後は生き残りを殺すだけだ。ある程度を殺しこの街の避難地域になっていた公園に集まった全ての人間を見下ろしながら頭の粘液と装甲を解除し素顔を晒した。
「なぁ……どんな気分だ?出来損ないと呼び続けた奴に全てを奪われる気分はさぁ?」
「お、お、織斑いちぃ」
鈍器でよく頭を殴って来た精肉店の店長をバチュという音と共に口を境に手刀で上下に切り落とした。
「あーあ、呆気ない……「せ、せめて子供だけはたしゅ」黙れ」
投石を繰り返していた保育園の生き残り達を瓦礫の塊をぶつけてミンチに変える。
「この街に生きているやつは全員殺す……その血の一滴まで殺す……!老いも若きも全て……!赤子だろうともだ……!」
真っ青になり泣き叫ぶ子供も老人も男も女も全て憎い。自分の中にいる魂質が叫ぶのだ。奴らを生かすな、 コイツらに未来は必要ない、『我々』は待っていたのだこの憎しみを晴らすこの時を。悪魔だろうが仲間だろうが邪魔をするなら『我々』の敵。故に滅ぼす。
子供だけとは言っていたが、コイツらはこの世界で弾の二人目の妹が生まれそうだった弾の母さんも惨殺した……!
弾の親父さんも守る為に囮になって囲んで棒で叩かれ全身を砕かれて更にガソリンをまかれて燃やされて死んだ……!
弾と蘭は体中に釘を打ち込まれ、更にダルマにされて尊厳もない酷い死を迎えた……!
鈴の親父さんと母さんは鈴や俺や束さんを守るために拷問を受けて逝ってしまった……!鈴は猟銃で全身を蜂の巣にされて涙を流しながら死んだ。
数馬とその家族も途中ではぐれてビルの上から突き落とされて死んだ。生き残ったのは束さんと俺だけだ。束さんの話だと亡国企業に娘とも呼べる子供を一人預けているらしい。
こんな奴らに情も何も必要ない……俺から大切な人々を奪い去ったコイツらに……!この街に……!地獄を見せるのだ!
「生きとし死するこの世界で最も残酷で最も苦しい地獄に導いてやる……!」
網膜ディスプレイに単一能力の進化情報が追加され、単一能力が塗り替えられた。俺は迷うこともなくそれを起動した。
『単一能力第二形態《天元の創黒柱》』
直後街全てを覆う『黒い柱』が街を全て取り込み、ナニカを生きたままミキサーでかき混ぜるような音と悲鳴が響き渡った。
そしてすべての音が消え去った後、柱は消え去り残っていたのは嘗ての五反田食堂の残骸、凰一家の食堂の瓦礫、廃墟になった数馬の家、篠ノ之神社と道場だけが残っていた。
そしてそれらの場所には血のように真っ赤な花束とすべてを飲み込むような漆黒の花束が添えられていた。そして一つの黒柱が墓の如く建てられていた。
(これは俺の罪の証だ……怨みたければ恨んでくれ)
そしてそれ以外のすべてを破壊し、荒野に還元した一夏は膝をついていた。一夏の体から次々と霊魂が飛び出しては消えていくのを繰り返していた。
「俺は……『皆』の恨みも晴らしたよ……これでよかったんだよな?」
一夏から飛び出していったのは 取り込んだ全ての魂だった。彼らの怒りや悲しみも受け入れ今果たしたのだ。意識が朦朧とする中で一夏は後ろに誰かがいたのを感知した。
「お前の覚悟見せてもらったぞ、一夏」
「コウマ……さん?」
「コウマでいいって言ってるだろ?」とため息をつきながらコウマは歩みよって来た。
「お前がさっき殺した奴らは四季や閻魔やオレ達が責任もって転生処理や判決を下しておく。お前は気にすんな」
「ですが……「まったく女を4人も泣かせるなよ?」え、それって「「「「一夏!」」」」みんな……どうしてここに?」
お空、勇儀、お燐、簪の4人が汗だくになって走ってきた。ここからIS学園はかなり距離があるのにどうやってきたのだろう?
「ここから10km先の所までESウィンドウで転送されて走ってきたのさ」
勇儀のセリフからするとコウマがやらかしたのだ。
「コウマ……あんた何やってるんだよ?」
「最近走ってないだろ?」
「それでか。「一夏、顔の筋肉が動いてる!」……あ、本当だ」
目覚めた際から先程まで全くと言っていいほど無表情から動かなかった、顔の筋肉が動いてた。瞳孔も閉じていた。
「器でなくなったから元に戻ったのだろうな……お前が器に注がれた意思の無念を晴らしたことで魂たちがお前を『器』から解放した。つまり元に戻ったてわけだ」
「良かった……本当に良かった!」
「全く、簪も心配症だねぇ……私は一夏を信じていたよ「けど勇儀も泣いてたじゃねえか」コウマ、それは言わないでくれよ!」
安堵の涙をほろりと流す簪に対して、勇儀も軽口を叩くがコウマにばらされ叫び返す。その目はうっすらと赤くなっていた。
「ねぇ一夏、ここに残ってる建物や神社って……」
お燐が見たのは、一夏が以前に話した友人達の家や神社……この世界で一夏の味方だった人々の名残だ。
「ここだけは残したかった……大切な人たちとの思い出だから……」
「頑張ったね一夏……偉いよ、大切な人の思い出を忘れないであげるのは大切なことだよ」
「お燐……すまない「一夏ぁぁ……!」うぷっ、お空……苦しい」
お空が全速力のタックルで一夏に抱きつき、一夏の顔はお空の胸に埋まった。
「心配したんだがらぁ〜!うわぁぁぁぁん!!」
「ごめん……本当に……ごめん!!」
一夏達を見ながらコウマは残った一夏たちを助けてくれた人々の家々の残骸へ行き念仏を唱え回り、篠ノ之神社には貢物等を置いておいた。ここの神とは旧知の中であった為一夏と束に加護を与えてくれた事を感謝していたのだ。
「これだな……ここの神の御神体は日本刀だな」
御神体として祀られていた日本刀を回収し終え、キサラギ、ミラージュ、クレストの3社のレーダー探査機を使用し数十km先からISの接近反応を確認したので撤退を促した。
「そろそろ撤退するぞ、国のIS部隊が接近しているようだ。今ばれるわけにはいかん」
即座にコウマは瞬間移動し消えて、一夏も瞬間移動が使えない簪の手を握りながら勇儀達と一緒に瞬間移動で消えた。
学園に戻り、クラス代表決定パーティーと交流会が開かれた。その時に一夏達はクラスメイトを守った事もあり互いに強い絆を結ぶに至り一夏の事も直ぐに受けいられていった。
器になりつつも元に戻った一夏を加えて学園は今日も動く……その一方ヨーロッパで動くカンパニーメンバーもいた
次回「駆け抜ける鋼の勇者達」