時間が止まったようなその国で、アイーシャは案外すんなり受け入れられる事となります。
まあ他の越境者と比べればまだまともで制御しやすいと周囲が判断したのも大きいのですが。
事実クタノーンやロイヤルネイビーの残党は完全に賊も同じなので、何度か山狩りで駆除されたりもしています。
結局半月以上足止めを受けて、それでやっと解放された。
わたしは国の監視下に置かれる事になって、審問されている間に出来ると答えた魔法を使って欲しいと、城壁の修理にまわされた。
見た感じ、本気で作った城壁ではない。
恐らくだけれども。
この山奥に、攻城兵器なんか持ち込めたものではないからだろう。
民を安心させるための張りぼてとしての城壁であって。
本気で敵を防ぎ止めるものではないのだ。
事実、彼方此方に建てられている櫓のほうが堅牢に作られていて。それらは熊が突進して体当たりしたくらいでは、びくともしないような作りになっているのが見えた。
スポリファールの砦の城壁よりも頑丈かも知れない。
この城壁に敵が取りついたら終わりだし。
わたしみたいな監視中の魔法使いが触っても、なんら問題にはならないということだ。
わたしは構造を風魔法で確認した後、水魔法を集めて、壁を一気に洗浄していく。あまりいい石材を使っていないからか。それだけでぐらぐらと揺れているような箇所も目だっていた。
その次は土魔法を利用して、隙間などを細かくうめていく。
土魔法の応用で、接着を出来るようになってきている。
まあおなかは空くのだが。
それで少しずつ、城壁を修復して行く。
度肝を抜かれているのは、監視に付いている真面目そうな女の子の魔法使いだ。栗色の髪の毛をおかっぱにしていて、とにかく身ぎれいにしている。
この国も、パッナーロが健在だった頃は、人攫いを目的とした賊がたまに入り込んでいたときいている。
魔法使いがかなり多くいて。
もし魔法を使える子供をさらえれば、一儲けできたからなのだろう。
勿論それらは生かして返さなかったそうだが。
「終わりました」
「は、はい。 それでは此方もお願いします」
「分かりました」
必要最小限しか喋らないのは同じだ。
アンゼルと喋っているときは多少口数は増えていたように思うが、あれは思うに相手に対する信頼の結果だったのかも知れない。
今は周りの誰も信頼していない。
だから、こうして無口になっている。
淡々と作業を終わらせて行く。
この街の規模が小さい事もある。
城壁なんぞ、わたし一人ですぐに全部直してみせる。それもこんな虚仮威しの城壁なんぞ。
対魔法や、対オークなどの準知的種族を想定した城壁だったら無理だっただろう。
だが、これは本当に国民を安心させるためだけに作られているものだ。
だから、大した手間でもない。
昼には食事が出た。
一応温かいパンとスープ、それと僅かな肉料理。
伯爵領にいた頃のものにくらべると百倍マシだが。
カヨコンクムにいた頃よりちょっと質素かなとは思った。まあこのくらいなら、我慢できる許容範囲だ。
黙々と食べている間、わたしの監視に当たっている魔法使いは、必死になれない様子で報告書を書いている。
特に決まった書式がある訳でもなく。
それぞれの裁量でかく代物であるようだ。
見ると角が立つからやらない。
風魔法でペンを動かしている様子を探って、それだけで分かる。
これは大変だろうな。
そう思ったが、思うだけだ。
手助けもアドバイスもするつもりはない。
食事を終えて、午後の仕事。淡々と城壁の修理を終わらせていく。
夕方に仕事は終わって、小屋に案内される。
一瞥した後、わたしは風魔法、水魔法、土魔法を全部使って、内部を綺麗にした。ダニだの虱だのは全部まとめて駆除。
寝台のシーツなどもその場で洗濯して、乾燥させ。
後は窓なども外から丸見えになっているのを塞いで、個人のスペースを作った。
「鮮やかな手際ですね……」
「ありがとうございます」
まあ、これはスポリファール時代ではなく、カヨコンクム時代に培ったものだ。
彼方此方移動する事も多かったので、ろくでもない宿に当たる事も多かった。
隣から音が聞こえてきたりするとうるさかったし、魔法で対処する事を覚えた。こっちの音が漏れないようにすることで、トラブルも避ける事ができた。
おかっぱの子が戻ると、外に兵士が何名か監視に付く。
これは徹夜の仕事だろうな。
大変だ。
そうわたしは思って。同情はした。
同情するだけだが。
体を水魔法で洗って、服なども綺麗にする。
これは当面、カヨコンクムで貰ったローブで着たきり雀になるし。せめてその服は清潔にたもたないとまずいな。
そう髪の毛を乾かしながら、わたしは思う。
少し髪を切っておく。
放っておくと腰辺りまで伸びそうだし、前髪は長すぎるとそれはそれで邪魔になるので。時々切りそろえているのだ。
それもすっかり慣れた。
手入れが終わると、後はさっさと寝る。
見張りについている兵士達には気の毒だが。
こっちとしては、休まないとやっていけないのだ。最悪の場合、此処も安住の地ではなくなるのだろうし。
三日ほどで城壁の修理は終わる。
それで度肝を抜かれたのか、おかっぱの子(まだ名前も知らない)は、上司に報告しにいったようだった。
わたしは退屈が何の苦にもならないので。地面を通る蟻を観察して過ごす。
蟻は土地によって随分と違うのがいる。
この地にいる蟻は体が大きく、動きも俊敏だが、毒針は持っていない。小型でも毒針を持つ蟻は非常に危険で、他の地方だとそういう蟻が出る場合は、対策が必須だった。まあ、あくまでわたしの観察の範囲内だろうが。
城門の方には、死体が幾つか晒されている。
串刺しにされた死体は、臭いが漏れないように魔法で処置されているようだが。多分狼藉を働いた連中だろう。
どうみてもこの国の民では無い。
蟻も死体には近寄らない。
魔法で処置していると見て良かった。
おかっぱの子が戻ってくる。
そろそろ昼だが、まあまだ余力はある。
「すみません。 食事の後は、今日は仕事もありません。 宿舎に戻って、ゆっくりしていてください」
「わかりました」
「こんなに仕事が速いなんて思っていなくて」
「そうですか」
食事が出されるので、ありがたくいただいておく、
風魔法で周囲は察知しておく。もうこれは、一種の職業病だ。何があっても対応できるように常に備えておく。
それでもあのアルテミスみたいなのに狙われたらどうにもならないだろうが。
賊程度だったら、今はもう自力でどうにでもできる。
この街でも犯罪者はいるらしい。
たまに捕り物が行われているようだが。
治安はカヨコンクムよりもずっといい。スポリファールほどではないようだが。
淡々と食事を済ませた後、見張りをしている兵士に声を掛けて、宿舎に行く。兵士は度肝を抜かれていた。
「何故分かった」
「気配を消しているつもりだったんですか?」
「……っ」
「好きに監視していてください。 わたしとしては宿舎の自分の空間さえ覗かれなければ其方の指示に従いますので」
宿舎に戻った後は、魔力を練り上げる。
魔力量は今も増えている。
わたしは多分今十六か十五か。
そろそろ魔力の大幅な伸びが期待できなくなる年だったか。
ただ、成人してから魔力が伸びる人もいるらしいし、何よりも体が膨大すぎる魔力で害されないように、常に調整がいる。
そうしないと、フラムみたいに寿命を縮めるのだ。
魔力を練っていると、宿舎の扉が叩かれる。
気配から分かるが、あのおかっぱの子だ。
おかっぱの子は走り回っていたらしく、随分と息が切れていた。
わたしも身体能力は高くは無いのだが、ちょっと見ていて気の毒になった。
「大丈夫ですか」
「は、はい。 すみません……」
「それで何か」
「ええと、明日の仕事についてです。 獣の皮を剥いだり、肉を燻製にしたりは出来ますか」
まあ出来るが。
ただ火魔法は使えないので、材木などはいる。
それについては説明をしておくが。
おかっぱの子は、うんうんと頷いて、真面目にメモしていた。
「アイーシャさんは何でも出来るので、火はできないのを聞いて安心しました。 若くして大国で中佐にまで昇進する人は違いますね」
「運が良かっただけです」
「謙虚ですね」
違う。
事実だ。
アンゼルと一緒にカヨコンクムに出向いてから、いわゆる出世という奴をするようになった。
多分スポリファールにいたら、今の年でもずっと腫れ物扱いで、隅っこで指示通りに魔法をしていただろう。
あの平穏な生活はちょっと息苦しいくらいで、たえきれないものではなかったが。
わたしは協調性がないとか言われていたし、ずっと嫌われ続けたのは間違いがない。
その場合は、出世とは無縁だった。
それに、あの海賊女王が気前よく地位をくれたのも事実だ。
要するに、運が良かっただけ。
能力があれば出世出来るなんてのは妄想だ。真逆の例としても、無能な伯爵が社会のトップにずっといたのが伯爵領だったし。
出世は運だとわたしは見切っている。
そして今は、わたしは出世に全く興味がない。
「とりあえず、明日の仕事について準備しておきます」
「わかりました」
ぱたぱたと走っていくおかっぱの子。
あれは周囲に可愛がられているんだろうな。
わたしとはあらゆる意味で真逆だ。
だが、別に羨ましいとは、まったく感じなかった。
そのまま差し入れられた夕食を食べて、寝る。
翌朝は朝一から魔力を練っておく。最近魔力量がどんどん膨れあがっていて、これを丁寧にやらないと危なくて仕方がないのだ。
おかっぱの子が来るまでに、色々と魔法を試しておく。
風水土の組み合わせでも、できる事はたくさんある。ただ、二つ魔法を同時に使うとそれぞれ精度は落ちるし。
三つはまだちょっと試したことがない。
今日は飛ぶ魔法の精度を上げるべく、屋根の上くらいまで浮かんで、それで土魔法と水魔法で屋根の修理をしておく。
良い感じで出来るが。
その代わり、周囲の察知が出来なくなる。
これはやらない方が良いな。
そう判断して、短時間で切り上げる。手足の汚れを水魔法で落としていると、おかっぱの子が来る。
監視の兵士が来て、何やら耳打ちしていた。
そうか、この子はハンナというのか。
まあどうでもいい。
「アイーシャさん、空も飛べるんですね」
「まだ習熟率が低いので、あまり高速では飛べません。 実用性はそれほど高くはない段階です」
「それでも空を飛べる魔法使いなんか、そうそうはいません。 凄いですよ」
「ありがとうございます」
兵士達は噂している。
あの女、人間じゃなくて噂に聞く悪魔じゃないのか。
顔が整いすぎていて、無表情なのが怖い。
目が完全にドブみたいに濁ってる。炎みたいな赤い瞳なのに。
そんなことを言っている。
まあ、全部把握しているが。それについて、わざわざどうこういうつもりはない。兵士達はこっちを怖れている。
だから舐めた真似はしない。それでよかった。
「まだ名乗っていませんでしたね。 あたし、ハンナっていいます」
「そうですか」
「しばらくはアイーシャさんの見張りにつくと思います。 アイーシャさんの魔法を見て、色々勉強させて貰いますっ!」
元気な子だ。
きっと、伯爵領みたいな地獄を知らないんだろうな。
知らなくていい。
あんな場所を知っている人間なんて、ごく少数でいいのだから。
獣を捌く。
狩人が狩ってきたらしいのは、これはなんだ。
足が六本ある毛だらけの動物だ。猪ににているが、足が虫のようである。全身に矢を浴びて、それで死んでいる。
大きさからして熊よりも更に大きい。
矢はこれは毒矢だとみていい。
多分肉は食べられないだろうな。
そう思いながら、風魔法を駆使して、まずは矢を抜く。鏃も綺麗に全て除去しておく。
血だらけの矢と鏃をその場に転がして、水で洗浄して血と肉を洗い流しておく。
同時にハンナに聞いて、皮などの捌き方を知らないか確認。
知らないそうである。
「この動物はワムクロウラというのですが、まだこれは小さい方です。 もっと山奥になると、この何倍もあるのがいて、魔法を使うことさえあるとか」
「動物が魔法を」
「辺境になるといるらしいです。 大国だと準知的種族なんて呼んでいる人間に近い種族でも、魔法を使う場合があるらしいですよ」
「そうですか。 覚えておきます」
意外だ。
スポリファールでみた資料でも、魔法はいにしえの時代に勇者やら賢者やらが大量発生したときに、誰もが使えるようになったとか書かれていた。
だがこのグンリではそれ以前に魔法が使える人がいて。
更には動物が魔法を使うというのか。
まあ、驚くのは後だ。
風魔法で持ち上げると、吊して捌きに掛かる。体の構造は理解したので、首の辺りを切って血抜きから。
大量に血が流れてくるので、それを桶で受けておく。
この血も活用するかも知れないが。
毒矢で殺したのだとすると、飲んだりは無理か。
場所によっては動物の血を飲料にしたりするらしいのだが。
血を抜きながら、体の構造を調べ、まずは毛皮をはぎに掛かる。腹からすっと借りている大きな解体用の刃を入れて、割く。腹は急所と言う事もあって、守りは固めていないのだろう。
そのまま簡単に割く事ができた。
その後は、風魔法と土魔法を使って、皮をめくるように剥ぐ。
既に矢を多数浴びているが、それでも脂肪分を利用して、上手に剥ぐことが出来ていた。そして剥いだ皮は、一旦吊して、脂肪分などを取り除いておく。
そうすることで腐るのを防ぐ。
六本ある足を除去しながら、順番に体を解体して行く。
ぼろんと出て来た内臓は、相当な量だ。
ハンナはずっと口を押さえていたが。大量に出て来た内臓を見て、真っ青になって視線を背ける。
内臓は並べておき、消化器官は割いて中身を出す。
酷い臭いは風魔法で遮断。
猪みたいな面構えだったから雑食かと思いきや、これで草食らしい。出て来たのは、草ばかりだった。
火は熾して貰ってあるので、それで腹の中身は全部処分してしまう。
内臓類は洗っておく。
肉は大量に取れるが、毒矢が入っているので食べない方が良いだろうと思ったが、火を通して燻製にしておくと、しばらくすれば食べる事ができるらしい。そうベテランの兵士がいうので、だったらと燻製にしておく。
手際がいいらしく、ベテランの兵士が感心していた。
「穴は開いているが、これは高く売れる毛皮じゃあ。 なめしが終わった後は、軍で売って競りに掛けるようにしておくぞ」
「お願いします、ロコスお爺さん」
「おうおう」
ハンナがぺこりと頭を下げる。
ベテランの兵士とも関係は良好なようである。
魔法使いでありながら、奴隷として売り飛ばされず、周囲とも関係は良好か。
スポリファールでさえ、魔法使いはそうでない人間と壁があった。
それを思うと、ちょっと色々と考えてしまう。
グンリは辺境で、人も少なく、大国に対しては国境を越えたら殺すみたいな態度をとり続け。
天然の要塞である山岳地帯を利用して身を守ってきた国なのかも知れない。
だが、人の心は、今まで見てきた国で一番マシなのではないか。
肉を削ぎ終えて、骨だけになる。
骨を砕いて軟骨を出して、それも火を通しておく。
いずれにしても、すぐには食べない方が良いだろう。
頭蓋骨も割って脳みそを取りだすが、肉を捌いている過程で少なからず寄生虫が出て来ていた。
わたしも時々魔法で虫下しはやっているのだが。
如何に強壮であっても、動物にはなりたくない。
そう考える理由がこれだ。
寄生虫に嫌悪感があるのではない。
虫下しが大変なので。寄生虫だらけになる動物にはなりたくないだけである。
仕事は概ね昼までに終わる。
燻製は時間を掛けてやらなければならないので、後はじっくりわたしが責任を持って見張る。
煙が行きすぎないようにしたり、火事になったりしないように、燻製窯はしっかり見張らないといけない。
ハンナにはもう一人で大丈夫と言ったが。
見張りである以上、そうも行かないのだろう。
わたしは昼食を取りながら、午後の時間を過ごす。
煙などを風魔法で調整するので、魔力の錬磨も出来ない。
それが煩わしいが。
忙しく走り回って、賊を殺して回るよりもずっとマシか。そう思って、淡々と仕事を続いていた。
ハンナはグンリの外を知らない。グンリの外が大きな戦争をしていて、たくさん人が死んだことは聞かされたが、それだけだ。
ハンナはこの国では珍しい孤児だ。
両親は狩りの最中に死んだ。
ただし、それでもグンリでは大事にして貰った。
グンリでは転生神という存在を信仰している。これは当たり前の事だったので、ハンナはそれが余所ではないと聞いて驚いたくらいである。
転生神というのは、教会と呼ばれる場所に像があるが、美しい女性の姿をしている。なんでも生前の行動を鑑みて、その人に相応しい来世を用意してくれるのだという。
故にグンリではこう考える。
数百年前に大量に現れた、勇者や賢者や、その他よく分からない者達。
あれらは転生神の力で、特典を貰って転生してきたと自称していたが。多分悪魔の手によって世界に現れた偽物だと。
転生というのは、大まじめに人生を送り、善行を重ねて悪さをせず、人格も磨いて。それでやっと裕福な来世を約束してくれるものだ。
間違っても他人を踏みつけにして、手当たり次第に欲求を満たすような存在が、得体の知れない力を授かるような仕組みではないと。
そういう思想を聞いて育ったハンナには、それが普通だったし。
魔法使いの力があって。
それで人の役に立てることが、今は幸せでならなかった。
教会にはたまに顔を出している。
そして祈る。
教会には弟分妹分もたくさんいるので、其処にお金を仕送りしている。教会の立場を利用して悪い事をする人もいるので、年に何回か監査も入る。
ハンナは教会で育った事もあって、監査には加われない。
それがちょっと歯がゆいが。
弟分妹分の笑顔が見られるのなら、仕送りをする価値はあるし。
働く事に、大いに意味も見いだせるのだった。
兵士達も、ハンナには良く接してくれる。
どうして戦争なんて起こるんだろう。
そうハンナは思う。
大きな国では大きな力が働く。大量のお金が動くし、それで人が簡単に死ぬ。何か利益になるのだったら、軍隊も動く。それでたくさん人が死ぬ。
戦争の仕組みなんてそんなものだということは分かっている。
この間潰れてしまったパッナーロは、元はグンリの領土だった。それを取り戻したいという声もあるらしいけれど。
ハンナに言わせれば、知りもしない場所だ。
そんな場所を殺したり殺されたりしてまで取り戻すなんて、気が知れなかった。
宿舎に戻ると、マリーンさんがいた。一番偉い魔法使いだ。
ハンナのことも孫のように可愛がってくれる。
報告書についても、此処が駄目というのではなく、こうすれば良くなると教えてくれるので、大好きだった。
「それでハンナ、アイーシャはどうだ」
「すっごい魔法使いです! あんな人が先進国にはたくさんいるんですか!?」
「いや、流石にあれほどになるとたくさんはいないな。 火の魔法は使えないようだが、それ以外を彼処まで使いこなすのは、多分そう多くは無い。 しかもあの若さだ。 もっと伸びるだろう」
「凄い凄い!」
目を輝かせているだろうハンナに。
そうかそうかと、マリーンさんは喜ぶ。
報告書も出して、後は夕ご飯と寝るだけだ。
ただ、マリーンさんには言われている。
アイーシャさんは、非常に危険な力を持っていると。
本人は恐らく攻撃されない限り反撃されないだろうが、必要に応じて人を殺す事をなんとも思っていない目をしていると。
だから気を付けるように。
破落戸とかがアイーシャさんを挑発しないように、お前が側にいて監視していなさい。
此方から悪さをしない限りは、恐らくは何もしない。
あれはそういう人だろうと。
ハンナは怖い事はあまり知らない。
だから。アイーシャさんとは、話せばわかるのだと。信じているのだった。