翌日、朝起きても部屋にアーランクルが戻っていなかったため朝食を食べようと宿屋1階の食堂まで降り立つガルシア。
昨日も騒がしかったが、騒がしさの中に言葉では言い表せない居心地の悪さが含まれていることに気づき宿屋の店員から受け取った食事とともに近くの席に座るとガルシアは周りの喧騒に耳を傾けた。
「いやぁ〜…驚いたよぉ。まさかあんな子供がレッドドラゴンを倒しちまうなんてさぁ」
「あの少年こそが勇者だな!この街に降り立った救世主だよ!」
「今思えばアーランド?だっけか?アイツがリクト様との決闘から逃げたのもボコられるのが目に見えてたんじゃねえか?」
「アッハハ!言えてるよなwあんな腰抜けを一瞬でも敬ってた自分が恥ずかしいわww」
「ん?あれ、おいあそこ見てみろよ。腰抜け『
「ッ…!!ほ、ほひほうはは…!!」
昨日とは手のひら返した市民達の罵倒の矛先がガルシアに向くやいなや、ガルシアは急いでパンとスープを口に詰め込み、逃げるように宿屋を後にした。
「ハァッ…!ハァッ…!ハァッ…!ハァッ…!」
まるで別世界に来たようだった。昨日まではアーランクルを称賛する声で溢れていた街がリクトを褒め称える声で染まり上がっていた。そして異物を見るかのように冷たく突き刺さる自分への視線。
民衆とはかくも残酷なものなのか。常日頃アーランクルが戦ってる魔物達よりも人間が恐ろしい。このまま誰もいないところへ逃げてしまいたい。
「ハァ…ハァ……うぶぅっ……!!」
食道を刺激する灼熱。えづきとともに迫り上がっていく内容物を止めようと口を押さえ立ち止まるガルシア。自分の意思に反し、手の隙間から滴り落ちる熱い液体。汚物を見るかのような眼差しの群れがガルシアを取り囲む。
(ごめんなさい…!ごめんなさい…!ごめんなさい…!ごめんなさい…!ごめんなさい……!!
助けて………」
「うん、いいよ」
ガルシアを救う光明の光は彼女のすぐ後ろから差した。声の主を確認しようと振り返ろうとするガルシアだが、直後に背中を優しくさすられる感触に幾分か気分の悪さが緩和された。
「これ飲みなよ。ちょっとは落ち着くだろうから」
チャポンと音を鳴らし後ろから差し出された革製の水筒。「あ、ありがとうございます…」と水筒を受け取るとともに振り返ったガルシアの眼は遂に声の主を捉えた。
「リ、リクトさん…?」
そこにはこの騒動の中心ともいえる人物、リクトがいた。