これって超次元サッカーなのかよ……   作:チョコミント

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空前の青峰ブーム×主のイナイレ熱の再来


第一話なのかよ……

 フィフスセクター。

 イナズマジャパンが世界一の座を手にしてからというもの、上がり過ぎてしまったサッカー人気によるサッカー至上主義の社会を平定するために設立された組織。今からおよそ二年前に台頭してきたこの組織は、学校間の格差を無くす為、平等な勝利を分け与える為に試合の得点までも定めるという八百長行為を浸透させた。

 現在、サッカーは腐敗していた。

 

 

 ◇

 

 

 ……と、現在のサッカー界の状況をざっくり説明しようのコーナー、屋上から俺、青峰大輝がお送り致しました。

 名前の通り、ちょっと前からネットで見かけるようになったガングロクロスケまんまの姿をしている。帝光時代のを想像してくれ。

 というのも、俺には所謂前世というものの記憶がある。だからこの世界で生きてきて、ここがなんの世界なのか大方の検討がついている。と言っても円堂世代しか見てないからその後のことは分からないんだが。

 この世界では何故かサッカーが全てを支配していると言っても過言では無い。道端歩いてても何かいきなりサッカーバトルを仕掛けてくる奴が結構いる。

 

「この姿で超次元サッカーするのかよ……」

 

 と涙を流したこともあったか。いや、バスケの方も大概超次元ではあったが。

 そして幼い頃からサッカーの練習に打ち込んだ結果、俺は中学サッカーの名門、雷門中……では無く神奈川の方にある帝光中にスカウトされて入学した。場所は違うが、何故かこの世界にも帝光中はあったのだ。そこで実力を示してエースの座を勝ち取ったのはいいけど……

 

「……なーにがフィフスセクターだっつの」

 

 今のサッカーって純粋におもんないのだ。その辺の練習試合でもフィフスからの勝敗指示は飛んでくるし、得点まで指定されてるときた。……いや、端から結果の決まった勝負なんてそもそも勝負って言えんのか? んで、逆らったら逆らったで監督とかに怒られて面倒なことになる。

 そんなサッカーなんて、やる意味ねぇじゃん。

 それも相まってすっかりサッカーへのモチベーションを無くした俺は、バスケの青峰よろしく屋上でサボりを決め込んでいるというわけだ。サッカーの代わりに授業料とか免除してもらってるせいで部活辞められねぇし、監督からも試合さえ出れば文句は言わないって言われたしな。

 

「……テンの奴、どうしてっかな」

 

 東京に住んでた頃に一緒にサッカーをやっていた友達のことが頭に過ぎる。今頃、憧れの雷門でサッカーしてんのかな。あいつドリブルだけは上手かったし、二軍以上にはいそうだな。

 全国大会に上がってきて戦うことになっても、今のサッカーじゃ……。

 

「あっ、いた!」

「あ? ……んだよ、桃川か」

 

 塔屋のはしごから顔を出した何とも女子らしい顔つきをした男。こっちの反応にプンプンと擬音がつきそうな様子で怒っている。

 

「んだよ、じゃないよ! もうミーティング始まるんだけど!」

「んなもん行ったって意味ねーだろ。それに試合さえ出れば好きにしていいって監督に言われてんだ、ほっとけよ」

「はぁ!? 何それ……!?」

「じゃ、俺帰るわ。漫画の新刊買いてーし」

「……っ、待てよ!」

 

 塔屋を飛び降り、屋上を後にしようとする俺の前に桃川が手を広げて立ち塞がる。

 

「どけよ。売り切れちまうだろ」

「監督になんて言われようと、チームメイトとしてそんなこと認められない!」

「俺のドリブルも止められねーお前の許可なんて求めてねーよ」

「……確かに、お前は凄いよ。どんだけ厚いディフェンスだろうと簡単に抜いて一人で点も取れる。でも、いずれ一人じゃ勝てない場面は絶対来る!」

 

 そんな場面が来てくれたらどれだけ嬉しいか……。

 さて、それより目の前のチビをどうすっか。これがガラの悪い奴なら腹蹴って終わりなんだが、こいつにやるのは弱いものいじめみたいで気が引ける。

 

「……仕方ねぇな」

「おぉ! 分かってくれた!」

「んな事一言も言ってねぇよ。別に部活に顔出したっていい。ただし、俺とのワンオンワンに勝ったらだ。俺が勝ったら好きにやらせてもらう。文句ねぇよな?」

 

 自信が無いなら受けなくてもいいぜ、と軽く煽ってやると桃川は顔を真っ赤にしながら怒る。

 

「望むところだ! 今日こそ止める!」

「……そうこなくっちゃ」

 

 桃川を連れて外に出た俺は、どうやら近くで行われていたらしいサッカーバトル用のゴールを見つけた。撤収作業を止めて、今から使うから後はやっとくと言うと先にいた連中は去っていく。

 センターラインに立ち、ボールを踏みつけながら正面の桃川を見据える。

 

「一瞬で終わっちまうんじゃ可哀想だし、三本先取にしてやるよ」

「……俺だって帝光イレブンのディフェンダーなんだ。絶対勝つ!」

 

 桃川のギラついた目。絶対に勝ちたいという勝利に飢えた目。こういう目が本番じゃ消えちまう。本末転倒もいい話だ。

 そんな思考を振り払い、俺は目の前の勝負に集中する。まずは小手調べと、スピードを抑えてドリブルしていく。

 

「遅い!」

 

 素早く距離を詰めてきた桃川が、ボールが俺の足から離れた瞬間を狙い足を伸ばす。しかし狙っていたのは俺も同じだ。足が伸びた瞬間、ボールを爪先で浮かせてアウトサイドで桃川の頭上を通す。そのまま落ちてきたボールをゴールにダイレクトで叩き込んだ。

 

「ほら、次はお前の番だぜ」

「くっ……!」

 

 続く守備、腰を落として桃川の一挙手一投足に目を光らせる。細かいボールタッチでこちらを撹乱しようとする桃川だが、そこにショルダーチャージを仕掛ける。体格差では圧倒的にこちらが有利だ。肉弾戦を嫌うように距離を取ろうとする桃川を逃がさずに仕留める。身体を捩じ込ませてボールを奪うと再びシュートを放った。

 勝負は早くもマッチポイントを迎えてしまった。

 

「少しはやるのかと思ったのによ。結局こんなもんか」

「……っ!」

 

 悔しそうに顔を歪める桃川を尻目に俺はさっさとプレーを再開させる。

 

「負けてたまるかぁ! デーモンカット!」

 

 桃川が空中に飛び上がり、蹴りを放つと地面が抉れる。そこから衝撃波が吹き出しそこに笑う悪魔の顔が浮かび上がった。

 

「……少しはマシなこと出来んじゃねーか。関係ねーけどな!」

 

 ボールに青いオーラを纏わせ蹴り上げる。そこからボールを右足、左足と吸い付かせながら空中を移動する。

 

「スーパーエラシコォ!」

 

 デーモンカットを上から無理矢理突破する。このまま撃てば勝負は終わるが、尚諦めずにこちらに向かってくる桃川に少しだけ敬意を払うことにした。

 ボールに強烈なバックスピンをかけ、浮き上がらせる。

 

「少し本気出してやるよ、ブレイブショット!」

 

 そのままオーバーヘッドキックをすると、青く光り輝くシュートがゴールに向かっていく。

 

「決めさせない!」

 

 シュートを止めようと食らいつく桃川だが、抑えつける足は一秒と持たずに弾き飛ばされてしまった。そしてそのあまりの威力にゴールネットは勢いを抑えきれず破れてしまう。幸いにも周りに人はおらず体育館の壁に激突して少しへこませる程度に済んだ。

 

「これで分かったろ? 俺に練習とか必要ねーんだよ」

 

 桃川は俯いたまま何も答えない。拳を強く握り締め、地面を殴る。

 

「ま、少しは楽しかったぜ? せーぜー頑張って練習してくれよ」

「こらーっ! 今ボールぶつけたの誰だーっ!」

「やべっ!?」

 

 体育館からバレー部の顧問兼生活指導の先生が怒った様子で顔を出す。また説教を食らっちゃたまらない。慌てて鞄を拾い、俺はその場から走って逃げだすのだった。

 

 

 ◇

 

 

 場所は移って東京の雷門中。雷門イレブンはサッカー棟のミーティングルームでホーリーロード全国大会の試合の録画を観ていた。一回戦の幻影学園対帝光中のカードだ。

 幻影学園はトリッキーなプレーを得意とし、奇術師集団の異名を持つ。中でもエースの真帆路はどんな状況でも感情を表に出さない笑わないストライカーとしても有名だ。

 一方、帝光中はスポーツの超強豪である。全国からスカウトされて集められた選手達による熾烈なレギュラー争いを勝ち残った選手達は正しく一流と言って良いだろう。そして一年生ながらにエースの座を勝ち取った超天才FWがいるという情報もある。

 そして何よりこの試合に勝敗指示は出ていない。両校の実力を測れる試合というわけだ。

 

「しかし、噂の十番は出ていないみたいだが」

「怪我か何かじゃないです?」

 

 美形ディフェンダー霧野の呟きに瞬足ミッドフィールダー速水が答える。しかし、エースの不在をものともせず帝光中は果敢に攻め込んでいく。幻影学園も負けじと食い下がり、一進一退の攻防が繰り広げられていた。

 その後、前半終了間際の真帆呂のマボロシショットによる得点で、スコアは1対0で幻影学園がリードした状態でハーフタイムを迎える。

 

「あれっ? 十番の選手入ってきましたよ?」

「なんだか凄い怒られてる……」

「ありゃ完全に遅刻してきたって感じだな……」

 

 マネージャー三人が反応する通り、後半から投入された十番は怠そうに欠伸を漏らしている。その姿に一人、驚きの表情を浮かべる者がいた。

 

「……大輝?」

「天馬、知ってる人?」

 

 一年生ミッドフィールダー天馬の反応に隣にいた同じく一年生の信助が聞く。

 

「うん、青峰大輝っていう小学校の頃の友達。すっごいサッカー上手かったんだ。途中で引っ越しちゃったんだけど、帝光中に行ってたんだ。葵も憶えてるでしょ?」

「……でも、大輝くんってあんな感じだったっけ?」

 

 テレビに映る彼は昔知り合いだったマネージャーの葵が一目見て分からないぐらいに変わってしまっていた。姿では無い、こんなつまらなそうにサッカーをするような少年ではなかったのだ。

 

 エースが投入されてから、帝光中はまるで別のチームになったかのようだった。ボールは全て青峰に集められ、彼一人の個人技で幻影学園を圧倒する。スピードの緩急が効いたドリブルに、相手の動きを見切る野生の獣の様な反射神経、そして体勢を崩そうとも放たれる強力なシュート。全てのステータスがずば抜けて高いことが窺えるプレーだった。

 化身使いでもまるで歯が立たず、暴れ回る青峰に連続得点を許してしまう。

 

『ブレイブショットォ!』

『勝負師ダイスマン! ラッキーダイス!』

 

 キーパーの化身技をものともせず青峰の必殺シュートはゴールネットに突き刺さる。そして同時にホイッスルが鳴り響いた。

 スコアは8対1。帝光中の圧勝で試合は幕を閉じた。

 

「な、なんて強さだド……」

「ちゅーか、あんなのどうやって止めんのよ……」

 

 青峰の圧巻の強さを目の当たりにし、ミーティングルームは途端に静かになる。その静寂を破ったのは監督である円堂だ。

 

「さぁ皆! ここで沈んでいても仕方ないぞ! 俺達は俺達のベストを尽くそうぜ! そうすりゃ勝利の女神は必ず微笑んでくれるさ!」

「監督……はいっ!」

「よし、皆練習だ!」

 

 監督の言葉に奮起しメンバーが続々とコートに向かう中、天馬は言い知れぬ感情に包まれていた。

 

「大輝……何だかつまらなそうだったな」




スーパーエラシコって言ってるけどあれってダブルタッチだよな……?
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