「人生は自分だけの物語だ。どんな道を選んで、どんな道を征くのかも自分次第…そう、そして………」
そんなオタク丸出しのセリフをこんなに人がいる電車の中で言えるわけもないので、心の中だけにそっとしまっておく事にした。
新しい
まあ、肝心の
そんなことを考えてたら、電車のアナウンスが流れた。次は、私が降りる場所——
ドアが開く。この先は私の知らない町。初めての場所に初めての風の匂い。見慣れた景色にさよならバイバイ……
「さあこの私、オタク百合好き女子高生・主乃ロアが!この記念すべき一歩目を踏みだ……ちょわあぁっ!?」
………はい知ってた、私の残念ポイント。まさか電車とホームの隙間に足ひっかけて盛大にずっこけるとか……
イタタ………心なしか周りの人にクスクス笑われている気がする……っ!
お前ら笑うなッ!私だってなぁ、毎日これでも必死に──
服の埃を払いながら立ち上がると、ふと視線を感じる。
この人混みの中、確かにその子と視線が合ったのだ。
子どもだった。ちっちゃい子。
ただ、それだけじゃない。
引きずるほどブカブカのパーカー。裸足。そして──
顔。
顔の部分に、白い画用紙が貼ってあった。
そこに、クレヨンで描かれたみたいな笑顔がある。まるで、お面。
……いや、“顔がないから描いてある”みたいで、ちょっぴり怖い...
場違いすぎるその姿は、まるでこの子だけが別世界にいるみたいな。
でも、もしかしたらこういうのも──この世界では、そんなに珍しくないのかもしれない。
ここは、そういう能力者が“当たり前”に存在する世界だ。
空を飛ぶ人、火を操る人、時間を止める人、動物と話す人……
この町“幻想町”には、そういう「異能」が日常に混ざってる。
私? 私は──聞いて驚かないでください?異世界転生モノもびっくりなその能力は!
ーーはい、無能力です!でも妄想力なら誰にも負けませんから!?百合にかける情熱ならメ○超えてメラ○ーマですが!?
………そんなオタク爆発の独り言を頭の中で唱えていたら、さっきの女の子が近づいてくる。
えなに、もしかして私の秘められた能力を告げる展開!?それとも……まさか幽霊!?まさかあの百合カプ、実は私が逆カプ派なのがバレて呪い殺しに……!?
「…よろしくね。」
優しい声でそう残し、私が「え?」と聞き返す前にその子は消えていた。見失った?まさか、いくら人が多いとはいえあんな特徴的な子が見つからないわけがない。
いろいろ考えを巡らせようとする脳を電車の発車ベルが遮る。……深く考えても仕方ないし、きっと寝ぼけてて変になってるんだ、うん。
「……ってやばいやばい遅刻する!初日に遅刻が許されるのはウニみたいな頭のヤンキー系キャラだけですって!!」
いや金髪もいたな……?なんて考えてる場合じゃない!今は急がなきゃ...!とりあえずスマホで道調べt.....
つみです。はい。
こういう時「一巻の終わり」って言いますけど1巻すら始まるどころか打ち切りにすらなりませんよねコレ、私の物語の結末コレですか?アホすぎません??
全て諦めて燃え尽きたぜ...と駅のベンチで肩を落としていた私の横。突如として頭上から声が聞こえる。
「あら、貴女....その制服は夢見坂学園の生徒ね?」
私に声をかけてくれたその女性はまさに「お姉様」と呼ぶに相応しかった。片目隠れ金髪ロングの丸眼鏡、手に持っている日傘が妖艶さを際立たせる。そしてなにより・・・デッッッッ....ふぅ...
「こんな所で座り込んでどうしたの?体調でも悪いか....もしくは「この町に来たばかりで今から学校に向かおうとしたけれどスマホの充電をソシャゲに使い切って道が分からなくなった」...なんて理由だったり?」
まさかね、と言いクスクスと笑うお姉様。正解です。全部。もう怖いんですけど??でもまぁ心を読める能力者もいる、って話だし...ってことはさっきの邪な考えも...??
「...すみませんでしたぁ!!」
「あら、そんな怯えた顔しなくても...何も私カツアゲとかマルチの勧誘とかじゃないわよ?」
「...心を読める能力の方じゃ...?」
「やぁねぇ、そんな便利なものじゃないわよ〜。まぁ、そういう子もいるにはいるけれど...」
良かった違ったのか...え、じゃあなんでさっきのは?って思ったけどこれ以上は怖くて聞けなかった。知らない方が幸せな時もある。とりあえずここで座ってても仕方ないし、このお姉様に聞いてみよう。
「お恥ずかしながら先程言われた通り道が分からなくて...」
「あら、やっぱり?そんな感じの顔してたもの〜。それなら私に着いていらっしゃいな。」
そのまま手を引かれるまま着いていく。こんな綺麗なお姉様と手を繋いでいられる喜び半分、やっぱり怖い人なのでは...?と疑う気持ち半分でドキドキが止まらなかった。数分歩いたところで足を止める。
「あとはこの坂を真っ直ぐ登るだけよ〜...と言っても、ここからが本番と言っても過言では無いのだけれどね。」
「ほ、本番?なんかあるんですか...?」
ふぅ...と一息ついた後、深刻そうな面持ちで口を開くお姉様。
「...そうね、この坂「魔の坂」って呼ばれていて、新入生の子はよくこの坂に泣かされるわ。なにせーー」
「な、なにせ...?」
「.....1度足を踏み入れたら、もう戻れない....と言われてるのよ。」
「もどどどっ!?な、なんでですか!?まさか呪いとか結界とかそういう類の.........!?」
「.........クソ長いのよ。」
「.........えっ?」
「この坂、物理的に戻る気が失せるくらい長いのよ〜。....引き返そうとした頃にはもう心が折れて....なんてね。でも貴女なら大丈夫、きっと乗り越えられるわ。」
....いやそれだけ?嘘ぉ...確かに先が見えないくらい長いですけど....なんていうか、「振り返ったら死者に連れてかれる」とか「地縛霊が出る」とかそういうのかと思ったらそれだけ...??
「....それじゃあ、待ってるわね。この先の長い長い坂を超えたその先の貴女を....ふふっ。」
「いや坂を登るだけで何をそんな...」
反応がなく不思議に思い振り返る。
「....あれっ....いない....?」
そこには舞い散る桜しか見えなかった。落ちる花びらは坂の上目がけ吹かれて行き....まるで「早く登りなよ」と、私を急かしているようだ。あのお姉様が誰だったか、とか、なんで急に消えた?とか深く考えても解決はしなさそうだし、もう時間もない。
どこまでも続き、本当に向こう側につけるのか?ってくらい先が見えない。果てしなく、果てしなく遠い。ゴールはおろか道の途中すらボヤけて不透明なこの坂はまるで「自分の夢」を写しているかのような。
「....魔の坂、夢見坂...これが私の最初の
ちょっと怖いけれど、踏み出さなきゃ何も始まらない。周りと違って何も持たない無個性な私だけれど、諦めの悪さだけは1人前なんだ。踏み出しもせず諦めてたまるもんですか!
っしゃい!と一言発し、私は夢へと踏み出した。
ーー夢見坂。
この坂は、どういう訳か"登る者の夢"によって長さが変わるという。
5分も歩けば着いたと言う者もいれば....5時間かけても辿り着けなかった。という者もいる。
だが、本当の問題は、坂の長さではない。