いつもの時間。なぎさの心は、ぽかぽか陽だまりみたいに温かくなるのです。だって、――が来てくれるから。
今日も、――は優しい笑顔で、あの黄色くて、とっても美味しい「チーズ」を持ってきてくれる。なぎさはチーズが大好き。――がくれるチーズは、もっと大好き。
はい、なぎさちゃん。今日のチーズだよ。
いつもの優しい声。なぎさは差し出された包みを受け取って、にぱーって弾けるように笑う。
「ありがとうなのです!――のくれるチーズは、世界で一番美味しいのです!」
――は、なぎさの頭をそっと撫でてくれる。その手が、なんだかとっても安心するのです。
でもね、最近なぎさ、気づいちゃったのです。
チーズを食べている時、嬉しい。――が撫でてくれる時、もっと嬉しい。
でも、――が帰っちゃうと、胸のところが、きゅーって、寂しくなる。
チーズだけじゃ、この「きゅー」は埋まらないのです。
だから、今日は決めてたのです。
いつものように、――がチーズを差し出してくれた。
はい、なぎさちゃん
なぎさは、それをじっと見つめて、それから――の顔を見上げた。
「……なぎさ、もうチーズはいらないのです」
――は、ちょっとびっくりした顔をした。
え? どうして? チーズ、嫌いになっちゃった?
ううん、違うのです。チーズは今でも大好き。でも、もっと欲しいものがあるから。
じゃあ、何が欲しい?
なぎさは、――の目をまっすぐ見て、言ったのです。
「――が欲しいのです」
――は、ぽかん、とした顔をして、それから困ったみたいに笑った。
はは、お菓子とか、おもちゃとかじゃなくて?
違うのです。冗談じゃないのです。なぎさは、本気。
「お菓子もおもちゃも、――がいないと、つまんないのです。なぎさ、――と一緒にいる時が、一番ドキドキして、一番あったかい気持ちになるのです。だから、チーズよりも、おもちゃよりも、――が欲しいのです」
なぎさが一生懸命説明すると、――の笑顔が少しずつ消えていった。真剣な顔になった。
――は、何か言いにくそうに、うつむいた。
なぎさ、わかってる。――は優しいから、なぎさを困らせたくないんだって。
でも、なぎさの気持ちも、本当なんだ。
しばらくして、――が顔を上げた。その目は、ちょっとだけ潤んでるみたいに見えた。
……なぎさちゃんが、大人になったらね
大人? 大人って、いつ?
なぎさは魔法少女だから、いつまで生きられるかなんて、わからないのに。
それに、なぎさが欲しいのは、「いつか」の――じゃなくて、「今」の――なの。
「いやなのです」
なぎさは、――の手をぎゅっと握った。
「なぎさ、今、――が欲しいのです。大人になるまでなんて待てない。今じゃなきゃ、ダメなのです」
――は、息を呑んだみたいだった。
なぎさは、もっと強く手を握りしめる。
「拒否権は、ないのです」
だって、――は、なぎさの希望だから。
もう、チーズだけじゃ満足できないくらい、――のことが、だーいすきになっちゃったから。
――の困った顔も、好き。
だから、ずっと一緒がいいのです。
ね?――。