これって超次元サッカーなのかよ……   作:チョコミント

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オリ必殺考えんの難しいから既存ので何とかしたいですね


第二話までも俺のことが好きだと!?

 シード。フィフスセクターから各校に派遣される選手の名称だ。基本的な仕事はサッカー部の監視。そしてフィフスセクターに逆らう可能性のある学校に彼らはやってくる。つまり彼らの来訪はフィフスセクターによる警告という見方も出来る。中には丸ごとチームを乗っ取られたケースも存在するらしい。

 そして、帝光中にもシードが存在する。それが一年生MFである灰原だ。シードはフィフスセクターによって特別な訓練を施された凄腕の選手であり、灰原もそれを誇りに思っていた。

 強豪校だか知らないが、俺がひれ伏させてやる。そんな圧倒的な自信は、彼がやってきたその日に踏み潰されることになる。

 

「くっ……有り得ない! 俺はシードなんだぞ!? それがこんな只の一選手に……!」

「……んだよ、シードっつってもこんなもんか」

 

 灰原が帝光中にやってきた日。その日は丁度青峰もグラウンドに顔を出していた。部活に来た、というよりはちゃんとしたゴールのある場所でボールが蹴りたかっただけ。ついでに案山子が突っ立っていれば上々。チームの練習に参加する気は微塵もなかった。

 皆を集めての灰原の自己紹介も無視、用意したドリンクも勝手に飲まれる、仕舞いにはそこのツンツン頭と自慢のヘアスタイルを馬鹿にしたような呼び止め方。ただでさえ怒りっぽい彼の堪忍袋の緒を切るには容易い程の無礼であった。

 

「貴様……会って初日の人間に対して、礼儀がなっていないな」

「あ? 何怒ってんだお前。いいからちょっとそこ突っ立っとけよ」

 

 お前も大概偉そうだったけど、という考えを口に出す者はいなかった。

 灰原は青峰に対して怒りの表情を浮かべながら、必殺シュートの体勢に入る。

 ボールを浮かせ、炎を纏った左足で下を擦るように蹴ると回転と共に炎に包まれる。蹴った反動でくるりと回りながら、本命のキックを叩き込む。シードの自分よりも偉そうに振る舞う不遜な輩を成敗する、そんな使命感を込めた渾身のシュートだ。

 

「食らえっ、ヘルファイアー!」

 

 先程まで怠そうな顔をしていた青峰も迫る身の危険に少し顔を強ばらせる。捻りを加えたジャンプから飛んできたボールをジャンピングボレーで迎撃する。数秒拮抗したものの、青峰のパワーが上回り蹴り返されたシュートは灰原の頬を掠めてその後ろのゴールに突き刺さった。

 

「俺のシュートを……!?」

「へぇ、結構良いの撃つじゃねーか」

「……ッ、とことん舐め腐りおって貴様ァッ!」

 

 灰原は修羅の形相で青峰に突進する。それに応えるように青峰もドリブルを始めた。

 唐突に始まったワンオンワンに周囲は困惑するものの、内心では興味津々だった。フィフスからの刺客と我がチームのエースの対決、熱いカードなのは間違いない。調子に乗っている青峰を叩き潰して欲しいのと、チームの代表としてシードに負けないで欲しいのとで半分半分と言ったところか。

 灰原のディフェンスは怒り心頭にしては落ち着いたものだった。青峰の細かいボールタッチを観察しながら半身になって縦への一本を警戒している。対する青峰は隙をチラつかせても食いついてこないことを悟り、勝負を仕掛けることにした。左に切り込む、と見せかけてラボーナで右に切り返す。引っかかったものの完全には振り切れておらずギリギリのところで食らいつく灰原。しかしそれを嘲笑うかの様に青峰は次の技を繰り出した。ついて行くために完全に重心が左に寄った灰原、その股をクライフターンで通して今度こそ完全に振り切った。

 

(くそっ、何なんだこいつはっ!? フェイントの質、ドリブルの緩急、こんなの中学サッカーに居ていいレベルじゃない……!)

 

 振り返れば既に青峰はゴールの前でシュートモーションを取っていた。最早悪足掻きとしか言いようがない行為だが、灰原はそれを決行する。

 

「潰す……!」

 

 足から炎を噴き出しながらのスライディング、イグナイトスティールで背後から青峰の足を狙う。

 

「危ないっ!」

 

 勝負を見ていた桃川が思わず叫ぶ。しかし、青峰はもう足を振りかぶってしまっていた。

 

「もらった!」

「チッ、危ねーなっ……と」

 

 接触する刹那、振り下ろされた足でボールをすくい上げながら青峰は跳んだ。青峰の下を潜っていく灰原は、頭上でボールを蹴り込む姿を見上げる他ない。必殺シュートを蹴り返され、ディフェンスも華麗に躱され、ラフプレーも通用しなかった。今、灰原の中にあるのは強烈な敗北感だけだった。

 

 

 ◇

 

 

「おい青峰、やってきた課題を出せ」

「……あ? んなもんやってねーよ」

「ならば今すぐやれ。四限までにやればまだ間に合う」

「るっせーな……別にお前には関係ねーだろ」

「お前が補習にならないように成績に気を配ってやってるのが分からんのか!」

「てめーは俺の母ちゃんか!?」

 

 一限が終わり、そのまま居眠りしていると灰原に課題を出せと叩き起こされた。この前のワンオンワンで勝ってからというもの、同じクラスであるこいつは何かと俺に構うようになってきた。やれ課題をやれだの、やれ移動教室だだの、授業をサボりたい俺からすれば迷惑でしかない男だ。

 

「それはそうと、準々決勝の相手が決まったぞ」

「ふーん」

「興味が無さそうだな」

「実際ねーし。どこも大したことねーよ」

「だが次の相手は侮れない。何せ、反フィフスセクターの象徴だからな」

「反フィフスだ?」

 

 フィフスに逆らう、つまり勝敗指示には従わず好きにサッカーをしているというわけか。……楽しめそうな相手ではないか。

 

「前言撤回するぜ、どこだそりゃ」

「……貴様、ホーリーロードが次の聖帝選挙を兼ねていることは知っているんだろうな?」

「えっ、そーなのか?」

「このアホ峰め。現在、次の聖帝候補は二名いる。現聖帝であるイシド様と響正剛という男だ。そして、反フィフスセクターの奴らは響を担ぎあげることで現在のフィフスセクターの体制を崩そうとしているのだ」

「……んー、ん? つまりどーゆーことだ? 結局相手はどこなんだよ」

「相手は雷門、ここを潰せばイシド様の当選は確実ということだ」

「……雷門か」

 

『よーし来い、テン!』

『行っくよー、大輝!』

 

 フィフスに逆らう気力も無い俺と比べて、アイツはちゃんとサッカーをやってるんだろうな。きっとあの頃と同じで目輝かせてて……今俺は、あの目を見つめ返せない。

 

「……次、俺は出ねーわ」

「何? どういうことだ」

「俺が出るまでもねーって言ってんだよ。雷門を潰してーならお前が勝手にやりゃいい」

「……怪我、では無さそうだが」

「俺の問題だ。お前が首突っ込むことじゃねーよ」

「ふん、まぁいい。お前がいなくとも、フィフスセクターは負けん」

 

 最後に課題を念押しすると、灰原は去っていくのだった。

 

「……テン、俺は……」

 

 

 ◇

 

 

 放課後の河川敷。サッカー部の練習を終えた天馬は、葵と一緒に家に向かって歩いていた。

 

「次の相手、帝光中だね」

「うん、大輝とサッカーするの久しぶりだ」

「帝光中って、一応フィフスセクターの傘下なんだよね……」

「大輝ならきっと大丈夫だよ。ほら、昔からあいつは自分の気に入らないことには従わなかったし」

「確かに、先生の言うことも全然聞かなかったよね」

 

 小学校の頃の話に花を咲かせていると、サッカーコートが見える場所に来た。今日も稲妻KFCの子供達がコーチのもとで練習をしている。それを止まって眺めていると、コートの近くにあるベンチに座っている人がいることに気づく。中学生だろうか、この辺りでは見ない制服だ。

 

「……あっ、あの黒さは!」

「ちょっと天馬!?」

 

 その色黒具合から少し前に試合で見た彼であることに気づき、天馬は急いで階段を駆け下りる。葵も少し遅れて後を追った。

 

「おーい、大輝ー!」

「……なっ、テン!?」

「久しぶり! 元気だった!? この前の試合見たけど凄かった!」

「おいおい、取り敢えず一旦落ち着けよ。ほら、深呼吸」

「すー、はー……ごめん、ちょっとテンション上がっちゃった」

 

 久しぶりの再会に興奮している天馬。その後ろから葵も青峰だと気づいて挨拶する。

 

「久しぶり、大輝くん」

「よぉ、葵。お前らも学校帰りか?」

「うん。大輝くんはこんな所で何してるの? 帝光中ってちょっと遠いよね?」

「遠出したくなったんだよ。適当に電車乗ってたらここに着いた」

 

 そういう青峰はため息をつきながら背もたれに寄りかかる。当てもなく彷徨う時の気分なんて大体想像がつく。つまり彼は今、何かに悩んでいるのだろう。

 葵は心配そうに青峰を見つめる天馬を見て、ここは彼に任せることにした。

 

「天馬、私用事があるから先に帰るね」

「えっ。うん、分かった」

「じゃあね二人共。大輝くん、またね」

「おう、じゃあな」

 

 去っていく葵を見送ると、青峰は天馬に隣に座るように促す。

 

「……俺が引越したのは、確か小三の頃だったよな」

「うん」

「お前と来たら俺ん家まで来てビースカ泣きやがって」

「そ、その話はいいだろっ! あの時は寂しかったんだから……」

「……俺はその後、引越し先で地元のチームに入った。そこは結構強くて大会とかでも優勝常連みたいなとこだった」

 

 青峰が独り言のように語り始める。空気が重くなるのを感じた天馬は口を噤む。

 

「頑張って練習して、レギュラーになって、小四になる頃にはチームのエースになってた。皆が俺にボールを集めて、俺が抜いて点を取る。それがうちのやり方だった。あの頃はまだ楽しかった」

「……あの頃は?」

「あぁ。なんつーか、上手くなり過ぎちまった。誰も俺を止められる奴はいなかったんだ。皆途中で諦めちまう。真面目にサッカーに向き合った結果が、このザマだ」

 

 拳を握りしめ、行き場の無い怒りを抑えようとしている。天馬はこの間試合を見た時の違和感の正体を察した。青峰は、飢えているのだ。自分と対等以上にやり合える相手に。勝つか負けるか分からないギリギリの勝負に。

 

「テン、俺今、サッカーがつまんねーんだ。練習しても周りとの差が更に開いちまう。フィフスの管理サッカーなんてくだらねぇもんもある始末だ。これ以上、サッカーを嫌いになりたくねぇよ」

 

 少しの沈黙のあと、天馬はゆっくり口を開く。

 

「……そっか、大輝。今はサッカー、つまらないんだ」

 

 彼の声には、どこか寂しげな響きがあった。けれど、次の瞬間には真剣な眼差しで大輝を見つめていた。

 

「でもさ、それって、今も本気でサッカーに向き合っているからこそ出る言葉だよ。何となくやってるだけなら、そんなふうに悩んだりしない」

 

 天馬は立ち上がり、大輝を見下ろす。

 

「俺は今もサッカーが楽しくて仕方ない。でも、大輝がサッカーを嫌いになりそうだって聞いて、そんなの……やっぱり嫌だよ」

 

 彼は拳を軽く握り、微笑みながら言った。

 

「だったら俺が、楽しいって気持ちを取り戻すきっかけになる。大輝の全力を、俺が正面から受け止めるよ」

「……テン」

 

 今の青峰に天馬の言葉は眩しすぎた。彼と目を合わせず地面を見ているのがその証拠だ。

 

「じゃあ、試してやるよ。お前が俺の相手に相応しいかどうか」

「試す?」

「久しぶりに勝負だ、テン。俺を抜いてみろ」

 

 バッグからボールを出し、天馬に投げ渡す。コートは使用中の為、ベンチ横の少し空いたスペースで二人は相対した。

 

「どんだけ成長したか、見してみろ」

「……行くぞ!」

 

 天馬は一気に加速し、風を纏って青峰に接近する。そして目の前でくるりと回った。

 

「そよかぜステップ!」

 

 その名の通り、そよかぜの様に青峰の横を吹き抜けていくようなドリブルだ。雷門中キャプテン神童を抜いたそのドリブルのキレはその時よりも上がっている。

 

「……甘ぇよ」

 

 だが、青峰の反射神経は天馬のスピードを完璧に捉えていた。そよかぜステップに置き去りにされることなく天馬について行く。

 

「ぬ、抜けない!?」

「確かにそよかぜみてーだ。そよかぜみてーにノロいぜ!」

 

 身体をぶつけ、天馬とボールを引き剥がす。球際の勝負で天馬のフィジカルでは青峰のフィジカルに勝機は無かった。

 

 大輝には勝てない。そんな意識が小さく片隅に植え付けられた瞬間だった。




ラボーナ上手い人ってあの体勢で何であんな威力出せるんですかね
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