トールズ士官学院・第2学生寮
七燿暦1204・4月18日・帝国・トリスタ・トールズ士官学院・第2学生寮・405号室ーマインの部屋。
アルフィンたちや他の生徒がまだ寝静まっている早朝、一人の人物が目を覚ました。
マイン・サルナード。
彼女は水泳部の副部長で、アルフィンやラウラの先輩にあたる。容姿は『とある』シリーズの雲川芹亜を思わせる、鮮やかな魅力を持つ。2年4組、平民クラスに所属し、男女問わず人気が高い。一部ではアンゼリカと並ぶ存在と評されるが、マイン自身はそんな噂を気にしない。
第2学生寮(4階建て)の4階、405号室が彼女の部屋だ。1階と2階は今年度の1年生が使用している。部屋には筋力トレーニング用の器具や健康器具が並び、彼女のストイックな生活を物語る。マインは下着姿で部屋にいる。これは幼い頃からの習慣だ。
本当は全裸で過ごしたかったが、実家の両親に「せめて下着は着なさい」と諭されて以来、このスタイルを続けている。
マイン「今日も水泳部の前に、いつもの日課を済ませておきましょう」
タンスから体操服を取り出し、上着と緑のブルマを身につける。姿見の鏡でハミパンがないか確認する。さすがのマインも、ハミパンは恥ずかしいのだ。水着の食い込みは平気なのに、不思議なこだわりである。
マイン「さて、今日は後輩たちの初めての自由行動日。先輩として、しっかりしないとね」
405号室を出て、第2学生寮を後にし、トリスタの街外れの東トリスタ街道へ向かう。まだ陽が昇らぬ東の空を正面に、マインはケルディック方面へ走り始めた。軍人には基礎体力が必要だと、父から教わった。
その父、カイン・サルナードは帝国軍第3機甲師団に所属し、隻眼のゼクスの副官として「ゼクスの片腕」と称された男だった。
過去形なのは、カインが東ゼムリア共和国の長春帝国軍基地に出向し、東ゼムリアの防衛や南中華国への牽制任務に従事していたからだ。七燿暦1203年7月、東ゼムリア北方で大規模な戦闘が勃発。現地部族が救援を求め、東ゼムリア政府が帝国に支援を要請した。
帝国軍は基地から北方へ出撃したが、戦闘は3か月に及び、裏で最強の傭兵団が関与していたとの噂もあった。その戦闘で、カインは部族民を救うため自らを犠牲にした。マインが父の訃報を知ったのは、トールズ士官学院の授業中だった。カインはマインのトールズ入学を渋々認めていた。トールズは軍人以外の道を選ぶ卒業生も多いため、娘が軍人にならなくてもいいと願っていたのだ。しかし、東方戦役での父の戦死は、マインの心に封じていた「父と同じ軍人になる」という想いを溢れさせた。
カインの葬儀後、母リリアはマインにこう告げた。
リリア「マイン、貴女の好きにしなさい。ただし、後悔するような決断だけはしないで。いいわね?」
マイン「ありがとう、お母さん。私は帝国軍人になる。お父さんと同じ道を歩むわ」
リリアは少し沈黙した後、微笑んだ。
リリア「ふふ、あの人の血を引いてるものね。マイン、立派な軍人になって、あの人を唸らせなさい」
マイン「うん、約束するよ、お母さん!」
カインの墓前と母に、立派な帝国軍人になることを誓った。そして今、マインはトリスタとケルディックの間を折り返し、トリスタへ走る。
彼女はまだ発展途上、父の足元にも及ばない。それでも、諦めるつもりは一切ない。親友でライバルの水泳部部長クライン、ラクロス部のテレジアやエミリー、後輩のラウラやアルフィンと競い合い、高め合うことで道が見えると信じている。東トリスタ街道を走り抜け、第2学生寮に戻ったマイン。
太陽がようやく昇り、トリスタの街に光が差し込む。平民生徒たちが起き始める中、マインはシャワーを浴び、自室で水泳部副部長の準備を整える。もちろん、下着姿で。
マイン「水泳部の準備はこれでいいかな」
プールの使用許可書を教頭に提出する必要がある。マインは苦笑いしながら呟いた。マイン
「教頭に出さないとね」学院長は寛容だが、教頭は平民生徒を見下していると誤解されがちだ。しかし、マインはそう思わない。教頭は口は悪いが、生徒のことを真剣に考えている。準備を終えたマインは、亡父カインの写真に目をやる。
マイン「お父さん、行ってきます。必ず立派な軍人になってみせるから、見守っていてね」
そう言い、彼女は部屋を出た。2年生初の自由行動日。悔いなく過ごそうと心に決めて。
トールズ士官学院・第3学生寮内
七燿暦1204・4月18日・午前・帝国・トリスタ・第3学生寮・307号室ーアルフィンの部屋。
わたくしはいつもより早く起きて、ラウラさんと鍛錬を済ませ、お風呂で汗を流し、部屋で支度をしていますわ。西トリスタ街道の脇にある行き止まりの場所で鍛錬をしました。
といっても大仰なものではなく、基本の型練習と実戦さながらの模擬戦ですわ。ラウラさん、光の剣匠ヴィクターさんのご息女だけあって、本当に強いですわ。
大賢者【解。マスター、あの時ラウラ嬢に一時追い込まれてましたよね】
アルフィン【確かに、あの攻撃をかわされた時は驚きましたわ。一時追い込まれましたが、なんとか間合いを取れましたけど……実戦なら危なかったかも】
大賢者【解。ラウラ・S・アルゼイド、さすがアルゼイド流を名乗るだけありますね】
アルフィン【大賢者は疑ってたのかしら?】
大賢者【解。マスター、私はデータを集める立場ですから、疑ってかかるんですよ。彼女の才能と実力は本物。アルゼイド流の全てを彼女で測るわけじゃありませんが、大体わかりました】
アルフィン【わたくしも鍛錬や模擬戦を通じて、ラウラさんが驚くほど早く上達するのを実感しましたわ。必ず強くなる方ですわね】
準備を進めながら、大賢者と分析しつつ、深呼吸を一つ。トワ生徒会長の仕事を手伝うのだから、ミスは許されませんわ。
トワ生徒会長なら失敗しても許してくれるでしょうが、甘えるわけにはいきません。これからの厳しい時代、甘さでは生き残れないと決意を新たにしましたわ。緋い翼の刺繍が施された籠手を見ながら、そう思いました。
机の上の水泳部入部届を確認。名前はちゃんと書いてありますわ。見落としなし。ふと、学院指定の水着を取り出していないことに気づきました。クローゼットにしまってあったはず。クローゼットから水着を取り出し、改めて見ます。普通のスクール水着ですわ。別に際どいものではありません。
アルフィン【水着を入れる袋もありましたわね】
大賢者【解。その袋ならクローゼットの下の方ですよ】アルフィン【ありがとう、大賢者!】
クローゼットの下の箱から水着用の袋を見つけました。水着、バスタオル、替えの下着を入れ、入部届も懐に。準備万端ですわ。最後に姿見の鏡で身だしなみを確認。
アルフィン【さて、準備も整いましたし、1階でリィンさんと合流しましょうか】
部屋を出て、1階へ向かいましたわ。
トールズ士官学院・第3学生寮・アルフィンの部屋(307号室)→第3学生寮・1階玄関前
七燿暦1204・4月18日・午前・帝国・トリスタ・トールズ士官学院・第3学生寮・玄関前。
部屋を出ると、第3学生寮の中は静まり返っていますわ。皆さん、部活動に出かけているのでしょうね。学生寮でゴロゴロするのはサラ教官くらいかしら。
わたくしとラウラさんがシャワーを浴びていた時は、寮内が騒がしかったですから。今日は自由行動日なので、食事当番はお休み。外で食べるしかありませんね。トリスタの『キルシェ』や学生会館の食堂が頼りですわ。
それはさておき、生徒会の依頼とはどんなものでしょう?
大賢者【解。学院の生徒会にグレーゾーンの依頼は来ないと思いますよ】
アルフィン【そうね。さすがに来ないわよね】
トワ生徒会長は、依頼書をポストに入れると言っていましたわ。ポストへ向かうと、リィンさんがすでに待っていました。彼が早く来るのは予想通り。約束の時間より絶対早く来るタイプだと、この2週間でわかりましたわ。
アルフィン【お待たせしましたわ、リィンさん】
リィン「アルフィン、おはよう。俺も今さっき来て、ポストに入ってた依頼書を見てただけ。これが依頼書だな」
リィンさんが持つ依頼書を見せてもらいます。
【旧校舎地下の調査】【必須】
【導力器の配達】【必須】
【落とした学生手帳】
件 名旧校舎地下の調査必須
依頼者ヴァンダイク学院長
学院の裏手にある『旧校舎』の地下で不可思議な現象が起こっているらしい。
そこで、腕の立つ生徒に調査を頼みたい。
詳しくは本校舎1階にある学院長室まで聞きに来てくれたまえ。
────ヴァンダイク学院長
件 名導力器の配達必須
依頼者ジョルジュ
技術部で修理した各種導力製品を、それぞれの持ち主に配達して欲しい。
まずは学生会館の左手にある技術棟まで来てくれ。
────2年Ⅲ組・ジョルジュ
件 名落とした学生手帳
依頼者コレット
学生手帳をどこかに落としてしまい、未だに見つからない状況です。どうか捜索に協力してもらえませんか?
先に学生会館の1階を探しているので、時間があれば話を聞きに来てください。
────1年Ⅳ組・コレット
ヴァンダイク学院長、技術部のジョルジュさん、1年Ⅳ組のコレットさんからの依頼ですわね。
リィン「学院長に技術部、そして新入生からの依頼か。いきなり学院長の依頼って大丈夫かな……?」
アルフィン【トワ生徒会長がわたくしたちにできると判断したんですから、頑張っていきましょう】
リィン「アルフィンはプラス思考だな。この技術部の依頼もなんか気になるし……」
アルフィン【時間はたっぷりありますから、焦らずやっていきましょう】
リィン「そうだな。提案なんだが、学院長の依頼は後回しにして、技術部とコレットさんの依頼、アルフィンはどっちをやりたい?」
アルフィン【そうね……】
技術部の配達とコレットさんの学生手帳捜索。普通の女の子なら、コレットさんの依頼を選ぶでしょうね。でも、わたくしが技術部を選んでも、リィンさんなら絶対に「コレットさんの方をやらないか」と進めてくるはず。
大賢者【解。だったら素直にコレット嬢の依頼をやってみたらどうです?】
アルフィン【大賢者はそう来ましたか。女子の依頼ですし、女子が行った方がいい場合もありますよね】
学生手帳には殿方に知られたくないこともあるでしょうし。
アルフィン【リィンさん、依頼の件ですけど、わたくしとリィンさんで分担しませんか?】
リィン「依頼を分ける?」
アルフィン【本当は一緒にやった方がいいんでしょうけど、より効率よく進めるなら分担がいいかと。別に重い物を持ちたくないとか、そういうわけじゃありませんわ】
リィン「……アルフィンの言うことは一理ある。技術部の配達は俺がやるよ。アルフィンはコレットさんの依頼を頼むな」
リィンさんが真顔でそう言ってきて、一瞬ドキッとしましたわ。
アルフィン【わかりましたわ】
リィン「その代わり、学院長の依頼は二人でやろう。これは確実にⅦ組に来てると思うから」
アルフィン【そうね】
ヴァンダイク学院長が「腕の立つ生徒」を募集している時点で、何かありそうですわ。旧校舎でまた何か起こったのかしら?
リィン「アルフィン、依頼が終わったら一応
アルフィン【わかりましたわ】
リィン「お互い頑張ろう」
リィンさんはそう言うと、第3学生寮を出て、ジョルジュさんがいる技術棟へ向かいました。
アルフィン【さて、わたくしもコレットさんに会いに行かなくちゃ】
誰もいない第3学生寮で、静かに気合を入れました。そして、士官学院へ向かいました。
ユウのヒロインは誰が良いでしょうか?
-
1ーエマ
-
2ーフィー
-
3ートワ
-
4ーサラ
-
5ースミレ
-
6ーそれ以外(アリサとラウラは除く)