目を覚ます。
粉々に消し飛んだと思ったのだが、わたしの意識はあった。
素っ裸でどこかに寝転んでいる。
いや、どこだここ。
真っ暗だ。
辺りは真っ暗で、何もあるように見えない。それなのに、どうしてか自分の姿だのなんだのは認識できる。
服か何かないか。
なさそうだなこれは。
それよりも、手にしているのは白い石だ。壊れている気配もない。直に握っているのに、もはや体に異常もなかった。
体の状態を確認するが、五体満足だ。
あれだけの破壊を受けたのに。
ただ、風魔法で調べて見ようと思ったが、出来ない。土魔法も水魔法も、回復魔法もダメだ。
立ち上がる。
体はもともと運動音痴だったのもある。ちょっと苦労したが、闇の中で、問題なく立ち上がる事は出来ていた。
なんだ此処は。
周囲を見回すが。
闇の中に、半透明の床がどこまでも続いている。それが見える。闇の中なのに。どういう原理かは分からない。
何が最後に起きたのかは覚えている。
あれで生きている筈がない。
だとすると、此処は地獄と言う奴か。
あるとしたらそうなのだろうか。
それにしても随分と殺風景な場所だ。此処で罪人を裁くのだとしたら、誰がそれをするのだろう。
ともかく、歩いて周囲を見て回る。
やはり魔法は使えない。
いや、体に違和感はない。
だとすると、この場所がおかしいのか。或いは、今まで魔法が使えていたのがおかしいのだろうか。
わからないが、ともかく辺りを探して、せめて羽織るものくらいは欲しいと考えていた。
闇の中で、随分歩く。
喉も渇かないし、腹も減らない。それどころか、排泄もしたくならない。眠くもならない。
何より疲れない。
これは本格的に死んだんだなと思う。
寒くも暑くもない。
あの最後の瞬間、あんなに体が熱かったのに。
実体がなくなっているのかと思ったが、そんなこともない。触ってみると、確かに感触はある。
白い石を松明代わりに使ってもいいが。
辺りが見えるし分かるから、別にそれはやらなくても良いだろう。
黙々と歩き回り、辺りを見て回るが、やはり誰もいないな。或いは孤独にさせる地獄なのだろうか。
しかしわたしは、孤独を苦にしない。
ここに放り込んだのは失敗だったのではないかと思う。
それでも何かあるかも知れないと思って歩いていると、やがて光が見えてきた。
足下はずっと半透明の床が続いていて、何処かに落ちる恐れも無さそうだ。
何よりも、此処でぼんやりしていても、出来る事はない。
ただ光に向けて歩いて見る。
光は徐々に強くなってきてはいるが、とにかく遠い。
体力なんてないほうだったのに、疲れるようなこともない。
だから、黙々と歩く。
黙々とこうやって何かを続けるのは、思えば得意だったな。スポリファールで、最初に仕事を割り振られた頃から。
無言で歩いていて、それで思い出す。
最後のあの状況、誰か助かっただろうか。
あのシスターPが死んだのは確定だろう。
他の皆は。
誰か助かっているならいいのだけれども。
結局自分を助けるために生きてきたわたしだけれども。今はそんな風な思考が、自然と浮かんで来ていた。
「つまんない奴。 こんな奴に遊びを邪魔されたのか」
聞き覚えのない声。
鈴を鳴らすようなとでもいうような、可愛らしい声だ。
そして、声だけで強い威圧感。
なるほど。
何となく分かった。
此奴が転生神だ。
「さっさと此方に来い。 長い長い時間、命令だけ受けて仕事をしているんだ。 すこしは楽しみがあってもいいだろうよ。 それを特に目的意識もないのに邪魔しやがって。 せめてお前だけでも楽しませろ」
「貴方は何者?」
「何者だと? ……おやおかしいな。 跪かないと言う事は……ああ、それが原因か。 意識もあるようだし、妙だとは思っていた。 そういえばログを見ると世界から一度はみ出しているなお前。 そうかそうか、それでこんな面白くもない奴が、間引きのために放った玩具を片付けられた訳だ」
けらけら。
そんな風に笑う転生神らしきもの。
アンゼルもこんな風に笑っていたっけ。
そう思い出す。
白い石を握りしめる。もう熱くもない。いずれにしても、此奴をぶちのめすのはわたしの仕事だ。
もうわたしの体、これは取り返しがつく状態じゃないだろう。
それははっきりしている。
それでもやるべきことはある。
今だからこそ、それをやるべきなのだと何となく分かる。
たとえ、魔法を使えなくなり。
手元にあるのがこの石だけだったとしても。
こいつだけは。
わたしから見ても、絶対に許しがたい存在だけは。
差し違えても滅ぼす。
ただ、それだけだ。
(続)
ついに邂逅する転生神らしきもの。
アイーシャの人生を玩弄し続けた存在。
すべての終わりが到来しようとしています。
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