Ⅸやナヌークからも逃げられるように〜まずはカンパニーを受け流す 作:日登
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星一つ砕くエネルギーですら対抗できなかった洗脳。
夢を現実にする世界で、人間を猿まで退化させる洗脳実験。
作中描写で洗脳耐性があると明示され、様々な手段での洗脳から自意識を保ってきた主人公ですら耐えられず、知能が退化して、自力では復活できなかった洗脳攻撃。
–––––それを何の特別な力も使わず、気合いと執念だけで吹き飛ばしたのが、ブートヒルだった。
****〈ブートヒル〉視点
–––––贔屓目なしに言うなら、このガキどもは危険だ。
俺は冷静にそう判断する。
方や、スウォームを殲滅でき、神の一柱を上書きした坊主。
方や、その神様と同化した嬢ちゃん。
–––––星神に勝てる訳がねえ、ってか? 弱いのに、勝てない相手に敵対するのはバカのやることだぁ?
違えだろ。
相手がどれだけ強いかなんて関係ねえ。
あまりに悪いことしたやつを見て見ぬふりしていい理由にはならねえだろ。
一般人が勝手に核爆弾を作って、そのスイッチを持ち歩いているようなもんだぜ?
人として、怒るべきところだろ。命を張ってでも止めるべきだろ。
––––相手がどんなに強かろうと、ヤバいことやってたら全力で止めるべきだろ。
黒髪の嬢ちゃん、ザイが突然、
心でも読んだのか、と少し警戒するが、
「あーもう無理! 話し相手居ないのって本当に退屈!! クリちゃんは石頭で会話になんないし、カンパニーの偉い人は私の前でも話せるけど話術で情報抜き取ろうとしてくるし!!」
思ったよりしょうもねえことだった。
「ホーリーベイベー。マジでカンパニーの機能停止させやがった……。で。嬢ちゃん、カンパニーの業務停止で影響が出る星系のリストは出揃ったか?」
「司令クラスの人が、30分くらいでまとめてくれた」
「しかし意外。ヒル兄さんはカンパニーの被害甚大って聞いて、もっと喜ぶかと思ってた」
「あのな坊主、俺は確かにカンパニーが大嫌いだが、さすがに全員に恨みがある訳じゃねえぞ。あくまで故郷焼いた奴らだ。
復讐のためなら殺しもキュートな真似もすると誓った身だが、カンパニーの営業が完全に止まったらどんだけ死人出るか知ってて、我を通すような我儘はしねえよ」
カンパニーのハニーどもは、星を滅ぼすこともあるが、現在進行形で星を守ってもいる。
星を守ることを邪魔するのは、さすがにライン超えだ。
「さーてこのリストとレンジャーの情報網を照らし合わせて、ガチで存護するために向かう奴らだけ見逃して……っベイビーが!! リストにしれっと分裂銀貨での侵略入れてんじゃねえよ!?」
「分裂銀貨?」
「簡単に言えば、無限に増殖する銀の塊でな……」
「経済ぶっ壊れるんだよ、これ使ったら」
侵略だけは妨害して、星の支援防衛などは邪魔しない。
これで全く影響なしとは言わねえが、ある程度は被害を受けるベイビーが減ったはずだ。
細けえ被害? 人間ってのは、生きてるだけで他人の邪魔するんだぜ? 俺だって普通に仕事してただけのカンパニーの下請けに、復讐の邪魔を何度偶然されたか……。ムカつきこそすれ責めちゃいねえ。
互いに互いの正義と生活、目的がある。
偶然にも邪魔したり、殺したりするかもしれねえ。
人間が生きるために牛や豚を食べるように。
俺だっていつかスウォームに食い荒らされるかもしれねえし、復讐に巻き込まれた誰かに負けて殺されるかもしれねえ。
どんな手段を使っても復讐をすると誓ったこの身の上だが。
それでも、弱肉強食だからって何してもいいと開き直ることは絶対しねえ。
節度は守っているつもりだ。
–––––巡海レンジャーの規定に則るなら、このガキどものやらかしは守るべき節度を超えている。
なんだよ、神の上書きって。
いくらやったのが善人で……おそらく大切な人か何かを蘇らせようとした結果なのだろうが、これ一つでどれだけの影響を及ぼすか、少しの油断でどれだけの死者が出る可能性があるか。
こいつらがいくら優しくて、おそらく退っ引きならねえ事情があったとしても。
これは誰かが邪魔しなければならなかったことだ。
仙舟の雲上の五騎士が、仲間を生き返らせようとして失敗したケースがあるみてえに、危険すぎる。周りに迷惑をかけすぎる。
俺は知っていたらきっと止めた。
–––––ま、いまさら蒸し返したところで、こいつらを繋ぎ止めようとすると星一つに迷惑がかかるんで今はやらねえが。
こいつらが悪事を働き始めたら、殴ってでも、他の星神だろうが利用してでも止めるつもりだ。
「なあ、坊主……」
「へい何?」
「言っとくが、この作戦で俺が死んでも生き返らせようとか、また虚無を上書きしようとか考えんじゃねえぞ」
………間違いねえ。
この坊主は、身近な人の死や、自分のせいで死んだ人間がいることに耐えられねえ性格だ。
「この宇宙は残酷だぜ?」
「でも殺した責任は取らないといけない」
「何言ってんだ? 俺なんてもう何人もやってるぜ? 悪いことしてねえ奴や無抵抗なやつは殺さねえ主義だが、俺は責任を取らねえぞ? まあ他人に俺の命の責任なんざ押し付けるつもりもねえが」
「……できうる限り、償うよ」
「それでも、もう虚無の上書きだけはするな。嬢ちゃんの件はもう終わったことだから、テメエらの人格に免じて見逃すが……次はねえ。言っても聞かなそうだからな、風穴開けてでも止める」
「了解」
–––––無鉄砲は若者の権利だ。俺も、無鉄砲をしてニックやグレイに怒られていた過去を思い出す。
だが、だからって何でもやって良い訳じゃねえ。
––––子どもが間違いそうなら、導いてやるのが大人の役目だ。
釘はさすが面倒は見る。悪いことや宇宙に影響を与えそうなことは教えてやる。間違った道に踏み外そうとしたなら殴って風穴開けてでも止める。
「………さてと。忠告はしたからな、もう道を間違えるんじゃねえぞ」
そして、それは一旦置いておいて、故郷を守るために戦うガキには協力してやるのが、イカしたカウボーイの役目ってもんだ。
カンパニーが、また次の動きを見せている。
俺は腰にしまった銃のグリップを握った。
ストーリーやったり、過去編書いたり、色々やることがあるんで、しばらく投稿が空くかもしれません。
まあ、いつも通り、でき次第投稿します。