終わりまでまとめたかったんですが、続きの戦闘が全然筆が進まないのでひとまずここまでです
オリキャラが増えるし、トリモブに固有の名前がついたので、苦手な人は注意して下さい
「ねね、聞いた? なんか今日午後から決闘があるらしいよ?」
「あぁ! 聞いた聞いた! サンクトゥスの暴力装置さんとミカ様でしょ?」
「そんな呼び方して、本人に聞かれてたらどうするのよ」
「あの人そんなこと気にしないじゃん、でもさわざわざ決闘とか古臭い制度持ち出してまでミカ様を罰したかったのかな」
「ねー? なんかよく分かんないけど、ミカ様がなんかやらかした事ってもう罰せられてるんでしょ? その上でもう一発いっときたかったって事?」
「え、決闘って単なる喧嘩じゃなくて制度とかあるの?」
「らしいよ、私もシスターフッドの友達から聞いただけだから詳しくはわからないけどさー」
「聖園ミカにあの野蛮人が決闘を申し込んだそうで、見ものですわね」
「魔女を裁くのであれば、あのいけすかない野蛮人のことも少しは好きになれそうですわ」
「しかし、ただ殴りつけるわけじゃなく制度を利用して罰そうとするなんて、そんな知能が彼女にあったのは驚きね」
「流石にティーパーティーに所属している者として、あの野蛮人だって回すだけの頭は持っていた、ということでしょう」
長い長い間、本来の使われ方をしてこなかった決闘場の広い準備室にサンクトゥス分派に所属している二人の生徒がいた。
一人は愛用の銃と銃剣と言い張っている棒の整備を。
もう一人は、納得いっていませんというオーラを隠しもせずに眉間に皺を寄せながら、装備の点検や弾薬の確認をしている彼女を眺めて。
「……大体、こんな事アンタがやる必要あるの?」
サンクトゥス分派文官派閥のトップ
昔から何度も何度も訳の分からない理屈で突拍子のない事をしだしたが、もう慣れたと思っていた。
しかしそれは間違いだったと、昨日笑顔で聖園ミカ様に決闘を申し込んだと言った目の前のバカに気付かされるまでは。
「またその話ですか? もう耳にタコが出来るほど聞きましたよ」
明らかに不機嫌なマユの質問に対して欠片も意識を割かないで脊髄から直で返事を返したバカこと、サンクトゥス武官派閥トップ
脳内掲示板にあげてある聖園ミカの戦闘映像を参照しながら、不自然に思われないように昨日までに整備を終えてある装備の点検を手癖でこなしているだけなので、マユの発言はほとんど右から左へ聞き流している。
これは親友への甘えでもある。
このくらいならマユは許してくれると考えて、一大決戦を前に気を落ち着かせようと親友に甘えているのだ。
ちゃんと話を聞けと頭を叩かれたが。
「何度だって言うけど? 本来この件に関してはそれこそ桐藤様や蒼森様、歌住様にツルギさんみたいな組織のトップや治安維持組織が出張るのが正しいはずでしょ」
「そんなこと言ったってどうにか出来ない、することが難しいから今回の決闘な訳です。それに上の人達の手を煩わせないならそれに越したことないでしょう?」
「間違いなく後始末で煩わせる、って分かりきった未来の話はこの際置いておくけど、だからってこんな手段を選ぶ必要は無かったと、今からでも止めるべきだと私は思うけどね」
「だって……セイア様の仇討ちだって逸る部下の子とかに聖園様に対するアクションは私がするから止めろって言っちゃったから。今更穏当な手段じゃ納得して貰えませんし……」
銃剣を膝に置き、へにゃりと眉を下げて情けない顔をするサアヤを見て深く深く、ながーいため息を吐き眉間を揉むマユ。
昔からこの顔に弱い事をマユは自覚していた。
目の前の情けない顔でうじうじしだした可愛らしい親友は恐らく、その事に気づいていないが。
だが、ここぞと言うところでいつもこの顔になる。
どれだけ文句が浮かんでいても、どれだけ止めようとしていてもこの顔をされると助けてあげたくなってしまうのだ。
それが前準備なのか後始末なのか、時々で変わってきたものの仕方ないなぁと受け入れてしまう。
悪癖だと分かってはいても長年治せていないので今後もそうなのだろうとマユは諦めていた、もちろん今回も。
「まぁ、アタシだってもう今更遅いことぐらい分かってるけどさぁ」
そう言いながらしゃがみ、目線を合わせるマユ。
そのまま膝の上でころころ転がされていた単なる棒にしか見えない銃剣を抜き取り、傍に置いてからサアヤの手を握る。
「それでも、だとしても、大事な親友が決闘をするんだよ? 心配したっていいでしょ? 止めようとするのも当然でしょ? ずっと言っているように、アタシはアンタが傷つくところを見たくはないの」
「ふふ、マユはいっつも優しいですね、五月蝿いくらい心配してくれますし」
「一言余計だっての。まったくアンタは昔っから変なことをして怪我をして、トリニティに入ってからはそれがもっと酷くなって、何かっていうとどこそこで戦闘したとか、何とかってやつは強かったとか、ツルギさんに会ってからは戦闘狂っぷり拍車がかかって、アタシの心が穏やかだった日がどれだけあったか……」
一つ一つ、指折り数えるように過去を振り返るマユ。
思い返す毎にやっぱり引っ叩いてでも止めるべきかと考えるが、言ったところで無駄な事もまた思い返されるので結局好きにさせてしまう。
それに、今回のことは単なる個人の喧嘩、決闘ではなく先の騒動から今に続く問題の解決やサンクトゥス分派に燻る聖園ミカへの不満の解消に加えて、本人はそんな事考えてもいない魔女の断罪として広まってしまっているからもはや、止めるのは不可能だとマユは理解はしている。
とはいえ、こんな得る物のない戦闘で親友が傷つくと思うと、どうしたって心がささくれ立つし、イライラが止まらないマユ。
聖園ミカを滅多打ちにした所で、あの訳の分からないデモという名のイジメをやっている連中から上辺の称賛が贈られるだけなのだ。
そのくせもしも万が一、聖園ミカに負けてみろ、親友を野蛮人だのと罵る連中がこれ幸いとばかりに調子づくし、引き摺り下ろそうとしてくるだろう。
まぁ、その辺りは結果どうしてもダメだったら別に今の地位から引いたっていい。
サアヤの椅子が誰かに渡ったとしたら、椅子から落とされた彼女自体は自分が引き取ればいいし、それで足りないなら自分の椅子も渡せば事足りるだろうとマユは考えている。
文官派閥の長としての自分がそれではセイア様達に迷惑かかって元も子もないだろうと叫ぶが、一個人としての自分は親友より優先するものは無いとそれを切って捨てるのでマユの考えが変わることはない。
「てかさ、そんなに強いの? 聖園様は」
マユは思い出したようにそう聞く。
目の前で弾薬が足りない気がするとか曰う愛するおバカは普段、戦闘に際してこんなに入念な準備はしない。特に、銃に関してはその傾向が強い。
せずとも大抵のチンピラは倒せるだけの実力があるからだが、何よりも射撃が下手なのではなから当てにしていない。
その昔、まだ今ほど強くはなかったサアヤと共に不良達に囲まれた時に、ポケットに手を突っ込んで二発しか残弾が無いとか言われた時は目眩がした事を、マユは今も根に持っていた。
結局二発で二人伸した後大立ち回りをして、残ったほとんどをサアヤが拳で沈めたので特に問題はなかったが。
サアヤは、その頃から銃を近づくための牽制程度にしか考えていない節がある。
そんなサアヤが弾薬の数を気にしている、大した戦力にならない射撃すら使わなければ勝てないかもしれない敵だと認識している。
あの聖園ミカが? パテルのお姫様、わがままプリンセスのあの聖園ミカが?
傍若無人というのは悪し様に言い過ぎかもしれないが、それだけ我儘放題だったがとても腕っぷしが強くは見えない。それらは立場や権力で通していたし、暴力に頼っている所は見たことがないし、想像もつかない。
「はい、間違いなく。ツルギさんとも渡り合えるかと。なんなら勝てるかもしれませんね」
「そんなに!? あ、いや、別に侮っているわけじゃないけど、とてもそうは見えないというか……」
「分かります、分かりますよ。聖園様は見た目だけだとキラキラお姫様ですから。パテルの首長という立場もあって鉄火場には出てきてませんしね」
「入学前に暴れていたなんて話も聞かないし、どちらかと言えば非力な方かと思ってた」
「ぱっと見そうは見えませんが、やはり強者特有の空気を纏っているというか、最悪の最悪、最終手段だけど全部ぶん殴ればどうにか出来ると考えてそうな雰囲気がありますね」
サアヤは自分の感覚と集めた情報に加えて、シャーレの先生から貰ったアドバイスからそう結論づけたとマユに語る。
なお、一番の根拠は脳内掲示板で手に入る原作知識や並行世界の聖園ミカの情報なのだが語ることは出来ない。
「そんなことある? そんなゲヘナチックな思考してるのアンタくらいでしょ」
「んーまぁ確かに、暴力で解決云々は私の感覚でしかないのであれですね」
「で? そんな強い聖園様に勝てるビジョンはあるの? ツルギさんに勝つのが想像出来ないとか前に言ってたけど、アンタの見立てだと同等かそれ以上なんでしょ?」
「あれは、ツルギさんにプラスして部下の子達もいる対正義実現委員会戦の事ですから」
「そうだったっけ? でも聖園様だってそれくらい強いんでしょ、アンタの感覚を信じるなら。分かってるとは思うけど、外野がうるさいだろうし今回は負けられないんだからね」
「勝てる勝てないでなく、勝ちますよ私は。100%負ける戦いなんて滅多にないんですし、今回1%しか勝ち目が無かったとしても掴んでみせます」
マユの心配に対して、立ち上がりながらそう言い切るサアヤ。
それは自分を鼓舞するための宣言であり、こちらを思ってくれている親友を安心させるための気高い宣誓。
勿論全力を出せるまたとない機会への高揚感や強い奴に負けたくないという負けん気も多分に混ざっているし、マユはそれを見抜いている。
「はぁ、またそうやって格好だけよく見せようとして……。負けないならいいけどさ」
「マユも知ってるように私は多対一より一対一のタイマンの方が得意ですから、最低限引き分けにはもっていけます」
「ん、いつも通り後始末はアタシがどうにかしてあげるから暴れ倒して、しっかり勝ちを上げてきなさいね」
「今回は桐藤様も手を回してくれるそうですから、楽できますね?」
サアヤがにへらと笑みを浮かべながらそう言うと、一瞬眉をぴくりとひくつかせたマユに結構な勢いで引っ叩かれた。
何も叩くことないじゃないですか、面倒かけてる自覚あるなら相応の態度をしなさい、などとキャンキャンじゃれあっているとゴーンゴーンと鐘の音が響いた。
この決闘場で正式な決闘が行われる際に使われる審判の鐘の音であり、裁決を下す場であるフィールドへの入場を促す物。
長きに渡り鳴らされる事のなかった鐘の音が響き渡り、ついに目前に迫った決戦に向けてサアヤの意識が切り替わる。
「一対一ですし、先の騒動の防衛戦よりはマシなたったひとりの最終決戦ですね」
「まるで自分が孤立無援みたいな言い方するじゃない」
「? 戦場に立つのは私一人、間違ってはいないでしょう?」
「聖園様は今の状況じゃ難しいかもしれないけど、アンタはサンクトゥスの子達が応援してくれるでしょ、勿論アタシだってしてあげるし」
「ふ、ふふふ、そう、そうですね! 私は一人じゃありません、なら負ける道理は無くなりましたね! じゃあ聖園様に勝ってきますよ、盛大に!」
歯を見せて大きく笑った後、サアヤは勝利宣言と共に銃剣を取り付けた愛銃を片手に決闘場へと歩き出す。
サアヤは歩きながら、親友への感謝を抱いていた。
自身の知識に加え脳内掲示板の協力者達から得た情報で、自分の中でとんでもない強者になっていた聖園ミカへの無意識の怯えを親友の応援のおかげで振り払えた、だから負けない。
よくよく思い返せば、最低限引き分けには持っていけるなど普段の自分ならしない思考だ。
戦う前から、勝てないかもしれない等と頭に過っていたから出た発言でしかない。
普段のサアヤは勝てると信じる、勝つと誓う、勝利以外要らない。大体、こんな思考をしている。
いかに先程までの自分が弱気だったかを思い知り、そんな有様では勝てるものも勝てないと自分に喝を入れる。
たとえ、聖園ミカがどれだけ強くとも私が勝つと心に火を入れる。
「桐藤様やセイア様は立場の関係上、そこまで表立って聖園様を応援できない筈、であればやはり私が有利ですね、だって少なくとも二対一ですから」
「うん、負けません、いや、勝ちますよ! 勝ちます! 勝利を捧げましょう!」
決意新たに前を見据えるサアヤには、勝利以外は見えていない。
捻り出したらこれの続きが、出なかったら別のが出ます
トリモブ改め、隠侍サアヤの愛銃
Journey to the Another World
サアヤが使用するサブマシンガン
銃身自体はトリニティで一般的に使用されているものであり
本体は後付けされた試作特殊銃剣七号【のびーる君】になる
ミレニアムの友人に作ってもらったそれに合わせて、鮮やかな赤に染まった銃身は彼女の闘争心をこれでもかと表している