辺境伯令嬢の追放行脚   作:dwwyakata@2024

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4、暗黒の地

目を覚ます。

 

粉々に消し飛んだと思ったのだが、わたしの意識はあった。

 

素っ裸でどこかに寝転んでいる。

 

いや、どこだここ。

 

真っ暗だ。

 

辺りは真っ暗で、何もあるように見えない。それなのに、どうしてか自分の姿だのなんだのは認識できる。

 

服か何かないか。

 

なさそうだなこれは。

 

それよりも、手にしているのは白い石だ。壊れている気配もない。直に握っているのに、もはや体に異常もなかった。

 

体の状態を確認するが、五体満足だ。

 

あれだけの破壊を受けたのに。

 

ただ、風魔法で調べて見ようと思ったが、出来ない。土魔法も水魔法も、回復魔法もダメだ。

 

立ち上がる。

 

体はもともと運動音痴だったのもある。ちょっと苦労したが、闇の中で、問題なく立ち上がる事は出来ていた。

 

なんだ此処は。

 

周囲を見回すが。

 

闇の中に、半透明の床がどこまでも続いている。それが見える。闇の中なのに。どういう原理かは分からない。

 

何が最後に起きたのかは覚えている。

 

あれで生きている筈がない。

 

だとすると、此処は地獄と言う奴か。

 

あるとしたらそうなのだろうか。

 

それにしても随分と殺風景な場所だ。此処で罪人を裁くのだとしたら、誰がそれをするのだろう。

 

ともかく、歩いて周囲を見て回る。

 

やはり魔法は使えない。

 

いや、体に違和感はない。

 

だとすると、この場所がおかしいのか。或いは、今まで魔法が使えていたのがおかしいのだろうか。

 

わからないが、ともかく辺りを探して、せめて羽織るものくらいは欲しいと考えていた。

 

闇の中で、随分歩く。

 

喉も渇かないし、腹も減らない。それどころか、排泄もしたくならない。眠くもならない。

 

何より疲れない。

 

これは本格的に死んだんだなと思う。

 

寒くも暑くもない。

 

あの最後の瞬間、あんなに体が熱かったのに。

 

実体がなくなっているのかと思ったが、そんなこともない。触ってみると、確かに感触はある。

 

白い石を松明代わりに使ってもいいが。

 

辺りが見えるし分かるから、別にそれはやらなくても良いだろう。

 

黙々と歩き回り、辺りを見て回るが、やはり誰もいないな。或いは孤独にさせる地獄なのだろうか。

 

しかしわたしは、孤独を苦にしない。

 

ここに放り込んだのは失敗だったのではないかと思う。

 

それでも何かあるかも知れないと思って歩いていると、やがて光が見えてきた。

 

足下はずっと半透明の床が続いていて、何処かに落ちる恐れも無さそうだ。

 

何よりも、此処でぼんやりしていても、出来る事はない。

 

ただ光に向けて歩いて見る。

 

光は徐々に強くなってきてはいるが、とにかく遠い。

 

体力なんてないほうだったのに、疲れるようなこともない。

 

だから、黙々と歩く。

 

黙々とこうやって何かを続けるのは、思えば得意だったな。スポリファールで、最初に仕事を割り振られた頃から。

 

無言で歩いていて、それで思い出す。

 

最後のあの状況、誰か助かっただろうか。

 

あのシスターPが死んだのは確定だろう。

 

他の皆は。

 

誰か助かっているならいいのだけれども。

 

結局自分を助けるために生きてきたわたしだけれども。今はそんな風な思考が、自然と浮かんで来ていた。

 

「つまんない奴。 こんな奴に遊びを邪魔されたのか」

 

聞き覚えのない声。

 

鈴を鳴らすようなとでもいうような、可愛らしい声だ。

 

そして、声だけで強い威圧感。

 

なるほど。

 

何となく分かった。

 

此奴が転生神だ。

 

「さっさと此方に来い。 長い長い時間、命令だけ受けて仕事をしているんだ。 すこしは楽しみがあってもいいだろうよ。 それを特に目的意識もないのに邪魔しやがって。 せめてお前だけでも楽しませろ」

 

「貴方は何者?」

 

「何者だと? ……おやおかしいな。 跪かないと言う事は……ああ、それが原因か。 意識もあるようだし、妙だとは思っていた。 そういえばログを見ると世界から一度はみ出しているなお前。 そうかそうか、それでこんな面白くもない奴が、間引きのために放った玩具を片付けられた訳だ」

 

けらけら。

 

そんな風に笑う転生神らしきもの。

 

アンゼルもこんな風に笑っていたっけ。

 

そう思い出す。

 

白い石を握りしめる。もう熱くもない。いずれにしても、此奴をぶちのめすのはわたしの仕事だ。

 

もうわたしの体、これは取り返しがつく状態じゃないだろう。

 

それははっきりしている。

 

それでもやるべきことはある。

 

今だからこそ、それをやるべきなのだと何となく分かる。

 

たとえ、魔法を使えなくなり。

 

手元にあるのがこの石だけだったとしても。

 

こいつだけは。

 

わたしから見ても、絶対に許しがたい存在だけは。

 

差し違えても滅ぼす。

 

ただ、それだけだ。

 

 

 

(続)








ついに邂逅する転生神らしきもの。

アイーシャの人生を玩弄し続けた存在。

すべての終わりが到来しようとしています。








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