DRAGON BALL Z Re:Son Gohan   作:ナムルパス

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第4話 希望を託して

轟音が鳴り響く。

 

地面が揺れ、岩が砕け、風が唸る。

 

それは、まさしく命を懸けた闘いだった。

 

悟空がラディッツの背後に回り、その体を羽交い締めにしたのは、数秒前のことだ。自らの命を捨ててでも、弟として、父として、地球の戦士として――仲間と息子を守る覚悟。

 

「今だ、ピッコロ!! 全力で撃てぇぇぇぇっ!!!」

 

悟空の絶叫に、ピッコロは迷いなく応えた。

 

「貴様の覚悟、無駄にはせん!!……これで……終わりだ……ラディッツ……!」

 

ピッコロの掌の先に、螺旋のエネルギーが集中していく。空間を裂くような音が鳴り響き、彼の気が、緑の閃光となって凝縮されていく。

 

「――魔貫光殺砲!!」

 

閃光が放たれる。

 

その一撃は、ラディッツの胸を貫き、悟空の体をも突き抜けた。

 

「がっ……!」

 

ラディッツの口から血が吹き出し、目が見開かれる。悟空もまた、痛みを堪えるように微かに唇を震わせた。

 

エネルギーが収まったあと、二人はその場に崩れ落ちた。

 

地面に横たわる二人のサイヤ人。その片方――悟空の顔は、穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「よかった……悟飯が……無事で……」

 

そして、彼の意識は、闇に沈んでいった――

 

 ラディッツは口元から血を滴らせながら、憎悪のこもった目を向ける。

 

 ラディッツは、口の端を吊り上げて笑った。

 

「ふ……ふは……ふははは……ッ。終わりだと?誰がそんなことを決めた……!」

 

 彼は痛みに顔を歪めながら、右手でゆっくりとスカウターに触れた。

 

「聞こえるか……ナッパ……ベジータ……オレは……貴様らに……貴様らに伝えてやる……!」

 

「なに……?」

 

そのスカウターは、ラディッツの戦闘力や交戦の記録を、宇宙のどこかにいる仲間たちへと送信する装置。

 

「地球に……おもしろい種が……いる……。弟カカロット……そして妙な気を持ったガキ……オレをここまで追い詰めた奴らが……いると……!」

 

「貴様、まさか……!」

 

 ピッコロの顔色が変わる。

 

「ふっ……お前たちがオレを倒せても……それで終わりじゃない。ここからが……始まりだ……!」

 

 ラディッツは、勝ち誇ったように血を吐きながら笑う。

 

「もう……遅いぞ。データはすべて……送った……」

 

 ラディッツが、がくりと首を垂れた。

 

 そのまま――沈黙が訪れた。

 

***

 

戦いが終わった荒野に、静寂が戻る。

 

ピッコロは、深く息を吐いた。戦いの余波で破壊された地形、焦げた土、硝煙の匂い――その中で、ひとり立ち尽くす。

 

「……バカなやつだ。己の命を差し出すなど、誰が頼んだ」

 

だが、その目に浮かぶのは、怒りではなかった。

 

覚悟と、誇り、そして……微かな尊敬。

 

ピッコロは倒れている悟空の傍に歩み寄ると、その死を静かに見届けた。

 

「孫悟空、お前が命を懸けて守った息子……オレが責任を持って鍛えてやる」

 

その背後で、悟飯がゆっくりと立ち上がっていた。

 

小さな身体に傷と泥をまといながらも、その瞳は澄んでいた。

 

「……やっぱり、お父さんは死んじゃったんですね」

 

その言葉は、幼い子供が言うにはあまりにも落ち着いていた。

 

ピッコロが眉を寄せる。

 

「お前……その言い方、どこか妙だな。まるで――」

 

「……オレ、前の世界では武道家だったんです。だから、お父さんがしたことが、どれだけすごい覚悟だったのか、ちゃんと分かります」

 

ピッコロの目が鋭く光る。

 

「何を言っている?」

 

悟飯はゆっくりと首を振った。

 

「……たぶん信じてもらえないと思います。でも、今のオレは、昔の悟飯とは違う。大人の意識が、中にあるって言えば……分かってもらえますか?」

 

沈黙が流れた。

 

ピッコロは、息を吐くと、悟飯をじっと見つめた。

 

「つまり、お前は“転生者”ってわけか?」

 

「はい。昔の世界では、毎日修行してました。戦いの中で生き、死を恐れず、守るもののために拳を振るう……。だから分かるんです。あのラディッツって奴は、次に来る奴らの中では最弱なんでしょう?」

 

ピッコロの目が細められる。

 

「察しがいいな。ラディッツの最後の通信からして、地球にはもっとヤバいのが来る。オレひとりじゃ勝てん」

 

「だったら……オレに修行をつけてください」

 

悟飯は、まっすぐにピッコロを見つめた。

 

「力が欲しいです。守れる力が。お父さんみたいに、誰かを守るために自分を賭けられるくらいの、強さが」

 

その言葉に、ピッコロは言葉を失う。

 

それは、確かに――戦士の眼だった。

 

「……フン、面白いガキだ」

 

ピッコロは肩をすくめ、ニヤリと笑った。

 

「その覚悟、試させてもらおうじゃないか」

 

そして、二人の奇妙な修行生活が始まることになる。

 

***

 

数日後――

 

場所は、蛇の道の入口。

 

魂となった悟空は、閻魔大王の前にいた。

 

「なんと……その命を犠牲にして地球を守ったとは……感動的じゃな!」

 

巨大な帳簿を閉じた閻魔様は、ヒゲを撫でながらうなずいた。

 

「しかし、地球の危機はまだ続くというのだな?」

 

「ああ、地球の神様が教えてくれた。もっと強ぇヤツが、一年後に来るって」

 

「ふむ……では、お主の魂、界王様の元へ行かせよう。あそこなら鍛え直すには最適だ。……ただし!」

 

閻魔様は、巨大な指を突きつけた。

 

「蛇の道を、自力で渡り切れるならな!!」

 

悟空は、拳を握ってニカッと笑った。

 

「よーし!いっちょやってみっか!」

 

こうして、魂となった悟空は、長い長い蛇の道を走り始めるのだった――

 

***

 

一方その頃、地球では――

 

高台の崖に立つピッコロと悟飯。

 

風が吹き荒び、太陽が容赦なく照りつける。

 

「まずは基礎体力からだ、悟飯。無茶はさせないが、甘えも許さないぞ」

 

「はい、お願いします」

 

ピッコロの指導は厳しかったが、理不尽ではなかった。

 

悟飯の身体能力は急速に伸びていく。かつて武道を極めていた意識が、肉体のポテンシャルを最大限に引き出していった。

 

崖から落とされても、自力で這い上がり、岩の雨を受けながらも、必死に耐える。

 

ピッコロは、ある日ふと呟いた。

 

「……本当に、お前は中に“大人”がいるようだな」

 

「少しだけです。でも、師匠のおかげで、思い出せそうな気がします。……修行って、楽しいですね」

 

「“師匠”、だと……?」

 

ピッコロはわずかに顔を背けた。

 

「オレは……そんな大層なもんじゃねぇ。ただの魔族だ。地球征服をたくらんだ、元・悪党さ」

 

「でも今は、オレのこと守ってくれてるじゃないですか。お父さんの遺志も……オレ、分かってます。ピッコロさんなら、信じられるって」

 

その言葉に、ピッコロの胸の奥が、微かに疼いた。

 

「……やれやれ、やっぱりオレはあの男に巻き込まれてるな」

 

風が吹いた。

 

悟飯は少し笑った。

 

「ピッコロさん、オレ絶対に強くなります。絶対に負けません。地球を守ります」

 

「その意気だ、悟飯」

 

この日から、二人の修行はさらに厳しさを増していく。

 

だが、そこにあったのは確かな絆だった。

 

元・大魔王と、未来から来た小さな武道家。

 

“良き師弟”として、地球最強の戦士になるための道を歩み始めていた。

 

次回――それぞれの一年。修行の果てに見える未来は、光か、それとも闇か。

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