DRAGON BALL Z Re:Son Gohan 作:ナムルパス
ナメック星の大地に、重く沈んだ沈黙が広がっていた。
クリリンと悟飯の眼前には、ベジータ――かつて地球を恐怖で塗り潰しかけた男が、涼しい顔で立っていた。
「よう……久しぶりだな、カカロットのガキに、地球人」
その口元は僅かに吊り上がり、嘲るような笑みを湛えている。だが、その目は笑っていなかった。険しく鋭い光を放ち、獲物を見定める獣のような警戒と戦意を帯びている。
悟飯は、冷静に一歩前へ出る。
「……ベジータさん。あなたもドラゴンボールを探してるんですね」
「フン……言い回しが随分と大人びてんな。さすがはカカロットの息子ってとこか。……いや、それだけじゃないか。貴様どこか異質だ。まるで……別人のような」
クリリンが悟飯をチラリと見るが、言葉は挟まない。悟飯は軽く頷き、続けた。
「俺は“悟飯”だけど、ちょっとだけ違う。……それでも、地球の仲間を守るために戦うって気持ちは変わりません」
「ハッ、どいつもこいつも“守る”だの“正義”だの……気取ったセリフを抜かしやがる。だがまあいい。お前らにひとつ忠告しておいてやる」
ベジータの気が膨れ上がる。周囲の岩肌が微かに震え、ナメック星特有の緑空が脈打つようにうねった。
「ここにいるフリーザの手下ども……ヤツらの力は、地球での戦いとは比べものにならん。迂闊に近づけば、命を落とすぞ」
悟飯は眉をしかめた。
「フリーザ……それが“奴ら”の名前?」
「そうだ。フリーザは宇宙の帝王だ。貴様らの想像を遥かに超える化け物だ。オレは……その下で長年戦ってきた。だが今は違う。アイツは消すべき敵だ」
「……ということは、敵の敵は味方、ってことになるのか?」
クリリンがやや皮肉混じりに言う。だがベジータは、真顔のまま応じた。
「オレはお前らと手を組む気はない。ただ、今ここでお前らを殺すのは得策じゃないってだけだ。フリーザを倒した後なら、好きなだけ相手してやる」
悟飯はしばし思案するように黙り――やがて一つ頷いた。
「いいでしょう。その時が来たら俺も全力で戦います。でも今は仲間を守るために――俺は戦う」
「クク……いい覚悟だ」
ベジータはその場を離れ、別方向へと飛び去った。
残されたクリリンが息を吐き出す。
「……まったく、どいつもこいつもサイヤ人ってのは、やたらと気迫だけは凄いな……」
「でも……気を抜けない。あの人は本気で“敵”になったら、迷いなく俺たちを殺すはずだから」
悟飯の声に、確かな警戒と、微かな決意が滲んでいた。
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一方――
ナメック星の別の大地。三人の異様な気配を感じながら、デンデというナメック星人は草陰に身を潜めていた。
遠くに見える三つのシルエット。鋭い角を持つ巨躯、冷酷な瞳、そして異様なまでに整った顔立ち。
「ドドリアさん、ザーボンさん、探し物は見つかりませんね」
低く、不気味な声――フリーザの声が響く。
「ですが、近くに戦闘力の高い個体が複数……。この辺りには間違いなくナメック星人の村があるようです」
「なるほど……ならば、移動して確かめましょう。七つのボールをすべて揃えた時、願いは叶う……。そのためには多少の犠牲も仕方ありません」
デンデは、震える身体を抑え、気配を押し殺す。
――“あの者たち”は、絶対にこの星にいてはいけない存在だ。
地球の戦士たちが来ているとすれば、希望はまだある――!
デンデは意を決し、飛び立った。
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数時間後。
ナメック星第5区域、神殿跡地近く。
クリリンと悟飯は、集落の跡を見つけていた。
「ここ……ナメック星人の村だった場所か?」
「うん。……でも、誰もいない。まるで全滅させられたみたいに……」
悟飯が呟いたその時――背後から声がかかった。
「君たちは、地球人かい?」
振り向くと、デンデが立っていた。小さなナメック星人の少年。気は低いが、その瞳には確かな意志が宿っていた。
「ボクはデンデ。ナメック星人だよ。君たちに……会いたかった」
悟飯が膝をつき、穏やかに問う。
「どうして僕たちのことを?」
「神様……あなたたちの地球の神様が、昔この星にいたナメック星人なんだ。大長老様に教わった。優しい気を感じたから、きっと助けに来てくれるって……!」
クリリンと悟飯は視線を交わす。
「やっぱり……神様の出身地ってこの星だったんだな」
「デンデ。よければ、君の知ってることを全部教えてくれる?」
「うん! でも……ここは危険だ。どこか安全な場所へ移動しよう!」
三人は低空飛行で、岩陰の小峡谷へと飛んでいく。
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その頃、宇宙船で遅れてナメック星へ向かう男がいた。
「チッ、あいつら先に着いちまったか……!」
ベジータとの激闘で満身創痍だった体を、カプセルの中で完全に治療し、今、ナメック星へ急ぐ孫悟空。
「みんな、無事でいてくれよ……!」
悟空の表情は、決意と焦りに満ちていた。
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一方、フリーザの本隊は、次の村を襲撃していた。
「答えろナメック星人。ドラゴンボールはどこだ?」
フリーザの命令で、ドドリアが老長の襟首を掴み上げる。
「……断じて、お前たちに願いは叶えさせん!」
「そうかい。ならば――死ね!」
ドドリアが気を放ち、村人が次々に消し飛ぶ。
その光景を遠目に見ていたベジータは、拳を握りしめた。
「くっ……あのやり口、変わっちゃいねえな……!」
かつて自らも加担していた蛮行。それを見てなお、怒りを覚える自分がいる。
「ふん……オレはフリーザとは違う。もう二度と、あんなやり方には従わん」
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デンデは、悟飯とクリリンに言う。
「ナメック星には七つのドラゴンボールがあってそれを集めると“どんな願いでも一つ”叶えられる。でも、その力を使おうとしてるのがフリーザなんだ……!」
「地球のとは、違う神龍なのか……!」
「ドラゴンボールを作ったのは……最長老様っていう、ナメック星の偉い人。ご存命なんだ」
悟飯が真剣な目で頷く。
「だったら、僕たちでフリーザより先にドラゴンボールを集めて、仲間を生き返らせよう!」
クリリンも頷いた。
「そうだな。ピッコロも天津飯も、ヤムチャも、餃子も……みんな、まだ死んだばかりだ。チャンスはある!」
デンデの表情に希望が灯る。
その瞬間――
空が鳴った。
「……来る!」
悟飯が叫んだその時、空から数体の戦闘員が降りてくる。
「やれやれ……こんな所に地球人がいるとは。これは報告しなくてはな」
青白い肌に小柄な体。キュイと呼ばれるフリーザの部下の一人。
「くっ!」
悟飯が前に出る。
「ここで逃げるわけにはいかない……!」