Killギリス   作:ていん?が〜

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リクト邸

「町長からさ、レッドドラゴン倒したお礼にってことで館をもらったんだ。それに僕ら以外に人はいないから心配しなくていいよ。あんまり人がいるの好きじゃないし」

 

「…………………………………」

 

 ガルシアがリクトに連れられた先は街外れだがなかなか立派な洋館だった。その中の華奢な一室でベッドに横たわるガルシア。隣の子椅子に座るリクトは相変わらず手揉みをしてるままだが。

 

「僕が言うことじゃないと思うけどさ。酷いよね、街の人たち。昨日はアーランクルを称賛してたかと思えば今日は僕が英雄扱い。そして彼はなんにも悪いことしてないのに卑怯者、弱虫、臆病者扱い。王都もこの街も変わんないんだね」

 

 淡々とそう語るリクト。リクトから言葉が紡がれるのに比例してガルシアの顔は徐々に暗く沈んでいく。

 

「あー、ごめんね。別に君を傷つけようって魂胆じゃないんだ。そうだ、世間話でもして気を紛らわせようか。今日の天気って良い天気だね」

 

「あっ…はい……」

 

 会話のキャッチボールはそこで終了した。会話界の切り込み隊長である天気の話題が殉職したことで二の手を失ったリクトの頭の中は軽くショートした。

 時間にして10分、煌びやかな部屋に似つかわない沈黙の中でようやくリクトは次の話題を捻り出した。

 

「あー……そういえばさ、ガルシアは何でアーランクルとパーティ組んでるの?」

 

「ッ…!」

 

 リクトからのなんてことない質問にガルシアは思わず顔が強張ってしまう。そんなガルシアの様子に気づいたのか気付いてないのかリクトの口は止まらない。

 

「みんなアーランクルのこと詐欺師だの弱虫だの言いたい放題だけどさ、一目見て分かったよ。彼のジャイアントオーガ討伐は嘘じゃない、それが出来るだけの実力…いや、厳密には魔力を感じたよ」

 

「すごいね彼、そして謙虚だ。相対した時に感じた魔力から推測するに彼がレッドドラゴンを倒してもおかしくないぐらいだ。普通の奴なら力を誇示してプライドを膨らませる。だけど彼は汚名を被ってでも弱者のフリをした。面倒ごとを避けるためだろうけど僕にはとてもじゃないが真似できない」

 

「だからこそソロで充分通用するだろう彼が何故君と組んでるのかが分からない。悪気はないんだけど君からは魔力をほとんど感じない。等級Dがやっとってとこかな?そんな君と彼が組んでる理由として考えられるとすれば……あれか、恋人関係?」

 

 瞬間、ボッと茹でだこのように顔が赤くなり俯くガルシアを見て「ビンゴだね」と呟くリクト。

 

「まー、たまに見かけるよ。恋人同士のパーティって。僕はするつもりはないけど個々人の自由なんじゃない?」

 

 

「───けどさ」

 

 するとリクトは

 

「それだと理解出来ないんだよね」

 

 ガルシアに顔を寄せる。

 

「大好きな恋人といるのに君の顔は絶望の沼に沈んでるみたいにずっと暗いまんま」

 

 そのガラス玉のような瞳で見据え

 

「ねぇ、なんで?」

 

 近づき

 

「なんでなの?」

 

 近づき

 

「何か事情でもあるの?」

 

 近づき

 

「なんでなんで?」

 

 近づき

 

「ねぇ?」

 

 近づき

 

「ねぇってば」

 

 近づき

 近づき

 近づき

 近づき

 近づき

 近づき

 近づき

 近づき

 近づき

 近づき

 近づき

 近づき

 近づき

 近づき

 近づき

 

 

 

「答えろよ」

 

 

 

 最後に低い声で唸るように呟いたリクト。その距離は鼻と鼻が当たる寸前まで近づいていた。

 目の前のガルシアの表情はいつしかリクトへの恐れへと切り替わっていた。流石に彼女の変化に気付いたのか、リクトは「ふーん」と呆気なく離れた。

 

「まっ、いいや。落ち着いたら聞かせてね」

 

 手をヒラヒラと振りながらそう言い残したリクトはバタンと扉を閉め部屋から出ていった。

 一人取り残された部屋でガルシアはボソリと呟く。

 

「……なんでこうなったんだろうね」

 

 そしてガルシアは記憶の海に身を沈める。彼女とアーランクルの始まりの記憶へと。




今日はここまで!
明日も20時から投稿しますので見ていただけると嬉しいです!
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