それは、ある日突然藍染の招集を受けて突発的に始まった
「つい先日、現世のテレビジョン放送を傍受したのだけど」
「撤収ーー!!全員撤収ーーー!!!」
グリムジョーの号令に合わせてスタークが柏手を二回打つ。それに対して咎めるような視線を向けているのはウルキオラとゾマリだけで、それ以外の七人はほぼ一斉に席を立って部屋を出て行こうとした。
だが、それを許さないのが藍染が藍染惣右介たる所以である。本当にヤダ。
「縛道の七十三、倒山晶」
藍染が発動した詠唱破棄の倒山晶により会議用のテーブルを中心とする直方型の結界が展開され、退室しようとした
「何すんだよ藍染サマてめえ!!」
「おいアメミト、お前の能力でなんとかならないか!?」
「無理無理無理!鬼道はちょっと対象外!」
「退け貴様等。この程度の結界など、儂が朽させてくれるわ」
「やめろバカ爺さん。俺たちまで殺す気か!?」
「クソッ!!霊圧クソ高えせいで無駄に硬え!!!」
「腹減った……」
右往左往する
「逃さないよ、
「「「「「「「「「ふざけるなこの陰険死神ーーーー!!!!!!」」」」」」」」
約二名を除く全員の心が、非常に珍しく一つになった瞬間だった。
そんなことがあった翌日。
その建物の屋上部分に、市丸ギンが拡声器を片手に現れた。
「全員聞こえとるやろかー。
「なんて???」
脊髄反射で疑問符を口にしたのは誰だったか。或いは個人では無く複数人だったかも知れない。
そんなことは気にも留めず……というよりも、気にしてる場合じゃない市丸は、胡散臭さの漂う貼り付けた笑みを崩さないまま続けた。
「企画の内容は割と単純やで。この屋上に立って大きな声で、今まで隠してたけど本当は打ち明けたい秘密。特定の誰かに伝えたい事。そんなんを叫ぶだけや。公開処刑?文句なら企画した藍染はんに言うてな」
サラッと藍染を矢面に置かれた事で、クレームは飛び出す前に封殺された。この
「屋上に登るんは完全ランダムのくじ引きや。と言うわけで、頼んますわ。ルドボーン」
「御意」
いつから居たのか、いつの間にいたのか、市丸の背後にいたルドボーンは
ある者はちょっと楽しそうに、ある者は顰めっ面をして、またある者は遠い目をしてくじを引いていく。あ、と誰かの声が上がった。
「俺だ」
先端に赤色の着いたくじを掲げたのは、布を巻きつけた半月型の大型の仮面を被った、歯並びの終わってる
「あのコレ……マジでやんのか……ですか」
「腹括り。藍染はんの暇を持て余したボスの遊びなんやから」
「最悪だよ」
うげえ、と肩を落としたディ・ロイも、市丸の胡散臭い笑みが全てを諦めて貼り付けたものだと察して耳の後ろを掻いた。
下ではグリムジョーが無を装いながら、内心で何を言われるのかこっそり戦々恐々としていた。まだ何も言ってないのに、自分のことを言われると思っているのが傲慢ポイント。
ディ・ロイが指定位置に着く。薄く開いた口から長く息を吐いて、吸って、また吐いて。早鐘を打つ心臓を落ち着けてから、背中が反るほど胸を張った。
「俺は今日ーー!!グリムジョーに言いてえことがあるーーー!!!」
『なーーーにーーー!!??』
藍染指定のコールが響く。ディ・ロイの後ろ、市丸の横で回収したくじをまとめていたルドボーンは思わず噴き出した。だって、あのおっかない
「俺たちをーー!!
後半は声が裏返っていた。ちょっと照れが入ったからだ。
グリムジョーの
「言っておくが、全員似たような思いだぞ」
「…………うるせー…………」
グリムジョーは俯いたまま辛うじて、掻き消えそうな程小さな声で悪態を吐くことしかできなかった。
ファーストペンギンならぬファースト
以下、屋上に登った
「ジオの枕にマタタビ仕込んだのー!!俺だーーー!!!!」
「アレてめえの仕業かよニルゲェエエエエエ!!!!!!」
「可哀想」
「心底同情した」
「藍染さまーーー!!心よりお慕いしてまーーーーーす!!!!」
「……よかったねロリ。思いっきり言えて」
「吾輩をーー!!おっさんだの老兵だの言うのは辞めたまえーーー!!!!」
「あっ、気にしてたんだァ……」
「実際老け顔だからな……」
「ノイ!!トラ!!様ーーーーーーー!!!!」
「…………」
「大丈夫かい?君。目が死んでるけど」
「ウルキオラーー!!クソ犬の飯もうすぐ無くなりそうだから獲りに行くぞーーー!!!!」
「一人で行け」
「バッサリいきましたね」
「一人で行けばホントにそう」
さて、そんなこんなで意外と盛り上がったこの素っ頓狂な企画も、あと二、三人やったらいい時間になってきた頃。
「あっ」
遂にお鉢が回ってきたのは、ハリベルである。ハリベルが赤い印の付いたくじを引き当てた瞬間、アメミトを挟んで向こう側にいたアパッチは、スンと表情が抜け落ちて遠い目をした。気が早い。
大きく息を吸い込む。目を閉じて、一瞬溜める。そしてゆっくり瞼を開いた。
「アメミトーーー!!!!好きだーーーーーー!!!!結婚しよう!!!!」
下にいる誰かが噴き出した。アパッチとグリムジョーは頭を抱えた。スタークとスンスンは想定の範囲内という顔をして、ミラ・ローズとクールホーンはちょっと生温い笑顔を浮かべるしかなかった。
肝心のアメミトの返答はと言えば、驚いたように目を丸くして、すぐに横の髪を払ってから含みのある笑みを浮かべ。
「まだ、ダーメ!」
両腕で大きなバツ印を作った。
"まだ"なんだ、とほぼ全員が思った。恐らくダメという言葉だけが脳を揺らしたらしいハリベルが膝から崩れ落ちるのを見上げるアメミトは、クスクスと笑って続ける。
「私の
その一言で、あっという間にハリベルは立ち直った。現金な奴め、と誰かが呟いた。
後ろで待機していた市丸とルドボーンがハリベルの方へ走ってくる。ハリベルは振り返って、駆けて来た二人と勢いよく、快活な音を響かせてハイタッチをした。
「何だこれ」
眉一つ動かさないウルキオラの呟きは、誰も拾ってくれなかった。
短い上にオチが弱い