アルフィンの軌跡〜トールズ士官学院編〜   作:龍造寺

27 / 94
第1章初めての特別実習編16話です。


第1章ー初めての特別実習編ー23ー16話ーいざ、ケルディックへ。

 

喫茶店《キルシェ》

 

七燿暦1204・4月24日・午前・帝国・喫茶店《キルシェ》

 

赤みがかったポニーテールの髪を緑の制服に映えさせる女子学生、スミレ・ヨシザワがいた。

 

彼女はトワたちと入学式のイベントに参加したⅦ組設立の初期メンバーだ。カルバードからの留学生で、ガイウスと同じ外国人枠の2年生。喫茶店《キルシェ》で朝のバイトに励むが、ミラに困っているわけではなく、自ら志願したのだ。

 

カルバードの首都イーディスの喫茶《ルブラン》のコーヒーが恋しく、《キルシェ》で再現を試みたが、思うようにいかなかった。《ルブラン》に下宿していた先輩たちのコーヒーの味が忘れられない。

 

先輩たちはある時を境にカルバードから姿を消し、仲間たちも行方を知らない。

 

スミレは彼らの❝あるモノ❞を引き継ぎ、協力者と共に西ゼムリアを駆け巡った。リベールの異変で知り合った放蕩皇子オリビエから、トールズの特科クラスⅦ組設立の初期メンバーへの誘いを受けた。帝国の皇子に頭を下げられ、断れず入学を決意。トワたち同期の努力で、今年、Ⅶ組が設立された。

 

スミレたちは初期メンバーであることを誇らず、Ⅶ組を影で支えると誓った。

 

「A班はケルディック、B班はパルムだったわね」

 

とスミレは思う。彼女はサラ教官の補佐として、関係各所への連絡や許可取りを担当。なぜ一生徒が特別実習先を知るのか? それは補佐の役割ゆえだ。だが、胸騒ぎがする。A班もB班もトラブルに巻き込まれる可能性を感じる。

 

「帝国内外、いろんな勢力が動いてるって、ミュヒトさんが……」

 

何かあればスミレも動くつもりだ。調べたいこともあり、トールズを辞める気はない。《キルシェ》の周りを掃除し、トリスタの住民に挨拶。店内を清掃後、店主フレッドに挨拶し、第2学生寮へ戻って準備、学院へ登校する。

 

途中で、銀髪バンダナの青年クロウとすれ違う。

 

「クロウ君、学院と逆方向? まさかサボる気?」

 

「スミレに見つかったか。ちょっと野暮用でサボるわ」

 

「また教官に怒られるよ」

 

「お前が言い訳しといてくれ。礼はちゃんと返すからさ」

 

「お礼って一度も礼もらってないんだけど!」

 

「今度は何かするよ。忘れんなよ」

 

クロウはトリスタの街へ。スミレは呆れつつ、「1年の時もこうやって消えてたわよね」と呟く。

 

クロウの全てはわからない。軽薄でチャラいようだが、演技ではないかと疑う時もある。共和国の闇や騒乱をくぐったスミレだからこそ、クロウの行動の裏を考える。だが、深入りはしない。

 

()()

 

登校しながら、Ⅶ組の無事を祈った。

 

トリスタ駅→大陸横断鉄道列車内

 

七燿暦1204・4月24日・午前・帝国・大陸横断鉄道列車内。

 

トリスタ駅からクロスベル経由カルバード行きの列車に乗り、しばらく。朝なので空いてますわ。

 

大賢者【告。入学式の時、マスターは街道を歩いてトリスタに来ましたね】

 

アルフィン【そんなこともありましたわ。1ヶ月も経ってないのに、遠い昔のよう】

 

大賢者【解。マスターが老けただけでは?】

 

アルフィン【老けた? 華麗な乙女のわたくしに老けたなんて……!】

 

こめかみをピクピクさせ、反論しかけると、エリオットさんが

 

エリオット【ケルディックまで1時間くらいかな?】

 

ラウラ【そのくらいだ。トリスタに来る時、乗り換えたからな】

 

アルフィン【列車なら1時間、徒歩だと2時間半くらいかしら?】

 

スハルト【2時間半? 便利な列車あるのに、歩く奴いるかよ】

 

リィン【はは、アルフィンは入学式に帝都から歩いてきたんだよな】

 

アルフィン【ええ。西トリスタ街道でハチマンさんと会いましたわ】

 

エリオット【ハチマンも街道歩いてきたって言ってたね】

 

ラウラ【帝都から歩くとは、いい鍛錬だ。私もレグラムから……】

 

レグラムからトリスタは1日がかりですよ? 前日から歩くなんて、すごいけど。皆が苦笑いし、リィンさんがラウラの故郷の話に。話題はレグラムへ。

 

アリサ【ケルディックで乗り換えて、バリアハートへ向かうのよね?】

 

ラウラ【そこからさらに乗り継いで終点。はっきり言って僻地だ】

 

レグラムを僻地だなんて! ラウラさん、言わないで!

 

大賢者【解、クロイツェン州南部のエベル湖の東の湖畔に位置する小さな街。周囲を深い森に囲まれており、年中霧に包まれるため、『霧と伝説の街』という別の名前も存在します】

 

アルフィン【大賢者、補足ありがとうございますわ。レグラムは、かのリアンヌ・サンドロット様のお城でもありますから】

 

大賢者【解、マスターはリアンヌ様のことはお好きだったですからね。だからラウラさんの僻地発言が気に入らなかったんですよね?】

 

アルフィン【気に入らないじゃなくて、もっと誇りを持ってほしいの】

 

リィン【はは、ラウラの故郷が僻地なら、俺のユミルも大概だけど】

 

ユミルはシュバルツァー男爵家が統治。アルノール家と繋がりが深い。リィンさんの苗字もシュバルツァー。エリゼから男爵家に子がいると聞いたけど、まさか……?

 

大賢者【解。調べますか?】

 

アルフィン【人のプライバシーを勝手に見ないで】

 

大賢者【了】

 

リィンさんが男爵家とどう繋がってるのか、気になるけど聞きづらいわ。皇族だからと言って臣民の個人情報を勝手に見るのは気が引けますわ。

 

リィン【ケルディックは交易地として有名だよな】

 

エリオット【『大市』がある場所、昔から知られてるよね】

 

スハルト【外国人も大市目当てで来るぜ】

 

アリサ【スハルト、詳しいのね】

 

スハルト【まあな、ケルディックは俺の好きな場所さ】

 

アリサ【そうなの、だったら実習前のおさらいとして、確認しましょうか】

 

スハルト【アリサ、いいぜ】

 

アリサさんとスハルトさんの解説コーナーに。

 

ケルディックを説明しますわ。交易地ケルディックは、帝国東部クロイツェン州の要所。帝都ヘイムダル、公都バリアハート、貿易都市クロスベルの中継点で、帝国の食糧庫。穀倉地帯が食を支え、リベールや学園都市からの輸入も。バリアハートの宝石や毛皮が輸出され、大市では諸外国の品が集まります。

 

リィン【聞いてるだけですごいな】

 

エリオット【ちょっと楽しみかも】

 

スハルト【大市は他国でも有名だからな】

 

アリサ【ただの旅行なら楽だけど、サラ教官を考えると安心できないわ……】

 

特別実習がただの旅行なわけありませんわ。サラ教官は、何かわたくしたちがしなければいけない課題を絶対に用意しているはずです。わたくしやリィンさんを出しに使ったあの自由行動日の生徒会の仕事も何の意味もなくやらせるとは当然思いませんから。

 

大賢者【解、マスターは学生寮の自室にいる時からそういうこと言っていましたね】

 

アルフィン【サラ教官が全く意味がないことをさせるとは思いませんわ。特別実習先で生徒会の依頼みたいなものを実習先でさせるための予行練習みたいなものなんではないかと思いまして】

 

大賢者【解、その可能性も0ではないでしょう。ただそうなりますと、経験した2人がA班に偏ってるしか思えません。B班は経験者ゼロということになってしまいますが】

 

アルフィン【まあ、そこは、あのハチマンさんもいらっしゃいますし、なんとかなると思いますが…】

 

大賢者【解、ハチマンさんが率先してやるという可能性は低いかと】

 

アルフィン【確かにそうですが……】

 

B班のハチマンさんたちが気になりますが、今はわたくしたちの事をちゃんとしないと。リィンさんたちもそのことについて話しています。

 

リィン【『特別実習』か…何をさせられるんだろうな。士官学校である以上、厳しいものが予想できるけど】

 

ラウラ【まあ、そうでなくてはわざわざ出向くか甲斐がない。せいぜい楽しみにしておこう】

 

エリオット【う、うーん……】

 

スハルト【エリオット、何かあったら骨だけは拾ってやるからな】

 

エリオット【え?僕が骨に!?】

 

アルフィン【……アハハ、とりあえず、ケルディックに到着しましたら、お宿に立ち寄りましょう。全てはそれからですわ】

 

リィン【そこで、実習内容を記した封筒を手に取る手筈のはずだ】

 

アリサ【そうだったわね。しかしさっきの駅といい、妙に準備は良すぎるというか……】

 

???【それだけ士官学院が君たちに期待してるってこと】

 

聞き覚えのある声。なんとサラ教官! 同行しないんじゃ?

 

大賢者【告、調べてみますか?】

 

アルフィン【別にやらなくていいわ】

 

大賢者【了】

 

リィン【サラ教官……なぜここに?】

 

ラウラ【……どうも朝から見かけないと思ったら】

 

スハルト【確かに朝から見かけなかったな】

 

サラ教官【Ⅶ組A班、全員揃ってるみたいね。ちゃんと仲直りをして、まずは一安心ってとこかしら?】

 

アリサ【って、見ていたかのように言わないでくださいっ!】

 

アリサさんのおっしゃる通り、サラ教官なら第3学生寮のどこから見ていた可能性は否定できませんけどね。

 

エリオット【アハハ】

 

スハルト【まあ、どっかからか見ててもおかしくはないか】

 

リィン【え、えと、どうして、教官がいるんですか?俺たちだけで実習地に向かうという話だったんじゃ?】

 

サラ教官【んー、最初くらいは補足説明が必要かと思ってね。宿にチェックインするまで付き合ってあげるわ】

 

アリサ【そ、それは助かりますけど……】

 

わたくしたちは、B班に同行した方がいいのではと一致。サラ教官に言うと、『B班はめんどくさいからイヤ』と。

 

大賢者【解、A班、B班、どちらかに同行するとなると、ほとんどの人間がサラ教官に限らずA班に同行すると思いますよ。それはマスターとて同じではないんですか?】

 

アルフィン【そ、それは…】

 

確かに目的のことに集中したいのに関係のないとこで神経を使うのはわたくしとしては、避けたいとこでしょうか。サラ教官も同じことをおっしゃってますね。ただ、教官としてそれをおっしゃっていいのかはわかりませんけど。それでもマキアスさんとユーシスさんが、険悪モードになりすぎたらフォローに行くみたいですけど、それで間に合うんですかね?

 

大賢者【告、そのようなリスクを省くならば、ユーシスさんかマキアスさんをA 班に組み込めばいいだけのことですが】

 

アルフィン【うーん、それは何ともですわ】

 

サラ教官はおっしゃるだけおっしゃられた後、わたくしたちとは、通路を挟んだ向こう側の席に座って自分には気にせずお話しを続けてとおっしゃいましたけど……。サラ教官は徹夜の徹夜とかおっしゃられてましたけど、そこまでお忙しかったんでしょうかね。

 

そのままお眠りになれましたけど、そんなすぐに寝れるなんて羨ましいですわ。

 

大賢者【告、マスターも眠りたいのでしたら、わたしが睡眠魔法を…!】

 

アルフィン【大賢者!しなくていいですわ!】

 

大賢者【了】

 

エリオット【えっ、寝ちゃった】

 

ラウラ【只者ではないな……】

 

アリサ【とても士官学校の教官に見れないんですけど】

 

スハルト【サラは、只者ではないことだけは言っておくぜ。まあ要らぬ詮索なんかしたら何が飛んでくるか】

 

リィン【……教官のことは、まあ気にしないでおこう】

 

アルフィン【ケルディックの駅に着きましたら、わたくしがサラ教官を起こしますので】

 

リィン【アルフィン、いいのか?】

 

アルフィン【ええ、 構いませんわ】

 

リィン【じゃあ、頼んだぞ】

 

大市の話や実習の課題を想像しながら会話。皆、大市は知識では知ってるけど、実際に行ったのはスハルトさんだけ。わたくしも素通りしたことはあるけど、降り立つのは初めて。楽しみ!バリアハートの毛皮や宝石を本場で見たいわ。帝都でも売ってるけど、職人の品は格別よね。話が一段落し、リィンさんがミュヒトさんからもらったブレードで遊ぶことに。ルールが楽しそうで、わたくしも参加。勝敗は……聞かないでくださいな。

ユウのヒロインは誰が良いでしょうか?

  • 1ーエマ
  • 2ーフィー
  • 3ートワ
  • 4ーサラ
  • 5ースミレ
  • 6ーそれ以外(アリサとラウラは除く)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。