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その瞬間は実に静かだった。
蛮族の森の主、ジャイアントオーガは自分の中に感じた違和感に思わず手を止めた。
そうだ、縄張りに入ってきた人間をいつものように殴り殺し部下のゴブリンどもに挽き肉を与えてやる…今日も同じ一日だったはず。
だけど何故だ?目の前の人間はまだ挽き肉になってない。攻撃が当たらなかった?避けられた?防がれた?いや、そんなことよりも苛つくのは
こ の 人 間 が す ま し た 顔 で 俺 を 見 上 げ て る こ と だ。
殴ればすぐに死ぬ人間風情が舐めた態度をとりやがって…!何をしたかは知らねえがそのすまし顔をすぐに恐怖に染め上げげげげげげげげげげげげげげげげg──────
ジャイアントオーガが渾身の力で右手を振り上げようとしたその時、
彼の胴と足はグラリと開き、臓物とともにドチャリと土にこぼれ落ちた。
物言わぬ骸となったジャイアントオーガと先程まで対峙していた青年はジッと見下ろしながら己の剣に付着した血を払う。
「………もう死んだよね、アーランクル?」
青年の後ろに隠れていた魔法使いの少女ガルシアは震えながら語りかける。
少女の疑問に対し、鎧姿の青年アーランクルはニカッと歯を見せ微笑んだ。
ドーメルの街。
人口が100にも満たない小さなこの街では主に農業とギルド支部の報酬で賄われている。
アーランクルとガルシアはこのドーメルの街の門に辿り着き、衛兵に事情を話した。
衛兵は口をアングリ開けたまま数秒の間、静止したかと思えばバン!と門を開け放ち
「アーランクル殿がジャイアントオーガを討伐したぞおおおおおおおおおお!!!!!」
衛兵の叫びが木霊のように街中に反響した。そして息する間も無く街の人々がアーランクル達の元に駆け寄り
「すげぇ!ギルドの誰もが叶わなかったあのジャイアントオーガを!?」
「キャーー!!かっこいいぃ〜〜〜!!!」
「おぉ…!この街の救世主じゃ!救世主じゃぁ……!!」
誰もが賛美の声をアーランクルに向け、その盛り上がりはとどまるところを知らなかった。
アーランクルは押し寄せる人々を華麗な動きで捌きつつも
「いやぁ、失礼失礼。ギルドに成果報告をしに行きたいのでね?」
と、爽やかな笑顔を振り撒きギルドへと歩を進めるのであった。
後をついてくるガルシアの暗く沈んだ顔とは対照的に…。
「…………………………………………」
そして賑わう群衆の中に紛れ、ガラス玉のように無機質な瞳でアーランクルとガルシアを見つめる少年の姿がいたが2人はその存在に気づくことはなかった。