環太平洋連邦召喚   作:ちんすこー

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6.近づく戦雲

《神聖ミリシアル帝国 中央暦1639年3月10日ニュースより》

 

広場にいるコメンテーターが映し出される。

『3月8日から開催されました世界連合会議は、今日ミリシアル8世陛下の演説を以て終了しました』

 

ミリシアル8世の演説が映される。

『我々は今、かつてない脅威に晒されている。かつて世界を支配し、暗黒に覆った脅威だ。これに対抗するには我々が、世界が、この手で以て!この血で以て!この意志で以て!為さねばならぬ!さあ、勇者よ、世界に散らばる勇者よ、今、世界が!祖国が!家族が!其方らに託した!世界を救う力を!ここに集い給え!

神聖ミリシアル帝国皇帝ルキウス・エルダート・ホロウレイン・ド・ミリシアルはここに世界連合軍の結成を宣言する!!』

 

『結成が宣言された世界連合軍には、文明圏のほぼ全ての国が即時参加を表明しました。しかし、殆どの国は魔法帝国に対抗できる技術レベルにはないとし、ミリシアル中央政府は各国に大規模な借款を行い、各国軍はそれを元手にミリシアル制の軍備を整えることとなりました。

これに対し、一部ではこの兵器を元に周辺への侵略を開始する国が出るという意見が出ましたが、中央政府は武器輸出するのは世界連合軍のみに限定しているため問題はないとしています』

 

スタジオに場面が変わる。

『まさに空前絶後の大軍勢が魔法帝国に対抗するために編成されつつあるのですね』

『ええ、政府発表によりますと、世界連合軍は1ヶ月以内に、ミリシアル軍100万、他多数の国の軍50万を最前線に投入するとしています。また、現在でも前線にはミリシアル軍のみで40万が、ミリシアル制装備で充足したパーパルディア皇国軍が30万が展開しています。

ただ、これでも戦力は不足しているとし、世界連合軍総司令のシュタインマン上級大将は、1年以内に世界連合軍前線戦力1000万人体勢となることを望んでいます』

『1000万人!!こんなに動員できるんですか?』

『はい、ミリシアルのみでは厳しいですが世界各地から人員を募ることになりますので、数の上だけなら難しくないと思います。

ただ、これだけ動員すると兵器の必要量もまた増えますので、生産体制の拡充を政府は急ぐことになるでしょう』

『すごいですね。まさに世界が一丸となって魔法帝国という脅威に立ち向かう訳ですね』

『いえそう言う訳でもないんですね、例えばムーは科学立国であるのでミリシアル軍とは補給体制が全く異なってきます。なのでフィルアデス大陸への大軍の投入は正式に断っています。

ああ、もちろん世界第二位の列強であるムーが何もしないわけにはいかないので、南方領土など、ミリシアル軍が引き抜かれ薄手になった後方の防衛を担当することになります。こうすることで、ミリシアルは東に全力で対処できますし、他の国々と違って近代装備を自活できる分ミリシアル産業界の負担も減りますから、決して小さくない貢献でしょう』

『そうなんですね、ところで他の国はどうなんでしょうか?』

『はい、他の列強では、レイフォルは西側が近年不穏であるため艦隊の派遣は断りましたが、陸軍人員では数十万人規模を派遣するとしています。魔法帝国と接しているパーパルディア皇国は国家の存亡が関わってくるだけに全力で、世界連合会議で皇族のレミール外交官が送られてきたことがそれを物語っています。すでに皇国国内では大規模な徴兵が行われており最終的には単独で1000万人の人員の提供を確約しています。エモール王国は亜神龍の全てを動員すると公式に声明を発しとり、戦力として非常に期待できます』

『すごい戦力ですね、では、これからはこれら戦力について詳しく見ていきたいと思います……

 

 

 

 

 

西暦2025年3月2日

《環太平洋連邦 東京特別市 情報省ビル》

 

連邦の国内外のあらゆる情報を収集管理分析する巨大省庁である情報省。

連邦重大特事において、最大の打撃を受けた省庁である。

まず海外に派遣されていた多数の熟練の工作員や諜報員を失い、さらに100基に及ぶ各種監視衛星も失われた。これにより対外諜報能力は著しく低下し、対外諜報を担当する外務局は再編を余儀なくされ、偵察衛星と偵察機の管理と運用を任される航空宇宙戦略監視局も一時期活動が完全に停止した。

だが、転移から1ヶ月以上たった現在では、毎日のようにロケットが衛星を打ち上げたことにより、連邦領とその周辺に限られるものの宇宙空間からの監視は復活した。

そして、その復活と同時に多数の情報を得られたため情報省ビルでは、幹部クラスの面々による会議が行われていた。

 

「やはり、間違いないのね?」

「はい、間違いありません」

 

情報大臣、丸山 由奈(まるやま ゆな)の質問に答えるのは、航空宇宙戦略監視局局長の森塚 正吾(もりつか しょうご)

 

「現在、連邦大陸領と接続しているフィルアデス大陸にて大規模な戦力の増強が確認されています。さらに、クワトイネ、フェン、ガハラ、クイラ、アワンら、新世界で国交の結ばれた国家から得られた情報によれば、第三文明圏には鉄道が無い筈ですが、偵察衛星では鉄道網が確認でき、今でも大規模な延長工事が行われているようです」

「戦力の移動は理解できるわ。我々も米大陸領から大規模な戦力の移動を行っているもの。けど、鉄道網は分からないわね。いきなり産業革命でも起きたのかしら?」

「そう言う訳ではないようです。鉄道網に敷設が始まったとおもわれるのが、第三文明圏最大の国であるパーパルディア皇国首都エストシラントでなく、その真反対の西の港からのようです。また、移動している兵力もこの港を起点として移動しているのがわかりました」

 

丁度いいタイミングを見計らい、失礼、そう言い手を挙げたのは、連邦重大特事で大打撃を受けたものの辛うじて息をしている外務局局長の小森谷(こすみ) 洋平(ようへい)

 

「それについてですが、現在国交交渉が行われているシオス王国とアルタラス王国にて新しい情報を得られました」

 

情報省外務局は対外諜報活動を展開しているが、それは大使館を中心として行われており外務省との繋がりはとても深い、そのため新世界では国交交渉に赴いた先でも外務省の支援を受けながら諜報活動を行っている。

 

「なんでも、フィルアデス大陸で大軍を運用しているのも鉄道を敷設しているのも、新世界において列強最強と呼び声高い神聖ミリシアル帝国のようです」

「列強といえばそのパーパルディア皇国もそうなのよね。私の知っている限りでは、列強が他の列強の軍を自国の影響範囲内に入れる訳がないし、自国領土なら猶更そうするわけがない。一体何故かわかるかしら?」

「はい、現地住民への聞き込みによれば、魔法帝国の侵略から世界を守るため、とのことです」

「魔法帝国?」

 

魔法帝国という聞きなれない言葉にその場の一同は困惑した。小森谷局長の言葉をその通り受け取れば、魔法帝国とやらは世界が纏まって相手するような存在らしいが、フィルアデス大陸の周辺は連邦の衛星監視下にあり、そのような存在は確認できていなかった。

小森谷局長も名称以外はよく分からないようで、言葉に詰まる。

部屋に嫌な沈黙が広がった時、おずおずと文化局局長の封 鈴玉(フェン リンユー)が手を挙げ語る。

 

「魔法帝国でしたら、クワトイネ公国との文化交流の際に情報を得ています」

「詳しくお願い」

「はい、魔法帝国、正式名称をラヴァーナル帝国と言うそうで、かつて世界を支配していた古の帝国のようです。国家的特徴は非常に傲慢で残忍な性格のようで、さらに異常な程魔法技術が発達していたようです。構成民族は光翼人のみで魔力量を殊の外重視し、同族以外はよくて奴隷として扱われ、同族でも魔力量が少なければ実験体になったそうです。

最終的にこの国は神に敵対し、巨大隕石を落とされ滅ぼされる直前に国家ごと未来に転移したと報告書で上がりました」

「御伽噺ね」

「はい、我々も最初はそう考えていましたが、この話で文化交流に参加していた政府高官と民間では全く空気が異なっていました。特にカナタ首相は『最近外務省経由で魔法帝国という文字をよく見る。何かがあるかもしれないから貴国も気を付けられたし』と局員に話されており、少なくともクワトイネ政府中枢では御伽噺として扱われていないと思われます」

「よくわからないわね、それで何故神聖ミリシアル帝国がフィルアデス大陸に大軍を投入するのか……」

 

聡明なこの部屋に出席する面々は一瞬、連邦がその魔法帝国と疑われている。とも考えたが、世界最強の国が情報も集まっていない状況でこれ程大きな動きを見せる訳がない、と自身の常識で切り捨てた。

 

「この話は保留にしましょう。フィルアデス大陸での戦力増強は引き続き要調査、魔法帝国については文化局を中心に調べて頂戴」

 

丸山情報大臣の言葉に面々が承知の言葉を発する。

 

「では、次はこれについてよ」

 

続いて丸山情報大臣は一つの報告書を取り出した。

そこには、「ロウリア王国の脅威について」と書かれていた。

 

 

 

 

 

中央暦1639年3月26日

《クワトイネ公国 マイハーク マイハーク港》

 

連邦と国交開設してからすぐに行われた港の改装と浚渫工事はこの時点で一段落し、連邦からクワトイネへインフラ設備と車両を乗せた船とクワトイネから連邦へ作物を送る船が港を行きかう。

今まで、この港を占有していた漁船と帆船の商船は隅っこに追いやられ、今日新たなにやって来た船によりさらに追いやられた。

 

マイハークにいる者たちの知る最大の軍艦はヒタチ級という船だったか、今日入港してきた船はそれよりも大きく、前方に置かれた大量の砲はヒタチ級よりよほど軍艦らしかった。

 

その名を神嵐(しんらい)級強襲上陸艦。

本艦は連邦海軍が西暦1996年から2003年まで9隻が建造された艦である。

対独全面戦争時において連邦の最大の悪夢は中東とのシーレンの断絶であった。

中東から大量に輸入される石油は巨大な連邦産業界になくてはならないものであり、そことのシーレンの断絶は連邦の戦争経済を根本から揺るがしかねず、連邦、旧帝国の産業が急速に成長した1950年台からはその深刻度合いがさらに増した。

この悪夢を終わらせるには欧州枢軸の保有するインド洋の拠点を全て奪取する必要があり、マダガスカル島やソコトラ島はその最たる例であった。

それら前線基地は欧州枢軸も重要性を意識している為、高度に要塞化されており、いくら海上戦力で優越している連邦海軍でもこの要塞の完全な破壊は難しく、上陸するとなると強襲上陸以外ありえず、この際上陸戦力への速やかで正確な火力支援のために建造されたのが強襲上陸艦*1であり、本艦はその3代目に当たる。

外見的特徴は何といっても艦首がなく砲船のお化けにみたいに、大量に並べられた砲と、その中で一際でかい41センチ2連装砲だろう。

上陸の際は船首のバウランプが開き、そこから平均で2500人の上陸要員を吐き出し、攻撃してくる敵火点にはその豊富な火力を叩き込みこれを粉砕し、上陸までは41センチ砲の直撃を耐える堅牢な装甲でこれを弾き返し上陸部隊を守り通す。

 

要目

全長283m  全幅40m

基準排水量 41200t

搭載機関 艦船用高出力ガスタービン2基

最大速力 24ノット

最大搭載機数 ヘリ2機

最大搭載上陸人員 2900人

武装 55口径18センチ両用砲2連装砲3基

   62口径12センチ両用単装砲4基

   艦対地ミサイル発射砲3基

   45口径41センチ2連装砲2基

 

現代の戦艦とも対地攻撃のお化けとも言える本艦の船体の側面のタラップから降りてくるのは、海軍第二種軍装によく似た礼装を身にまとった陸戦隊クワトイネ派遣群司令の堀越 スティーブ陸戦隊中将。

彼は野次馬でやって来たマイハークの住民を眺めながらタラップを降りていると、その中に見た事のある人物がいた。

クワトイネ公国首相のカナタである。

 

「これは、カナタ首相閣下。閣下自身が来ていただけるとは感謝の限りです」

「いえいえ、我が国を守護してくれるという貴方がたを私以外に誰が出向けるというのですか」

「本来であれば私が伺い見舞えるのが道理でありますから……」

「ハハハ、連邦の方々は皆謙虚ですな。ぜひこの世界の人々にもそうあって欲しい限りです」

 

カナタの言葉に堀越中将は答えに詰まり、それを見たカナタは言葉を続けた。

 

「さあ、ここで立ち話もなんですから、移動しましょう。確かマイハーク港の近くの海岸リクセンタイが上陸すると聞きましたから、そちらにぜひご一緒しましょう」

「わかりました。私もこの後そちらに向かう予定でしたから。ですが移動手段は……」

「移動手段は連邦から輸入した豊田センチュリーです」

「センチュリーですか、元々は高機動車で移動する予定でしたから有難いですね」

 

話が終わるとカナタは堀越中将とその副官をエアコンで丁度いい温度となっているセンチュリーに案内し、移動を始めた。なお、他の随伴員はエンジンルームの近くにある貨物室でかんかんに内部が温められた高機動車に乗り込んであとを追った。

 

 

 

マイハーク港の郊外の海岸線に近づきカナタが最初に見たのは海の向こうに見える小さな何かだった。

それは、徐々に近づき海岸から1キロ程度の距離にまでなったときには、カナタもその姿が見えてきた。

 

「ほう、あれが荒潮級揚陸艦ですか……」

「はい、そうです」

 

荒潮級揚陸艦*2は神嵐級強襲上陸艦とは異なり、巨大な砲どころか小さな砲すら見えない、あるのは正面から見て左に寄った艦首と平べったい板があるだけだ。

 

「何と言うか……」

「そうですね、神嵐級に比べたらかなり地味ですね」

「堀越中将、貴方が言いますか……」

「まあ、事実ですから」

 

車内で取り留めのない話をしていると、気が付けば上陸予定の海岸に付いていた。

そこからカナタと堀越中将は降りてかなり大きく見える12隻の荒潮級揚陸艦を見る。

それぞれの艦は他の艦と接触しないよう注意しながら船体を回転させ海岸に向かって後ろ向きになると、スターンランプが開き、ウェルドッグが露わになる。そこからは、多数の兵士と多数の機材が上陸用舟艇に乗せられ海岸に向かって進む。

その数は時間が経つにつれ増えていった。

 

「凄まじい数ですね。この12隻には何人の人員が乗っているのですか?」

「それぞれおおよそ1900人程度乗っていますから大体22000人程度ですね。彼らはこれから前線となるギムの街に派遣されます。少ないと思うかもしれませんが、最終的には陸戦隊の3分の1にあたる15万人が対ロウリアの為に派遣されますからご安心を」

「い、いえ、全く十分すぎる備えだと思いますね」

 

陸軍でもない一組織でそれだけ動員できるのか!!カナタは心の中で叫んだ。

その様子をカナタは頼もしいと思いながらも、それと同時に恐ろしく思い冷汗を垂らした。

 

ああ、平和裏に国交が結べてよかった、と。

*1
分類上は揚陸艦と同様の扱い

*2
本艦は2002年から2008年までに30隻が建造された艦である。

本級はこれで3代目であり、インド洋での上陸作戦に対応する為に建造された。

所属は海軍となっているが、基本的に陸戦隊に貸し出されている。

外見的特徴としては設計段階から外見が朝霧級護衛空母に寄せており、敵対組織に戦力価値を誤認させるようになっている。

 

要目

全長 257m  全幅 32m

基準排水量 34000t

搭載機関 艦船用高出力ガスタービン 2基

最大速力 26ノット

最大搭載機数 25機

最大搭載上陸人員 1900人

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