映画ザ・バットマンのエドワード・ナシュトンと友達の話   作:hiro 

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映画のTHE BATMANのリドラーと新しい友達の話。
一緒に脱走して住んでいる設定です。
二人でプールに行くお話。ゆるい二人の日常を妄想してみました。


ナイトプール

「プール行こうぜ 」

 夕食の時、友人は テレビを見ながらそう言った。

液晶の向こうは人でごった返したプールが写っている。 

ゴッサムといえど夏は暑い。人々は涼しさを求め水のあるところに行こうとする。だがしかし、炎天下の下で水に浸かるため長時間いるのは帰って体に悪そうだ。その上、人がごった返していてまるで桶の中で野菜を洗っているかのように お互いぶつかりとても泳ぐどころではないだろう。   

… 最も私は泳ぐことができないのだが。

子供の頃の環境は劣悪で子供達にプールや水遊びを楽しませるなどという発想はまるでない施設で育った。成長して大人になってもプールに遊びに行くなどという発想はまるでなかった。そもそも『遊ぶ』という行為自体が私には縁遠いものだったのだ。

私は ちらりと彼の方を見た。痛ましい外見の彼。大概のものは 彼の姿を見れば 悲鳴をあげるか…たとえそうでなくとも異様なものを見たと言わん目つきで彼から目を背ける。

そのことは彼自身よくわかっていて、むしろその外見を利用し他人を怯えさせたりあるいは怯える相手の恐怖を利用しようとする。

彼にとって外見は身を守る武器であり、同時に また他者から攻撃を受ける諸刃の剣でもある。

その姿でテレビに映るプールに現れればちょっとしたパニックが起きるだろう。何か物を投げつけてくるような輩もいるかもしれない。

彼に不快な思いはしてほしくないし、そんな風に攻撃してくる輩がいれば 耐えきれず危害を加えてしまうかもしれない。

 

 どうして、彼はそんなことを言い出したのだろう。

「せっかくだけどいいよ 遠慮する…泳げないんだ」

「んなもん俺が教えてやる!」

そういうと彼はおもむろに立ち上がり、クローゼットの中をあさり始めた。食卓には食い散らかした皿がある。

 

彼は思いついたらすぐに行動に移すタチだ。

…とはいえ、まさか今から行くなんてことは言わないだろう?

私は彼の 皿を重ねキッチンに持って行く。

不意に後ろから声が聞こえた。

「何してんだ エドワード! お前もさっさと準備しろよ。片付けなんて後でいいだろう。」

「…え?まさか 今から行くの?」

「はぁ、当たり前だろ?」

「私 水着なんて持ってないよ?」

そう言うと友人がチッと舌打ちをした音が聞こえた。

「…仕方ねえな。向こうにもあるだろ。適当に見繕うか」

 

 友人に促されるまま、わけもわからぬうちに私は車に乗り込んでいた。もちろん彼の車ではない。その辺りに止めてあったのを勝手に失敬したのだ。

「ねぇ、どこに行くの?」

「うーん着いてからのお楽しみ♪」

町のネオンのあかり。騒々しい車の音や人々の営み。 叫び声、わめき声、 笑い怒り悲しみ香水の匂い、飲食店の匂い、悪臭。

それらは街を形成しこのよどんだ大都会そのものを作り上げている。この町は変わらない、私があれだけのダメージを与えたにも関わらず。

 やがて車は遊園地の前で止まった。

「…ここって」

友人は おそらく職員が出入りすると思われる扉の前へと私の手を引いて行った。中から施設職員とおぼしき男が顔を見せ挨拶する。

男は扉を開き中へと私たちを案内した。

…友人の顔見知りだろうか? 一緒に暮らすようになってしばらく経つが未だに彼のことはわからないことが多い。

彼のことを詳しく知りたい。

だけれど彼にそのことを強要したくない。それにいずれ彼のことはだんだんと 分かってくるだろう。彼が何を考え何を感じなぜ私のそばにいるのか? おそらく私のしたことに全て共感を覚え、友人として 慕っていてくれる…わけではなさそうだ。

だが、私たちは 同じ目的に向かって歩いている。少なくとも今は。

案内してくれた 職員は大きなガラス戸の扉を開いた。

「…わ!?」

ほんの少し前、テレビで見たプールが目の前に広がっている。最もそれはライトに照らされ人は1人もいない。

私たちだけの夜のプールだ。

「気に入ったか?」

「え?どうやって?」

「それは企業秘密」

友人はいたずらっぽく笑う。

私は友人が勝手に 売店から持ち出したらしい水着を着て そーっと足を水につけた。ひんやりと心地よい。昼間の暑苦しさが嘘のようだ。

とはいえ水に入るという行為自体が私には未知のものであり…

「「わぁぁぁ!!!!」」

バシャーン !!

「HAHAHAHA」

友人の笑い声がする。

「何をするんだ!」

「お前さ力が入りすぎなんだよ。力を抜いて水に全身を預けてみろ。そうすれば浮く」

「う…うん」

 

 彼が何を考えてここに私を連れてきたのかは分からない。

私は力が入りすぎだと言いたかったのかもしれないし、ただ単に彼自身がプールに入りたかっただけかもしれないし…泳げない私に対しての親切心もほんの少しはあったのかもしれない。

 

私は水に浮きながらぼんやりと空を眺め、闇に浮かぶ月を眺めた。

 

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