Ⅸやナヌークからも逃げられるように〜まずはカンパニーを受け流す   作:日登

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前話のAパート、主人公の過去の後悔が回りくどかったので、読みやすく修正しました。

改稿、多くてすみません。
一応、読み返してから投稿しているのですが、どうにも難しく……書いて時間経ってから問題に気づくことが多いんですよね。


それぞれの得意分野

 

 

 

 俺の能力の使い道をざっくり言うと、こんな感じだ。

 

 

・擬似的なクロック・トリック。

 →相手に存在しない感情や本能しか植え付けられない。相手から元の感情を奪うことはできない。

 

・運命切替による「模擬宇宙」の祝福の再現。

 →同時に発動可能な祝福は一つまで。

 

・その場に存在しない物質、アイテムの生成。

 →俺の能力は「既にその場に存在するもの」の上書きが苦手なため、その場に空気や地面、空間があるとショボイものしか作れない。信号弾作ってレンジャー呼んだ際には気絶した。

 

・完全に【虚無】に染まった存在の救済。

 →ただし時間がかかる。最低でも、その人が生きた年月×100倍の時間をかかる。さらには不安定。

 

 

 

 ま、これらを使うのに色々な条件がいるのだが、そんな小難しいことは今は置いておこう。

 

 

 

 ………重要なのは、この能力をどこで活かして、カンパニーから星の平和を守り通すか。

 

 そんな能力の使い所を探るためにも、変なところで能力を使って事態を悪化させないためにも。

 

 俺たちは今、カンパニーに対抗する作戦を立てていた。

 

 

 

 ブートヒルの宇宙船にて。

 

 

 

 

 ………俺は、今、宇宙にいるっ!!

 

 ブートヒルの宇宙船に乗って、スターレイルの世界の宇宙にいる。

 

 

「すげえええええええ! ねえ見て、うちの星だよ! うちの星って白いんだよ! 海も青いし地面は緑や茶色なのに星が白いんだよ!! ヤバいヤバいって! ああ純美、この白さこそ純美っ!!」

 

 

 大好きな世界の、神秘的な宇宙空間。

 

 星の海がキラキラ輝いている。

 

 スタレの1ファンとして、はしゃがないわけがなかった。

 

「お、おう……。俺はこの星来る時に見たから知ってっけど」

 

「こらっコウちゃん騒いじゃ、めっ! 人のお家にお邪魔してる時は静かにしないと、めっ! だよ!」

 

「ヤバいぶつかる、ぶつかる?! 人工衛星、こっちに近づいてきてるって! 事故って潰れるって! 早く逃げないと。えーと、あった宇宙船のハンドルだ! たぶん操作はこんな感じ……」

 

「ストップ! ねえ、コウちゃんやめて!? 知らない乗り物を運転する方が危険だから!」

 

「自動操縦っつってんだろ………なあ坊主。なんで親が、娘に説教されてんだよ……俺ぁ見ているだけで情けねえぜ」

 

 はっ!? しまった、つい!

 

 いや、でもさ? 宇宙だよ? 現実の地球でもこっちの星でもなかなか行けず、スターレイルの舞台がこんなにもロマン溢れる立役者にもなった、宇宙に来たんだよ?

 

 憧れのゲームの、スターレイルの宇宙に本当に来れたんだよ!?

 

 ファンが、興奮しない訳ないじゃないか………!

 

「つーかよ、俺は宇宙観光ツアーのためにお前らを宇宙船へ招いたんじゃねえぞ。………今のが宇宙船の最高速度だが、動体視力は大丈夫そうか?」

 

「借りた補助具あればなんとか。戦闘には参加できそう。ただ能力使ってから相手の思考で消されるまでの時間が、少し不安だから、もう少し練習しておきたい」

 

「たりめえだ。研鑽は怠るな」

 

「了解! ………ところでヒル兄さん、ちょっと、ちょっとでいいんだ、宇宙船の操縦を……」

 

「ガキか!? あーガキだったなそういや。もう少し大人になったら無免許でも練習付き合ってやっから、あと何年か待ちやがれ」

 

「よっしゃああああ!」

 

「うちの親がほんとにすみません……」

 

 宇宙船の操縦ってロマンなんだよ!

 

 

 閑話休題。

 

 

 

「………じゃあ司会進行は俺で。カンパニーへ抵抗するための作戦会議はじめるよ〜」

 

 

 まず第一に、目標を再確認する。

 みんなが分かっていることでも情報を擦り合わせることは重要だから。

 

「まずは俺の目標をもう一度共有するね。––––この星がカンパニーに支配されず、平和であること」

 

「なら俺の目標もまた言っとくぜ。––––オスワルド・シュナイダー始め、俺の故郷と家族を焼いたハニーたちの情報も追加オーダーで」

 

「具体的なメニューは……今回の案件を処理させるために、この星にカンパニーの重役を引っ張り出すって方針でオーケー?」

 

「オーケーだ。下っ端どもから出せる情報は、ミルクが出なくなるまで搾り取ったからな!」

 

 

 

目標その1………この星がカンパニーに侵略されない。

 

目標その2………ブートヒルの復讐。カンパニーのお偉いさんと接触する。

 

 

 

 決まった内容をホワイトボードに記す。

 

 当然、ブートヒルの手伝いもする。

 だって一方的に手伝ってもらって、恩を返さないなんて美しくないじゃないか。

 

「んじゃ、次は目標達成のための条件について」

 

 目標を再確認したところで、それに何が必要なのかを洗い出す。

 

 この世界はゲームじゃない。クエストボードが親切に、これが必要ですよーって教えてはくれないのだから。

 

「それも前回、出たな。まずは–––––今支配しない方がいいメリットを提示する」

 

 

・達成の前提条件

 

その1………この星を支配しないメリットの提示。

 

 

「ねえ思ったんだけどさ。フツーに殴り合いで黙らせられないの? だって相手はこの星を殴ってくるんでしょ? 殴ってくる相手には、こっちも殴り返すポーズ見せないと搾り取られるんでしょ?」

 

「おいおい、ホーリーウーウーボな性格してんじゃねえか! しかも正論ときた!」

 

「脅しやテロには屈するな、の精神ね。……脅して来る奴らが約束を守る訳がないから、いっそ戦っちゃえ、の姿勢は正しいんだけど」

 

「ホーリーベイビー。なんも間違っちゃねえぜ、嬢ちゃん。平和のためとはいえ、戦争仕掛けてくる奴らに賠償金払うってのは悪手だ。下手すると奴隷、死ぬより酷い目に遭うからな。

 だからこそ、どうしようもねー時は嬢ちゃんの言う通りだが………今じゃねえ」

 

 実際、武力による棍棒外交の用意もしてある。

 

 巡海レンジャー、純美の騎士団への連絡。及び、協力要請。

 

 

 目立つことが不利になる【神秘】の俺が、先ほど最高数万匹まで増殖したスウォームを目立つように討伐したのもその一環だ。(表向きは『巡海レンジャー』がやったことにした)

 

 ただ、それは最終手段でいい。

 

 

「俺たちは星の平和のために戦ってるんだ。なのに平和を捨てて、戦争してたら本末転倒でしょ?」

 

「確かに!」

 

 最後には刺し違えてでも相手に不利益を与える覚悟を見せつつ、できるだけハッピーエンドを目指す姿勢。

 本番だと難しいが、誰かに脅された人間は、この冷静な思考回路が重要なのだ。

 

 俺はザイちゃんの頭を撫でる。

 

 

・達成条件

 

その2………相手の武力行使を封じつつ、自分たちも武力行使に頼らないこと

 

 

「もちろんザイちゃんの言う通り、時には殴り返した方が浅い傷で済むこともあるから……。ヒル兄さん、そこの見極めは任せてもらっていいですか? 俺たち素人じゃ無理で」

 

「いや、こっちに来てるレンジャーにもっと適任のやつがいる。そっちに任せた方がいい」

 

「了解」

 

 あ、この人、すげえ大人だな。

 自分と他人の適性をきちんと把握して、さらりと頼みを断って代替案を出せる人ってカッコいいよね。

 

 その後も会議が続いて、大まかな前提条件が出揃った。

 

 一気にまとめよう。はいドーン!

 

 

・目標達成のために必要なこと

 

その1………カンパニーがこの星を支配しないメリットの提示。(未達成! 良いメリットが見つからず)

 理由→これがないと、どんなデメリットがあっても「クリフォトのため」という名目で侵略を止めてくれないから。侵略が「クリフォトのためにならない」という説得が必要。

 

その2………相手の武力行使を封じつつ、自分たちも武力行使に頼らないこと。(現在、進行中! ただし絶対ではない)

 理由→平和のため頑張っているのに、戦争してたら本末転倒だから。

 

その3………他の宇宙勢力による後ろ盾の確保。この星の独立を認めてくれる勢力でないとダメ。(クリア! うちの星が純美の騎士団に所属することが決定)

 理由→星一つでカンパニーと敵対できる訳ねーだろ!?

 

その4………()()()()()()()()()()()()()()市場開拓部がこの星から手を引く。(未達成! 方法を検討中)

 理由→ブートヒルの復讐のためにも、この星の案件を不良債権にすることで『十の石心』を呼ぶ必要があるのだが。

 その際、俺たちのせいで不良債権が発生したら、この星が借金を取り立てられてしまう。

 

 だから、債権発生の責任を『市場開拓部』に押し付けないとならない。

 

 

 ––––––以下略! 他は、全てクリア済み。

 

 

 

 

「ちなみに、この『十の石心』ってのを呼ぶのは、俺たちの今敵対している『市場開拓部』が、これまた『十の石心』って奴らと敵対してるからだな。まあ奴らもカンパニーの手先ではあるが……敵の敵は味方ってな!」

 

 

 十の石心……というか戦略投資部と、市場開拓部は敵対している。

 

 これはゲーム知識でもある情報だ。

 

 

 簡単にいえば、互いの部署のトップが、出世競争でバチバチやり合っているのだ。

 

 弱みは付け込み、勝てば追い討ち、やつらはこういうやつらなの! 敵の不始末を処理するなんて絶好のアピールチャンス、あの借金取りたちが見逃すはずがない。

 

 

 ちなみに、十の石心の一人であるアベンチュリンの家族を滅ぼしたのが、市場開拓部の親玉であるオスワルドである。

 あのクソワルド、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を人生で最高レベルの成功で自慢話とかほざいてるやがるらしい……。

 

 アベンチュリンが戦略投資部に入社した理由として、一部ファンの間では「オスワルドへの復讐のため、オスワルドと敵対している部署を選んだのではないか?」という考察も出ているほどだ。

 

 ………まあエヴィキン人も二枚舌交渉に加えて信仰における契約違反してるため、非がない訳ではないが……いくらなんでも皆殺しはやりすぎである。

 

 他の勢力に押し付けるとかあっただろ……。

 あいつらの信仰利用すれば、【神秘】の運命歩ませて、過去改変して地母神降臨とかできただろうに。

 

 

「……で、未だに達成してない条件はこの二つ」

 

その1………カンパニーがこの星を支配しないメリットの提示。

 

その4………『市場開拓部』のミスによって、市場開拓部がこの星から手を引く。

 

 

「……なんか良い案、ない?」 

 

「? メリットは思いつかないけど、ミスの誘発なら割と簡単にできるよ」

 

「「!?」」

 

 ザイちゃんの発言に、俺たち男二人は驚いてそちらを向く。

 

「いや、なんで驚いてるの? 二人とも言ってたでしょ? 私たちの星って『純美の騎士団』の傘下に入る予定だって。

 ………市場開拓部って、要するに『営業マン』でしょ? 他の会社に顧客とられるのって普通にミスじゃないの?」

 

 いや、まあ確かにそれは、そうなのだが……。

 

「問題なのは、『純美の騎士団』に所属した後なんだよ……」

 

 うちの星では、普通に5歳から社会人として働き始める。

 

 平日は学校に会社とクッソ忙しい代わりに、週休4日制、祝日ありと休日が異常に多く、幼い頃から社会の常識を叩き込まれるおかげで食いっぱぐれが本当に少ない。

 文化水準が日本の準田舎レベルかつ、【純美】の加護で住民のスペックが宇宙人なうちの星ならではの特徴だ。

 ザイちゃんは畑で働いているが、野菜を売り出す営業の人とも普通に話すから、そう考えたのだろうが。

 

「騎士団に入れば当然、【純美】を広めるために宇宙を駆けねばならない。それには物資も金も必要になる。………で、この宇宙の物流を独占しているのは」

 

「カンパニーって訳だ。騎士団に所属する際にカンパニーの物資が必要になって、結局は経済的に実質支配されてよ……」

 

「それは『支配を諦めさせるメリット』を探す方の話でしょ? 私が言うのはミスを誘う方法の話」

 

 ザイちゃんは続けて言う。

 

「………ただ、断ればいい。相手は私たちと騎士団の契約を邪魔してくるだろうから、それを徹底的に阻止すれば良い。……それだけで、相手は失敗する」

 

「相手の妨害を全て防ぐって……相手がどんな手を打ってくるか、調べる手段が……」

 

「あーすまん、それなら俺、できるわ」

 

「!?」

 

 

 と、ここでその戦略を可能と評したのがブートヒル。

 

「俺ぁよ、復讐のためにずっとカンパニーから情報を仕入れてきてる。奴らから情報抜き取るノウハウなら、かなり上手いと思うぜ?」

 

 

 そうだった。

 作中での描写が少ないせいで忘れがちだが、ブートヒルの情報収集能力はけっこう高い。

 初登場時だってピノコニーに巡海レンジャーを名乗る不審者が出たという情報を掴んで、列車が招待を受けたことを利用してピノコニーに潜入。

 世間一般では隠されている故郷の侵略について自力で調べ上げ、ついにはオスワルドに辿り着いた執念。

 同じく故郷を滅ぼされたアベンチュリンと接触したのも、アベの幸運もあったのだろうが………下手すると、ブートヒルは知識ゼロからツガンニヤの真相すら自力で調べ上げた可能性もあるのだ。

 

 更に、ブートヒルはこの星の所属ではない。

 

 彼がカンパニーを妨害しても、この星には一切の非が向かない。

 

「ただ、俺の時間にも限界がある。この星に来ている連中の策略なら全部妨害できるが、本社の連中まで来やがって人海戦術を使われたら対処しきれねえ」

 

「安心して。そこは私に考えがある。……絶対、本社からこっちに干渉してくることはない」

 

「絶対って……何やるかは聞かないでおいてやる」

 

「ニシシ、ちょっと真っ黒クロスケになってピアポイントに行くだけだから」

 

「ザイちゃん……危ないことはしないでね?」

 

「もちろん! 大丈夫! 正確には、行くのは私じゃないから!」

 

 心配だな……。

 

 

「後は、メリットだが」

 

「さすがに、これは俺がやるよ。………この星でカンパニーが目の色変えるものって、俺の能力くらいしかないから」

 

「ホーリーベイベー、身売りはするなよ?」

 

「大丈夫。俺が重要になりすぎると、家族を人質にされるリスクも増すから」

 

 

 –––––存在しないものを書き換える能力。

 

 

 相手が「解除したい」と思えば、簡単に解除できる不安定な能力。

 

 

 これでカンパニーが目の色を変えるようなメリットを提示せねばならない。

 

 

 さて、どうしようか………。

 

 

 

 

 

 

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