質問にお答えなさい
配点(連続面接)
鈴は外舷テラスで皆と覗きを行っていた。
い、いつも、通りだね?
このように皆が変な行為をするのは何時も通りだ。
何故か次から次へと人が集まってくるのだけど、皆、実は全員に発信機みたいなのを付けているんじゃないだろうかと思うけど、冗談になるかなぁ?
まぁ、別に今はそれは置いといてもいいかな。
何故なら今、私は皆と一緒に覗きを行っているから
しかも相手はノリキ君と──────北条の総長の北条・氏直さんだ。
「………女子風呂と違って、修羅場なんて見ても萎えるだけだなぁ………弱味くらい漏らせよノリキ………!」
「シュウ殿。それはクラスメイトに言う言葉では無い気がするで御座るが?」
「いいからネタよネタ! さぁ、ノリキ……………私の好奇心とネタの為に身も心も捧げるのよ! その代り、私の本で輝かせてあげるわ! ノリキのノリノリ北条攻略よ! ああ、もう、すっごい気持ち悪いわ!」
「貶すのか、応援するのかどちらかに絞った方がいいか、と小生は思いますが」
「何よ、ロリコン。呪うわよ。みるみる幼女が近付かなくなるような呪いを」
「こ、この婆魔女は! それだからいけない!! 幼女達が小生に近寄れなくなって辛い思いをするかもしれないというのに婆は容易く他人の不幸を作っては見逃す……………!!」
「ロリコンサポートカモンの言葉を難しくしただけかな?」
朝から皆、速い。
その速度に鈍間な自分は中々付いて行くのが難しいのだが、自分も頑張らないと、と奮起しなくてはいけない。
そして点蔵君の読唇術を使って、二人の会話を聞く事になる。
その後、どうにも思ってた以上にシリアスな会話であり、分かるのはノリキ君が元北条出身で、でも武蔵を選んだという事は理解した。
その後、里見・義康さんが何か木刀を持ってトーリ君を探していたようなのだが、お陰で北条の事情を語ってくれて、ノリキ君や北条さんが何であんな会話をしていたかを知った後、
「ちょっと待った────先に言うが権力者サイドは手を上げろ。面倒だからな」
「さ、最後の本音が中々だねヅカ本多君…………!!」
正純は本当に素直、というか直球というか、何か凄くなったなぁ、と思うけど、とりあえず言われた言葉に周りを見回し
「………まぁ、副王や第五特務、メアリさんは今更だから言うまでもないですけど、一応、副長も権力者でしたよね」
「あーーー、私やシロ君も一応権力者サイド? 後、御広敷君も一応御曹司だよね…………犯罪者だけど」
「…………よくよく考えればメアリを除いたら権力者メンバー、全員、脳が……」
「シッ」
全員が視線と挙動でお互いを牽制するが、こういう時、皆、ノリがいいなぁ、と素直に思う。
でも、最後に点蔵君がノリキ君に何かあったのならば、手が空いていたら手を貸す、という事で話が纏まりそうになり、それについて鈴もうん、と頷こうとして
「──────」
小さな吐息を聞いた。
それは小さかったが、同時に酷く重い吐息だった。
まるで途轍もなく重い荷物がまた増えた、というような溜息。
……………え?
思わず、そう疑問する事を自分に許す。
何故ならそんな吐息を放ったのが、誰なのかを理解したからだ。
だから、思わず、直ぐにそっちに振り返り、その人の名前を言う。
「シュウ君……………?」
こちらの疑問の声を聴いた彼は、特に何時もと変わらない様子でん? とこちらに向き
「どうした鈴? トーリならあっちで素巻きにされて転がっていったぞ? ああ、義康にばれたら不味いから仕留めるならば一撃がベストスタイルだ……あぁ、勿論、鈴の手を汚させないとも………! ああ、やるなら俺がやるしかねぇよな…………!!」
と、本当に何時ものように冗談を言って、何時ものように笑う姿があった。
その姿を見ると、まるで自分の感覚が間違ったように思えるし、実際、そうなのではないか、と思うけど
疲れているんだよね……………?
もうずっと皆の為に走り続けているシュウ君。
とっても強くて、格好いい彼だけど、だからこそ誰よりも疲労しているのを皆知っている。
だから、皆、頑張って休ませようと行動しているんだけど、ホライゾンの料理以外、中々上手くいかないらしい。
でも、料理が上手く行きすぎて、一度呼吸が止まった時は皆で、うわぁ! と叫んでいたけど。
確か
「いかん! 喉にコンニャク納豆を詰まらせて窒息しているぞ!!」
「ほほぅ。ミトツダイラ様をモチーフに作ったコンニャク納豆ご飯。略して"コンなご飯"がクリティカルダメージを出すとは………料理の道は未だ終わりが見えませぬな」
「い、色々言いたい事はありますけど、まずは智ーーー! 医者ですのよーーー!!?」
浅間さんが上手い事矢で詰まったコンニャクを吐き出させていなければ大惨事になっていただろう。
二次災害でシュウ君、そのまま下層までめり込んだ上に修繕費と修繕作業に駆り出されていたけど、よくよく考えればシュウ君の疲労を蓄積させただけな気がする。
あんまり深く考えたら、とても謝らなくてはいけない気がして、一旦、過去を振り払う。
そして鈴は少し悩んだが、頑張って勇気を出して直接、言う事にしてみた。
「シュ、シュウ君………つか、れてる…………?」
こちらの言葉に、少しシュウ君は軽く目を開いた気がした。
でも、直ぐにシュウ君は微笑を浮かべて
「なぁに、大丈夫さ鈴。俺は最強だぜ? 最強なんだからつまり、何事も問題無し! 万事全ておちゃのこさいさいって奴だぁよ!」
ははは! と快活に笑う彼に、どうすればいいのだろうか、と鈴は思う。
やっぱり彼は私…………というより皆の声や行動では止まらない。
誰よりも行動的だからこそ、誰よりも止まるのが苦手な彼だ。
そして彼を止めれるのは
その上でこの場合においての適役は一人なのだが、"彼"は何も言わない。
今は簀巻きにされているとか、そういう理由ではなく、"彼"は何故か何も言わない。
何時もならば誰よりも他人の機微に聡いのに、何故かシュウ君にだけは何時もそうしないのだ。
だからこそ、鈴や皆も容易く動いていいのか分からなくなって、結局どうすればいいのか迷っていると
「義康。ここにいたか」
と、新たな来訪者が現れる事になった。
義頼は義康と一悶着が起きた後、ある人物を探している、と武蔵の学生達に問うた。
「総長君はここにはいないのか? 会って、少し話をしたいのだが」
そう言うと、何故か周りは「簀巻きにして…………どこにやったっけ?」とか「確か馬鹿が吊り下げていたさね………あ、ロープ切れてる」とか言って騒いでいるが、つまりこの場には運が悪くいないらしい。
少し残念ではあるが、まぁ、それも仕方がない、と思いながら、しかし目当ての人物はもう一人この場にいるのだ、と思い、
「代わりと言っては無礼だが、武蔵副長。君とも少し話をしたいのだが」
あ? と素直に何だよ? と彼は即座に反応し、周りが即座に
「おい熱田! 国際問題にはするなよ!?」
「そうですよシュウ君! まずは斬る、という選択肢を外してください…………そしてゆっくり、深呼吸をして下さい─────でもシュウ君、深呼吸しても斬りますよねぇ」
「考えて喋れよ!!」
何やらとても速いな、と思うけど、これが武蔵の風潮なのだと思って納得する事にした。
今は、今まで問いたいと思っていた事を聞く事に専念しよう、と。
「君は最強になる事が夢、と聞いたが」
「ああ、それが?」
自分で言っても中々、言い辛い言葉を少年はそうだけど、と普通に頷いて、それの何を疑問に思う事がある? と逆に問い返されているような感覚に陥りそうになる。
…………成程。
疑っていたわけでは無いが、本当にこの少年は最強になろうとしているのだと実感のようなものを覚えた。
だが、それはいい。
先も言ったが、本当に疑っていたわけでは無いのだ。
だから、疑問点は本当に最強になるつもりなのか、ではなく
「──────何故、君は最強になろうとしているのか。良ければお聞かせ願いたい」
最強になる事ではなく、何故最強になるのか。
この少年はそれについては一切語っていなかった。
単純に己の武力を示したいのか。
将又はそれによって何か得ようとする物があるのか。
もしくはそれ以外に何かがあるのか、という本当に純粋な疑問であった。
「最も強い存在になりたい。私も、上を目指すという意味では理解している」
しかし……………それでは、何というか…………イメージが合わないのだ。
あの階段を、少年二人で降りていく時の光景から得られたイメージから
まるで、比翼連理。
否、むしろ鏡に映った相手と言うべきか。
どちらかが右手を上げれば、どちらかは逆の手で応じているような関連性。
動作はまるで逆なのに、結果は同じモノを導いている、と何故かそう感じた。
だからこそ、少年が主張する夢と王が主張する夢が聊か食い違っているように見えるのが、疑問なのだ。
故に、私は少年は何か望む物があるのか、と問うたのだが──────こちらの質問にキョトンとした顔で
「何も?」
一切を望まない─────ではない。
私の質問は少年が何か望む物があり、それを得れるのか、という質問だった。
決して、おかしな質問でも無いし、行動によって結果が発生するという意味では当然の計算式の答えを──────少年は
地位も名誉も─────報酬も何も欲していない、と。
「……………では、何故最強になるんだ?」
それしか返す物がないから、と少年は答えた。
……………何ともまぁ。
少し、不思議な感覚をまた覚えた。
何せ、これでは子供と話しているようなものだ。
何故そう感じるのか、と言えば、この少年の言葉には一切の裏表がない。
本当にありのまましか返していないのだ。
最強になっても特に得る物は無くてもいい、ただ最強になる事が何かを返す事が出来る、と本当にそんな事を言っているのだ。
隣の義康もは? という顔で呆然としているが、これに関しては私も同意するが、余計に増えた疑問をそのまま口に出す事を優先とした。
「返す…………というのは誰に、何を、と聞いても?」
「ぜーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーったいに言わね。言うくらいなら智以外のこの場にいる奴ら全員ぶった斬る」
私と浅間神社代表以外が無言で数歩引いているのだが、どうしたものか。
魔女の二人など
「ガっちゃん、空に上がればシュウやん、遠距離手段が無いから逃げれるよね?」
「待って。逆にそうだから真っ先に狙われる可能性があるわ……………盾と囮が必要ね………ちょっと点蔵と御広敷。私の話を聞く気は無い? 上手い話よ────私達にとって」
「さ、最後が絶妙で御座るなナルゼ殿!!」
何やら会談の時にも見れた共食いがギャーギャー始まっているが、これはこれで慣れれば微笑ましく見えてしまうのは、自分が老成し過ぎだろうか。
だから、少年も特に肩肘を張らずに己を語っているのだと思い、ならば自分もそのように聞くのが作法だろう、と思い、小さく微笑する。
「名誉も報酬も求めず、ただ返したいモノがあるから最強になる道を疾走する。まるで──────」
流れ星のような夢追い人だな、とは流石に臭過ぎて言えなかった。
だから、その言葉は胸に秘める。
何故ならばもう納得したからだ。
ああ、確かにこの少年は何も出来ない王様の隣を歩く者なのだと。
彼が語らない所にこそ、自分が聞きたい事が詰まっていたが、真実を聞く事は出来なくても、隠された真実を信じる事は出来る。
だから、義頼は隠した言葉の代わりに、己の誠意と感謝を込めた言葉を、少年に告げた。
「─────君も正しく間違っているのだな」
武蔵副長の顔が本当に呆然という表情に変わった。
そんな言葉を言われるとは思ってもいなかった、という表情に、彼の今までの人生が物語られているが、それでも彼のこれまでの懸命さを思えば、同情する事も笑う事もする気は無かった。
当事者の者達からしたら嫌味に聞こえるのかもしれないが、それでも義頼は良かった、と思う事にした。
この武蔵は、諦めろ、と言われる場所ではなく、生きて楽しもうぜ、と肩を叩くような気軽さで同道する場所なのだと知る事が出来た。
"彼女"が見れば、どれ程喜んでいただろうか………
この手で奪った人を想像するのは流石に痛みが湧く。
だけど、思う事だけは己に許した。
何故ならば、ここが彼女と私が望んだ場所なのだと実感したからだ。
だから─────何も迷う事は無くなった。
浅間は義康さんと一緒に去っていく義頼さんを見ながら、シュウ君が呆れたような吐息と表情を浮かべるのを見た。
「シュウ君、どうしたんですか?」
「あ? ああ─────いや、単に呆れるくらいお人好し且つ真面目な奴って思っただけ」
誰の事を言っているか、直ぐに分かったから思わず、あーー、と納得したような呆れたような声を出して反応してしまった。
確かに義頼さんはそんな感じの対応をする人だ。
何せ、最初から最後まで年上に対して素で対応するシュウ君に対しても、物腰柔らかで且つ真摯に受け答えをしてくれていた。
酒井学長よりも大人だ………と思うのは流石に無礼過ぎだろう、とは思うが、だからこそ周りの外道達も義頼さんに対してそんな失礼を……………
「……………新しいジャンルね。年上理性系は中々同人に絡めるのは難しいけど…………ジャンルの開拓者になるのも一興かしらね」
「うぉぉぉぉぉ!! 村雨丸の現ナマの資料に触れて調べれるなんて! レビューを書いて礼としなきゃ……………勿論、評価は星五つ!!」
「シロ君シロ君! ヨッシーの性格だと酒でも飲ませたら容易く契約取りつけれるかも! 夜辺りに仕込む!?」
容易く国際問題を起こそうとする同級生の姿は見ない事にした。
きっと政治家の正純が何とかするだろう。出来なければ知らん。
でもまぁ
「いい人でしたね、シュウ君」
浅間は純粋に微笑を彼に向ける事を許した。
何故なら、義頼さんは最初から最後まで決して彼を侮りもしなければ、否定もしなかった。
慣れている私達だと見逃しがちなのだが、義頼さんは彼の最強になるという夢も─────最強になりたいのが何故かを語ろうとしない彼を、そのまま信じてくれた。
いい人なのだ、と浅間も義頼さんを信じたいと思える。
─────例え、彼が里見・義康さんの実の姉を殺していたのだとしても、決して好きでやろうとしたのではないのだ、と。
こちらの思いをどこまで読んだかは知らないが、こちらの言葉に頷き─────でも、難しい顔をして
「あんまり思い詰めたりしなきゃいいんだがよぅ……………ああいうのって馬鹿な事を考えるタイプだからなぁ………」
と、分かるような分からないような言葉を彼は呟いた。
それは………? と聞こうと思った時、声が響いた。
「何じゃ全員一か所に屯いおって。その気になれば狙い撃ちできるぞ」
聞いた事のある若いのに老成した、という矛盾染みた声色の持ち主に全員が振り返る。
外舷の空に雲のような形をした船があり、そこに長寿族の少女…………老女の方がいいのでしょうか? が立っているから直ぐにああ、義経公の船、と気付き
「え………」
そこから文字通り飛んでくる義経公を見て、浅間は流石に絶句した。
立花・誾は先程の無茶な跳躍を行った義経公に対して、跳躍法の伝授を頼む宗茂と二代を見つつ、一人、輪の外に外れるのを見た。
おや…………?
武蔵副長だった。
少年は何やら外舷の柵の上に載って、顎に手を置きながら何かを考えているようだった。
何をやっているのやら、とは思うが、変人奇人の行動原理は理解出来るものではない、という悟りに辿り着きそうになったが、流石には、と思っていると
「こうか」
と、一言呟いて立ち上がったと思ったら
「え」
次の瞬間、武蔵副長の姿が消えた。
即座に義経公の方の船を見たのは、消えはしたが、追う事は出来た動体視力によるものだ。
見ると、佐藤兄弟が二人揃ってまるで飛び蹴りを受けたかのように吹き飛んでおり、その場に副長が着地したように立っているからだ。
一度、武蔵副長は小首を傾げながらも、しかし同じ技で即座に帰って来て
「後、も少しやれば覚えるか」
出鱈目な…………!
一度見ただけの本人すら理解出来ない技能を、即座に会得するなんて化け物か。
しかし、本人としては未だ出来が不満なのか、少し機嫌悪そうな表情を浮かべながら
「おい義経。これ、暇な時に使うからな」
「儂に一撃を入れてからならいいじゃろう」
再び、え、と思う間もなく斬撃が走った。
副長が袖から抜き取ったメスを即座に振り上げた事によって生じた衝撃波が風となって辺りを打つが、義経公は即座に左に一歩ずれるだけで躱しているので、つまりどちらもキチガイだ。
「おい! こら! 熱田ぁ!! 少しは躊躇いを覚えろーーー!!」
副会長の意見には心底から同意するのだが、当の本人達は
「躊躇い? しているとストレス溜まるぞ? 大丈夫か正純? あーー、だからお前、毎回ストレスと空腹で倒れているのか」
「正純。貴様が儂の事を超好きなのは理解しているからこその忠告じゃが、もう少し儂を見習うとよい。人生、愉快になるぞ?」
不憫な…………と、副会長に同情するが、巻き込まれるのは嫌なので視線は逸らしておく。
とりあえず、一撃は躱されたが、技に関しての著作権は妥協したらしい。
もう少し練習しとく、と言って再び瞬間移動にも見える跳躍を続ける副長を義経公は見ながら
「それにしても───おい、あの全裸はどこにいった?」
「ああ。多分、下じゃないかな?」
「何じゃ。儂が折角来ているというのに、あの全裸は気が利かん奴じゃのう」
その"下"が武蔵の下層とかではなく地上とかになっている可能性があるのだが、周りのメンバーが気にしていない以上、自分も気にしない方針でいいのだろう。
余り深く問い詰めると事件に巻き込まれかねない。
まぁ、それは置いといて義経公は何やら呆れたような表情と吐息を吐いて
「何じゃあの熱田は─────
と、聞き捨てるには余りにも致命的な言葉をポロリと吐いた。
本当にごく最近合流した自分や宗茂様には流石にそこまで踏み込んだりもしていなければ、理解もしていないのだが、副会長と副長補佐を除いたメンバーが硬直をするのを見ると当たりだ。
「今のあ奴なぞ、例えるなら錆びてボロボロになった所を更に鞘を被せ、重りを付けたようなものじゃぞ。よくもまぁ、あれをあそこまで追い込めたものじゃ」
感心しているような口調だが、言葉の中身も目もそれとは真逆な感情を乗せているのは一目で分かる。
分かるからこそ、少し理解出来ない事がある。
「義経公─────何故、貴方はそこまで武蔵副長について知っておられるのでしょうか?」
最初の接敵は何やら男子トイレとの事らしいが、武士であっても中々レアな接敵ケースだろう。
自分の身に置き換えた場合、間違いなく攻撃してきた相手は遠回しに言えば足首だけになっていたに違いない。
だが、その最初はともかく話を聞く限り、どうにもこの長寿族はやけに武蔵副長について気にしているような感じであったらしい。
本多・二代の言葉であった為、微妙に信じていなかったが、こうしてその光景を見ると信じるしかない。
謝るつもりはありませんが。
周りもやはり、それについては気になるのか
・貧従士:『何故か今回、副長、色々な人からアプローチを受けていますよね。それも全員、年上』
・銀狼 :『ツッコむ所そこですの? いや、でも副長って何故か敵側からの受けがいいような…………』
・●画 :『敵側から! 受けがいい!? 総長と副長のカップリングですら十分に美味しいのにこれ以上美味しく且つ甘くしてくれるとか私を虫歯にする気!? いいわ! マルゴット! 私の虫歯も愛でてくれる!?』
・金マル:『ナイちゃん、流石にそれは考えたことが無かったなぁ…………』
・副会長:『特務が虫歯とか止めろよ? 虫歯なだけに無視は良くないってな』
全員が俯くのに自分も合わせるが、通りで武蔵のメンタルは鍛えられているわけだ、と酷く納得してしまう。
とりあえず、こちらの疑問に対しては手をぶらぶら振りながら
「なぁに、ただの縁じゃ。別段、特別、熱田・シュウの事を追っていたわけでは無い」
という肯定とも否定ともつかない答えが返ってきた。
だが、その答えの返し方では
・立花嫁:『つまり、何時からかは知りませんが、歴代の熱田の一族を見ていた、という事では?』
・賢姉様:『ふふ、つまり史上最高年齢の女にストーカーされていたのねあの愚剣は! 男女構わず年上ばっかりフラグ立ててるわ!! ねぇ! どうする浅間!? あんたも年上になってみる!? いいわ! まずは私の胸に泣いて甘えると良いわ! 姉の器を感じ取るのよ!?』
・銀狼 :『智! 智! 弓を構えてやる気ですのね!? しかも副長まで狙っていますわ………!!』
中々に凄惨な事になってきた。
だが、本当にそうとなると何故そこまで熱田の一族を特別視していたのか。
それは縁、という事らしいが、流石にそこは語る気は無いのか、義経公は武蔵副長が八艘跳びをくりかえしているのを見ながら
「スサノオの選定基準は毎度残酷じゃのう。儂が知る限り、どいつもこいつも馬鹿で阿呆で考え無しで────その癖、酷く夢見がちな者ばかりを選んどる…………全く。誰にも負けねえ、なんて」
また聞く事になるとは、と呆れの口調で───しかしどうしようもなくかつてあったモノを慈しむ響きがそこにあった。
見かけこそ少女の姿が、それは確かに子供を見る大人のような姿に見えて、これは他人が踏み込んでは良いモノではないと直ぐに理解できた。
「夢見がち、だったのですか? 歴代の熱田の剣神は」
「全ては知らんがの。知っている奴だけで言っているだけじゃ。まぁ、それでも誰にも負けないはともかく、最強且つ世界征服なんというのは今まででトップクラスの馬鹿だろうさ」
流石に今の馬鹿以上の馬鹿はいないか、と微妙に安心するような引くような事実を得る。
だが、そこに話を挟んで来る者がいた。
「ちょっと待ってくれ義経。あの馬鹿は最強になる事を望んでいるし、確かに私達も葵の馬鹿の夢を手伝っている立場だが…………あいつ自身が世界征服をしたい、なんていうのは初耳だし、そんな素振りなんて一度も見せていないが?」
副会長がそんな疑問を挟んできた。
確かにその通りだ。
私達は夢を叶える国を作る、という無能の王の手伝いはしているが、それはまぁ、まだそこまで手伝いをしていない身だが、外からでも見てきた感想だと、それはこの人達からしたら趣味のようなものなのだろう。
己の夢を叶える為に、夢を叶える場所を作ってくれる王の手伝いをする。
一人一人勝手な人間ばかりの武蔵でも、こうして繋がるのは王の夢こそが己の夢に直結するからだ。
だから、自称最強の少年もそうだろ、と副会長は問うたのだろう。
が、それに関して義経公は素で吹いて、腹を抱えて笑い
「そんな不器用な所も受け継いでいるのか!? 馬鹿は死んでもどころか、馬鹿を死んだ後も受け継がせておるとか本当に馬鹿な姓じゃのう…………!!」
何の事だか分からないが、この覇王のツボを見事にあの剣神が突いている事だけは理解した。
熱田が一旦、訓練を中止し、戻ってみると義経との話は終わったらしい。
元から片っ苦しい話は興味が無いから丁度いいか、と思っていたら
「おい、そこの馬鹿」
義経からの言葉と同時に何やら投げられたので受け止めると酒だった。
「あ? 奉納?」
「どうせ好きじゃろ? 安酒」
「馬鹿野郎。酒は中身で満足するんじゃねえ。雰囲気を飲んでこその一流なんだよ」
何か笑いやがったが、嘲笑ったわけでは無いのでいいとしておく。
まぁ、それはそれとして折角の酒だ。
渡されたからには飲むのが礼儀と思って開けようとするのだが
「あ、駄目ですよシュウ君。これから戦争したりするんですから。それに朝っぱらから飲んだりしたら駄目ですよ─────多分」
「今、お前…………自分が納得していない事を俺に押し付けているな?」
俺も納得は出来なかったが、まぁ、智が言うなら仕方が無いのでハードポイントに繋げて、戦争終わったら飲もうと思っていると義経が唐突に変な話をしてきた。
「昔、その安酒をお前みたいに好きな奴がいてな」
「ああ。きっとそいつは俺のように最強で素敵で歌もパーフェクトな出来る奴だったのだろう?」
全員が半目で睨んできたが無視した。
義経はそれに対してからから、と何やらこいつにしては珍しく普通に笑いながら
「とんでもない馬鹿な女じゃったよ。他人を表向きでは拒絶し、孤高を気取って馬鹿をし、私は間違ってないんだよ、と主張しながらも─────本心ではそうではないと否定したがっていた夢見がちな女じゃった」
ふぅん、と熱田は感想はそれだけに留めた。
無関心というわけでは無く、語り方が完全な過去形であったし、それに口出しするにはその友人の形は余りにも完成していたから、野暮だと思ったからだ。
だから、俺はその友人とか言う女についてを述べるのではなく、先を促す為にで? と問うた。
すると義経もああ、と頷き
「そ奴は最後の最後に儂に恨み言を残していきおったわ」
「そいつは女々しいじゃねえか。内容は」
「"もう少し早く出会えていたらねぇ"」
ふぅん、と俺は特に何も言う気は無かったが、義経が何やらじっと見てくるから、何でガンくれるんだ、と思ったが、途中で俺の答え、というより考えを待っているのだ、と何となく気付き、面倒くせぇ、とは思うが、酒を貰った手前何も返さないというのもあれだな、と思い、口を開く。
「一つ、理解出来る事がある」
「何じゃ」
「Jud.────確かにその女が馬鹿だという事だ」
ほぅ、と少女の姿をした老人は微笑みながら─────太刀を遊ぶように触れながら、何故、そう思ったのだ、と促した。
周りが馬鹿みたいに身構える中、俺は特に何も気にせずに、思った事をそのまま伝えた。
「たら、とかれば、とか言う前に疾走しちまえば良かったんだよそいつは─────残り少ない寿命であったとしても、願ったのならば進めば良かったんだよ。無駄に悩んだから、大事な事を見逃しただけだ」
「─────」
欠伸を一つして熱田・シュウは眠気を堪える。
何やら婆は一度瞬きをして呆然としていたが、数秒の後に仕方なさそうな笑みを浮かべ、
「それが数秒先には死ぬような状況だったとしてもか」
「死ぬ戦前に夢に向かえたんだぜ? ────何も出来ないまま死ぬよりかは俺はよっぽどマシだと思うぜ」
無駄な足掻きとは思わない。
例え、それが掴む事は出来ず、零れるしかないのだとしても、ならばその掴もうとした手を握る事は駄目な事なのか?
掴もうと、走ろうとしたその意思はやってはいけない事だったのか?
─────そんなわけがない
何かを成せなかった以上、それは価値がある行いでは無いかもしれないが、無駄では無かった筈だ。
一瞬、ただちくしょうと叫びながらの疾走であったとしても、その一瞬はその人物にとっては何よりも頑張った一瞬だったはずだ。
何も残せず、何も為せない一瞬だったとしても───────確かにその瞬間、その夢は"生きた"のだ。
それを恥と思う方がおかしいと思う。
己の夢を、その賢明さを、笑う方がみっともない。
だから、熱田・シュウは死ぬ一秒前だっだとしてもきっと笑って、最強を謳うだろう。
例え、それが全世界全てを敵に回して、どうしようもない絶望的な状況だったとしても、俺は胸を張って俺は負けねえ、
まぁ、もっとも─────それは俺の持論であって、他人がどう思うかは勝手なのだが。
だから、俺は特に理解は求めずに再び欠伸をし、それを義経は苦笑して
「全く─────本当に、馬鹿は死んでも治らないのぅ」
と少女は空を見上げた。
まるでそれは空にいる誰かに語りかけるようで、熱田は自分に苦笑した。
そういう感傷的なのは馬鹿の役目だろうに
こんな時間ですが投稿ですお久しぶりです皆さま、悪役です。
長々と話すよりも投稿を優先しますが、今回はまぁ、前書き通り、熱田君の連続面接で御座います。
というか3巻が今までよりも熱田を注目する流れだから、自然とこうなってしまうのです。
久しぶりなのでちょっとギャグとかが上手く書けているかマジで不安ですが、どうか楽しんで頂ければ幸いです。
次回はもう一気に戦争入ります。出来る限り書くつもりですが、多分大事なシーン重視になるかと思います。
感想・評価などお待ちしております!!