DRAGON BALL Z Re:Son Gohan   作:ナムルパス

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第10話 消えた希望、新たなる旅立ち

 ベジータとの激闘の果て、辺りには静寂が戻っていた。破壊された大地には、ところどころに戦いの爪痕が深く刻まれ、瓦礫の山がいくつも積み重なっている。その中で、わずかに残された者たちが、戦いの結末を見届けようとしていた。

 

 「……ピッコロさん……」

 

 悟飯の小さな声が風に消えた。彼の目の前には、冷たくなったピッコロの亡骸が横たわっている。かつては世界を恐怖に陥れた大魔王。その彼が、たった一人の少年を守るために命を投げ出した――それは、何よりも重い真実だった。

 

 「……もうドラゴンボールは使えねぇのか……」

 

 クリリンが悔しげに拳を握りしめる。彼もまた、ヤムチャ、天津飯、餃子、そしてピッコロといった仲間を一度に失った現実に、心が追いついていなかった。

 

 そんな中、遠くから一つの気配がゆっくりと近づいてきた。

 

 「悟空……」

 

 ブルマが顔を上げた先に、ボロボロになった道着をまとった男が浮かんでいた。孫悟空――地球最強の戦士。彼がようやく戦場に戻ってきた。

 

 「みんな……無事か?」

 

 重たい沈黙が、答えの代わりに悟空を包んだ。その視線がピッコロの亡骸に向いた瞬間、悟空の瞳が微かに震える。

 

 悟空は唇を噛みしめ、地面に降り立つと、静かにピッコロの亡骸のそばに膝をついた。悟飯は何も言わず、ただ拳を握っていた。

 

 「オレ……強くなります。ピッコロさんの意思は、絶対に無駄にしません」

 

 少年の言葉に、悟空も、クリリンも何も言い返せなかった。その決意は、彼の目に宿る光にすべてが表れていたからだ。

 

     * * *

 

 その夜、カメハウスに戻った一同は、失われた命の重さを噛み締めていた。

 

 「ピッコロが死んだことで、神様も……いなくなったのよね?」

 

 ブルマが神妙な顔でつぶやく。クリリンが頷いた。

 

 「ああ……ピッコロと神様は元々同じ存在だからな。片方が死ねば、もう片方も……」

 

 「ってことは……ドラゴンボールも、もう二度と使えないってこと……?」

 

 その言葉に、悟飯が顔を伏せた。今もナメック星の記憶――いや、悟飯として生まれ変わった後の「前世の記憶」にある知識では、ドラゴンボールの復活には神様の存在が不可欠だった。

 

 「……くそっ! こんなときに……!」

 

 クリリンの叫びが虚空に響く。だが、次の瞬間――

 

 「ドラゴンボールを諦める必要ナイ」

 

 静かで、深い声が背後から届いた。

 

 振り返ると、そこに立っていたのはミスターポポだった。カリン塔の頂にある神殿の使者。いつも無表情で、何を考えているのか分からない男――だが今の彼は、確かな希望を抱いているかのようだった。

 

 「ポポ……?」

 

 ブルマが驚いて立ち上がる。ポポは静かに頷き、口を開いた。

 

 「神様の記憶の中に、かつての故郷――ナメック星という星の存在がありました。そこには、神様と同じ種族の者たちが住んでおり、ドラゴンボールも、存在すると聞いています」

 

 「……ナメック星……!」

 

 悟飯の胸が高鳴った。それは、まさに前世の知識とも一致している内容だった。ナメック星人――神様と同じ、あの温厚で知恵深い種族。そして、彼らが創り出したもう一つのドラゴンボール。

 

 「本当にあるのか……?」

 

 クリリンが疑いの眼差しを向けるが、ポポは静かに頷く。

 

 「わかりません。しかし、神様の記憶は確かです。そして……その星に向かう手段も、あります」

 

 「えっ!? 本当に!?」

 

 ブルマが驚きの声を上げた。

 

 「はい。神様が地球に来たときに使った宇宙船が、神殿の下に、今も眠っています」

 

 その言葉に、一同が息を飲む。

 

 「神様の宇宙船……!」

 

 悟空も目を見開いた。

 

 「見せてくれ、ポポ!」

 

     * * *

 

 神殿の奥深く――重たい石の扉をポポが開いた先には、丸みを帯びた奇妙な構造物があった。古びてはいるが、金属光沢が残り、明らかに地球のものとは違う構造をしている。

 

 「これが……宇宙船?」

 

 ブルマが興奮した様子で走り寄り、機体に手を触れた。

 

 「すっごい……地球のどんな技術よりも進んでる……」

 

 「この船は、声による命令で操作できます。ナメック語で話せばすべてが動き出す」

 

 「ナメック語……? そんなの誰もわかんないよ……」

 

 ブルマががっくりと肩を落とした。

 

 だが――

 

 「それなら……ボクが、やってみます」

 

 悟飯が、そっと前に出る。

 

 「え……悟飯くんにできるの?」

 

 「……たぶん。ボク、ナメック語……前に、どこかで聞いた気がします」

 

 もちろん、それは前世――原作のドラゴンボールの記憶にあったものだ。

 

 彼はそっと宇宙船に向き直り、ゆっくりと発音する。

 

 「『ボンガ・ナメック・タルガ』……(起動してください)」

 

 ――ゴウン……ゴウン……

 

 低く重い音が鳴り、宇宙船がゆっくりと光を帯びて起動した。

 

 「う、動いたっ!? 本当に動いたんじゃないの!」

 

 ブルマが飛び上がる。

 

 「悟飯……お前、すげぇな!」

 

 悟空も驚きを隠せない。

 

 「これで、ナメック星に行けるかもしれない……!」

 

     * * *

 

 数日後――

 

 ブルマは父の協力で、宇宙船の修復とシステム解析を急ピッチで進めていた。神様の宇宙船は驚くほどの速度でナメック星に向かえることが判明し、燃料や環境維持装置の調整も完了。

 

 「準備、整ったわよ」

 

 ブルマが言うと、悟飯とクリリンが並んでうなずく。

 

 「それじゃあ行ってきます。ピッコロさんを……天津飯さんたちを、絶対に生き返らせる」

 

 悟飯の目は、恐れではなく、確かな決意に満ちていた。

 

 「オレも行くよ、悟飯。二人で力を合わせて、きっとナメック星に辿り着いてみせるさ」

 

 クリリンが背中をぽんと叩く。

 

 「気をつけろよ、悟飯。クリリン」

 

 悟空の言葉に、悟飯はしっかりとうなずいた。

 

 「父さんも……元気で。ボク、必ず……ドラゴンボールを使えるようにして戻ってきます」

 

 「……おう。オラも修行、もっと頑張っておくからな!」

 

     * * *

 

 宇宙船の扉が閉じ、ゆっくりと浮かび上がる。

 

 「出発まで……カウントダウン開始!」

 

 ブルマの声が響き――

 

 「10……9……8……」

 

 空高く、音もなく飛び上がった宇宙船は、青い空の中に吸い込まれるようにして姿を消していった。

 

     * * *

 

 こうして、悟飯とクリリンとブルマは新たな旅へと踏み出した。

 

 向かう先は、遥か遠い宇宙の彼方――ナメック星。

 

 失われた仲間を取り戻すために。新たな敵と向き合うために。

 

 そして、悟飯自身が背負う“未来”という使命に向かって――

 

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