ふふっ……ねえ、今日もご飯、美味しかったでしょう?
あなたの好きなハンバーグ、心を込めて作ったのよ。
お野菜もたっぷり摂れるように、付け合わせも工夫してみたの。
……お部屋も綺麗に片付いているし、お布団だってふかふかでしょう?
夜もぐっすり眠れているみたいで、安心したわ。
あなたが毎日笑顔で、健やかに過ごしてくれることが、私の何よりの喜びなんだから。
……で、どうしてそんな顔をするのかしら 、何か不満?
……え? 『外に出たい』?
……そう。外に、ね……。
(やちよの瞳から、すぅ…っと光が消えていくのがわかる。穏やかだった声のトーンが、ほんの少しだけ、けれど確実に低くなる)
……ふふっ……あなた、面白いことを言うのね。
どうして、そんなことを思うのかしら。
ねえ、よく聞いてくれる? 外の世界が、どれだけ危険で、あなたにとって良くない場所か、私、ちゃんと説明してあげる。
まずね、外には悪い人たちがたくさんいるのよ。あなたみたいに純粋で、優しい人は、すぐに騙されてしまうかもしれない。利用されて、傷つけられてしまうかもしれないわ。そんなの、私、絶対に許せない。あなたは、私が守らなければいけない大切な存在なのよ?それに、今の世の中、何が起こるかわからないでしょう? 事故かもしれないし、事件に巻き込まれることだってあるかもしれない。あなたがもし、そんな目に遭ってしまったら、少し考えただけでも、胸が張り裂けそうになるわ。この家の中なら、私が常にあなたのそばにいられる。どんな危険からも、私が必ず守ってあげられるの。それにね、あなたはここで何も不自由していないはずよ。食事も、身の回りのことも、私が完璧にこなしているでしょう? あなたが退屈しないように、新しい本だってたくさん用意したし、見たがっていた映画のディスクだって揃えてあるわ。あなたが望むものは、私が全て用意してあげる。それでもまだ、外に出たいなんて言うの?
……もしかして、私じゃ不満……?
私がこうして、あなたのために一生懸命尽くしているのは、あなたには伝わってないのかしら……
私はね、あなたの……あなただけの幸せを願っているのよ。
……わかってくれないの?
外の世界の刺激なんて、あなたには必要ない。
だって、そんなものに触れたら、あなたは変わってしまうかもしれない。
今の、穏やかで優しいあなたが…私から離れていってしまうかもしれない。
そんなの……そんなの、絶対に嫌よ。
ねえ、わかるでしょう?
私がどうして、あなたを外に出したくないのか。
全て、あなたのためなのよ。
あなたのことを、誰よりも大切に想っているからこそ、こうしているの。
私のこの気持ち、あなたなら……わかってくれるわよね?
だから、もう『外に出たい』なんて、言わないで。
わかった? ……あなたは、この家で、私と一緒にいればいいの。
それが、あなたにとって一番安全で、一番幸せなことなんだから。
……さ、そんな暗い顔しないで。
ほら、デザートにあなたの好きなフルーツゼリーも用意してあるのよ。
一緒に食べましょう?
明日も、明後日も、その次もずぅっと、美味しいご飯を作ってあげるわ。