七燿暦1204年3月31日・午後・エレボニア帝国・トールズ士官学院・旧校舎地下。
わたくし達は、雄叫びと地響きが響く方向へ急いで走りました。近づくにつれ、雄叫びの音と振動がますます激しく襲いかかってきます。
アルフィン【アリサさん、エマさん、大丈夫ですの?】
アリサ「なんとか大丈夫よ!」
エマ「私もです!」
ラウラさんが壁の向こうの様子を窺っていますが、その表情からは、とても楽観できる状況ではないことがはっきりわかります。
ラウラ「みんな、準備はいいか?」
アルフィン【ええ!】
アリサ「バッチリとは言えないけど、行けるわ!」
エマ「はい、準備できました!」
ラウラ「よし、行くぞ!」
ラウラさんがそう叫び、壁の向こうへ駆け出しました。わたくしもその後を追い、アリサさんとエマさんには後方から援護射撃をお願いしました。
黒髪の男子生徒、赤髪の男子生徒、長身の男子生徒、ハチマンさん、マキアスさんの5人が、
ラウラ「助太刀するぞ!」
アルフィン【皆さん、力を合わせて戦いましょう!】
黒髪の男子生徒「みんな、助かる!」
ハチマン「アルフィン達も来たってわけか」
マキアス「だが、この石像、何度壊しても再生して復活する!」
アルフィン【再生して復活、ですか……】
黒髪の男子生徒と長身の男子生徒が一撃を加え、
大賢者が警告します。
大賢者「告。あれは超再生。いくら攻撃しても、すぐさま超再生が働き、傷を癒してしまいます。倒すには、超再生が追いつかないほどのダメージを与える必要があります」
アルフィン【大賢者、つまり大技をかませばいいってことですわね?】
大賢者「解。その通りですが、この旧校舎の地下で大技を使えば、ただでは済まないことはわかりますよね?」
アルフィン【旧校舎が崩れて、わたくしたちが生き埋めになるってことですわよね】
大賢者「解。マスターの
アルフィン【あのね、大賢者、その能力を使ったら、わたくしがただものじゃないってバレてしまいますわ!】
大賢者と議論している間も、皆は
ハチマン「ったく、めんどくせえな……雷撃波!」
ハチマンさんが大剣に雷の力を集め、放った雷撃波が
赤髪ロングの男子生徒「ほら、ボサッとするな! もっと攻撃を続けろ!」
彼は
赤髪ロングの男子生徒「クロス十文字斬り!」
その一撃で、
フィー「スハルト、ナイス!」
スハルト「やれ、フィー!」
今度はフィーさんがワイヤーを操り、
その衝撃で地響きが響き、砂埃が舞い上がりました。アリサさんとエマさんが咳き込んでいますが、わたくしはラウラさんと目配せし、倒れた
ラウラ「てやあ!」
ラウラさんが大剣を振り下ろし、わたくしは右拳に気を溜めて、
アルフィン【気功波!】
しかし、超再生が再び働き始めます。
アルフィン【また超再生してしまいますわ!】
ラウラ「駄目か!」
その時、ユーシスさんが叫びました。
ユーシス「せいやあ!」
彼の剣が
ユーシス「まだ諦めるな! ありったけの攻撃を続けろ!」
アルフィン【もちろんですわ!】
ラウラ「わかった!」
長身の男子生徒「オレ達も続くぞ!」
赤髪の男子生徒「うん!」
黒髪の男子生徒「よし!」
ハチマン「めんどくせえが、やるしかねえか!」
マキアス「後方は任せろ!」
アリサ「後ろは私たちに任せて、みんなは攻撃を!」
エマ「援護します!」
スハルト「遊撃は俺とフィーに任せな!」
フィー「……コク」
わたくしたちは前衛、後衛、遊撃の役割に分かれ、
スハルトさんとフィーさんがその動きを封じ、隙を作ります。
スハルト「さあ、やれ、リィン!」
リィンと呼ばれた黒髪の男子生徒が、
リィン「これでもくらえ、ガーゴイル……紅葉斬り!」
リィンさんの紅葉斬りが直撃した瞬間、
リィン「恐らくガーゴイルの再生能力は低下した! 一斉に攻撃だ!」
リィンさんの掛け声で、わたくしたち12人全員が一斉に攻撃を浴びせました。その瞬間、皆が淡い光に包まれたのです。
石像《ガーゴイル》はみるみるうちに砕け散り、最後にラウラさんがその首を大剣で切り落とし、完全に消滅しました。
わたくしたちの間に安堵の空気が流れます。
エマさんと赤髪の男子生徒がその場に座り込み、アリサさんが息を整えています。
アリサ「よかった……これで」
ラウラ「ふう、一安心だな」
アルフィン【なんとか、わたくし達で倒せましたわ】
スハルト「……ふぅ、なんとかなったな、フィー」
フィー「うん」
スハルト「それと、よくやったな、リィン」
リィン「俺はスハルトに言われた通りにやっただけだよ」
スハルト「男に褒められてもな……」
そういえば、戦いの最中、わたくしたち全員が淡い光に包まれたような気がしました。あれはいったい何だったのかしら?
大賢者が説明します。
大賢者「解。これは
アルフィン【ラインフォルト社とエプスタイン財団、そして密かにFLT社が共同で作り上げた戦術オーブメント、
大賢者「解。マスター、FLT社の協力に気づきましたね」
アルフィン【まあ、そこは……あの世界のコードが使われているようですし】
大賢者「解。どうやらあの方たちも製作に関わっているようですね」
アルフィン【その辺は、追々わかることですわね】
みんなも、さっきの現象について話し始めました。
リィン「戦いの最後のあたりで……みんなが淡い光に包まれたの、わかったか?」
長身の男子生徒「そういえば、何かに包まれたような……」
マキアス「ああ、僕を含めた全員が淡い光に包まれていたな」
ユーシス「なんだと……?」
ハチマン「お前、気づかなかったのかよ……」
ラウラ「ふむ、気のせいか……皆の動きが手に取るようにわかった気がしたが……」
スハルト「多分、気のせいじゃないぜ。な、リィン?」
リィン「そうだな。そのおかげでヤツの弱点が見えたわけだから。もしかしたら、さっきの力が……」
その時、階段の上から声が響きました。
サラ「――そう、
サラ教官が階段を降りて、わたくしたちのところへやってきました。
サラ「いや~、やっぱり友情とチームワークの勝利よね! うんうん、お姉さん、感動しちゃったわ♪」
サラ教官、全部見てたんですの? 絶妙なタイミングで現れましたわね。大賢者が言っていた
まるで、あの時の感覚に似ています……。
サラ教官が、オリエンテーリングの総括を始めました。
サラ「これにて、入学式の特別オリエンテーリングは全て終了! 何よ、君たち、もっと喜んでもいいんじゃない?」
マキアスさんは【「喜べない」】と怒り、アリサさんは【「疑問と不信感しかない」】と不満を漏らしています。
でも、わたくしには、この疲れさえ心地よく感じます。こんな気持ちになるのは、リベールの異変以来の高揚感がわたくしの中で駆け巡っているからでしょうか。
サラ教官は、一人一人の疑問や不満に答え始めました。
特科クラス《Ⅶ組》が何のために作られ、なぜ身分や出身に関係なく集められたのか。そして、なぜわたくしたちが選ばれたのか。丁寧に説明してくださいます。
サラ「一番わかりやすい理由は、その
リィン「この戦術オーブメントに?」
サラ「エプスタイン財団、ラインフォルト社、そして日本のFLT社が共同開発した最新鋭の戦術オーブメント。多彩な
リィン「さっき、みんなが繋がっているような感覚……」
サラ教官は、
しかし、現時点では
そして、オリビエ兄様が掲げる志――身分や出身の垣根を超え、能力ある者が帝国の未来を担う――それが、わたくしたちが選ばれた理由でもあります。
ラウラ「なるほど」
マキアス「なんて偶然だ……」
ラウラさんとマキアスさんが感嘆の声を漏らします。
サラ「さて、約束通り、文句の受付を始めるわよ」
サラ教官が約束の【「文句受付」】を始めました。さて、どうなることでしょう?
サラ「トールズ士官学院は、
ちなみに、辞退すれば本来のクラスに戻れるそうです。まあ、わたくしには関係ありませんけど。わたくしの答えはもう決まっています。
それは、オリビエ兄様や他の方々に言われたからではありません。わたくしの中で、ワクワク感や、皆と《Ⅶ組》をやってみたいという気持ちが芽生えていたからです。
わたくしが名乗りを上げようとしたその時、リィンさんが先に進み出ました。
リィン「リィン・シュバルツァー、参加させてもらいます」
サラ「やっぱり一番乗りはあんたか。まあ、予想通りだけど」
リィン「無理を言って入学させてもらえた身です。自分を高められる場所なら、どこでも構いません」
己を高められる場所……わたくしもその気持ちを忘れてはいけませんわね。
次はわたくしの番です。リィンさんと同じく前に出て、宣言しました。
アルフィン【アルフィン・レンハイム、特科クラス《Ⅶ組》に参加いたしますわ。《Ⅶ組》の理念に感動しましたわ】
サラ「なるほど、なるほど……女子であんたが一番に来るだろうとは思ってたけど、まあ当然か」
サラ教官が何か言っていますが、よく聞き取れませんでした。
わたくしの宣言後、皆が次々と参加を表明していきます。
アリサ「――私も参加します」
サラ「へぇ、意外ね。てっきり反発して辞退するかと思ったけど?」
アリサ「確かに、テスト段階の
アリサさん、今、タツヤって言いましたわよね……? タツヤさんって、あのタツヤさんじゃないですよね? この世界に司波達也は存在しないはず。
確かに、四葉家は極東日本に存在します。十師族や百家も存在しますが、わたくしの知る【「あの世界」】とは成り立ちも何もかもが違います。
大賢者が補足します。
大賢者「解。リベールの異変時に出会った司波深夏が、四葉家のエージェントで後継者の1人でしたね」
アルフィン【そうね。妹の名前は深雪と言っていましたわ】
達也さんの代わりに深夏さんがいる。深雪さんはこの世界にも普通に存在しますが、達也さんは存在しないってことでしょうか?
それに、アリサさん、
その後も、スハルトさんとフィーさんが参加を表明。残るはハチマンさん、ユーシスさん、マキアスさんの3人だけです。
サラ「スハルトとフィーは参加と。あと、君達3人よ?」
ユーシスさんがマキアスさんを一瞥し、前に進み出ました。
ユーシス「ユーシス・アルバレア、特科クラス《Ⅶ組》への参加を宣言する」
マキアスさんとユーシスさんがまた言い争いを始め、散々言い合った末に――
マキアス「マキアス・レーグニッツ! 特科クラス《Ⅶ組》に参加する! 古ぼけた特権にしがみつく、時代遅れの❝貴族風情❞に、どっちが上か思い知らせてやる!」
ユーシス「面白い!」
マキアスさんとユーシスさんが参加を表明した時点で、残るはハチマンさん一人。
サラ「後はアンタだけよ。後悔のない選択を」
ハチマンさん、サラ教官の言う通り、後悔のない選択をしてくださいね。
ハチマン「……俺に断る選択肢はねえよ。つーか、断れねえし……
サラ「いいのね?」
ハチマン「……男に二言はねえ」
サラ「これで12名、全員参加ってことね! それじゃ、この場をもって特科クラス《Ⅶ組》の発足を宣言する! この1年、ビシバシしごいてあげるから、楽しみにしてなさい!」
七燿暦1204年3月31日
ここに、トールズ士官学院特科クラス《Ⅶ組》が発足した。後々、帝国史に名を刻むことになる、いや、帝国史だけでなくゼムリア史にその名を刻むことになるチームの、最初の第一歩である。
アルフィンたちが知らない場所――旧校舎の入り口付近では、4人が密かに会話を交わしていた。
一人は金髪ロングの女性で、まるで『とある魔術の禁書目録』の食蜂操祈を思わせる容姿。彼女の名はミサキ・カミジョウ。ロイドと会った後、急遽列車でトリスタに駆けつけ、自身も関わった《Ⅶ組》の発足を見届けるためにやってきた。
他の3人は、ヴァンダイク学院長、オリヴァルト皇子、そして左目に眼帯をつけた茶色の髪の高身長の青年、カズヤ・アレイスターだ。
ヴァンダイク「やれやれ、まさかここまで異色の顔ぶれが集まるとはのう。
オリヴァルト「確かに。でも、これも女神の巡り合わせというものでしょう」
ヴァンダイク「ほう?」
オリヴァルト「ひょっとしたら、彼らこそが❝光❞となるかもしれない。動乱の足音が聞こえる帝国において、対立を乗り越えられる唯一の光に――」
カズヤ「俺も彼らに期待してるよ、オリビエ。長年、オリビエとこの構想に時間を費やしてきた。周りの人間を説得するのに苦労したけど、彼らには帝国の光に……いや、世界の光になってほしい」
ミサキ「私も、オリビエさんやカズヤさんの言葉に賛成です。オリビエさんの妹君、アルフィンさんでしたっけ? あの子からは何か特別なものを感じるんです。あの子が《Ⅶ組》を、そしてエレボニアを……クロスベルを……正しい何かに導いてくれるんじゃないかって。かつて私を導いてくれた、あの人みたいに……」
オリヴァルト「君もクロスベルでは、そう言われているんじゃないのかい、ミサキ?」
カズヤ「ガイも言ってたぜ……ミサキやロイドがクロスベルの英雄になる日が来るって。俺はそれを裏から支えてやるってな」
ミサキ「カズヤさん、私は鉄血の子供たちの一員になってしまった。もう半分は汚れてしまったから……英雄だなんて言われるのは、ロイドの方ですよ」
オリヴァルト「ミサキ君、君は汚れていないよ。君の心は綺麗なものだと、エステル君やヨシュア君が言っていた。綺麗な心だからこそ、君は僕の《Ⅶ組》構想に協力してくれたんだろう?」
ミサキ「……私にできるのはこれくらいですから。クロスベルでは、特務支援課が希望の光になりつつあります。帝国でも希望の光を――オリビエさんやカズヤさんの考えに共感したんです」
オリヴァルト「こちらこそ、ミサキ君。これからもよろしく頼むよ」
カズヤ「俺からもよろしくな、ミサキ」
ミサキ「はい!」
第0章ートールズ士官学院編入学編完
第1章ー初めての特別実習編~闇は動き出す編~
第0章トールズ士官学院入学編は終わり、次回からは第1章初めての実習編です。
ユウのヒロインは誰が良いでしょうか?
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1ーエマ
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2ーフィー
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3ートワ
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4ーサラ
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5ースミレ
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6ーそれ以外(アリサとラウラは除く)