Rebellion Fight of traitors 作:A.K
彼の最終的な答えは簡単な話で個を守るために他を滅ぼす。たったそれだけのシンプルな答えだった。この事は彼しか理解できないだろう。
彼は齢12歳にして幻想を滅ぼせる資格があった。恩も捨てられるし儀礼も否定できた彼はそれでも人を信じた。だけど器として考えてみるとこの思いに否定をしたくなった。
これを繰り返すのが人の形なら、我らは不完全な失敗作では無いのか?
コレは救いを捨てたケモノのもしもの終。
ルートケース『織斑一夏がイデに身を投げた場合』
轟音を立てて大陸が焼けていく、人も荒ぶる神々もそれを喰らう者達も地上に焦げを残して何も残らない。
IS学園壊滅から数日後、極東支部はIS世界の消滅を確認した。観測できた平行世界が無限力の一つと思われる反応に飲み込まれて消えたというのが結果的な事だ。
被害が予測される世界線から数多の戦力を全てかき集めた……艦娘、神機使い、機動兵器、英霊、妖怪、超人等の元々集まっていた有志連合の全戦力を投入して迎撃に当たらせた。
フェンリルヨーロッパ本部に
「イデは人類粛清を行う為に極東支部を目指したんだろう、失敗作としての人間を消し去る為に」
と、ペイラー・榊極東支部長の発表で並行世界のリセットではなく完全消去がイデの……一夏の答えだと判明した。そのため死なば諸共という特攻による織斑一夏の殺害、又はイデオンの捕獲が残された行動だった。
西暦2075年8月10日。今世界全戦力を投入した巨神迎撃作戦『オペレーション・ラスト・サン・アンサラー』を午前6時に開始。自爆装備を取り付けた全戦力が攻撃を開始した。
イデオンがこの世のものとは思えない、憎しみと失望にまみれた唸りを上げて向かってきたかつての仲間達を殺しにかかった。嘗ての同僚達に向けてイデの光で強化をしたミサイルを放つ……この世界で後輩として育てた神機使い達や妖怪等も爆発で体が裂け、燃えて、消えていく。
元より100m程あったその巨体は、一夏が取り込まれたことにより200m程に肥大化し更なる脅威と化していた。
元の一夏に戻ってくれという声もすぐに蒸発していくのを、第一部隊やブラッド隊員……幻想郷の仲間も見ていく。もう話し合いの余地もなく皆殺しにしてくる以外には何も無いことを死にかけの悟り妖怪から聞き出して、真正面から迷いを捨てるように殺しにかかる。
「やっぱりこうなるか、まあ仕方ないな」
遥か遠くで戦場を見守っていたコウマは茶を啜りながらそれを見守っていた。
この光景も見慣れたものだと考えていく…形あるものはいずれ消えるのだから仕方ないとしかこの男は考えていないのだ。
次第に消えていく爆発などを見て今回の思い出を振り返った。どこに問題があったか、何がいけなかったのか、それらを全て考え、シュミレーションした。
「そうか、あの時オレがアイツの元へ行ってやれば良かったのか……!」
思い当たる節…イデオンが覚醒した時一夏の支援を行わずにそのまま戦闘を行ったのもあるが、その後とある騎士からの通信を切ってしまったのが行けなかったようだ。
やってしまったという顔をしたコウマは、先程の最後の爆発で飛んできた遺体……に見えてまだ息がある神機使いを見てその近くに寄り添った。
ロシアからやってきた神機使いとしての後輩である彼女もまた一夏の友人であった。この世界で安心して暮らせる場所をみんなで考えて作って言ったのを思い出す。
せめて最後まで一緒にいてやろうと思い、背中に背負ったがとても重く感じた。これが自分のミスの結果であるという自覚がそう知覚させたのだろう。
「アリサ……スマンな、こんな簡単なミスもオレは見抜けなかったようだ。やっぱりボケてきたのかな俺?」
彼女をおぶって歩いていくと、転がっていた遺体を見つけた。超サイヤ人である地球育ちの彼はやはり最後まで戦い続けたのか体の殆どが消し飛んでいたが微かに息が残っていたのはやはり主人公故の生命力なのだろうか。
「すまねえ……一夏を助けられなかった……!」
「気にすんな悟空、あとは俺が何とかする……今までありがとうな」
「そっかぁ…………じゃあな……」
息を引き取ったのを確認してから遺体を埋葬、その後半壊した極東支部へと足を向けて行った。作戦司令部のあるフロアはイデオンソードの直撃を受けて完全に消滅、その中心には巨大な大穴が開きイデオンはその中へと潜り込んでいるのを確認した。
使えるものはないかと探したら、これまでに無いほど光り輝くエクスカリバー、博麗の巫女のお祓い棒、黒白の魔女の八卦炉、更に自分の神機、そして極東支部で作られた『白式』。そして大破したラガンから抜き取ったコアドリル。
「これなら行けるな」
これらの装備を整えて白式を起動、背中にアリサを背負ったまま奈落の底へと堕ちていく。グレンキャノンと全身のミサイルが弾幕となり襲われるが、エクスカリバーの光波で通れる間を形成し突破する。
「自分のミスは自分の手で拭い去ってやる……!」
八卦炉と射撃形態の神機でミサイルハッチを潰しながらも殺しにかかったイデオンの両腕から逃れるも脚部の装甲が消し飛びバランスが崩れるがお祓い棒にエネルギーを纏わせイデオンに叩きつけて頭に向けて全力で飛び上がる。
「星の聖剣よ、せめて世界の最期ぐらいに全力で力を解放しやがれ……!エクスゥゥカリィィィィィバァァァアアッ!!!」
対抗せんとイデオンソードが両腕で起動されて、エクスカリバーと拮抗する。そこに白い刀が投げ込まれイデオンソードの光が裂かれていく。
「サンキュー束博士!零落白夜は世界を救うかもしれないぞぉぉおおお!!!」
零落白夜……白式の能力でエネルギー消滅能力は無限のイデの光を超えていく。しかしその核となる雪片はもうすぐ消滅を免れない。その先へ……無限力を切り裂きながら八卦炉にコアドリルと払い棒を接続、瞬間加速で加速しながらエネルギーをまとわせて巨大化させたギガコアドリルでついに無限力の壁を越えた。
「あばよ織斑一夏、今度はオレも一緒に戦ってやる……権能『再世』」
むき出しとなっていた頭に取り込まれた一夏に神機とエクスカリバー、更に雪片を順番に突き刺し……心臓にコアドリルを差し込んだ。
イデオンから光が漏れだし周りが光に包まれる中、イデの解放を行ったコウマは白式を解除して、背負ったアリサを下ろし自分の装備や上着を持たせた。イデの真上に真黒な塊が巨大化して徐々に地球を飲み込みつつあった。世界のリセットが始まったのだ。
四つの権能の一つ…再世。世界そのもののリセット機構、発動に必要な状況たる世界の壊滅等の複数の条件を見たし『無限力の発動』を利用して世界の概念そのものを戻す。
「さて、今回の結果はイデオンに取り込まれるという訳だったが……次はこうならないようにしたいな」
一夏とアリサ、そして形見のお祓い棒とエクスカリバーに八卦炉などを置いて最期の時を待つ。一夏を頭から抜き取り3人で座るように配置して最後の茶を飲んだ。
「なあ、次ならこの結果を超えられるか?」
「きっと、出来ますよ……!私たちが願った人なんですから……」
「起きてたなら……一言くれよアリ───」
口を合わせられ固まる、キスというのはしたことも無くこういうのに弱いから余計に固まるが不思議と悪い気はしなかった。彼女の目はもう前が見えないのだろう、だけど己がここにいることを伝えるために腕を握りしめた。
「最期くらい……いいじゃないですか」
「まったく、アリサには叶わないな……」
直後に世界が消えた。だがイデオンとその周辺にいた存在だけは残った。それも少しずつ消えていくが、消えるのではなく戻っていくのだ……この原因となった運命の分岐点へと。
「さて、運命をねじ曲げてやろうじゃないか」
事切れた亡骸には振り向かずに意識を過去に飛ばす。
世界が終わるなら何度でも変えてやる。
それでもダメならそれを超えてやる。
故に帰っていく、運命の分かれ道へと。
大切なものを守るために……。
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巨神とマザーホークが接近戦を繰り広げる中、彗星となった機体が突き進む。
「今度は……救ってやるさ未来を」
「どうしたんだよ隊長、早く行かねえのか?」
「なに、ただの独り言さ!」
イデオンに立ち向かう背中には星の聖剣でも、後輩でも無く運命へと叛逆した騎士を乗せている。運命を超えるために……完全な決着のために、空を駆けた。
コレは復讐を求めた少年とイレギュラーの物語でもある。
そして運命を超える…イレギュラーの物語である。
ルート「イデエンドVer.2」
ルート条件
マザーホークとの戦闘で神威コウマの援護が入らなかった。
イデに織斑一夏が完全に取り込まれた。
叛逆の騎士をIS世界に呼び寄せなかった