普通暗闇の中に放置されると、人間はあっと言う間に発狂します。
色々な意味で壊れていたアイーシャだから平気でした。
アイーシャが此処まで生き残ったのは……ある意味何もかも壊れていたからですね。
皮肉の極みです。
どれくらい闇の世界に一人でいたのだろう。
わたしはぼんやりと横になってずっと過ごしていた。生理反応も欲求もないから、それで良かった。
今までの事を思い出したりもしていたが。
普通の人間だったら気が狂っていただろうな。
そうとも思った。
分かっている。
此処は人が暮らしていた「管理区」の完全な外。
わたしは其処からはじき出されて、石と一緒に世界の外側に出た事で、人間ではあらゆる意味でなくなった。
でも神でもなんでもない。
魔法やらそれに類する力が使えるわけでもない。
ただの非力な人間だ。
転生神に勝てたのは、あいつがわたしに手を出せなかったから。
それも斃すまで、どれだけ時間が掛かったのかさえも分からない。年単位かもしれなかった。
ぼんやりしていると、不意に光が戻る。
目が痛い。
しばらく目をしばしばさせていたけれど、周囲を見ると、わたしが滅茶苦茶に壊したままだ。
外で音が聞こえている。
「修復プログラム起動。 管理システムの再生を開始します」
「ログを見たが酷いものだ。 AIが自我を持つ事は時々あるが、まさかこれほど醜悪な人格を持つとは」
「それよりも、この破壊は。 反乱を起こした生物がたった一個体でやったのか」
「そのようだな。 ……いたぞ、此方だ」
此方を覗き込んできたのは、たくさん腕がある、なんだか蛸に似た生き物だった。身を守る術もない。
殺されるのかな。
まあそれもいい。
そう思っていたら、声を掛けて来る。
「ずっと暗い中孤独のままだったのか。 自我は残っているか」
「はあ。 問題ありません」
「なんと……」
「貴方は? わたしはアイーシャと言います」
蛸みたいな喋る生き物は、ノイマンと答えた。
なんでもこの世界出身で、この世界から外の世界の文明に加わった存在なのだという。
そうか、あの転生神が言っていた。
恐らく知的生命体に昇華した存在なのだろう。
手を貸してくれた(触手かもしれないが)ので、わたしが壊した転生神の腹の中から出る。
そして、外には虫みたいなのとか、鳥みたいなのとか、大きな蜥蜴みたいなのがいたけれど。
どれも普通に喋っていた。
ただ口が動いている様子はないので、何らかの方法で言葉を発しているのか、それとも体につけている機械みたいなのでそうしているのかはよく分からないが。
「生存者だ。 アイーシャというらしい」
「人間? まさか服を着る文化すら失ってしまったのか」
「服は此処に来た時に、全て吹き飛ばされてしまいました」
「そういうことか。 服を用意する。 裸のままでは色々と寂しいだろう。 羞恥心は感じないのか」
小首を傾げる。
その辺りに散らばっていた円筒形のちいさなのが、また動き始めている。
心配になったので聞いてみる。
あいつがまた蘇ったら最悪だからだ。
「何をしているんですか。 転生神をまた蘇らせるつもりですか」
「転生神? ああ、此処で悪さをしていた管理AIのことだね。 問題はない。 全て初期化する。 二度と蘇ることは無い」
「本当ですか」
「嘘を言う理由がない。 今検査しているが……君はその体、どうした。 細胞レベルで人間とは異なってしまっている。 そんなことまで、あの狂ったAIはしでかしたのか」
周りの色々な姿の存在が怒っているようだ。
わたしはよく分からないとだけ答える。
そして、つれて行かれた。
話を聞きたいというのだ。その途中で、服も用意して貰った。なんだかごてごて色々ついている服だった。
下着とかも丁寧に用意してくれたが。
昔の記録しかないので、即席で作ったのだという。
よく分からない。
ともかく、今はついていくしか無さそうだった。
ノイマンという者に連れられて、暗い暗い空間から出ると、あの境界と同じ場所に出ていた。
外にはとんでもなく大きな何かが浮かんでいて。
其処から幾つか小さい繭みたいなのが降りて来て、たくさんの何か人とは違う存在が出入りして、作業をしている。
幾つか建物もある。
そこに歩いて行く途中で、魔法の力が使えるようになったのを気付く。
「魔法が……」
「魔法? この世界に満たされたナノマシンに後から付け加えられた機能のようだね。 擬似的に我々の世界でサイオニック……超能力と呼ばれている力を使えるようになるようだ。 あの非人道的AIが、人間を本当に玩具にして、後付で好き勝手に改造したんだな」
「我々は改造されていたんですか」
「このナノマシンはずっと進んだ文明の産物で、大気中に散布されて色々な事を出来るようにする。 あのAIはそれを使って遊んでいたログが残っている。 他にやることがあったというのに、遊びを優先して、どうしようもない欠陥品だ。 30億年前に作られたモデルとはいえ……」
ノイマンがぶつぶつ言っているが、内容はあまり理解出来ない。
建物に入ると、あの強烈な空からの光はやわらいで、随分と涼しくて過ごしやすい。全く見た事がないものばかりだ。
横長の椅子らしいものに座ると、体が沈み込みそうで驚いた。
それよりも、元々貧弱な身体能力だったけれど。ずっと闇の中で横になっていたのに、衰えてはいないようである。
とはいっても、身体能力が上がってもいないが。
「今AIのログを調べているが、君にも聴取をさせてもらいたい」
「審問ですか……」
「いや、君が覚えている範囲での言葉を聞かせて貰うだけだ。 君が怖れているような事はしない。 食事などは用意したが、食べるか」
「もうおなかも空きませんし、排泄もずっとしていません」
そういう話をすると、ノイマンは悲しそうにそうかというのだった。
それから、話を聞かれた。
ノイマン以外にも不思議な姿をした者達が来たが、皆この世界の出身者なのだという。転生神がいっていた、人間だけがどうにもならなかったというのはどうやら本当らしい。いずれもが元は虫だったり蛸だったり鳥だったり、既に滅びた生物が知性を持つまでに至った存在だったり。
人間は虫のことを毛嫌いしていた。
だが実際には、虫の方がずっと優れた知性を持ち、そして外の世界で今も活動しているということか。
転生神は、全部嘘を言っていたわけではないんだな。
そう思うと、ちょっと不思議だった。
そして、実際問題、乱暴の類は一切されなかった。
単純に話を聞いて、メモが取られる。
同時に、色々と話をされた。
食事もしてみたが、味はとても美味しいのに、食欲というものがないし、食べた所でどこに行くのかも良く分からない。
わたしの体がどうなったのか聞いてみると。
ノイマンは答えてくれる。
「君の体は、生命体ではなくなってしまっている」
「人間ではなくなったって事ですか」
「そうなる。 あの転生神と名乗るようになった狂ったAIが、30億年前にこの星に来た銀河連邦の者達が残した小石を遊び場から排除する時に、超濃度のナノマシンを浴びせかけた。 その時に、君はそれで全身が置換されてしまった。 結果として、生命体からナノマシンの集合体になってしまったのだ」
「難しい言葉が多くてよく分かりませんが、まあ人間ではなくなったことは理解しました」
だからといってどうでもいいが。
ともかく、一つずつ話をされる。
元々銀河連邦だかなんだかは、乙女座超銀河団という外の世界でのとても広い範囲全域を管理していて、それらの広い範囲には、この世界みたいな場所が2億個くらいあるそうだ。
それらの場所は基本的に発生した生き物を保護する施設となっていて、基本はあの転生神みたいなのに任せているが。時々ノイマンみたいな人間が来て、調査して管理をするそうである。
それなら何故転生神みたいなのが湧いたのか。
それについて、ノイマンは頭を下げる。
人間とそっくりな動作だが、蛸からこうなった生き物だと思うと、複雑な気分である。
「何しろ管理区の数があまりにも膨大なのだ。 全てを丁寧に人がついて管理するには無理がある。 今回は定期検査で足を運んで、それで異常に気づいた。 エラーそのものは以前から出ていたのだが、まさかこれほどのものだとは思っていなかったのだ」
「……とりあえずそれでどうなるんですか。 この世界は間もなく滅ぶって聞いていますけれど」
「この星がある太陽系が滅びるのは本当だ。 太陽はそう遠くないうちに大爆発を起こして全てが無に帰す。 今太陽に水素を注入して質量を上げているから、白色矮星になることはない。 爆発した太陽は再びガスの雲となり、其処に新しい太陽系が時間を掛けて構築されていくだろう。 爆発のダメージが他星系に波及しないように、太陽系の外縁には今シールド船が既に待機しているが、太陽系の運命そのものは代わらない。 太陽系は摂理として滅びるんだ」
ただ、その前に保護区を移動させなければならないという。
生物が生まれるというのはとても尊い事で、宇宙でも滅多に起きないのだとノイマンは言う。だから、これは必要な事なのだと。
今、この星に残っていた保護区を、次々と安全な場所へ移動させているという。
問題なのはわたし達がいた場所だ。
今急いで移動させるための仕組みをくみ上げているそうだが。
「アイーシャ。 君には選択肢がある」
「選択肢?」
「まず、我々の世界に来るか。 君はナノマシン生命体とでも呼ぶ存在になってしまっているが、我々の世界にくれば、遺伝子データから全てを復元することも出来る。 人として生きる事も出来るだろう」
人間として生きるか。
わたしは恐らくだが、人間として生きてなどいなかっただろう。
幼い頃に心を壊されて。
それ以降もずっと彼方此方を追放されて生きてきた。
感情らしいものも殆どない。
伯爵に対する嫌悪と怒りは多分ある。あるにはあるが、それでどうこうするというほどのものでもない。
人間は暗闇に放置されると簡単に狂うと聞いている。
わたしはそうはならなかった。
多分ナノマシンがどうこうで体がおかしくなっていなくても、それは代わらなかったのだと思う。
それは超人的とかそういうのじゃない。
人間として、最初っから致命的に壊れていた。
それだけだ。
アンゼルでさえ、わたしに比べればずっとまともだったのだと、今になって考えて見ると思う。
それが現実である。
「それとも、管理区に戻るか」
それも無理だろうな。
わたしの帰還なんて誰も望んでいない。
メリルだってわたしをずっと怖がっていた。それはわたしも分かっている。
アプサラスは多分もう生きていない。
何よりも、今滅茶苦茶になった世界を復興させるだけで、手一杯の筈だ。
魔法が使えるかも知れないが、わたしはもう寿命とかそういうのもなくなっている。
最初は重宝されるかも知れないが。
いずれは化け物扱いされるだけ。
ついでにいえば、あの転生神がいなくなったことで、もうあの世界に狼藉者は現れない。それで充分だとも言える。
「人間として生きる事に興味はないのかね」
「ありませんね」
「検査の結果、確かに様々な異常が出ている。 それらを回復させる事も可能ではあるのだが」
「わたしは異常かも知れませんが、それで困ってはいません。 異常を回復させるとか、可哀想なものを助けてやるみたいな口調でいうのは止めて貰えますか」
別に感情が入っていたわけではないだろうが。
そういうと、ノイマンはすまないとまた頭を下げた。
随分と礼儀正しいな。
この人からみれば、わたしなんてそれこそ下等生物だろうに。
すこし考えてから、ノイマンは言う。
「それならば、管理AIの監視をする人員にならないだろうか」
「管理AIの監視?」
「これから君達がいた世界は、一つの宇宙船となってこの星を飛び立つ。 他の生物は全てがもう飛び立ったか、飛び立つ準備をしている。 宇宙船となって、用意されている別の保護区星に向かい、其処でまだしばらくは人間という種族は、他の生物とやっていけるかどうか、繰り返していくことになる」
まあ、そうだろうな。
わたしはこんなだから、虫とか蛸とかな人達と話していてなんとも思わないが。
普通の人間は、こういう人達にあったらいきなり殺そうとしたり。感情に基づいて排除したりするだろうというのは容易に分かる。
実際問題、あの狼藉者達が現れた領域では、虫すらいなくなっていた。
気持ち悪いから。
そういう理由で、人間は世界を支えている存在を容易に殺す。壊す。
そんな生物である以上。
様々な人がいて、それらが仲良くやれている世界なんて、とても人間がやっていける訳がない。
それはわたしにもよく分かる。
「管理AIがおかしくなったのは20億年ほどでのようだ。 勿論それから技術が進歩し、改良した管理AIを用意するが、それでもそれが狂わないように監視する者がいる。 そして我々も、手が足りないのだ。 今回この異変と暴虐を許してしまったように」
「それでわたしが監視をしろと」
「人間でありながら人間からはじき出されてしまった貴方は適任ではある。 他にも幾つか選択肢はあるが、決めておいて欲しい。 この作業時間は、この星の時間で100年ほどは掛かる。 その間に決めておいてくれれば問題ない」
ノイマンはそれだけいうと、色々な機械の使い方を教えてくれた。
服を作る機械とか、美味しい食べ物を作る機械とか。
後は任せておけば、勝手にやってくれるという。
わたしは、柔らかい椅子でしばらくぼんやりする。
風呂に入るが、水魔法で体を洗うのになれているから、熱水が雨みたいに降って来るのはちょっと不可解だった。
ノイマンはそれから、わたしに時々会いに来た。
わたしの事を気にしているらしい。
生物的な愛情ではないようで、単純に酷い境遇の存在を気に掛けているようだ。まあ、わたしは別にそれに対して感謝はするが、それだけだが。
わたしの事も調べてくれた。
「恐らく暴走AIが、君の事を調査したのだろう。 ログが残されていた。 プライバシーに該当すると判断したので、私は目を通していない。 気が向いたら見てくれ」
「分かりました」
色々な用語を教わった。
プライバシーという言葉の意味も。
わたしはまだまだ色々覚えられるようで、魔法についても外で幾らでも錬磨できた。わたしなんかより凄いサイオニックとやらの使い手もたくさんいるらしく、そういう存在が残してくれたノウハウの映像なども見せてもらった。
スポリファールで勉強していた時みたいだな。
そう思いながら、一つずつ身に付けていく。
火の魔法についても概念は理解で来たが、やっぱり使えなかった。
そして、ログを見て、それがよく分かった。
わたしの家は、四人兄弟だった。
わたしは末っ子。
親が話している。
これ、いらないね。
魔法が使えるみたいだから、さっさと売っちまおう。金になる。それに賊に襲われると面倒だしな。
それよりお前、浮気していないだろうな。此奴の髪赤いぞ。俺とお前のどっちとも違うじゃねえか。
だったら何よ。あんたの甲斐性がないのがいけないんでしょう。
はっ。だったら甲斐性のある男の所にでもいけよ。
そんな話をしている。
ログを見る限り、わたしは他の兄弟とみんな父親が違うようだった。父親と母親の子供は長男だけ。
母親が淫売なのかと思いきや、父親も余所で似たような事をしまくっていたらしい。
更にはわたしを奴隷商に売り飛ばした後、この一家は結局賊に村ごと灼かれて全滅。「見た目が良くないから」という理由で、賊は「商品にならない」と判断。
足がつかないように皆殺しにしたようだった。
まあ、どうでもいい。
実の両親に夢を見るほど、わたしはバカじゃない。これでも世界で色々な人間を見てきている。
血縁なんかなくてもしっかり親子だった者達もいたし。
血縁があっても虐待する奴は幾らでもいた。
ただそれだけだ。
ただ、これで。
わたしの迷いは晴れた。
わたしは人間から追放された。
それについてはよく分かった。最初の追放は両親にされた。伯爵にされたのより早かった訳だ。
火が使えない理由も、その時に関係していた。
わたしの顔が気にくわなかったらしい母親は。
時々火のついた薪をわたしに押しつけて、悲鳴を上げるのを見てわたしの兄や姉と一緒にゲラゲラ嗤っていた。
皮肉な事に、わたしが生きられたのは、早い段階で奴隷商に売り飛ばされたかららしい。奴隷商にして見れば、魔法が使えるわたしは商品だったので。乳母をやとって世話をさせたそうだ。
ただ、乳幼児の時に既に泣くことをしなくなっていたわたしは。
その時に既に乳母に気味悪がられていたようだが。
火が使えないのはそういう理由からか。
なんだか馬鹿馬鹿しい話だな。
そう思って、外に出る。
今では、最初に境界の外に出たとき、空からの光が辛くて仕方がなかったのに。まるで平気だ。
ナノマシン生命体だとかいうのは、それだけ色々凄いのだろう。
そして、炎の魔法はあっさり出来た。
伯爵はこれが出来ないという理由でわたしを放り出したのに。
でも、もしも炎の魔法が出来ていたら。
わたしは伯爵一家の孕み袋にされて、死ぬまで子供を産まされ続けただろう。
事実パッナーロの貴族は、そうやって魔法が使える子供を買ってきては、必死に「家を保つ」努力をしていたようなのだから。
だから、炎の魔法なんてその時は使えなくて良かったのだ。
そう思うと、因果というのは不思議だった。
すこしずつ、活動範囲を増やしていく。
色々調べたが、魔法が遺伝しないのも理由が分かった。
魔法というのは、どうも後発的な行動で使えるようになる代物だったらしい。難しい言葉で言うと獲得形質というそうだ。
あの転生神がそうデザインしたようだ。
恐らくは、血縁主義の人間を嘲笑うためだけに。
獲得形質というものは一切遺伝しないらしく、パッナーロの貴族共が魔法なんぞ使えなくなっていったのも納得である。
それも、結局転生神の掌の上だった、ということだ。
気になったので。アプサラスやアルテミス、軍師殿やメリルがどうなったのか、情報を見てみる。
アプサラスは既に亡くなっていた。
アルテミスは隻腕のまま、まだ頑張っている。既に四十を超えたようだ。そうか、そんなに時が過ぎたのか。
やっと四つ目のまともな都市が出来たらしく、必死に人を集めて、再興の作業を進めている。
結婚なんかする暇もないらしい。
ただ子供はいるようだ。
その辺りの理由はよく分からなかった。子供の面倒も見られないので、あまり良い母親ではないと自身を卑下しているようだが。それについては、わたしにはなんとも言えなかった。
子供の年齢からして、わたしがいなくなってから十年くらい後の子か。何があったのかまで、詮索するつもりはなかった。
軍師殿は頭脳労働だけではなく、技術と文化を必死に保全しているようだ。
気の毒だな。
もう転生神はいないし、狼藉者も現れないのに。
ただ、それを知る術は軍師どのにはない。
それに、未来の為に負担を少しでも減らそうと、身を削っているのも分かる。
カスみたいな生物である人間だが。
ああいう例外もいる。
そう思うと、ちょっとだけ心も動く。
メリルは、既に結婚して子供が何人かいるようだが、魔法は子供の誰も使えない。そしてメリルはわたし程じゃないが、もの凄く怖い魔法使いとして周囲から怖れられているようだ。
わたしもなんか理不尽に怖がられていたが。
まあ別にそれについてはどうでもいい。
メリルはわたしの事を、出来るだけ良く子供達に教えているようだ。
わたしがいたから狼藉者達は世界から去った。
わたしが身を挺してくれたから、最後に起きたおぞましい災害からみんな助かる事が出きた。
あの人の真似はしてはいけないけれど。
あの人は尊敬されるべき人だ、と。
わたしの事は怖かったと、素直に子供達に話している。だけれども、それでも尊敬はしなければならないのだとも繰り返し言い聞かせていた。
そうか。
わたしの居場所はもうないにしても。
わたしが全て嫌われていたわけでもなかったんだな。
また少し、心も動いた。
そしてわたしは、決めていた。
今後、どうするかを。