続けての相手は戦王です。
聖女が女の悪い所全部乗せだとすると、此奴は男の悪い所全部乗せですね。
まあ、そういう奴です。
どちらもたちの悪さでは差がありません。
拠点ごと、土魔法で動かし。風魔法も使って一気に移動する。移動速度は更に増していて、消音性も高くなっている。
話そのものは聞いているからだろう。
ストレルは更に口数が減っていて。料理はするが、それ以上はもう何もできそうになかった。
食糧を補給してくる度に、アプサラスは表情が堅くなっている。
この人は軍司令官だ。
だからたくさん部下を死なせてきたはずだ。
だがそれでも、こんな状態に国がなって。
しかも自分が民全てに拒まれている。
それを理解しているのだから。表情が硬くなるのも当然だろう。
骨折した腕については、既に直った。
だが、心に入った罅は、どうにもならない。
移動しながら、情報を集める。
やはり勇者を倒した事で滅茶苦茶になったスポリファールは、致命的な状態だ。生き残りは街につき数十人いるかいないか、という状態であるらしい。
世界が滅茶苦茶になって。
更に勇者に滅茶苦茶にされて。
その過程だけで、百人に一人生き残れば良い方だった、ということだ。
ぞっとしない話だが。
おそらく最速で斃した勇者の領域ですらこれだ。
ハルメンは正確に調べていないが、「聖女の機嫌を損ねた」街なんかは更地にされているだろうし。
更に被害が酷いのは確定だろう。
新パッナーロに至っては、そもそも再建途上だった所に剣聖が自分好みに滅茶苦茶にしているわけだし。
クタノーンは男を皆殺しにした可能性が高い。
そう考えると、更に被害が大きいし。
下手をすると、もたついていると取り返しがつかなくなる。
四日ほどで、クタノーンとの国境近くに到着。わたし達は山裾にある、誰も興味を示さないだろう荒野に拠点を作り。
其処で実験を始めた。
まず以前入り込んだわたしが国境を越えてみせる。
国境を越えた瞬間、凄まじい異臭が漂ってくる。
前も酷かったが、情交の臭いだ。
国全土がこれで満たされているとみていい。
わたしもアンゼルと旅していたとき、安宿を使うと、隣の部屋で盛った男女がまぐわっている事が結構あったし。
安宿だとその跡やら臭いが露骨に残っている部屋に通されることも結構あった。
いずれにしても気分がいいものではないが。
多分戦王にはこれが花の芳香なんだろう。
一人ずつ、順番に国境を越えて様子を見る。
カルキーとクラウスは、案の場国境を踏み越えた瞬間、凄まじい勢いで外に弾き飛ばされていた。
男は立ち入り禁止。
此処の中の女は全部戦王のもの。
そういうわけか。
カルキーの負傷は、更に酷いものとなった。
クラウスはある程度覚悟していたからか、なんとか無事だ。ともかく治療に専念して貰う。
続いてアプサラスが国境をわたしと越える。
アプサラスは、踏み込んだ一瞬で、体調の異変を訴えていた。
「すまん」
すぐに国境を出るアプサラス。
激しく肩で息をついていた。
戦士として鍛えているアプサラスだ。既に三十路を越えているとは言え、それでも生半可な男性なんて及びもつかない体力を持っているはずだが。
それが、顔を真っ赤にして、冷や汗をだらだら掻いている。
うめき声を漏らすアプサラス。
いや、これは。
「これはアルテミスもダメだな。 ストレルは特に絶対にここに入ってはまずいだろう」
「どういうことですか」
「私も制御はしているが性欲はある。 国境を越えただけで、それがいきなり最大限増幅された感じだ。 少しでも内部にいたら、理性なんて一瞬で消し飛んで、その場で服を脱ぎだしたかもな」
まあ、女性も性欲を自力発散する手段なんぞ幾らでもあるが。
それにしても、アプサラスの様子を見ている限り、それが心地よいものなどではないことは一発でも分かる。
だとすると、どうしてわたしとメリルは平気だった。
メリルを連れて、もう一度国境を越えてみる。
嫌な臭いはするが、わたしはある程度平気だ。メリルも、口を押さえて嫌そうにしているが、それだけ。
軍師殿はそれを見ていて、戻って欲しいという。
作戦が、決まったらしかった。
国にいた女性を一人、気絶させて連れてくる。
国境を越えると死ぬ可能性がある。だから、国境付近で気絶した女性の格好を、急いで検分した。
本当に裸同然の格好だ。
腰を僅かだけ覆う布。素材はよく分からないが、絹かこれ。他でも見たが、ちょっとよく分からない。
胸は露出していて、軍師どのが嘆息した。
ここまであけすけだと、流石に色気を感じるどころじゃない。
容姿も色々とおかしい。
腰のくびれとか、肌つやとか、何食ったらこうなるんだろうと不思議になる。多分だけれども、全部の人間が戦王好みに調整されている。
戦王が好みなのが、こういう女ということなのだろう。
何人か気絶させてつれて来て、確認する。
子供でも腰がくびれているし、足とか異様に細い。
また子供の場合は、胸を布で覆わされているようだ。
「戦王とやらが色情狂の恥知らずなのはよく分かったが……」
「この格好で潜入するんですか?」
「恐らく戦王も、自分に近付けば異物に気付く筈です。 ただ……」
「ただ?」
もう少し情報を集める必要があると軍師殿は言う。
とりあえず、此奴らの格好を真似させられる。
服については、すぐに真似できるが。それにしても、胸を丸出しに、腰だけすこし覆うのみ。足も素足。
これ、寒くないか。
クタノーンは寒暖差がそれなりにあり、普通だったらこれだと風邪を引く。
それに捕まえてきたのを見る限り、下着も着けていないのだ。
しかも出来るだけ、土魔法での移動速度を抑え、風魔法で警戒して集落の側を通るなと、無理な注文をつけられる。
その上で戦王の宮殿に近付いて、情報を探って欲しいというのだ。
腹にインクで、「淫紋」だかいうのを記しておく。
わたしとメリル、二人のぶんだ。
あの切り札の白い石はまずは持ち込まない。
最初は偵察である。
急いで斃さなければならない相手だ。戦王は特に。
だが、だからこそ焦るわけにはいかないのだと、軍師どのは念押しした。
「体に異変を感じたら、すぐに戻って来てください。 それとこれ。 国境近くにおいて。 此方に出てくる時は、これを被って出て来てください」
そういって、普段着を渡してくる。
わたしは国境近くの岩場に、メリルの分とそれを置いた後、服を脱いで。腰だけ守る。淫紋というのがなんだか知らないが、とにかくこれを皆書いていた。書いていたのか、それとも国が法則ごとねじ曲げられた時に、強制的に書き込まれたのかはしらないが。ともかく、なければ怪しまれる。
メリルは恥ずかしいと悲しそうに言う。
何故二人で行動するかというと、この子の記憶力が良いからだ。風魔法で情報を集めた時、わたしが覚えきれていなくても、この子は覚えているかも知れない。
それから、移動開始する。
やはり胸を丸出しにしたまま移動するのは何というか。
色々寒いし、むしろ嫌悪感がある。
戦王が嬉しいからこんな格好をさせているのだろうが。
それにしても限度というものがないのか。
嬉しいのは本人だけ。
それは分かってはいるが。
だからこそ、苛立ちも強くなる。
移動速度は出来るだけ抑える。
クタノーンの地図は事前に確認してある。まずは首都を目指す。
クタノーンの首都は歴史上何回か移動しているらしい。これはそもそも、多民族国家であって。どの民族が強いか、国の時期によって違ったから、らしい。
また、混沌が始まる直前は、黒軍が壊滅し、かなり国境を新パッナーロに浸食されていたという事情もある。
混沌が始まった時に首都がどこだったかは分からないと軍師どのは言いながらも。候補として、他に栄えている都市を幾つか指定してくれた。
流石と言うかなんというか。
それだけ色々、他の国についても詳しいということだ。
数日かけて移動する。
そして、先にメリルが気付く。
情報を集めながら移動しているのだが。日中は、人間の行動が露骨に鈍いというのだ。
「会話がいつもより聞こえないです」
「そういえばそうですね」
「みんな夜型なんですか」
「さあ」
だが、その可能性はある。
考えて見れば戦王は情交の事しか考えていないような奴だ。それについては、この国の有様をみてもよく分かる。
こんな格好を全員にさせている事からも、相手がどう思うか何てどうでもいい。
まあわたしも、他人の心には疎いので、その辺りは人をどうこういう資格はないかも知れないが。
とりあえず分かっている事は。
奴は夜の間に好きなだけ情交にふけり。
昼の間は疲れて寝ている可能性がある、ということだろう。
情報を集める限り、どうやら奴がいるのは元々のクタノーンの首都で間違いないらしい。それについては、よく分かった。
移動速度を保ったまま、移動を続ける。
首都に近付くとどんどん臭いが強くなるのが分かった。
非常にメリルがつらそうだ。
わたしもはっきりいってあんまりいい臭いだとは思わないが。それにしても、どうしてアプサラスは一瞬でああなったのに、わたしは平気なのか。
ちょっとそれはよく分からない。
メリルでさえ、時々顔を赤らめているのだが。
「平気そうですか? メリル」
「はい。 なんとか」
「恐らく彼処に戦王が……うん?」
なんだあれ。
クタノーンの建築様式については、事前に調べてある。しかしながら、あれはなんだ。
正直な所、石造りが主体な事は、この世界では殆どの場所で共通している。山深い土地では木造建築も多いのだが。それでも石造りの家は、どうしても主流になりやすい。これは理由があるらしく、上質な石がどこの国でもとれるからだそうだ。どうしてそうなのかまでは分からないそうだが。
あれは、石か。
なんだか曲線を描いた建物がでんとあって、その他には掘っ立て小屋しかない。
周囲には転がされている女。たくさん。
どれも正気を保っているとは思えない。
でんとある……なんだか花のつぼみみたいな形をした屋根の建物。どうやって作っているのかさえ分からないそれから、女が運び出されてくる。
運び出してくる女も、運び出されてくる女も、等しく全員全裸だ。
そして女が捨てられる。
あれは精神が壊れている。
情交の事しか考えていない奴だ。何が起きているのかは概ね想像がつくが。
放り出されている女には、既に息絶えている者もいるようだ。放り捨てられたあと、食事とか出されているとは思えない。
まあ、当然だろうか。
スポリファールの建国者であった勇者のことを思い出す。
わたし達が斃した奴じゃない。前の混沌の時代の勇者のことだ。
女を好みであれば人妻だろうがなんだろうが容赦なく奪い去り、催眠とかいう能力で洗脳し。
子を孕んだら飽きて捨てた。催眠が解かれて、それで開放されても女は廃人になった。
そうして国中の女が廃人になるか、或いは死んだ。
そういうおぞましい事を繰り返した輩だった。
また一人、女が運ばれて来た。
今度はメリルとあんまり年も変わらなそうな女だ。ぐったりしていて、またから大量に出血している。
そして捨てていった全裸の女は、それに見向きもしなかった。
「酷……」
メリルの口を押さえる。
特に注意するべきとして、絶対に悪口の類は直に口にするな、というものだった。
勇者にしろ聖女にしろ悪意には極めて敏感だった。
実際トリステは、そうでなければ無傷で聖女を斃せていただろう。あんな風に、爆ぜ割れなくても良かったはずだ。
気付かれたら終わりだ。
とにかく今は、情報を集める。
すこしずつ、会話が聞こえてくる。
「天上の快楽を得て死ねるのなら幸せよね」
「戦王様のハーレムに加えていただけるなんて光栄よ。 此処で朽ちるとしても本望だわ」
「ただ、死んでしまったのはどうするのかしら」
「放って置いても良いでしょう。 腐る事はないのだし」
そういえば、死体も痛んでいる様子はない。
この辺りはかなり温度差が激しい筈なのだが。
無言で伏せたまま、メリルの口から手を離す。悪口、敵意は口に出すな。そう言い聞かせると、メリルはこくこくと頷いていた。
そして、日が完全に昇ると。
不意に静かになる。
臭いも多少はマシになっただろうか。
わたしはメリルを促して、行動開始。眠そうにしているメリルだが、今は好機だ。あの変な建物に近付く。
地面に転がったまま寝ている女が目立つ。
戦王と同じように起きて寝ているのだろう。
そういえば、この国に入って獣は全く見ない。そういう意味では、殺される事はないのだろうが。
食事もそういえば、食べている所はみない。
或いはだが、この国では。
もう食事なんてものは面倒くさいし、戦王からすれば必要ないので。
それすらが排除されているのだろうか。
だとすれば、それが解除されれば。
この国は全滅かも知れないな。ずっと食べずにいて、生きていられるとはとても思えないからだ。
変な建物に入る。
中は平屋になっていて、下に真っ赤な敷物が敷かれている。彼方此方にある燭台。なんだあれは。
そして床には、多数の全裸の女性が、死ぬようにして眠っている。
奧に転がっているのは、筋肉質の男性だ。
前後不覚に眠っているが、あれは多分近付くとまずいな。
前の混沌の時代。狼藉者の撃破例は二つ。酒を飲んで、それで眠っている所を討ち取ったのが一つ。
わたし達が持っている石を使ったのが一つ。
前者は、状況証拠からしてグンリで斃された狼藉者だろう。
マリーンは国の誇りだと言っていたが。その実態は、まあそういうわけだったのだ。
恐らくあの戦王は、自分を害する存在がいないようにこの国を改造した。
ただ性欲を満たすためだけに作られたこの国は、戦王に害する存在などいないし。戦王にとって不愉快な他の男は存在してはならない。
そういうことなのか。
異様な光景に、震えているメリル。わたしに必死にしがみついている。
わたしはメリルにいう。
建物の構造を覚えて欲しい、と。
あの石を使うにしても、近付くのは無理だ。かといって、投石はわたしにはそんなに上手にやれないだろう。
それにだ。
わたしもメリルもどうしてか奴の女だったらなんでも屈してしまうような異常な力には耐性があるようだが。
それでも直に掴まれたりしたら、それもどうなるかまったく分からない。
そもそもあの石を、どう持ち込むべきなのか。
メリルが、覚えたと頷く。
わたしもできる限り覚えた。
中身は一つの空洞体で、そもそもどうしてこれで建物として崩れないのかよく分からない代物だ。
はっきりしているのは、戦王は夜の間は情交を飽きるまで続けて。
そして昼は寝ている、ということである。
つまり、あの石を奴から遠い所から落として、直撃さえさせれば、倒す事は難しくはない。
それが分かっただけで、充分過ぎる程だった。
国境付近の拠点に戻る。
全裸に等しい姿から、服を纏うと、それだけである程度安心する。
狂気という度合いでは、妹という設定の犬耳がついた奴隷を侍らせていた勇者や。自分を持ち上げるだけの肉奴隷を侍らせていた聖女よりも、更に戦王の方が酷いかも知れない。それに、だ。
この国の民は、戦王も含めて食事や排泄すらしている雰囲気がない。
戻り次第、順番に説明をする。
軍師殿の前に、アプサラスが挙手。
「それでアイーシャ。 お前、なんら情欲は覚えなかったのか」
「はあ。 まあ」
「……クラウス殿。 後でアイーシャを診察して欲しい。 メリルは年齢が年齢だからまだ分からないでもないんだが」
「分かった」
診察とな。
ともかく、具体的な戦王の容姿、奴がいる場所などについて、説明をしていく。
ハーレムと呼ばれている事を告げると、軍師殿が顔を上げていた。
「ハーレムですって」
「はあ、そう言っていましたが」
「古語の一つです。 数百年前の混沌の時代に持ち込まれた言葉で、スポリファールの建国者である勇者もそうですが、他にも色情狂の狼藉者は何名かいました。 それらがこぞって使っていた言葉がハーレムなんです。 後宮に近い意味のようなのですが……国の有力者が集めて送り込んできた女やその関係者が陰湿な争いを続ける伏魔殿である後宮と違って、支配者に都合がいいだけの異性……いや性欲発散用の肉人形を集めている場所をそう呼んでいるようだったという記録があります」
そういえば、そんな言葉を歴史を習っているときに聞いた気がする。
いずれにしてもと、軍師殿が咳払いした。
「僕も国境を越えられないか試したんですが、男という時点で門前払いのようです。 国にそもそも足を踏み入れる事すら出来ない「法則」になっているようですね」
「だとすると、わたしとメリルで奴を討ち取るしかないんですね」
「残念ながら。 幸いその法則に反しない状況なら、なんでも出来るようです。 確認しましたが、例の石も持ち込めます」
なるほど。
作戦については、すぐに立てると軍師殿がいうが。
その前にクラウスの診察を受ける。
幾つかの回復魔法を掛けられたが。その幾つかは、見た事がないものだった。クラウスはかなりの博識だ。
回復魔法についても、多分出力はともかく、知識はわたしよりある。
それで、クラウスが何だか専門用語を幾つか口にして。軍師殿がやはりと呟いていた。
「分かりました。 アイーシャさん、これはあまり良い事ではないと思うのですが、あなたの心……そもそも脳には、大きな傷があるようです」
「脳に」
「幼児期、旧スポリファールの東辺境伯に虐待同然の教育を受けたと聞いています」
「そうです。 今になって思うと、教育ですらないですが」
その時殴られたかと聞いて、はいと即答。
物心ついた頃には、逆らうなというのが体に染みついていた。
何か口答えすれば即座に殴られる。
頭も腹も。
酷く痛かった。
最近では、他人に対して恐怖は感じなくなってきたが。いずれにしても、それで心が壊れたのは事実だと思う。
わたしは心を作り損ねたが。その上で、更に壊されたのだと言う事だ。
「寿命に関係したりするものではありませんが、その過程で脳の……性欲に関連する機能が壊れてしまっています。 性は機能しているようですが、子供は産めても異性に興味を持つことは一生ないと思います」
「そういえば……」
そもそもアンゼルが不思議がっていたが、わたしは一切同性にも異性にも興味がなかったな。
アンゼルは一緒にいた頃。アイーシャがいいならまぐわろうかとか言ってきたことがあったが、断った。アンゼルは戦いの中で欲求を発散していたようだし、何より好きな男が出来ても殺してしまうようなので、恋愛にはあまり縁が無かった様子だった。それでも、あの子なりにわたしを気にしていたのだろう。
わたしはアンゼルに心配されるくらい、ある意味おかしかったわけだ。
「それで近付く事ができたのか……」
「メリルでさえ近付くとすこし様子がおかしかったので、変だとは思っていましたが」
「これは……戦王を斃せる好機だというのに、なんとも喜べないな」
「……それで作戦は?」
勝手にわたしの事で湿っぽくなられても困る。
それにだ。
わたしはそれで困ったことがない。それを劣等感に感じたこともない。恋をしてみたいとかいう話をしている人間はよく見るが、そうかとしか思わない。それは恐らくだが、繁殖したいという本能が働いている人間だから思う事なのだろう。わたしはまったくそう思わないので、別にどうでもいい。
同情されても、それはそれで困るというのが本音である。
咳払いすると、軍師どのはいう。
「簡単です。 石を現地に持ち込んだ後は、今まででもっとも簡単に戦王を倒す事が出来ると思います。 方法については……」
「アイーシャ、頼む。 今回は支援は出来ない。 仮に失敗した場合は、すぐに逃げてきて貰ってかまわない。 恐らく戦王も、そう長くは生きてはいられないだろう。 退廃の宴に飽きれば塵になるとみていい。 最悪の場合は、戦王が塵になるのを待つ」
「わかりました。 いずれにしても、さっさと片付けてきます。 ただこの様子だと、クタノーンは戦王を殺した後、全滅するかも知れませんが」
ずばり指摘はしておく。
わたしとしても、それは皆が知っておくべきだと思ったし。
それについて責任を取れと罵られるのも分かっていた。だから、先に言っておきたかったのだ。
仮に戦王を斃しても、後剣聖ともう一人よく分からない女が残っている。
少なくとも剣聖は戦いを挑んで、何らかの戦術で石をぶち当てないと斃せないだろうし。
そして倒した後は、一斉に罵声を浴びせられるだろう。
後何回追放されればいいのだろうか。
わたしは、そう思った。