辺境伯令嬢の追放行脚   作:dwwyakata@2024

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ハルメンという国は大混乱の中瓦解。

無惨すぎる結末と、それを受け入れられないもの。必死に受け入れて抗うもの。

そしてこの破綻が、数百年前にも起きていた……世界に対する狼藉者が一斉に現れた事件と同じ事に気付く者もまたいました。

気付いてももはやどうにもならないのですが。






2、破綻ははじめてに非ず

蓄えられていた食糧は殆ど無傷だったので、持ち出して囓る。保存食が主体だったが、まだ傷んでいない食材もある程度あった。

 

それらをストレルが無言で料理している。

 

調理ではない。

 

まあ恋人もいたらしいし、花嫁修業とやらもしていたのだろう。わたしのいた伯爵領の基準では結婚には遅すぎる年齢だが。

 

スポリファールなどでは色々聞いていた。

 

仕事が出来る女性は婚期が遅れることが多いらしく。

 

ストレルも恐らくはそうだったのだろうとわたしは思った。

 

「少し考えをまとめました」

 

朝食を囲みながら、軍師どのがいう。

 

外は死体だらけだ。ストレルが少しでも埋葬したいというが、軍師どのは俯くだけだった。

 

わたしは咳払い。

 

話を進めて貰う。

 

此処でストレルの感情に寄り添っていても仕方がない。

 

わたしは罵られたようにケダモノなのかも知れないが。ケダモノらしく生きる事は相応に考えている。

 

「……実はこの狂乱、覚えがあるんです。 何かと思ったら、幾つかあったいにしえの時代の記録でした」

 

「いにしえの時代の?」

 

「はい。 勇者やら賢者やら聖女やら剣聖やら。 そういった称号を名乗る存在が大挙して現れて、世界を滅茶苦茶にした時代。 当時グンリやドラダンをはじめとした幾つかの国が、今の国際情勢と同じような覇権国として、世界を握っていたらしいんです。 その中には滅びてしまった国も多いようなのですが、ともかく。 狂乱の時代の前の文書は、わずかだけしか残っていません。 それらの文書も、発狂したような内容が多くて」

 

それでも僅かだけながら、幾つか文章の体を成していたものもあった。

 

それによると、皆がおかしくなったというのである。

 

今回と同じように、欲望のままに、感情のままに誰もが暴れ出した。

 

意味が分からない理屈で他人を殺しだしたり。

 

いきなり殺し合ったりした。

 

法典を土足で踏みにじり、美術品を砕いたり火を掛けたり。

 

狂乱だ。何もかもがおかしくなった。

 

そう記載されている文書が、僅かながら残されているらしい。

 

つまりだ。

 

勇者だの賢者だのが現れた時代は、世界そのものの法則がおかしくなったということか。確かに今の状況が近いかも知れない。

 

「だとすると、また勇者だの賢者だのが現れて、世界に君臨すると?」

 

「なんとも。 ただ、既に君臨している可能性もあります」

 

「確か記録に残っているだけでも、現在の魔法使いでは手に負えない相手でしたよね」

 

「はい。 まるで世界そのものが味方しているかのように、訳が分からない能力を持ち、それを極大解釈して事実上の全能に近かったとか」

 

なる程ね。

 

関わってはならない相手と言う訳だ。

 

それでどうするか。

 

軍師どのは、まずは正気の人間と接触を図りたいと言う。

 

だがそんなもの、存在するだろうか。

 

ストレルはいつ壊れてもおかしくないし。

 

軍師どのだって大差ない。

 

それにどうやったら壊れるのかが、今一分からない。頭の良い悪いはあまり関係が無さそうである。

 

「アイーシャさん。 風魔法で探知をお願いします。 少しずつ探知範囲を拡げて、正気のままでいる人を探して、それで合流しましょう」

 

「別に良いですけれど。 それでどうにかなりますか」

 

「まずは生き延びる事です。 それから……」

 

「それよりも、こんな酷い状態を、どうにかしないと!」

 

ストレルが喚く。

 

みんな埋葬してあげたい。

 

そう叫ぶが、そんなの後回しだと思うが。

 

だが軍師どのはいう。

 

「ストレル一佐はかなり精神が不安定になっています。 皆を埋葬して、それで少しでも落ち着くなら、それを手伝うべきです」

 

「こういう所でそのまま埋めると、熊やら犬やらが掘り返して食べるだけですよ。 少なくとも焼かないと」

 

「どうして貴方はそう言い方がいちいちおかしいの!? 心ってないの?」

 

「心は幼い頃に作り損ねました。 聴取で答えたじゃないですか」

 

別に挑発なんてしているつもりはないが、喚きながらストレルが掴み掛かってくる。わたしとしてもいい加減窒息させてやりたいが。ともかく、軍師どのが必死に止める。

 

火葬をまずしようと。

 

わたしが死体を火葬するための窯をまず作り、火はストレルが管理。

 

其処に辺りの死体をまとめて放り込んで、全部まとめて墓に入れると。

 

そうしたら、王女殿下は別だとストレルが叫びだしたので、もう勝手にしてくれと思う。王子殿下の死体も回収したいらしい。

 

ストレルもおかしくなりはじめている気がするが。

 

まあ、良いだろう。

 

どうせ行く所もないし、当面は隠れる以外にはない。

 

とにかく一緒にやっていくしかないのだ。

 

ある程度は譲歩するしかない。

 

今はヒステリーを起こしているストレルだが、それなりに腕が立つ魔法使いだ。わたしと殆ど同レベルだろう。

 

だとすると、死なせるのはもったいない。

 

淡々と窯を作る。

 

その間に、ストレルが荷車で、死体を運んでくる。涙を拭いながら、死体を順番に鎧を脱がし、燃えるものは外して行く。

 

死体は綺麗なものじゃない。

 

表情なんかはグシャグシャに崩れるし、元が整った顔であるほど嫌悪感を催すものになる。

 

犬なんかに食い荒らされた死体は更に悲惨で、柔らかい場所から食い荒らされる。目とか唇とか。

 

だから顔が殆ど残っていない死体も多い。

 

王女の死体も運ばれてくる。

 

激しい暴行を受けた挙げ句、壁に槍で串刺しにされたようだ。

 

ロイヤルネイビーの水兵もそうだったが、女だったらなんでも犯すみたいな男の兵士は珍しく無い。

 

狂乱した連中ならなおさら歯止めも利かないだろう。

 

まずはその王女様から火葬し。

 

肩身らしい宝石の指輪だけ、軍師どのが外しておく。

 

そして灰を埋めて墓石を乗せて。後の死体は、まとめてどんどん燃していった。

 

途中で狼だの熊だのがエサを求めて近付いて来たが。わたしが片手間に風魔法で窒息させる。

 

食べるのは止めた方が良いだろう。

 

どれも太っている。

 

どうして太っているのかは、まあこの状況だし、わざわざ考えるまでもない。

 

一部の死体は蛆が湧き始めている。

 

あっと言う間に蛆は湧く。

 

これも伯爵領で見た。

 

酷い場合はまだ生きている状態で蛆が湧いたりする。

 

まあ、わたしにはどうでもいいことだ。

 

死体をあらかた片付けた後、ストレルがどうしてもと泣いていうので、王子とやらの死体もまとめて運ぶ事にする。

 

軍師どのによると、偵察にもなるということだが。

 

あの洞窟を荷車で行き来するのは手間だ。

 

ともかく、偵察も兼ねてあの脱出路まで行き。

 

其処で死体を運び出す。

 

王子の死体も、殺し合った近衛の死体も。それとストレルの恋人の死体もついでに運び出しておく。

 

まだ狂乱は続いているようで、井戸の外では争いの音がしていた。

 

わたしは淡々と死体を片付ける。

 

作業だ。

 

最初はずっと泣きながら作業をしていたストレルも、少しずつ慣れてきたらしい。軍師どのが、血は必ず洗い流せというくらいには、感覚がおかしくなっている。

 

大量の死体を燃やして処分。

 

エサを求めて寄ってくる動物も全部片付ける。

 

その後は、鎧だの何だの。燃やさなかったものを洗って綺麗にしていく。水魔法でやってしまう。

 

もしも経済が復活した場合、これらは売って金に出来る。

 

そういう計算も、軍師殿にあるらしかった。

 

途中からストレルは殆ど泣かなくなった。

 

というか、感情が壊れたらしい。

 

もういい大人の筈なのに。

 

或いはわたしの仲間入りなのかも知れなかった。

 

脱出路にあった最後の死体は、腐り始めていた。それを片付けて、それで一息つく。

 

離宮には相応の食糧が蓄えられていたので、まだしばらくはそれでしのげる。ストレルにつきあってやったのだ。

 

後は働いてもらわないと困る。

 

わたしはそう思っていたが。

 

ストレルは、わたしを恨みがましく見る。

 

軍師どのもだ。

 

「それでこれからどうするので」

 

「恐らくもう首都は駄目です。 資料などの記憶を思い出しても、どれくらいの期間狂乱が続いていたかのものはありませんでした。 だとすると、この先何が現れるかですが」

 

「何が出るとしても、勝ち目なんてありませんが」

 

「そうですね。 ストレル一佐は戦える状態ではありませんし。 アイーシャさんはかなり戦闘向けの魔法を使えますが、伝承にあった世界の破壊者達の能力を考えると、とても太刀打ちは出来ないでしょう。 スポリファールのアルテミスでさえ、手に負えないと思います」

 

まあ、その見解はわたしも同じだ。

 

だが、だからといってそのままやられてやる気もないが。

 

それに、そういったよく分からない経歴の連中が湧いて出るとも限らない。

 

オークがいきなり豚になっていたくらいだ。

 

世界中に巨人が出てもおかしくないだろう。

 

ふと気付く。

 

離宮の外に気配がある。それもたくさん。人じゃない。

 

ストレルに警戒を促して、外に出る。

 

外にたくさんいたのは、ゴブリンだ。

 

子供みたいに小さくて、痩せこけていて、武器を手にしている。

 

異変が起きる前に見たゴブリンは、背丈は子供くらいだったが、筋肉の塊で極めて屈強だった。だがこれらは違う。

 

武装した人間にとってはカモでしかない。

 

「女だ。  人間の女が二匹いる」

 

「子供を孕ませろ」

 

「男のガキの方はいらない。 バラバラにして喰っちまおう」

 

「近付くと対応しますが」

 

わたしの冷静な声を聞いて集まってきている子供みたいなゴブリンはゲラゲラと笑った。

 

我等はゴブリンだと。人間の女は我等の孕み袋なんだと。

 

そうか。

 

オークもそうだが、元より脅威度が下がってそうだな。知能的な意味でも。

 

軍師殿が、数匹は残してくださいというので、頷く。まあ、できない事はない。

 

既に風魔法は展開済み。

 

そのまま、一気にまとめて窒息させる。窒息は既にわたしの得意魔法だ。ゴブリンは何もできずに、その場でバタバタと倒れていく。数体は、わざと窒息しないように風魔法で拘束だけしていた。

 

「ひ、ひいっ!」

 

「な、なんだよ! どうしてこんなに強いんだよ!」

 

「わたしは別に強くありませんが」

 

「いや、世界的な基準でも上位に入ると思います。 一部の例外がおかしいだけです」

 

軍師殿が冷静に言う。

 

拷問はストレルがやるらしい。

 

わたしはわざと残しておいたのを地面に今度は首だけ出して埋める。土魔法と組み合わせれば簡単だ。

 

精神の均衡を明らかに崩しているストレルは、躊躇無くのこぎりを持ちだした。そして、一匹の首を切りおとす。

 

軍師どのが視線を逸らしている。

 

線が細いな。

 

あれだけの大戦乱を制御して、スポリファールに不利な状態を作り出したとは、とても思えない。

 

「は、話す話す! だから止めてくれ!」

 

「リョウメイ二佐」

 

「まずは彼等がどこから来たのか、どのくらいの人数がいるのかを確認してください」

 

「ええ。 分かったわ」

 

ストレルが斬りおとした首をぶら下げながら、もう一体から情報を引きずり出していく。

 

それによると、ゴブリン(いままでのと違うが)は近くに巣穴をこさえていて、数百匹がいるらしい。

 

近くで女をさらっては片っ端から子供を産ませるべく孕ませているそうだ。

 

巣穴にいる女は既に十人ほどらしく。

 

女以外は全部食糧にしているらしい。

 

「分かりました。 もう結構です」

 

ストレルがなんの躊躇もなく残りのゴブリンを炎魔法で焼き尽くしていた。いずれにしても、これはその巣穴を処理する流れか。

 

面倒くさいが、もう自棄だ。

 

安全を確保すると言う意味もある。

 

少しずつ、周りを安全にしていかないといけない。

 

 

 

捕まっている女性は助けるように。

 

そう注文をつけられたので、ゴブリンの巣穴……というか、多分軍が放棄した砦を、風魔法で念入りに調べる。

 

砦には大量の人骨が散らばっていて、ゴブリンが食い荒らしたのは確かだった。子供みたいな姿だが、それでも武器が使える。数が集まれば、人間を殺すのは難しくないのだろう。

 

だが、身体能力はそれほど高いようには見えない。

 

武器をどうにか使うのがやっとだった前のゴブリンとは、武器を使いこなし、人間の言葉も流暢に喋れるという点が違うが。

 

それでもこれは変わりすぎだ。

 

「人質発見。 ゴブリンが多数集っています」

 

「分かりました。 安全のためにも、ゴブリンはまとめて窒息させてしまってください」

 

「了解」

 

まあ、一瞬でやってしまうに限る。

 

人間の肉をかじっているゴブリンも。

 

見張り台に上がって遊んでいるゴブリンも。

 

辺りで騒いでいるゴブリンも。

 

まとめて毒の空気で、ばたばたと倒れていく。殆どは何が起きたかさえも分からなかっただろう。

 

賊をカヨコンクムで処理していた頃から。

 

雑魚の大量殺傷はわたしの十八番だ。

 

アンゼルがいたら、嬉々として突っ込んでいっただろうな。そう思うと、ちょっと寂しくはある。

 

ゴブリンが全部死んだ後、ストレルが奧に。

 

捕まっていた女性は、下はまだ生理も来ていなさそうな子で、最年長はもう老婆だった。女だったらなんでもいいのだろう。

 

ちなみにストレルが魔法で調べた結果、誰も妊娠はしていないようである。

 

まあそもそもゴブリンとの間に子供が出来るかが極めて怪しい。もとのゴブリンは猿の一種だったようだから、まだ可能性がありそうだが。

 

今のゴブリンは見た感じ、似ているのは人間にちかい姿だけで、何もかもが人間と違うように思う。

 

それにざっと見た感じ、メスのゴブリンもいない。

 

こんないびつな生物が、どうして存在しているのかがよく分からなかった。

 

それにだ。

 

助けた女の一人がわめき散らす。

 

どうして助けに来なかった。来るのが遅い。

 

他のも喚く。

 

助けても狂っている事に代わりは無いか。子供までも、ぎゃんぎゃん喚いている。

 

これは駄目だな。

 

ストレルに食ってかかっている女達。ストレルは目が死んでいて、言われるままにしている。

 

わたしは問答無用で女達を気絶させた。風魔法で簡単である。他にも手はあるが。

 

倒れた女達を、その場に転がしておく。

 

もう放っておいても良いだろうこれは。てか、殺しておいた方が、問題が起きないのではあるまいか。

 

「ストレル一佐」

 

「大丈夫、大丈夫、大丈夫よ……」

 

「どうでもいいですが、あれらも始末しておきますか? 目を覚ませばどうせ襲ってきますよ」

 

「貴方は……っ!」

 

またストレルが掴み掛かろうとしてくるが、軍師どのが必死に止める。頼むから止めてくれ。そう頭を下げられると、ストレルは真っ青になっている唇を噛む。

 

これはもう限界なのではあるまいか。

 

今のうちに殺しておいた方が良い気すらする。

 

ともかく、女どもは縛って、近くの村近くに運んでおく。まだ人はいるようだが、ずっと怒鳴り合っているようだ。

 

わたしは関わり合いになりたくないし、そうする意味が微塵もない。

 

それから少しずつ遠征の距離を伸ばして、各地を探る。

 

それで分かったのは、ハルメンはもう駄目だと言う事だ。どこも完全におかしくなっている。

 

都市はまるごと墓地と化している。

 

おかしいのは、死体が動き回っていることだ。

 

腐りかけの死体が動き回って、他の死体を貪り喰っている。

 

あれはなんだ。

 

ストレルが戻している。

 

やっぱり限界か。

 

ともかく探知範囲はあまり広くないようだし、距離を取って観察する。風魔法で調べる限り、明らかに死んでいるのに動いている。

 

「軍師どの、なんですかあれ」

 

「分かりません。 死体を操作する固有魔法はあると聞いたことがありますが、それでもあんな……死体がまるで別の生き物になったような状態になるなんて、聞いたことも」

 

「そうですか」

 

いずれにしても関係はないな。

 

ちなみに生き残りの人間もいるようだが、互いに殺し合っている。そればかりか、あの動く死体の中に他の人間を投げ込んで、貪り食われる様子を見てゲラゲラ笑っているのも確認した。

 

こんな状態になっているのなら、スポリファールが偵察を出してくる可能性が高いのだが。

 

出て来ていないと言う事は、スポリファールも、なのだろう。

 

食糧を荷車に詰め込むと、移動を開始。まずはスポリファールの様子を見に行く。

 

向かう先は、以前わたしが、スポリファール側で戦ったあの国境の街だ。

 

必死に戦ったら審問だかに掛けられて、それで追放されて田舎送りにされた。良い思い出はない。

 

だから、助けを求めに行く訳ではない。

 

ただ様子を見に行くだけだ。

 

途中で幾つかの砦を見たが、どれも動く死体が歩き回っていたり。

 

オークやらゴブリンやらが変じた連中が制圧していたり。

 

まだ人間が殺し合ったりしていた。

 

オークやらゴブリンやらは、全部まとめて駆除して欲しい。そう言われているので、手間だが始末しておく。

 

そうしないと被害が増えるという事だが。

 

もうこれは、被害がどうの問題ではないと思うのだが。

 

山越えを終えて、平地に出る。

 

懐かしいな。見覚えがある。

 

そして、砦が再建されたようだが、それが燃え尽きている。

 

散らばっているのは、スポリファールの鎧を着た兵士の死体。どれも互いに殺し合ったのが明白だ。

 

魔法使いの死体もたくさんある。

 

日が経っているからだろう。

 

どれも酷く痛んで腐敗していた。

 

ストレルがまた吐いている。こいつに食べさせるのは無駄なように思えてきたが、もういい。

 

ともかく、あの国境の街まで様子を見に行く。

 

それで分かるだろう。

 

1000中999駄目だろうな。

 

それは分かっているが、確認はしておく方が良い。

 

そして、城門近くまでいく。この状態でも、やはり城門が開け放たれていて。内部は滅茶苦茶。

 

あれほどしっかりしていたインフラは、破壊と死体に塗れ。目を覆うばかりの有様だった。

 

此処でも結構な期間働いたのだ。

 

だから地形とかは覚えている。

 

教会は。

 

土地勘がある話はしてあるので、まっすぐ行ってみる。途中で見たのは、前に頼もしかった屈強な双子だ。双子で殺し合ったらしく、どっちも体が半分潰れた状態で腐っていた。

 

教会も半壊して潰れている。

 

そこで、生きた人間を見つける。

 

構えるわたし。軍師どのを、青ざめたまま庇うストレル。

 

振り返った人間は、見覚えがあった。

 

眼鏡を掛けた、四角四面と言った雰囲気の中年男性魔法使い。

 

「君は……」

 

「確かクラウスさんでしたか」

 

「まさか君と会うとはな。 あの田舎街の住民を皆殺しにしてスポリファールを去ったとは聞いていたのだが」

 

「村の者達を皆殺しにしたのはアンゼルですが、まあどうでもいいです。 それで、殺し合いますか? わたしはスポリファールからすればもはや敵だと思いますが」

 

待ってと、軍師殿が割って入る。

 

そして、身分を明かす。

 

今は、明らかに正気を保っている人間とは、一人でも多く接しておきたいそうである。丁寧に身分を明かすと、クラウスは明らかに動揺していた。

 

「一体何が起きている。 あのハルメンの軍師が此処にいるだと」

 

「今は戦っている場合ではありません。 まずは情報交換をしましょう。 それに……来る途中で見ましたが、死体が動き出して襲ってくる可能性もあります。 今は安全な場所を見つけて、退避しないと」

 

「分かった。 どうやらそれしかなさそうだな。 それよりも一つ確認したい。 これはハルメンの手による大規模魔法攻撃ではないのだな」

 

「違います」

 

即答する軍師どのの言葉を聞いて、クラウスはそうかとだけ、寂しそうに答えていた。

 

まずは場所を変える。

 

街を出て、近くにわたしが拠点を作る。

 

その拠点を作る土魔法の手際を見て、クラウスは目を見張っていた。

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